動物飼育員になるには・仕事内容と本音・全国の求人

動物飼育員とは

掃除する飼育委員

(出典) photo-ac.com

動物飼育員は、動物園やサファリパーク、水族館などで動物の世話を行います。担当する動物の生態をよく把握し、健康を保つことが、最も重要な役割のひとつです。

来場者に、えさやりなどを通じて動物との触れ合いの機会を提供することや、動物の生態などの情報を伝えることで、環境教育的な役割も果たします。また、動物の生態や繁殖のためのデータ取得など、調査研究の一端を担うこともあります。

以前は、捕獲された野生動物を外部から連れてくることが一般的でしたが、近年は動物保護の観点からも、飼育している動物を施設内で増やす努力がなされています。また、動物に負担の少ない展示をすることも大きなテーマとなっています。展示・飼育環境の改善を現場から行うことも、動物飼育員の重要な仕事といえます。

動物の世話には、えさや、寝床用のわら、ときには動物自体など、重量のあるものを運ぶことも多いです。開園準備や、担当動物の生態によっては早朝からの勤務も多く、動物飼育員として仕事をするには体力があることは必須条件でしょう。

大型の肉食動物はもちろん、蹴られたり踏まれたりするだけで人間が大きなダメージを受けるような動物もいます。動物飼育員の仕事は、担当する動物や展示・飼育環境によっては危険と隣り合わせの仕事でもあります。

動物飼育員の仕事内容

シマウマとキリン

(出典) photo-ac.com

施設規模や動物の展示方法、担当する動物やその個体数などによっても異なりますが、基本として共通するのは、給餌と排泄物の清掃、健康管理でしょう。

えさは基本的に重量があり、必要量も多いため、保管場所から給餌場所に運ぶだけでも重労働です。細かく切るなどの加工が必要な場合もあります。排泄物の清掃は、カバや水生動物など、水の中で排泄する動物の場合は水を入れ替えたり、わらを敷いた寝床で休む動物の場合は、寝わらの入れ替えを行ったりと、動物の習性によって方法はさまざまです。給餌も清掃も、水を扱う機会や屋外での作業が多く、季節によっては大変過酷です。生命が相手なので、当然ながら一日も休まず行う必要があります。飼育員は交代で休みを取りますが、休日も担当する動物が気にかかるという人も多いようです。

まれに、担当していた動物に飼育員が襲われるというニュースを聞くことがあります。2017年5月にも、大型の肉食動物に襲われ、飼育員が命を落とした例がありました。肉食動物以外にも、馬や象などに蹴られたり踏まれたりすれば、人間の受けるダメージは相当なものです。毒をもつ動物もいます。ふだん、その動物にどんなに慣れていても、信頼関係が築けていると思っていても、なにかの拍子に野生の本能で人間に危害を加えることもあります。危険と隣り合わせであることは、動物飼育員として常に認識しておく必要があります。

近年は、動物を外部から連れてくるのではなく施設内で増やすことを重視する傾向があります。そのため、繁殖や幼体の生育のための調査・観察、工夫がますます必要とされています。園内で産卵や出産が行われるときは、24時間態勢で様子を見守ったり、場合によっては獣医師と連携して適切な処置を行ったりします。繁殖に成功しても、親が子育てを放棄してしまうことは珍しくありません。必然的に、動物飼育員が親に代わって保育することもあります。いずれは人間から離れて同種の動物と生活できるよう配慮しますが、動物によっては、人間の手による保育の前例が十分にないこともあります。栄養を与える回数や、必要量、方法など、すべて手探りで保育を行う場合もあります。世話をするために必要な道具を、身近にあるものを利用して作ることもあります。目の前の命を守り育てるためになんとか工夫する、知恵を絞る、という姿勢は重要です。

動物の世話に加え、来場者へのサービスも担当します。動物の生態や本来の生環境などの知識・情報を分かりやすく伝えたり、そのためのさまざまなツール(絵や文章の入った看板や印刷物など)を製作したりします。来場者がえさやりや世話を体験できるような、動物との触れ合いの場を提供することも、飼育員の仕事のひとつです。来場者が楽しめる、学べる、ということを主眼に置きつつも、来場者が動物を不適切に扱ったり、動物が来場者に危害を加えたりすることがないよう、よく気を配る必要があります。

