和菓子職人になるには・仕事内容・給料・全国の求人

和菓子職人の仕事内容は?

和菓子のイメージ

和菓子とは、日本で伝統的に作られ、賞味されてきたお菓子です。せんべいや豆菓子のような身近で気軽なものから、茶席で供される練り切りのようなかしこまったものまで、種類はさまざまです。

一般的に、「職人」といわれる人たちが作る和菓子は、茶席で供されたり、贈答品として挨拶やお祝いに使われたりといった、いわゆる高級菓子でしょう。こういったお菓子では、味わいや見た目の美しさはもちろん、季節感が非常に重視されます。また、茶会であればその趣向に、挨拶やお祝いであればその名目に、いかにふさわしいかも重要です。お菓子を選んだり注文したりするのはお客さまですが、どのような場で賞味されるのかに応じて、和菓子職人として相談に乗ったりアドバイスをしたりということもあるでしょう。技術や知識以外にも、茶道や節句、四季折々の植物についての知識など、日本の文化に対する教養も重要になる仕事です。

季節ごとの行事に食べる和菓子の中には、1年のうち数日間しか作らないようなものもあります。お菓子の形や色にも意味があり、それをひとつひとつ習得するには時間が必要です。「下積みだけで10年」といわれるのも、それほど大げさな表現ではありません。工芸品を作るような繊細な技術力と集中力が必要です。

一方で、和菓子に使用される食材は、あずきなどの豆類、小麦粉やもち米などの穀類、砂糖といった重量のあるものが多く、業務用のパッケージとなると1袋で数十キログラムになることも少なくありません。材料を洗う・蒸す・煮こぼすといった水を多く使う作業や、生地を練る・混ぜるといった作業など、「力仕事」の側面が大いにあります。家庭のお菓子作りとは違って一度に扱う量が多いため、手首や腰などに負担がかかりやすいようです。

和菓子店では、開店の数時間前から準備や仕込みが始まり、閉店後も片づけや翌日の仕込みを行うことが多く、勤務時間は長い傾向です。個人経営のお店では、曜日による定休日がある場合が多いです。祝日が定休の曜日と重なることがありますが、祝日は来店者が多いので営業し、翌日を休日とすることが多いようです。

和菓子工場などではシフト勤務となり、勤務の時間帯や休日は不規則な一方で、勤務時間の長さは安定している傾向です。工場勤務では、さまざまな工程のうちのひとつを担当するので、担当する工程を変えながら経験を積んでいくことが多いようです。

どの職場でも、食品を扱う職業として高い衛生管理意識が必須です。和菓子職人は、体力面も技術や知識の習得も大変ではありますが、日本の文化や人々の暮らしの節目に欠かせない仕事です。

和菓子職人になるには?

特別な資格は必要ありませんが、技術の習得の難しさから、誰でも簡単になれる職業ではありません。

和菓子店や甘味処は、従業員数が10人に満たないごく小規模な経営が大半です。家族で経営してきたが、職人の高齢化や後継者がいないために廃業していく店も増えているといいます。若い人に技術を継承したいと願う店や、経験年数を問わず職人を募集する店もあるので、直接訪ねて修業を願い出るのも一つの方法でしょう。ただし、いつ和菓子職人の実務に関われるかはわかりません。長期間、清掃や調理器具の手入れ、販売業務などをこなしながら見習いをすることも考えられます。

近年は、専門学校(製菓学校や料理学校の製菓コース)や短期大学など、学校で基本的な知識や技術を身につけてから就業する人も多いようです。材料の配合、混ぜ合わせる順番やタイミング、加熱の温度や時間など、わずかな条件の違いでできあがりが大きく異なる調理を、経験や勘といった「感覚」ではなく、科学的な「理論」として学べるのが、専門学校などの利点でしょう。

また、卒業後に即戦力として就職できるようなカリキュラムを用意している専門学校も多くあります。実際に即戦力になれるかは、就職先や個人の資質によるところが大きいですが、基本的な知識と技術がすでに身についている人材を求めて、学校を通じて採用を行うお店や企業もあります。卒業後の進路についてのサポートがあるのは、学校に通う大きなメリットといえます。

