司法書士になるには?必要な資格と働くための条件・やりがいを紹介

司法書士の仕事内容

資料を作成する男性

(出典) photo-ac.com

司法書士とは

司法書士とは、人々の財産と権利を守り、トラブルの法的解決を専門とする職種です。法律相談を受けたり、コンサルタントのようなことを行ったりすることもあります。

 

司法書士になるには、国家試験である司法書士試験に合格するか、法務大臣の認可を受ける必要があります。

司法書士が担う役割

裁判所・検察局・法務局などに提出する書類の作成や、登記・供託の手続き、審査請求をするのが司法書士の仕事です。

 

なかでも登記関係の仕事の割合が最も高く、起業時の会社の登記、土地購入の際の登記など、日常生活と密接に関わる役割を担います。

 

業務を通して人々の権利を守り、平等な社会を実現することを目的としています。

具体的な仕事内容

司法書士は、司法書士法(総則 第1章:登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする)に基づいて仕事を行います。

第3条に示されている主な業務は下記の通りです。

  • 不動産登記、会社の登記・供託の手続き代理
  • 裁判所・検察庁・法務局への提出書類の作成
  • 簡易裁判所における訴訟・調停・和解などの代理
  • 法律相談、企業に関する法律事務を行う企業法務
  • 成年後見事務、多重債務者の救済、消費者教育

弁護士との違い

契約書をチェックする二人

(出典) photo-ac.com

弁護士と司法書士には、どのような違いがあるのでしょうか。どちらも法律に関する仕事ですが、対応できる業務には違いがあります。国家資格の違いから担当できる業務の違いまで見ていきましょう。

弁護士資格と司法書士資格の違い

「弁護士」は「司法試験」に合格した者に与えられる資格です。対して、「司法書士」の資格は法務省が行う「司法書士試験」に合格すると取得できます。

「司法試験」と「司法書士試験」は、勉強する範囲や試験の内容が大きく異なると考えておきましょう。

 

弁護士資格を取得した者は、「税理士」「弁理士」「行政書士」「社労士」「海事補佐人」としても登録が可能とされています。

一方、司法書士が同様の他業務を行う場合は、別途試験の受験と資格取得が必須です。

 

しかし、弁護士資格を保有していても、司法書士として登録はできません。

資格としては完全に異なるものです。

弁護士は法律全般の専門家

弁護士資格を所有する者は、「法律に関する知識と能力を十分に備えている」と判断されます。そのため、対応できる業務に制限がありません。

 

司法書士が行う登記や書類作成も、弁護士が対応できます。弁護士は司法書士として登録できませんが、「司法書士が行う業務全般の対応」は可能です。

 

しかし、弁護士資格を持っているからといって、法律事務の全てに精通しているわけではありません。実務上で弁護士が司法書士の業務を行うケースは少ないでしょう。

 

行政手続きや登記手続きを行う専門家は、それぞれ別に存在します。行政手続きに特化しているのは行政書士、登記手続きやその他の法律相談が可能なのが司法書士です。弁護士が請け負う業務は訴訟や刑事事件など、他の専門家では対応できない業務が多いといえます。

 

相談の内容によっては、司法書士と弁護士どちらも対応できる業務もあります。簡易な訴訟や、債務整理は司法書士の管轄となるケースも考えられるでしょう。「弁護士の方が対応できる範囲が広い」と考えるのが妥当です。

司法書士が裁判に対応できるケース

司法書士が訴訟に関して行う業務は、「裁判に発展する前の法律相談」や「法律に関する書類作成」までです。

 

しかし、「認定考査(簡裁訴訟代理等能力認定考査)」の試験に合格し、簡易裁判所での訴訟に対応する能力があると認められた場合は、代理人として手続きができます。

 

簡易裁判所が取り扱う、140万円以下の民事裁判が対象です。相談する側は、「依頼する司法書士が対応可能な裁判事務であるか」を判断することとなります。

 

一方、弁護士であれば法律事務業務に対する制限がないことから、さらに幅広い裁判事務に対応が可能です。

 

司法書士の将来性

資料作成

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司法書士の将来性は、どのように考えられているのでしょうか。書類作成が多いことから、「将来は依頼が減る可能性があるのでは?」と考える人もいます。

 

しかし、法律の専門家として得た知識は、多くの場面で生かせるはずです。業務内容から、司法書士の将来性について考えてみましょう。

自動化できない業務がある

司法書士が扱う業務には、機械によって自動化できないものが多く含まれています。相続や債務整理の相談など個別に依頼者の話を聞きながら進めていく業務は、将来も引き続き必要とされるでしょう。

 

書類作成の手続きが自動化され、専門家以外が自分で対応できるようになったとしても、司法書士の法律知識が生きる場面は多いはずです。

 

司法書士は法律系の資格のなかでも業務内容が多様で、将来性はあるといえます。特に、法務局の認定を受ける「認定司法書士」は簡易裁判所の民事事件に関わる手続きも可能です。一般的な司法書士よりも、さらに幅広く活躍できるでしょう。

 

特定分野の専門性が武器になる

法律関連の専門家は種類が多く、相談者は法律に関する内容を誰に相談するべきか悩んでいます。依頼する側は専門家ではなく、法律の知識がない一般人です。

 

司法書士は多様な業務に対応できる仕事です。さらに得意分野を作っておくことで、専門家として頼りにされる機会が増えてくるでしょう。

 

司法書士が対応可能な業務は、登記業務などの書類作成だけではありません。少額訴訟の対応や相続関連の手続き、不動産の名義変更など豊富です。何をメインに活動するかによって、将来性は変わってきます。

 

