取引先に転職しても大丈夫?取引先への転職を希望する際の注意点とは

会社員として多くの取引先と日常的に関わっている人は、取引先からスカウトされる場合も少なくありません。所属先の企業を辞めて、取引先に転職するのは問題ないのでしょうか?取引先に転職するメリット・デメリットや、成功のポイントなどを解説します。

取引先への転職はあり?

履歴書とペン

(出典) pixta.jp

ビジネスパーソンとして優秀な人は、取引先から「うちで働いてほしい」といったスカウトを受けることもあります。取引先の方が自社に比べて雇用条件が良ければ、転職したいと考える人もいるでしょう。

しかし一方で、取引先への転職はトラブルの原因になると考える人も少なくありません。実際のところは、どうなのでしょうか?

問題があるとされる理由

取引先から引き抜きのオファーがあった場合に、所属企業とのトラブルを避けるため、固辞する人は少なくありません。

実際、企業によっては自社の技術・ノウハウが、離職した社員を通じて漏れてしまうことを恐れ、転職を阻止しようとするところもあります。

全く異なる業界であれば、企業側も問題にしないケースもあります。しかし、同じ業界の取引先への転職に関しては、トラブルに発展する可能性は少なからずあるでしょう。所属企業の引き留めを振り切っても転職を目指すならば、相応の覚悟が必要です。

就業規則をチェック

取引先への転職により、問題・トラブルが発生する可能性はあるものの、本来はどの企業に就職・転職をするかは個人の自由です。

日本国憲法において「職業選択の自由」は保障されているため、たとえ取引先の企業が対象であっても、転職がNGなわけではありません。

ただし、所属企業が就業規則において、いわゆる「競業避止義務」に関する記載をしている可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。

競業避止義務契約の有効性・妥当性については、さまざまな考え方があり、取引先への転職が競業避止義務違反に当たるかどうかは議論の余地があります。

しかし、取引先に転職をする際には、機密情報を持ち出さないようにするのはもちろん、転職前の所属企業に迷惑をかけないように取り計らう必要があります。

出典:日本国憲法 第22条|e-Gov法令検索

出典:人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書(平成25年3月)|経済産業省

取引先へ転職するメリット・デメリット

男女のビジネスパーソン

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取引先からスカウトを受けた場合、より待遇の良い企業で働ける可能性がある一方で、転職前の企業と関わる際に気まずい思いをすることもあるでしょう。

本格的に取引先への転職を検討するならば、メリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。

メリット

取引先に転職をする場合、即戦力としてすぐに活躍しやすい環境で働けるので、収入アップにつながる可能性が高いでしょう。

事実、引き抜きを受ける人材は、相手方が経験・スキルを評価して転職をオファーするケースが大半なので、新たな職場でも活躍する傾向にあります。

また、取引先が関連業界なら、業界の知識を新たに学ぶ必要もほとんどなく、スムーズに業務に入れるのもメリットです。

デメリット

転職により取引先の企業に移った場合、取引などで前の職場の社員と顔を合わせる機会も考えられるので、気まずい思いをする可能性があります。人によっては、仕事がしづらいと感じるでしょう。

また、取引先に抱いていたイメージと、実際の職場環境が異なるケースも考えられます。収入アップは実現できても、前の職場より仕事が忙しくなることもあり、ライフスタイルが大きく変わる可能性も想定しなければいけません。

転職を後悔しないように、事前に取引先の情報をよく調べておく必要があります。

取引先へ転職する際の面接対策

面接の様子

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取引先に転職をする際にも、面接対策を徹底することが大事です。面接対策の基本と、取引先への転職ならではのポイントを見ていきましょう。

基本の対策はしっかり押さえる

一般的な転職面接では、まず面接担当者がアイスブレイクを通じて、応募者の緊張をほぐすところからスタートします。簡単な雑談をした後、応募者は自己紹介を促されるので、きちんと答えられるようにしておきましょう。

自分の強み・転職後に提供できる価値などに関しては、後の自己PRで話せばよいので、自己紹介では自分の経歴を簡単に紹介します。

さらに、転職を考えた理由・志望動機に関する質問をされるケースが多いので、分かりやすく伝えられるように準備しておきましょう。

最後に自己PRを求められたら、転職先の企業でどのように活躍できるか説明します。自分の強みがどのように転職先で生かせるか、論理的に説明することが大事です。

志望動機は取引先であることを生かす

取引先に転職をする場合、前職で取引先の関係であったことを、志望動機に生かすのがおすすめです。

取引先の関係を通じて、転職先企業に興味を持ったことや、どのような点に魅力を感じていたかなど、具体的に説明できると説得力が増します。

過剰なアピールは逆効果になる可能性があるので注意は必要ですが、うまく志望動機に盛り込めれば、面接担当者に良い印象を与えられるでしょう。

現職の不満を言わない

面接の際に現職の不満を語ってしまう人もいますが、転職希望先がどこであっても、仕事の愚痴・批判などは避ける必要があります。

特に取引先の企業に転職を目指す場合、応募先の企業にとっては、得意先やお世話になっている企業を悪く言われていることになるため、面接担当者は良い印象を抱かないでしょう。

