スポーツライターになるには経験が必要?経験者に努力の仕方を教わる

スポーツライターとは

タイピングする手元

(出典) photo-ac.com

新聞や雑誌、Webメディアなどに掲載する、スポーツ関連の記事を書く仕事です。試合や大会の観戦、選手への取材やインタビューなどを行い、それをもとに記事を執筆します。分かりやすく読みやすい文章を書くことはもちろん、読者を引きつける魅力的な記事を書けるスキルが求められます。

そのためには、試合内容や選手のコンディションを注意深く観察、分析する力や、選手のコメントを的確に引き出す取材力が欠かせません。

また、普段からさまざまな試合を観戦したり、最新の情報や知識を身につけるためにスポーツ関連のニュースや記事に目を通したりと、日々の積み重ねも求められる仕事です。

スポーツライターになるには

手帳に記入する女性

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スポーツライターになるために資格は必要ありません。フリーランスで働く人も多いため、未経験でもスポーツライターとして記事を書くことはできます。ただ、新聞や雑誌、Webメディアなどに採用される記事を書くには、取材や執筆の経験が必要となってくるでしょう。そのため、スポーツ新聞やスポーツ専門雑誌などの記者や編集者を経験したあと、独立してフリーランスのスポーツライターとして仕事をする人が多いようです。

まずは大学卒業後、新聞社や通信社、出版社などへの就職を目指すのが一般的な方法といえます。応募にあたって学部や学科は不問ですが、新聞社や出版社への就職は人気が高く狭き門です。マスコミ学を勉強する、インターンやアルバイトで仕事を経験しておくなど、就職に向けて早くから準備をする人も少なくありません。

一部企業や中途採用などでは部門や雑誌ごとに募集しているケースもあり、採用後すぐにスポーツメディアの記者や編集者として仕事をすることもできます。しかし、通常は会社が配属先を決定するため、スポーツライターを目指して入社しても、スポーツ以外のジャンルや編集者・記者以外の職種を経験する人は多いでしょう。

違う分野からスタートした場合、さまざまな仕事をこなしながらスポーツ部門への異動を目指すことになります。ジャンルは異なっても、取材や記事作成、編集、校正・校閲など、新聞や出版物作成に関わる一連の業務は重要な経験です。

新聞社、通信社の運動部やスポーツ新聞、スポーツ専門雑誌で記者や編集者として経験を積んだあとは、スポーツライターとして独立することも可能です。フリーランスとして仕事ができるよう、在職中に人脈を築いておく人もいます。

未経験からスポーツライターを目指す人は、まずは試合の見どころや感想などを記事にして、ブログなどで発信してみるとよいでしょう。未経験OKのWebメディアやクラウドソーシングサービスで発注されている記事制作など、経験がなくても応募ができる仕事はあります。

まずは記事を発信し、さまざまな人に読んでもらうことで、次の仕事につながる可能性も出てくるでしょう。独学が厳しいと感じるなら、スポーツ関連の専門学校やライター養成講座などで学ぶ、プロライターが主催する養成講座に参加してライティングや取材・インタビューのスキルを身につけるという方法もひとつの手です。

スポーツライターの仕事内容

スポーツライターは、新聞社や出版社、Webメディア運営会社などから依頼を受け、企画内容に沿って仕事を進めます。試合や大会の観戦、選手、監督、コーチなどへの取材やインタビューを行い、そこで得られた情報をもとに記事を執筆するのが一般的な流れです。

スポーツライターには、野球やサッカー、テニス、ゴルフなど、それぞれ得意分野を持って仕事をする人が多いようです。スポーツチームのオフィシャルライターとして契約し、専属で記事を書くライターもいます。

取材やインタビューには、事前の情報収集など入念な準備が欠かせません。限られた時間で読者が知りたい情報を的確に聞き出すスキルも求められます。そのために、普段から選手やチーム関係者とコミュニケーションを取っておく姿勢が必要です。

スポーツライターに必要なスキル

知名度が高く、活躍しているスポーツライターは、スポーツメディアの記者や編集者出身が多く、スポーツに関して深い知識を持っています。自身が競技に打ち込んだ経験を持っていることも多いようです。

また、選手やチームと信頼関係を築き、取材やインタビューで選手の内面に迫る「深い話」を聞き出す力に長けています。新聞や雑誌などに多くの記事を寄稿し、連載を持つなどスポーツライターとして活躍するためには、各スポーツに関する知識や経験、高いコミュニケーション能力、読み手を意識した企画や切り口によって記事を作成できる力が必要です。

著名なスポーツライターはホームページやブログで情報を発信したり、数多くの書籍を執筆したりと多様な活動をしています。有名スポーツライターのセミナーや講座、講演会なども開催されています。

これからスポーツライターを目指したい人にとっては、先人の姿勢や考え方、取材のノウハウなどは大いに参考になるでしょう。

また、種目によっては海外での取材や外国人選手にインタビューする機会もあるため、語学力があると情報収集や仕事の幅も広がります。英語をはじめ、外国語のスキルは磨いておくに越したことはないでしょう。

