予備校講師になるには・仕事内容と年収・全国の求人

予備校講師とは

先生の後姿と生徒

(出典) photo-ac.com

「予備校」の定義はあいまいですが、大きくは「入学試験や資格試験の合格をめざす人に知識を提供し、指導を行う教育機関」といえます。予備校講師は、生徒たちが試験に合格できるよう、指導を行います。

予備校にはいくつかの種類がありますが、一般的なのは大学等の受験のための「進学予備校」でしょう。進学予備校のなかには医学、美術、音楽、体育など、専門性の高い大学・学部の受験に特化しているところもあります。

ほかにも、高卒者と同等の学力の認定を受けるための「高卒認定(旧大検)予備校」、資格や各種試験合格のための「資格・試験予備校」などがあります。資格・試験予備校には、司法試験合格をめざす講座や、警察官・消防官になるための講座などがあり、内容は多様です。

予備校講師の仕事は、かつては大きな教室でたくさんの生徒を前にマイクを使用して行う「一斉授業」が一般的でした。近年は、少子化による生徒数の減少や、競合校との差別化のために、「個別・少人数指導」や「オンライン講義」なども増えており、指導スタイルは多様化しています。

認可と無認可

予備校には、学校教育法で定められた基準を満たし、都道府県の認可を受けた認可校と、認可を受けていない無認可校があります。どちらが良い、悪いということはありません。認可を受けていなくても、指導に定評のある予備校はあります。認可基準にとらわれない指導を提供するためにあえて認可を受けない予備校もあります。

予備校講師の職を探す場合は、だれを対象にどんな規模・方針で指導を行っているか、運営母体はどこか、経営状態は問題ないかなどの情報を総合的に見る必要があるでしょう。

認可を受けていない予備校では、生徒は、通学定期券の対象にならないなど「学生としての扱い」を受けられない場合があります。

予備校と学習塾・進学塾との違い

「入学試験や資格試験の合格をめざす人に知識を提供し、指導を行う教育機関」には学習塾・進学塾もあてはまります。予備校と塾の違いは何でしょうか。明確な差異は「認可の仕組みの有無」といえるでしょう。予備校には認可校がありますが、塾には認可の仕組み自体がありません。

一般的に、

予備校は高校生・高卒生、塾は小学生・中学生が対象
予備校は試験合格が目的、塾は学力アップ
予備校は大規模で都市型、塾は小規模で地域型
など、認識はさまざまのようです。しかしこれらはあくまでイメージで、明確な基準はありません。実際には、小学生コースを設ける予備校も、入試合格を目的としている塾もあります。「講師」としての採用情報を探す場合、塾か予備校かというよりは、対象となる生徒はどの年代で、どんな指導方針で何を教えるのかをよく確認することが重要といえます。

予備校講師の年収

黒板に文字を書く生徒と先生

(出典) photo-ac.com

予備校講師は、年単位での契約や、授業1コマ単位での業務委託契約、アルバイト契約が多く、大手予備校でも講師としての正社員の求人はあまりありません。平均年収は380万円程度と、それほど多くはありませんが、一部の人気講師の年収は、1,000万円から実力に応じてその2倍、3倍以上という例もあるようです。

業務委託契約やアルバイト契約で80〜90分程度の授業1コマに対し数千円という講師も多くいます。任されるコマが少ないと、収入を確保するために複数の予備校を掛け持ちしなければならない場合もあります。

一般的な講師はもちろん、人気講師であっても契約更新の保証はなく、安定した職業とはいえません。少子化の影響で生徒数が減少しているため、予備校間の競争激化は必至です。講師の質がより問われて、指導力のない講師は淘汰されていく可能性が高いでしょう。

予備校講師になるには

先生と生徒

(出典) photo-ac.com

教員免許などの特別な資格は不要です。ただし、一定の指導経験は必須となるでしょう。十分な指導経験がない場合は、比較的経験が少なくても指導のしやすい家庭教師などで経験を積むことが必要です。4年制大学卒業は必須の条件になることが多いです。採用試験は、予備校によってさまざまですが、履歴書・職務経歴書の書類審査、筆記試験、模擬授業、面接といった流れが多いでしょう。

私立難関大学専門コースや、国公立大学専門コースなど、生徒がめざすレベルや大学の種類に応じた特別なコースを設置している予備校もあります。このような難易度の高いコースを担当する講師には、同等の一流大学を卒業していることや、レベルの高い学生を指導できる知識、難関試験に精通していることなど、求められるレベルが段違いに高くなります。

近年は、少子化の影響や、個々の生徒に合わせたきめ細かな指導へのニーズなどから、小中学生対象のコースを設けたり、少人数のクラスや個別指導を行ったりする予備校も増加しています。そのため、十分な知識は大前提で、どのような指導スタイル(集団、少人数、個別など)経験があるかも問われるでしょう。いろいろな指導スタイルに対応できることが評価されるとは限らず、ある指導スタイル限定で豊富な経験を積んでいることが高く評価される場合もあるでしょう。

予備校講師は「試験に合格するための勉強法や問題を解くコツの専門家」という側面も期待されています。この期待に応えるには、勉強法、問題の解き方、試験時間の配分、最新の試験傾向といった「合格するための戦略」の研究は欠かせません。