特定の分野に精通し、実績を積み重ねることで専門家としての信頼性は高まっていきます。具体的な業務内容を記載し、対応の実績を公開することで将来性も高くなるといえるでしょう。

 

ホームページや事務所の看板で「専門分野は何なのか」「具体的にどのような相談ができるのか」をはっきりさせると、ターゲットとする顧客を集めやすくなります。

司法書士になるには

ファイルを手にしている女性

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司法書士になれる人の要件

1.司法書士試験に合格した人
2.裁判所書記官や法務事務官などとしての経歴10年以上、または簡易裁判所判事副検事としての経歴5年以上で法務大臣の認可を受けた人

司法書士試験とは

願書の提出時期は5月頃です。年によって、4月下旬から願書の提出が始まることもあります。筆記試験が行われるのは、7月です。筆記試験の合格者はその後口述試験を受験することができます。口述試験は10月、合格発表は11月に行われます。

筆記試験の試験科目は憲法、民法、刑法、会社法、民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法です。口述試験の試験科目は不動産登記法、商業登記法、司法書士法となります。

法務大臣の認定を受けた司法書士とは

法務大臣の認定を受けた司法書士とは「認定司法書士」といい、通常の司法書士の業務に加え、簡易裁判所において、訴訟額が140万円を超えない請求事件の民事事件などについて代理業務も行うことができます。これを「簡裁訴訟代理等関係業務」と呼びます。

簡裁訴訟代理等関係業務の種類は下記の通りです。

  • 民事訴訟手続き
  • 訴え提起前の和解(即決和解)手続き
  • 支払督促手続き
  • 証拠保全手続き
  • 民事保全手続き
  • 民事調停手続き
  • 少額訴訟債権執行手続き及び裁判外の和解の各手続きについて代理する業務
  • 仲裁手続き及び筆界特定手続きの代理など

資格保持者が司法書士として働くためには

手帳を見る男性

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司法書士法第8条の規定により、司法書士の資格を持っている人が司法書士として働くためには、日本司法書士会連合会の司法書士名簿に、「氏名」「生年月日」「事務所の所在地」「所属する司法書士会」「その他法務省令」で定める事項の登録を受けなければなりません。

登録をする際は、事務所を設立しようとしている地域を管轄する法務局、または地方法務局の管轄区域内にある司法書士会を通じて、日本司法書士会連合会に登録申請書、資格を証明する書類を一緒に提出します。

またその際、会則第50条に則り、手数料25,000円を日本司法書士会連合会に納付しなければなりません。

 

参考:日本司法書士連合会会則 第38条・50条

司法書士経験者へのインタビュー

パソコンを手にしている男性

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スタンバイでは、実際に司法書士として働いていた男性に、「仕事のやりがい」「努力したこと」「将来性」についてインタビューを実施しました。

インタビューの対象者

男性(神奈川県在住)
実務経験年数:2年

Q1.司法書士のやりがいを教えてください

お客様と直接向き合い、悩んでいることや困っていることの相談を受け、それを解決することに自らの知識や経験を生かせることにあると思います。

 

実務の現場では試験で出題されるようなわかりやすい問題はまったくなく、全てが複雑でそれぞれの人間や権利関係が絡み合い、多くは一筋縄ではいかないような仕事です。

 

試験を突破し資格を取得したとしても、そこはスタートでしかなく、実務を経験すると同時に受験生時代以上に勉強していかなければまったく追いつけなくなってしまいます。

そんな、大変な日々の司法書士ですが、複雑な案件を解決したとき、お客様から感謝されるとき、何にも代え代えがたいやりがいを感じることができるので、その感動を味わうために日々努力し、学んでいく司法書士にやりがいを感じます。

Q2.司法書士になるために努力したことを教えてください

司法書士という資格は難関といわれていますが、これは間違いなく難関の資格のひとつであると思います。

 

資格を取得するまでに専業で1年の学習期間を費やしましたが、まず、何もわからないところから記述式に頭を痛めながら取りかかりました。

ひとつひとつの単語もわからないところから始めましたので、日々少しずつ進めていったのですが、やはり記述式の対策を一番に行うことが本試験での学習の最大のポイントだと思います。

 

必ず得点しなくてはならない民法、不動産登記法、会社法は他の受験生の誰もが得点しているので、ここで間違えてしまうと合格できません。

 

そのため、記述式からテキスト、そしてまた記述式…と何度も何度も繰り返してください。そこに全ての重点をおくべきだと思います。

Q3.司法書士の将来性についてどう思いますか?

インターネットの掲示板やブログでよく「司法書士は食えない」「生活できない」といわれていますが、正直なところ概ね間違いないと思います。

 

というのも、昨今の業界において特に専門性を持たず、とりあえず資格をとっておいたり、働くために資格を持っているという方が多く、司法書士全般の業務を行うというスタイルの司法書士はあふれんばかりにいて、過払い金請求などでは値段の下げ合い、仕事の奪い合いが常日頃起こっています。そういった司法書士の方は必ずどこかで生活できなくなる、という認識があります。

 

ですので、これからの業界において活動されていかれる方は必ずどこかに専門分野を持ってください。一見不利に思える専門分野を持つことにより、さらに仕事が広がり活動していけるでしょう。

 

求人の給与情報から集計した司法書士の年収帯

※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

司法書士の求人の給与情報から、司法書士の年収帯を独自に集計しました。以上のグラフの通り、年収400万円台が最も多く、約27%を占めています。続いて300万円台が約25%、500万円台が約14%となっています。

 

日本人の平均年収は男性で532万円、女性が293万円です。男女合わせた平均年収も433万円(令和2年分 民間給与実態統計調査より)なので、司法書士は平均的な給与をもらえる職業であると類推できます。

 

出典:
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査