経営コンサルタントになるにはどうする?仕事内容と求められる知識

経営コンサルタントとは

データをもとに打ち合わせをする男性

(出典) photo-ac.com

経営コンサルタントは、企業などの相談を受けて経営状態を分析し、経営強化のための提案やアドバイスを行う職業です。

コンサルタントを名乗るための資格や統一的な基準はないため、一口に経営コンサルタントといってもさまざまなタイプが存在します。

例えば、コンサルティングに特化した企業である「コンサルティングファーム」でコンサルタントとして教育を受けて活躍する人から、会計士・税理士などの業務を発展させて経営に関するコンサルティングを行う人など、所属組織やバックグラウンドは千差万別です。

特定の業界に精通したビジネスパーソンが、自身の経験をもとに個人事業に近い規模でコンサルティングを請け負うケースもあります。

ここでは、コンサルティングファームで活躍する経営コンサルタントを中心に紹介します。

仕事内容

コンサルティングファームには、経営戦略策定やM&Aなど企業の命運を左右するような意思決定に携わる戦略系ファームのほか、人事戦略や会計・法務・IT導入など企業経営の一部分に特化したファームなどもあり、それぞれ得意とする分野を持っています。

また、医療・飲食・サービス業など特定業種のクライアントを得意とし、その業種について経営戦略の決定から新商品の開発提案まで一貫して受任することで、強みを発揮するファームもあるでしょう。

就職や転職の人気ランキングで見かけることが多いのは外資系の戦略系ファームで、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイン・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング、A.T.カーニー、ローランド・ベルガーなど、一度は耳にしたことがあるような有名ファームがランキング上位に並びます。

戦略系コンサルティングファームで働く経営コンサルタントは、案件ごとにチームを組んで働くのが一般的です。

クライアント企業から依頼を受けると、ファームは自社のコンサルタントの中から案件に応じて適任者を数名選びます。さらに、クライアント企業からもメンバーが加わり、経営コンサルタントとプロジェクトチームを組んで、目的達成までともに業務を遂行するのです。

契約期間中、チームに所属するコンサルタントは、クライアント企業に常駐して経営会議に参加することがありますが、クライアントが多国籍企業の場合には諸外国の責任者と折衝するため、業務時間は不規則になる場合もあります。さらに、期限内に目的を達成するために、プロジェクト中は忙しくなることが多いようです。

ただし、数カ月にわたるプロジェクトの後には長期の休みを取得できることも多く、集中して働き、集中して休むというメリハリのある業務スタイルであるといえます。

このような戦略系コンサルティングファームの中で、競争力を求められるのが外資系のファームです。実力主義が徹底しており、「UP or OUT」(出世するか、退社するか)という思想を掲げる会社も存在します。

戦略系以外のコンサルティングファームについては、必ずしもチームで動くとは限らず、プロジェクトの忙しさもある程度は緩和されるようです。また、国内系のコンサルティングファームでは「UP or OUT」のような過激な社内競争はあまりありません。

キャリアパス

多くのコンサルティングファームでは、いわゆる一般社員として資料収集や分析を担当する「ジュニアアソシエイト」などの役職からスタートします。各プロジェクトで経験と実績を積み上げ、「プリンシパル」や「パートナー」などの経営層を目指すといったコースが用意されているのが一般的です。

しかし、戦略系のコンサルティングファーム、とりわけ外資系のファームでは、実力主義によって長年にわたり勤め上げられるコンサルタントは多くありません。

そこで定番のキャリアパスとなるのが、経営コンサルタントとして培った知見を生かして、事業会社に転職するケースです。転職先は、ナショナルブランドの大企業からベンチャー企業まで多岐にわたり、経営コンサルタントの経験は転職市場で需要が高い経歴といえます。

ベンチャー企業の中には、戦略系コンサルティングファーム出身者を採用することで事業を拡大させようと考える企業も存在し、役員などの高待遇で迎えられることもあります。

一部の外資系の戦略系ファームでは、歴代OB・OGの多くが転職や起業で成功しており、そのつながりで転職先を見つけるといったこともあるようです。

経営コンサルタントになるには

たくさんの本と男性

(出典) photo-ac.com

経営コンサルタントになるための決まった資格などはなく、基本的には自ら「経営コンサルタント」と名乗ってしまえば、その時点で経営コンサルタントになれるといえます。

ただし、大企業をクライアントに持つような戦略系コンサルティングファームとなると、そう簡単にはいきません。担当する業界や業務に関する高度な専門知識のほか、分析力・論理的思考力・プレゼンテーション能力・語学力まで幅広い能力を求められます。

その要求レベルも非常に高度で、大企業をクライアントに抱える職務の性質上、コンサルタント自身も同レベルの事業を展開する企業に勤めていた経験がなければ、クライアントと同じ土俵で話すことは困難です。

したがって、新卒で採用されるコンサルタントは多くありません。その上、数少ない新卒採用者も国内外の一流大学・大学院出身者が大半を占め、非常に狭き門であるといえます。