大学を卒業したあとや、社会人になってから和菓子職人をめざす人もいます。夜間のコースや社会人向けコースを設けている専門学校もあるので、めざすことは十分に可能です。

下積みをする職場が決まった場合、立ち仕事や力仕事が多く、仕込みなどで朝が早いことからも、業務に慣れない新人のうちは体力勝負になることが予想されます。現場では、手取り足取り教えてくれない可能性もあります。上司や先輩から厳しい言葉を投げられることもあるでしょう。ある程度若いほうが周囲も受け入れやすく、本人もやりやすいのは事実です。なかには年齢を重ねていても、対人スキルや技術を習得する要領など、それまでに積んだ社会人経験を強みにできる人もいるでしょう。

女性の和菓子職人は、割合としては少ないです。厳しい立ち仕事や力仕事を男性と同じようにこなすには負担が大きいことも理由の一つといえます。女性にとって働きやすい環境とは言いにくいですが、それでも和菓子を作ることに情熱を持って仕事をする女性の職人もいます。簡単ではないでしょうが、和菓子作りの現場に女性が増えていけば、そういった環境を少しずつでも変えていくことはできるかもしれません。技術を身につけていることは前提ですが、女性和菓子職人自身が自分で作業場やお店を持って、和菓子づくりのワークショップやイベント出展など、既存のお店ではなかなかできない試みにチャレンジしている例もあります。

最近は、従来の和菓子店や甘味処とは違った、日本茶やほうじ茶などに合わせた和菓子や和の食材を使ったスイーツを提供する「和カフェ」といわれるような形態の飲食店も多くなっています。伝統的な和菓子とは異なりますが、提供するお菓子やメニューの自由度は高く、未経験や経験の少ない人にも和菓子業界に足を踏み入れやすいといえます。

あるとよい資格は?

和菓子職人の業務自体には、資格は必要ありません。調理師免許も不要です。ただし、「製菓衛生師」や「菓子製造技能士」は、就職や転職の際に一定の知識や技能の証明となったり、開業する場合に必要になったりと、取得していることが望ましい資格です。

製菓衛生師は国家資格で、お菓子の製造技術や知識のほか、公衆衛生や衛生管理といった「食の安全」に軸をおいています。試験は都道府県知事によって行われます。受験資格は以下の二つを満たしていることです。

(1)義務教育を修了している(または学校教育法で同等と見なされている)者
(2)都道府県知事の指定する製菓衛師養成施設(製菓学校など)において1年以上製菓衛生師として必要な知識や技能を修得した者、または、2年以上菓子製造業に従事した者

製菓衛生師の資格を取得していると、開業する場合など、食品を取り扱う施設で必ず必要となる「食品衛生責任者」に、講習なしでなることもできます。

菓子製造技能士は技能検定制度による国家資格で、お菓子の製造に必要とされる技能の習得に軸をおいています。試験は都道府県知事によって行われます。和菓子、洋菓子に分かれていて、それぞれ1級と2級があります。学科試験のほか、実技試験が課されます。学歴・訓練歴によりますが基本的に1級の受験には7年以上、2級は2年以上の実務経験が受験資格となります。

和菓子職人の求人は?

和菓子店は、家族経営的な規模で営業していることが多く、従業員10人未満のお店が大半です。このような規模の職場では、充実した福利厚生は望めない場合が多いのは事実です。

下積みを終えるのに10年かかるともいわれる業界なので、製菓学校などで基本を習得していても、実際に職場に入れば昔ながらの見習い修業といった側面が強くなる可能性も大いにあります。体力的な負担や待遇などを理由に、修業の道なかばでやめていく人もいるため、欠員の募集は不定期的に行われることが多いです。

求人情報は、さまざまな求人サイトなどでも見つけることができます。近年は、たいていの企業や店舗にオフィシャルサイトで採用情報などを見られるようになっていますが、小さな和菓子店では、オフィシャルサイトをもっていない場合もしばしばあります。店頭の貼り紙や、知人の紹介といった昔ながらの方法で求人が行われることもあるでしょう。製菓専門学校などを通じて求人が行われる場合もあります。

※文中に記載の各種数値は、2017年5月時点のものになります。

出典:
製菓衛生士(厚労省)
公益社団法人日本食品衛生協会(食品衛生責任者について)
菓子製造技能士(厚労省)
和菓子産業の現況(農畜産業振興機構)