歯科医師になるには時間がかかる?受験資格の取得方法と求人の傾向

歯科医師とは

歯科医の女性

(出典) photo-ac.com

歯科医師は、主に虫歯や歯周病など口腔内の疾患の治療、予防を行います。治療領域は歯だけでなく、口の中や舌、あごなども含まれます。歯科技工士や歯科衛生士、歯科助手などと協力し、チームで患者の治療にあたります。

具体的な仕事内容

歯科診療所の診療科名は、医療法により「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」の4つと定められています。

歯科

主に虫歯や歯周病の治療・予防、詰め物や入れ歯、差し歯の作製、装着、歯石・歯垢の除去などを行います。歯みがき指導や学校などの歯科検診も、歯科が行う仕事です。

小児歯科

診療所によって異なりますが、主に0歳児から高校生までの患者を対象とすることが多いようです。子どもの虫歯の治療や予防、歯並び、かみ合わせのチェック、歯みがきや食生活の指導、永久歯への生え変わりや指しゃぶりに関する相談なども行っています。小児歯科では、子どもが安心して治療を受けられるような配慮が大切です。

矯正歯科

歯並びやかみ合わせの治療を行います。ブラケットとよばれる装置を歯に装着し、少しずつ歯を動かしていくため、治療は長期にわたることが多いのが特徴です。

歯科口腔外科

切開が必要な親知らずの抜歯や、顎関節症の治療、口内の外傷や粘膜、舌の異変などを診察します。

最近では上記の診療以外に、ホワイトニングやセラミックを使った見た目の改善を行う「審美歯科」やインプラント治療などを専門にする診療所も増えてきました。また、診療を行わず、大学院などでの研究や行政機関で保健関連の業務に携わる歯科医師もいます。

歯科医師に求められる役割・将来性

歯医者の風景

(出典) photo-ac.com

歯科医師の仕事は虫歯や歯並びの治療だけではありません。近年はさまさまな需要が増え、歯科に対するニーズは高まっているといえるでしょう。

今後の日本において、歯科医師はどのような仕事や役割を果たしていくのでしょうか?歯科医師の将来性や今後の需要の変化についても解説します。

役割は口腔と全身の健康を守ること

歯科医師の役割は、歯の治療や矯正、審美歯科で行う治療を通して、患者1人1人の口腔と全身の健康を守ることです。歯と体の健康はあまり関係がないように思われますが、口腔状態と健康には密接なつながりがあります。

特に、歯周病は40歳以上の過半数がかかっているといわれており、心疾患や糖尿病、呼吸器系疾患を引き起こす恐れが指摘されているほどです。また、歯のかみ合わせが悪いとあご周辺の筋肉が緊張し、頭痛や肩こり、首の痛みにつながる恐れもあります。

虫歯を治療するだけでなく口腔の健康から全身の健康を守ることが、歯科医師には求められているといえるでしょう。

歯科医師の将来的な需要は?

巷では「歯科医院はコンビニよりも多い」ともいわれていますが、今後の歯科医師の将来はどうなるのでしょうか?日本は少子高齢化で人口が減少傾向にあり、歯科診療所患者数の総数自体は徐々に減っていくと予想されています。

一方で、2025年以降は、人口ピラミッドの中で人口が最も多い団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることから、今後は外来患者よりも訪問歯科受診を希望する患者が多くなる可能性が高いでしょう。通院が困難な患者に対する歯科医療提供をどう行っていくかが、歯科医師の生き残りの鍵となりそうです。

また、医療技術の発達と虫歯予防への啓蒙が進む中、今後は虫歯治療よりも予防治療や歯のメンテナンスの需要が高まります。頼れるホームドクターとして、時代のニーズを見据えたメニューを提供する歯科医師は将来にわたって長く活躍していけるでしょう。

歯科医師になるには

歯医者の器具

(出典) photo-ac.com

歯科医師になるには国家資格が必要です。歯科大学や歯学部で6年間学び、歯科医師国家試験に合格すると歯科医師資格を取得できます。資格取得後、1年以上の臨床研修が修了すると、歯科医師として診療に従事することができます。

近年は、歯科医師数の将来的な予測や、一部の私立大学歯学部で志願者数が減少していることなどから、歯学部の定員削減が要請されているのが現状です。偏差値を見ると国公立大学と比較して私立大学の方が入りやすい傾向があります。大学を選ぶ際は、大学別の国家試験合格率も参考にしてみましょう。

歯科医師国家試験

歯科医師国家試験は1月下旬〜2月上旬に2日間で実施され、3月に合格発表が行われます。試験には一般問題、必修問題、臨床実地問題があり、歯科医学や口腔衛生に関する知識が問われます。

厚生労働省は将来的に歯科医師が過剰になるという推計をまとめ、国家試験の合格基準見直しを進めてきました。その結果、2006年には80.8%だった合格率が、2010年には69.5%、2022年は61.6%と年々低下しています。

そのため、歯科医師国家試験専門の予備校・スクールなどで受験対策をして、試験に臨む人もいるようです。

歯科医師臨床研修マッチングプログラム

歯科医師資格取得後の臨床研修は旧制度では必修ではありませんでしたが、法律の改正により2006年から必修化されました。

歯科医師臨床研修マッチングプログラムは、研修希望者と大学病院や歯科診療所などの臨床研修施設を組み合わせるためのシステムです。研修希望者と研修施設それぞれが登録した希望順位表に基づいてコンピューターが組み合わせを決定します。研修医はそれぞれ決められた施設において指導医の下で臨床研修を行います。

歯科医師会とは

歯科医師会は歯科医師の団体で、歯科医療の発展や学術研修などに関する事業を行っています。全国組織である日本歯科医師会の下に、各都道府県や郡市区の歯科医師会があります。入会すると研修、講習会などへの参加や、歯科医療に関する学術、法律改正などの情報提供が受けられます。

歯科医師の年収

厚生労働省がまとめた「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、歯科医師の企業規模に応じた「決まって支給する現金給与額(月額)」は以下の通りです。

  • 10~99人:55万3,100円
  • 100~999人:51万3,400円
  • 1,000人以上:42万8,100円

年間賞与や特別給与を含まない場合、年収(決まって支給する現金給与額×12カ月)は、約510万~660万円になる計算です。

なお、10~99人規模で働く歯科医師の「年間賞与・その他特別給与」は54万3,300円で、賞与などを含めた年間の総収入は700万円台前半になると推測されます。

歯科医師の求人について

打ち合わせをする歯医者の二人

(出典) photo-ac.com

歯科医師は30代後半ごろから開業する割合が増えていきますが、それまでは勤務医として働き、経験を積む人が多いようです。中には独立開業支援制度のある医院もあります。矯正歯科や小児歯科などでは、各学会の認定医、専門医が歓迎されるようです。

歯科医師の求人は、常勤や非常勤、時短勤務、アルバイト、パートなど、さまざまな雇用形態で募集がされているため、育児中の女性も復帰しやすい職業といえるでしょう。

出典:
医療法 第6条の6
医療法施行令 第3条の2・1項2条
標榜診療科名の現状と経緯について-厚生労働省
歯科医師国家試験の施行について-厚生労働省
第115回歯科医師国家試験の合格発表について-厚生労働省
歯科医師臨床研修制度-厚生労働省
歯科医師臨床研修マッチングプログラム-一般財団法人 歯科医療振興財団
日本歯科医師会
第20回医療経済実態調査-厚生労働省
歯科医師需給問題を取り巻く状況-厚生労働省