なお、戦略系コンサルティングファームに入社する際、有利になるかもしれない学位として「MBA(経営学修士号)」が挙げられます。しかし、そのMBAも国内外の一流大学院のものでなければ、意味を持たない可能性があるでしょう。

外資系や大手の戦略系コンサルティングファーム以外への就職に役立つかもしれない資格としては、企業の経営状態を分析し経営アドバイスを行う能力があることを証明する国家資格「中小企業診断士」があります。

中小企業診断士は、独立開業するためには重要な資格ですが、コンサルタントになるために必須の資格ではありません。類似した民間資格に「経営士」というものもあります。

また、会計や労務・法務などを得意分野とするファームでは、会計士・弁護士・社会保険労務士の資格があると加点要素になる可能性があります。

いずれにしろ、コンサルティングファームに就職するための資格取得は重要ではないというのが、コンサルタント経験者の多くの意見です。戦略系のファームではその傾向が一段と強いようです。

一流大学卒以外の人が戦略系コンサルティングファームで働きたいという場合は、ひとまず新卒で大手事業会社に入社し、専門的知見を蓄えた上で、中途採用を狙うのが現実的な方法かもしれません。

経営コンサルタントのやりがい

握手をする二人

(出典) photo-ac.com

経営コンサルタントは、企業と深く関係する仕事です。経営陣や企業の責任者と話をする機会も多く、コンサルティングに求めるレベルは高くなります。経営コンサルタントを続けていくと、どんなやりがいがあるのか見ていきましょう。

問題解決後に達成感を味わえる

経営コンサルタントが解決する悩みは、幅広いカテゴリーにわたります。企業によって、問題点はそれぞれ異なります。個別に相談を受けながら、何が問題なのかを導き出し、改善に向けた道筋を作っていくのが経営コンサルタントの仕事内容です。

経費が多く利益が上がりにくいといった経済的な問題から、従業員の意識改革にいたるまで、多くの課題を解決します。

それぞれの問題に対して、適切なアドバイスや解決方法を提示することで企業は変わっていくでしょう。多くの人間が在籍する企業を変えるという作業は、難しいものです。問題が解決したときの達成感は、大きなものになるはずです。

多くの人間が関わる「企業」のコンサルティングは、一筋縄ではいきません。問題解決が難しいからこそ、達成したときの喜びも大きくなるのです。

困っている会社の役に立てる

経営コンサルタントは、経営者の悩みを解決する仕事です。企業は、経営に何らかの問題を感じたときに、専門家であるコンサルタントに相談することが多いでしょう。困っている経営者の役に立てるのは、専門的なアドバイスができる経営コンサルタントならではの特徴です。

経営コンサルタントは、営業の効率化や従業員の定着率など、さまざまな問題についてアドバイスします。経営者から感謝の言葉をもらう機会も多いでしょう。

アドバイスによって経営状態の改善が見られれば、経営者だけでなく企業で働く従業員に対しても重要な役割を果たしたことになります。事業がうまくいくと、従業員の待遇改善や定着率にも大きな影響を与えるためです。「多くの人の役に立てた」という気持ちは、仕事をしていく上で大きなやりがいにつながるでしょう。

経営コンサルタントの求人傾向

デスクワークする女性

(出典) photo-ac.com

戦略系コンサルティングファームでは、そのほかのファームのコンサルタントとしての実務経験のほか、事業会社での経営企画経験などが応募資格になっているケースが多いようです。投資会社や会計事務所での経験を挙げているケースも見られます。

戦略系以外のファームには、各ファームの得意分野の職種を現職とし、「特筆すべき成果」を挙げることを応募資格としている求人がありました。また、戦略系以外のファームでも、コンサルタント経験者は有利なようです。

求人の給与情報から集計した経営コンサルタントの年収帯

※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

経営コンサルタントの求人の給与情報から、経営コンサルタントの年収帯を独自に集計しました。以上のグラフの通り、500万円台が約15%と最多で、続いて600万円台が約14%、700万円台が約13%となっています。

日本人の平均年収は男性が532万円、女性が293万円、男女を合わせると433万円(2020年分「民間給与実態統計調査」より)であり、経営コンサルタントという職種は、平均的な給与水準よりも高い職業であると類推できます。

高年収のイメージが強い経営コンサルタントとしては、低めの印象です。これは、中小規模あるいは個人経営規模のコンサルティング会社も相当数求人を出していることによると思われます。

一方で、年収800万円台から1,000万円台の年収が全体の約45%も記載されており、これはほかの職種に比べ高額の年収を得る人がかなり多いことを示していると思われます。

ただし、経営コンサルタントの給与は高額になればなるほど年収非公開で募集され、求人票の年収分布には現れないようです。「プリンシパル」や「パートナー」まで上り詰めると、企業にもよりますが、年収は数千万円から数億円となるケースもあるようです。

出典:
一般社団法人 日本経営協会
一般社団法人 中小企業診断協会「中小企業診断士試験」