プラントエンジニアになるには?専門分野の種類と業界の魅力を紹介

プラントエンジニアとは

作業員の男性

(出典) photo-ac.com

プラントエンジニアとは、プラントの設計・建設から保守までの業務に携わる技術者のことを指します。プラントとは、石油やガスなどのエネルギーをはじめ、化学製品や医薬品、製鉄、発電といった社会・経済を根底で支えるものを製造する、いわゆる「工場」と呼ばれる設備です。プラントには、そこで製造されるものによってさまざまな分野があり、分野ごとに設備は大きく異なります。

プラントエンジニアリング企業の種類

プラントエンジニアの勤務先となるプラントエンジニアリング企業には、プラントの企画・設計・調達・建設工事・施工監理・保守などの一連の業務を一括して行う会社もあれば、それらの工程を部分的に請け負うサービスを提供する会社もあります。

また、エネルギーや化学分野の専業エンジニアリング企業のほか、次のような企業もプラントエンジニアリング企業です。

  • 製鉄プラントや環境プラントなどを扱う鉄鋼会社を親会社とする、鉄鋼系エンジニアリング企業
  • 環境・発電・産業プラント、社会インフラ系のエンジニアリング企業
  • 造船・重機・重電会社を親会社とする、造船・重機・重電系エンジニアリング企業

このように、さまざまな企業がそれぞれ得意とする技術領域で事業を展開しています。

プラントエンジニアリング企業のビジネスモデル

プラントエンジニアリング企業の主なビジネスモデルは「EPC事業」です。EPCとは、設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)の3フェーズを指します。各社は、このEPC遂行能力をサービスとして顧客に提供することで収益を上げるのです。

設計の前段階としてFS(Feasibility Study)、実行可能調査やFEED(Front End Engineering Design)基本設計、見積もりなどの工程があります。建設の後工程にあたる試運転(Commissioning)、引き渡しも、プラントエンジニアリングにおける重要な工程です。

EPC事業は大規模なものが多く、数多くの人員が共同で作業を行います。それぞれの工程に、専門知識とスキルを持ったプラントエンジニアが必要です。機械、電気、土木、化学など、各領域の技術者が集結してプロジェクトを進めていきます。

各領域のプラントエンジニアの仕事内容

専門領域によって、プラントエンジニアの仕事内容は異なります。それぞれの領域で、プラントエンジニアはどのような仕事を担当するのでしょうか?

機械系プラントエンジニア

機械系プラントエンジニアは、プラントの基本設計・詳細設計から構築、オペレーション、メンテナンスまでを行います。機械装置の設計・開発・製作も行うことも珍しくありません。

化学系プラントエンジニア

化学系プラントエンジニアの主な仕事は、石油や鉱物などの原料から、その原料を製品化するまでのプロセスを構築することです。また、その構築したプロセスのマネジメントも行います。

電気系プラントエンジニア

電気系プラントエンジニアの主な仕事は、プラントへ電力を供給するシステムを構築することです。プラント全体を統括する制御システムなどの構築にも携わることがあります。

土木系プラントエンジニア

土木系プラントエンジニアは、プラントおよびそれに付随する港湾施設や道路などの設計・施工・監理を行います。

また、いずれの分野でも共通して、予実管理、スケジュール管理、リスク管理などのプロジェクトマネジメント業務も必要です。

プラントエンジニアに必要なスキル

設計作業をするエンジニア

(出典) photo-ac.com

プラントエンジニアには、機械・化学・電気・土木などの分野において、最低でも理工学部の学士レベルの知識は必要です。どの分野の知識が必要なのかは、携わる業務により異なります。

プラントエンジニアになるための資格は特に設けられていませんが、取得していると知識が役立つ資格はあります。中でも多くの分野で有利になる民間資格が、「機械設計技術者試験」と「建築CAD検定試験」「CAD利用技術者試験」です。

  • 機械設計技術者

日本機械設計工業会が実施する機械設計技術者試験は、安全かつ効率的な機械を経済的に設計する能力の認定試験です。1~3級の3段階に分かれており、1級と2級は実務経験を求められます。就職・転職前に3級を取得しておき、実務経験を積んで2級・1級に挑戦するとよいでしょう。

  • 建築CAD検定

建築CAD検定試験は、1993年に誕生した、日本初の建築CADに関する民間資格試験です。CADを用いて建築図面を作図する実践的な能力を証明できます。CADは図面を描く仕事に不可欠なソフトとなっているため、CAD系の資格は積極的にチャレンジするのがおすすめです。

  • CAD利用技術者試験

コンピュータ教育振興協会が認定するCAD利用技術者試験は、CADを扱える技術が備わっていることを証明できる民間資格です。2次元CADと3次元CADに分かれています。2次元CADの1級は建築・機械・トレースの3分野があるため、目指す業界に適した資格を選びましょう。

上記3つの民間資格以外に、建設機械施工技士や土木施工管理技士などの国家資格もチェックしておきましょう。

プラントエンジニアは海外勤務が多いため、語学スキルがあると有利です。TOEICでハイスコアを出していれば重宝されるでしょう。転勤先の環境に順応しやすくなるための適応力やコミュニケーション能力も求められます。