スポーツライターの年収

お札と通帳と電卓

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スポーツライターはフリーランスで働く人が多いため、年収は個人によってさまざまです。賃金構造基本統計調査(令和3年)によると、スポーツライターを含む「著述家・記者・編集者」の平均年収は、500万円程度となっています。

スポーツライターの主な収入源は新聞や雑誌、Webメディアなどに掲載する記事の原稿料です。原稿料は一般的にWebメディアより新聞、雑誌の方が高い傾向があります。

その他にも書籍の執筆による印税収入や、著名なスポーツライターの場合は講演料などの収入もありますが、こうした収入が得られるのはごく一部のライターに限られています。ほとんどのスポーツライターは原稿料のみの収入になるため、定期的な執筆依頼がない場合は、スポーツ以外にもさまざまなジャンルの記事を執筆し、収入を得ることが多いようです。

スポーツライター経験者へのインタビュー

手帳に書き込む男性

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スタンバイでは、実際にスポーツライターとして働いていた人に、「仕事のやりがい」「努力したこと」「将来性」についてインタビューを実施しました。

インタビューの対象者

  • 男性(東京都在住)
  • 実務経験年数:5年以上

Q1.スポーツライターのやりがいを教えてください

自分の「やる気」と「探究心」さえあれば、あらゆるスポーツに幅広く触れることができます。あとは少しの取材力と文章力が必要ですが、これらは書いていくうちにあとから身につけていくことができるはずです。

私は学生時代から運動部に所属してひとつのスポーツに打ち込みましたが、この仕事に就いてからは野球やサッカーなどプロスポーツをはじめ、様々なオリンピックスポーツにも長く関わり、大きな大会や、それこそ五輪本大会やパラリンピックなど国際的な舞台を踏みました。

自分の目で最も近いところから見て、その感動を多くの人に臨場感たっぷりに伝える文章を書き続けることは喜びです。またスポーツの世界にどっぷりと浸かりながらも、俯瞰的にその魅力を伝えることに誇りを感じます。

Q2.スポーツライターになるために努力したことを教えてください

会社に入るために、最も苦慮したことは英語力です。まったく自信がなかったのですが、毎日のように図書館に通って様々な英字新聞を読み続け、文章の構成や、英単語の使い方を学びました。また海外の英語ニュースサイトを読みあさり、特殊な表現をノートに書きとめ続けました。学生時代はあまり勉強をした記憶がありませんが、それでもこの作業だけは自分の将来のためと思って粘り強く続けたという自負はあります。

また、なるべく多くのスポーツに興味を持ち、自分の仕事の幅を広げたいと思い、スポーツニュースやスポーツ新聞をなるべくきちんと毎日見て、自分なりのスポーツの見方を探求しました。新聞記事の書き方や取材の仕方にもこうした日々が役立ったと思います。

Q3.スポーツライターの将来性についてどう思いますか?

自分はスーツを着て営業に出かけたり、大きなお金を扱う仕事を面白いとは思わず、趣味を仕事にしたいとずっと思っていました。スポーツという、いわゆる「娯楽」を自分の生業とできたことで、自分を殺さずに毎日を送ることができていると考えています。同じように感じている同僚も多いことでしょう。

一方で仕事に手を抜くことも簡単ですが、それは「こだわり」や「誇り」を捨てた「仕事への向き合い方」になってしまうと思います。スポーツがなくなることも、スポーツが悪になる世の中になることも考えられません。将来性という意味で考えれば、未来永劫なくなることのない職場ということです。だからこそ決めごとや譲れないプライドを持って仕事に臨まなければ、読者にも絶対に伝わらず、必ずその地位は奪われるシビアな職業でもあります。

スポーツライターの仕事の受注

パソコンを操作する

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スポーツライターは記者や編集者が独立して始めることが多いため、これまでの人脈を生かして新聞社や出版社から直接依頼を受けたり、紹介によって仕事を請け負ったりすることが多いようです。また、自ら記事や企画を持ち込んで売り込みをするケースもあります。自身のホームページやブログなどで実績をアピールし、記事を発信するなどして仕事の依頼につなげることも必要になってきます。

スポーツ専門サイトなどを運営する企業が、Webサイトでスポーツライターを募集することもあります。中には未経験者が応募できるものもありますが、実績がある方が採用されやすいでしょう。

近年ではクラウドソーシングサービスを使った仕事の依頼はよく見かけるものの、スポーツライターに関しては他のジャンルに比べて少ないかもしれません。スポーツ系メディアの編集者やディレクターとのコネクションは、やはり受注にあたって重要でしょう。しっかりと基礎を学べる職場で働いて人脈を作るのが、有名メディアでも通用するプロスポーツライターになる近道といえそうです。

出典:
木崎伸也氏インタビュー記事