一方で、「理解できた」という感動や、その科目のおもしろさを予備校講師から教わったという人もいます。分からなかったことが分かるようになる喜びを知っていること、その喜びを伝えたいと思えることも、予備校講師に必要な資質かもしれません。

予備校講師経験者の口コミ

生徒と先生

(出典) photo-ac.com

現役予備校講師、予備校講師経験者にアンケートを実施。予備校講師の仕事の口コミ・評判を集めました。

予備校講師のやりがいを教えてください

Y.U.さん (男性 / 愛知県)
予備校講師 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

たくさんの生徒がやってきて無事に合格をして進学をしていったときの笑顔を見ることがやりがいです。合格をしていくと子供だけでなく保護者の方も本当にほっとしたという表情をします。この表情を見ていると、この表情を見ることがやりがいになります。

また、自分が教えたことが入試に出題をされると、読み通りになりうれしくなります。受験問題はやみくもに出題をされているのではなく、一定の規則に従って出題をされていることが多いです。それぞれの学校において癖のようなものもあるので、癖を読みながら予想をしていた問題が出るととてもうれしいです。最初はなかなか分からなかったのですが経験を積んでいくとこうした試験問題の流れを読むことができます。

Y.K.さん (男性 / 兵庫県)
予備校講師 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

予備校講師のやりがいは、生徒の成績が上がることの一言に尽きます。

どれだけ面白い授業や、気の利いた雑談で生徒の気を引いたとしても、それが生徒の成績向上や志望校合格に繋がらなければ生徒にとってはムダな時間を過ごしたことになります。

日々のテストやプリント作成には膨大な時間がかかってしまいますが、それでも時間をかけた分だけ生徒の成績向上に繋がってくれるのであれば予備校講師としては冥利に尽きるというものです。

大学受験や浪人することの苦しさは、大学受験の経験者であれば誰でも知っています。予備校の生徒が感じている苦しさを理解して、また、理解した上でやはり勉強を頑張ってもらうしかないという難しい立場だからこそ、予備校講師は面白いのだと思います。

予備校講師になるために努力したこと資格が必要な場合、合格するために努力したこと

参考書やノート

(出典) photo-ac.com

Y.U.さん (男性 / 愛知県)
予備校講師 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

この仕事に就くまでにまず受験に関する知識を入れました。元々学習塾でアルバイトをしていた経験がありますが、本格的に指導をするとなると受験のプロとしての知識が必要になります。この知識を得るために勉強をしました。また、受験校が全国に及んでしまうので、全国にはどのような学校があるのか、どの程度の偏差値があれば合格をすることができるのかを勉強しました。

受験に関する知識は日々変化していきます。そのため入社の時の面接で質問をされても良いように常に最新の情報を仕入れておきました。また、サービス業でもあるので、話し方や電話応対といったような基本的に社会人が身につけなければいけないことも身につけました。

Y.K.さん (男性 / 兵庫県)
予備校講師 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

予備校講師になるために特別な資格は必要なく、学校の先生のように教員免許が必要ということはありません。

ですが、その分だけ予備校講師には教科の専門知識や大学の知識、あるいは生徒の成績向上に向けた熱意が求められます。予備校講師でエースと呼ばれるような存在はやはり知識や熱意に飛び抜けたものがありました。

そのため、私も予備校講師になるために改めて大学受験の問題集や過去問を解くなどして教科の知識を最新のものに更新するという努力をしました。それでもやはり、私に任されるクラスというのはレベルとしては中の下で、どちらかというと勉強に苦しんでいる生徒を補助するような立場でした。

予備校講師の将来性についてどう思いますか?

先生と生徒

(出典) photo-ac.com

Y.U.さん (男性 / 愛知県)
予備校講師 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

予備校の将来性で見込まれているのは、利用をする人が増加傾向にあるということです。少子化といわれていますが、大学受験をする人は増えているので、これからも比較的安定して稼ぐことができます。

一方で悪い点としては変動が大きいということです。予備校が生徒や保護者から選択される要因には受験における合格率が大きく影響をしています。受験に合格をする人が少なければ生徒の数が少なくなるので、そのまま経営に直結することになります。指導力の高い先生を引き抜くといったようなことも起こっているので、そういった指導力の高い先生がいるのかいないのかも大きく影響します。

でも、合格をした子供のうれしそうな笑顔を見ることができるのは何にも代えられない良い点です。

Y.K.さん (男性 / 兵庫県)
予備校講師 勤続年数5年以上 (職業 : 会社員)

少子高齢化が進む世の中ですので、予備校講師の将来性は明るいとも暗いともいえると思います。明るい点、良い点としては予備校講師も少数精鋭化が進んで、人気や実力のある講師は給与や安定性ともに有望なのではないかと思います。

一方、暗い点、悪い点としては少子高齢化が進み大学の統廃合が続くことによって予備校自体の需要も縮小していくことになると思います。授業も講師が生徒の前に立って行うというスタイルだけではなく、事前に撮影された映像を生徒が見て、講師は質問に答えるという形式に置き換えられていく傾向があります。こうなると、予備校講師の役割というのも小さなものとなっていくため、実力のない者にとってはあまり将来を望めない職業かもしれません。