プラントエンジニアの適性

設計図を描く作業着の男性

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プラントエンジニアは他のエンジニアと異なる部分が多く、人によって向き不向きがはっきりしやすい職種です。プラントエンジニアに向いていると向いていない人の特徴を見ていきましょう。

向いている人

仕事のやりがいを重視する人は、プラントエンジニアに向いています。自分の設計した大規模なプラントが徐々に機能していき、最終的に世の中の役に立つようになるため、大きなやりがいを感じられるでしょう。「ものづくり」の醍醐味を味わえる職種です。

特に、海外でプラントエンジニアとして働く場合は、発展途上国の新規建設プロジェクトに関わることも多いでしょう。地域の経済発展に貢献し、現地の人々の生活を助けられることに対して、国内の仕事では感じられないようなやりがいを覚えるはずです。

日々新たな刺激を受けながら働きたい人も、プラントエンジニアに向いています。プラントエンジニアの仕事は多岐にわたり、同じ場所で同じ作業を繰り返す仕事ではありません。いろいろな業務にチャレンジしたい人にも適しているでしょう。

向いていない人

プラントエンジニアは海外勤務が多い職種です。海外出張手当が出るため大きく稼げる可能性がある一方、日本でのみ働きたいと考えている人には向きません。海外出張をしたくないなら、国内だけで活動している企業を選ぶ必要があります。

自分にはリーダーの資質がないと感じている人にも、プラントエンジニアは向かないでしょう。プラント内の中心的な役割を担うプラントエンジニアは、グループのリーダーとして働ける能力を求められます。指示を出したりコミュニケーションをとったりするのが苦手なら、プラントエンジニアを選ぶのは避けたほうが無難です。単なる工場勤務とは全く違う仕事であることを理解しておきましょう。

海外での大規模なプロジェクトに関わる仕事が多くあるため、専門的な工学の知識や経験、技術に加えて、英語力や体力、精神力が求められるぶん、他業界の技術者と比較して給料が高額になる場合が多いようです。

プラントエンジニアのやりがいや魅力

作業着の女性

(出典) photo-ac.com

石油・ガスなどのエネルギープラントが建設される場所は、都市部から砂漠や熱帯雨林、極寒地、海上まで、地球上のあらゆる場所に広がっています。そのため、地球全土を舞台としてプロジェクトを遂行することができるのがプラントエンジニアの魅力です。また、プラントは膨大な機器や資材によってつくりあげられる複雑で巨大な装置であるため、受注額が数千億円を超えるような、スケールの大きな仕事に関わることも可能です。

プロジェクト遂行にあたっては、世界情勢の変化による調達・建設コストの増大、機器・資材製作の手違いや輸送トラブル、顧客の要求変更、民族性・文化の違いなど、さまざまな困難が伴います。プロジェクトマネジメント技術や各分野の専門技術・知識だけでなく、ビジネスマンとしての力量が欠かせないでしょう。これらの困難を乗り越えることは、プラントエンジニアのやりがいのひとつといえます。

プラントエンジニアリング業界の現状

作業服の男性

(出典) photo-ac.com

日本のようにすでに産業が発達している国では、プラント建設の需要があまり多くありません。プラントエンジニアリング業界は「成熟産業」といわれることもあります。

プラント建設需要の高い国として挙げられるのは、石油資源が豊富な中東諸国、エネルギーの供給が安定しない東南アジア、南米諸国などの新興国です。このため、プラントエンジニアは、頻繁に海外出張へ行ったり、海外駐在員として勤務したりするケースが数多くあります。
業界としては、設備投資需要や為替、資源価格、地域の政治経済や社会情勢などの影響を受けやすいといえます。また近年では、韓国・中国などのプラントエンジニアリング企業が台頭してきており、海外案件の受注競争が激しくなってきています。

プラントエンジニアの求人傾向

作業着の男性

(出典) photo-ac.com

石油、化学、製鉄、発電など、どの分野のプラントエンジニアリング企業においても、正社員の求人が多くあります。プラントエンジニアの経験が外資系化学メーカーや電機メーカーへの転職では、歓迎される場合もあります。

求人の給与情報から集計したプラントエンジニアの年収帯

※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

プラントエンジニアの求人の給与情報から、プラントエンジニアの年収帯を独自に集計しました。以上のグラフ通り、年収600万円台がもっとも多く、約21%を占めています。続いて500万円台が約20%、700万円台が約17%となっています。日本人の平均年収が男性532万円、女性が293万円で男女を合わせると433万円(2020年度の「民間給与実態統計調査」より)なので、プラントエンジニアという職種は、平均的な給与水準よりも高い職業であると類推できます。

出典:
新日本有限責任監査法人「プラントエンジニアリング事業の特色、会計処理及び内部統制」
東洋エンジニアリング株式会社
旭化成グループ新卒採用サイト「プラントエンジニアリング」
一般社団法人 日本機械設計工業会「機械設計技術者試験」
一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)「建築CAD検定試験」
一般社団法人 コンピュータ教育振興協会(ACSP )「CAD利用技術者試験」