所属企業とは無関係の企業に転職を目指す場合よりも、慎重な態度が求められます。

転職を成功させるスムーズな退職のコツ

退職届を書く

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取引先への転職を成功させるには、退職の仕方も重視しなければいけません。退職を巡ってトラブルにならないように、十分注意する必要があります。

取引先への転職であることを伝える

基本的に転職をする際には、離職する企業に転職先を伝える必要はありません。たとえ尋ねられたとしても、詳細は伏せておくのが一般的です。

しかし、取引先に転職をする場合は、いずれ元の企業に分かってしまう可能性が高いため、初めから伝えておいた方が無難でしょう。

企業によっては、就業規則に競業避止義務に関する記載をしている場合があり、取引先への転職が判明すると問題になる可能性もあります。

事前に取引先への転職であることを明かし、業務上の機密・独自の技術などを取引先に明かさないことを、きちんと伝えておく必要があるでしょう。

仕事・引き継ぎはしっかりと

取引先への転職に限らず、退職までに引き継ぎをしっかりと終わらせておくことが大事です。人によっては、転職先が決まったことに安心し、仕事に身が入らなかったり、業務がおざなりになったりするケースは珍しくありません。

これまで働いてきた企業に迷惑をかけないためにも、どの業務を誰に引き継ぐのか明確にした上で、可能な限り早めに必要な事柄を伝えるようにしましょう。余裕を持って、引き継ぎのスケジュールを設定することが大事です。

きちんとあいさつをしておく

退職の日までに、お世話になった人や同僚にあいさつをしておき、取引先にも転職の旨を伝えておく必要があります。

仕事の都合などで直接顔を合わせられない人に対しては、メールでのあいさつでも構いませんが、お世話になった人に対しては、直接感謝の言葉を伝えるようにしましょう。

直接会うと気まずい思いをする人や、顔を合わせづらい相手に対しても、できるだけ声をかけるべきです。しかし、どうしても難しい場合は、メールの一斉送信などであいさつを済ませる方法もあります。

取引先への転職に関するQ&A

考え事をする男性

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取引先への転職に関して、多くの人が疑問・不安に感じる点を解説します。転職を引き留められた場合の対応や、転職の際に注意すべきポイントなどを押さえておきましょう。

転職を引き留められたらどうする?

所属企業から転職を引き留められた場合には、しっかりと辞める意思を示すようにしましょう。

上司・同僚などに、引き留めの可能性を見いだされると、何度も思い直すように説得される可能性もあります。退職のタイミングや引き継ぎに影響が出る可能性もあるので、明確に辞める旨を伝えるようにしましょう。

退職理由に関して詳しく話す必要はありませんが、できるだけ前向きな理由にすることが大切です。

転職先で注意することはある?

取引先に転職をする場合、現職での実績を評価されて入社する傾向があるので、相応の成果を上げる覚悟が必要です。周囲から活躍を期待される場合も多く、思うように結果を出せなければ、居心地が悪くなってしまう恐れもあります。

転職を決める前に、先方が求めている経験・スキルなどを確認し、十分に満たせるか客観的に評価してみましょう。その上で、転職後にしっかりと活躍できるのか、慎重に判断する必要があります。

取引先への転職を断ることは可能?

転職のオファーを出してきた取引先が、自分の働きたい企業ではなかった場合、断り方に注意しなければいけません。オファーを断ることは可能ですが、今後の関係性を考えて、波風を立てないように配慮する必要があります。

声をかけてくれたことに対する感謝をしっかり伝えた上で、転職の意思がないことを誠実に伝えるのが大切です。ただし、将来的に転職を望む可能性がある場合は、その際に前向きに検討する旨を伝えておくのがよいでしょう。

転職先がどこであっても誠実な対応を

お辞儀をするビジネスパーソン

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「取引先への転職はNG」と考えている人も少なくありませんが、法令上は何ら問題のある行為ではありません。ただし、所属企業が就業規則に、競業避止義務に関する記載をしている場合もあるので、きちんと確認しておく必要があります。

実際に転職をする際には、一般的な転職活動と同様に面接対策をしておきましょう。転職が決まったならば、仕事の引き継ぎをきちんと終わらせ、周りへのあいさつを欠かさないことも大事です。

離職する企業はもちろん、転職先の企業にも迷惑をかけないように配慮しなければいけません。

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