また、人間と動物に共通する病気(動物由来感染症=別名、人獣共通感染症またはズーノーシス)への対策を十分に行う必要があります。過去には、展示動物が保有していた病原体に、職員だけでなく来場者も感染し、施設の一時閉鎖に至った例もあります。動物の健康管理は基本ですが、来場者と動物の接触の管理、当然自分自身の衛生・健康管理も重要な仕事といえるでしょう。

動物飼育員になるには?

猿山のサル

(出典) photo-ac.com

動物飼育員として仕事をするために必須の資格はありません。アルバイトスタッフなどとして補助的な業務を行いながら経験を積み、就業先を探すことも可能です。近年は、動物関連の専門学校や大学で学び、知識や技術を身につけてから就職するという方法を選ぶ人も多いようです。

学校で学ぶメリットは、学べる内容やなれる職種が幅広いことが挙げられます。従来多かったトリマーや動物看護師、ドッグトレーナーなどに加え、動物展示や施設の運営手法などを学べる学校もあります。学校によっては提携している施設での実習に参加できたり、就職のサポートが受けやすいことも、大きなメリットです。

公立の動物園や水族館などでは、公務員として募集が行われることが多いです。その場合は公務員試験の合格が必須です。公務員は、学歴要件として大まかに「大卒枠」と「高卒枠」に分かれている場合があり、動物飼育員は「高卒枠」として募集が行われることも多いです。大学を卒業していると、募集要件からはずれてしまう場合もあります。

学芸員資格を要件とする募集もあり、その場合は文部科学省が定める必要な単位を大学または短期大学で履修していることなどが必要となります。公務員として動物飼育員になることを希望する場合は、進路選択時に、専門学校を選ぶか、大学を選ぶかをよく考える必要があります。なお、専門学校のなかには、公務員試験対策もカリキュラムに組み込んでいるところもあります。

一方で、近年、公立の動物園や水族館などでは、運営を外部法人に委託する傾向がみられます。この場合、動物飼育員の採用も運営委託された法人側が行います。そのため、就業場所が公立の施設であっても、公務員ではなく団体職員や会社員としての就業(公務員試験の合格は不要)というケースが増えています。

あると望ましい資格は?

特定の資格がないと動物飼育員になれないということはありませんが、さまざまな資格が応募要件に指定されていることが多いです。なかでも獣医師免許は非常に有利になると考えられますが、獣医師として仕事をしたいのか、動物飼育員として仕事がしたいのかを明確にする必要があるでしょう。

公立の施設で、運営を外部に委託していない場合は、公務員試験の合格が必要です。動物園や水族館は「博物館」に属するため、学芸員の資格が必要となる場合があります。また、水族館では潜水士の資格が必要になる場合もあります。

施設内の移動や、えさなどの運搬のために、車や重機の運転が必須となることも多いです。応募時に必要な免許を取得しているか、採用後に取得することが求められる場合もあります。

動物飼育員経験者へのインタビュー

動物園のゾウ

(出典) photo-ac.com

スタンバイでは、実際に動物飼育員として働いていた方に、「仕事のやりがい」「努力したこと」「将来性」についてインタビューを実施しました。

インタビューの対象者

男性(大阪府在住)
実務経験年数:5年以上

Q1.動物飼育員のやりがいを教えてください

動物飼育員のやりがいはいろいろあります。例えば多くの動物達を誰よりも間近で見ることができます。動物が大好きで、かれらのさまざまな表情を見ることが楽しいです。また、そんな動物達が一番良く見える状態をお客様に見てもらえることが嬉しかったです。

動物園の場合、やはり親子連れのお客様が非常に多いです。パパやママまでが子供と一緒になってほのぼのしている様子を見ると「この仕事をやっていて良かった」と強くやりがいを感じたものです。

飼育においてもやりがいを感じる部分はあります。動物にも人間と同じように感情があります。怒ったり、喜んだりさまざまです。近くで世話をしていたからこそ分かることでもあります。重労働も多く、臭いがきついなど辛くもありますが、大好きな動物と一緒ということこそが一番やりがいを感じる部分だったように思います。

Q2.動物飼育員になるために努力したことを教えてください

私は最初アルバイトで入社し、動物飼育員補助として働いていました。いつかは動物飼育員になると思っていました。そのため、補助時代に少しでも多くのことを吸収しようと必死で学んでいました。

例えば餌やり、糞の始末、清掃…。一つひとつは当たり前のことと思っていました。しかし実際に行うとなると全く別です。事前に自分で勉強していましたが、全然足りないということを痛感しました。園内で開催される勉強会には毎回参加しました。また園外で開催される学習会にも自主的に参加し、知識や技術の習得に励みました。最初は分からないことも多く、毎日泣きそうでした。それでも大好きな動物のためと思えば継続することができ、1年後に動物飼育員として正式採用していただけました。

Q3.動物飼育員の将来性についてどう思いますか?

動物飼育員の将来性は非常にあります。一番の理由は、動物を飼育する需要がある限りほぼ不滅ということです。どんなに時代がデジタル化しても動物が生き物である以上、それに関わる飼育員の仕事はなくなりません。たしかに他の業種ではロボット化の動きもあり、動物園も全く無関係ではいられないと思います。しかし、繊細な部分が必須な仕事柄、完全になくなることはないと思います。

悪い点は、良い点と表裏一体の関係にあるとも言えます。例えば、動物は繊細な一面を持ち合わせているため、清掃といえども安易にロボット任せにはできません。また機械音に激しい拒絶反応を示す動物もいます。つまり他業種ではロボット任せにできるような部分でも、なかなか自動化はできないということです。そういった仕事が近い将来ではなくならないとすれば、働いている人からすれば良いことではないかと個人的には思います。

動物飼育員の年収

通帳と現金

(出典) photo-ac.com

施設や、施設の運営主体によってもさまざまですが、やはり公務員採用だと安定した収入が見込めます。また、運営を外部財団法人に委託している公立施設の場合(公務員ではない)も、収入は比較的安定しています。

東京の公立動物園(運営は公益財団法人なので公務員ではない)の事例ですが、大学新卒者の初任給として196,000円、昇給は年1回、賞与は年2回というデータがあります。このほかに、扶養・住宅・通勤などの諸手当がつくようです。

また、大学新卒採用後10 年(32 才)のモデルケースとして、「年収約500万円(通勤手当以外の各種手当・賞与を含む)」とあります。このモデルだけを見れば、年齢に対しての年収は、非常に多いとはいえませんが、ある程度の水準にあるといえるでしょう。ただし、同じように公立で運営を外部に委託している施設でも、地方ではやや少なくなると考えられます。

私立の施設では、経営状態がさまざまであることに加え、採用形態も大きく異なるため、一概には言いにくく、募集時によく確認することが必要です。

動物飼育員の求人

パソコンを操作する

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動物飼育員の採用は、欠員が生じたときのみ、不定期的に行われる傾向です。募集情報は、一般的な求人サイトにも掲載されています。施設自体が地域に根ざしていることから、地域のハローワークを通じて募集が行われることもあります。

また、施設(または経営主体の会社)のオフィシャルサイトに掲載されることが多いです。採用情報のページが常設されていない施設も多く、ブログやお知らせに混在していることも多いので、オフィシャルサイトをこまめに、よく確認することが必要です。

出典:
厚労省(動物由来感染症)
東京動物園協会
平成28年度 公益財団法人 東京動物園協会 職員募集要項

瀧本博史
【監修者】転職コンサルタント・心理カウンセラー・著者瀧本博史

国家資格2級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー。キャリアの専門家として就職指導や職業訓練校、大学講師、ハローワークや公共機関等の相談員歴29年。心理カウンセラーとして心の問題もケアする。著書複数。NHK総合の就活ドラマも監修。

著書:
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