試用期間であっても、仕事が合わず辞めたいと感じるケースがあります。退職の手続きは、どのように進めればよいのでしょうか?切り出し方や、主な理由・例文を紹介します。試用期間中に退職を決めることの、メリット・デメリットも確認しましょう。
試用期間中に退職はできる?
試用期間中に仕事を辞めたくなった場合、退職は許されるのでしょうか?本採用後との違いはあるのか、概要を解説します。
試用期間中でも退職は可能
試用期間中であっても、本採用後と同じように退職は可能です。無期雇用であれば2週間以上前に退職の意思を示し、有期雇用であればやむを得ない事情があれば退職できます(民法628条)。
会社との合意があれば理由や期間を問わず退職できるため、円満退職を目指しましょう。
適性や相性を探るために試用期間を設けている企業もあり、「仕事内容や雰囲気が合わない」と申し出れば退職を認めてもらえる可能性もあります。
即日退職は難しいケースも
試用期間中といっても、簡単に退職できるわけではありません。原則、ルールは本採用後と同じです。会社側の都合によっては、即日退職できないケースもあるでしょう。
しかし、労働者と会社の合意があれば即日退職は可能です。試用期間中の新人を無理に引き留め、2週間だけ出勤させるメリットはほとんどないため、人手不足の会社でなければ認めてもらえる可能性は高いでしょう。
会社の都合や、有期雇用契約で「やむを得ない事情」と判断できない場合は、退職を引き留められる場合もあります。
試用期間中に退職するメリット
試用期間中に退職を決めると、メリットもあります。本採用まで待たず、早く退職するメリットとは何なのでしょうか?主な内容を紹介します。
自分に合う仕事を早く探せる
合わない仕事や職場で長く働いたとしても、今後のキャリアにつながらない可能性があります。早く決断すれば、その分自分に合う仕事を見つけやすくなるでしょう。
明らかに合わないと分かる仕事や、職場に大きな問題がある場合は、試用期間中に退職を決めても支障はありません。
何度も転職を繰り返しているのでなければ、転職活動への影響も少ないでしょう。1~2回の失敗は誰にでもあるものと考え、環境を変えるのもおすすめです。
第二新卒枠での採用が期待できる
新卒入社から3年未満で転職をする場合、第二新卒枠での採用が期待できます。第二新卒は、社会人経験が浅い若者向けに設けられている経験者採用枠です。
第二新卒枠には、同じように経験の浅い社会人が応募するため、経験がほとんどないと悩む必要はありません。
数日~数カ月程度で退職を決める場合、第二新卒よりも経験が浅いとして、新卒枠で応募できるケースもあります。若いうちであれば、たとえ試用期間内で辞めたとしても求人が多いため、過度な心配はいらないでしょう。
試用期間中に退職するデメリット
試用期間中に退職してしまうと、いくつかのデメリットがあります。短期間で退職するデメリットを把握しておきましょう。
早期離職と判断される
試用期間は、主に3~6カ月程度の設定が一般的です。期間が短いため、早期離職と判断される可能性があります。
早期離職は、転職活動においてマイナスの印象を与えます。試用期間内に退職したと伝えると、「次も同じように辞めるのではないか」と採用担当者に不安を感じさせてしまうでしょう。
試用期間中は、指導に割く時間やトラブル時の対処を含めて、周囲に負担がかかるものです。仕事を覚える前に辞めてしまう可能性が高いと判断されれば、採用担当者も慎重になります。
何らかの事情があれば考慮されますが、ある程度は転職活動に影響を与えると考えておきましょう。
退職へのハードルが下がるリスクがある
短期間で退職を決めると、次も同じように決断が早くなる可能性があります。あまりにも決断が早いと、ちょっとしたことで辞める癖がついてしまうかもしれません。
長く勤めれば合う仕事であっても、見逃すリスクもあります。最初のうちは仕事に慣れていないだけで、コツをつかめば楽しくなることもあるでしょう。
退職を決める前に、本当に耐えられないほどの問題なのか考えなければなりません。転職によって解決するのかどうかも、しっかり検討しましょう。
試用期間中に退職する際の切り出し方
退職の際は、会社のルールに従って手続きを進めなければなりません。どのように切り出し、手続きを進めるのか、一般的な方法を紹介します。
上司に退職の相談をする
試用期間中に退職したいときは、まず上司に申し出ましょう。一般的には、直属の上司への相談が基本です。
入社したばかりで誰に相談すればよいか分からないときは、部署の責任者や指導担当の社員に確認してみましょう。
上司に相談するときは、退職したい旨と理由を伝えます。短期間での退職は引き留められる可能性も高いため、どうしても退職したい場合は強い意思が必要です。
どうしても勤務が続けられない状況であると話し、退職を認めてもらいましょう。
退職届を記入して提出する
試用期間中であっても、会社のルールを確認した上で退職届を提出します。会社側から書類を渡されたときは、フォーマットに従って記入しましょう。
退職届は、退職の意思を示す書類としても役立ちます。退職届を受け取ってもらえない場合は、メールやFAXなど送信日が分かる形で提出すると、退職の意思を示せます。郵送での提出も可能です。
無期雇用であれば、退職の意思を示した上で2週間以上経過すると、雇用契約が終了します。
試用期間中に退職を申し出る際の理由と例文
試用期間中に退職を申し出ると、会社側は「慣れていないだけ」と捉える可能性もあります。どうしても退職したいときは、勤務が続けられないことと明確な退職日を告げるなど、引き留められないよう工夫しましょう。主な理由と例文を紹介します。
仕事内容や環境にミスマッチがある
実際に仕事をしてみると、適性や相性の問題が判明するケースがあります。どうしても合わないのであれば、試用期間中に申し出て退職をした方がよいかもしれません。
特に、面接や求人情報との違いがある場合、会社側も納得しやすいでしょう。ミスマッチがあった場合の例文を紹介します。
【例文】
急なことで申し訳ありませんが、退職について相談させてください。○カ月頑張ってみましたが、仕事内容が思っていたものと異なり、これ以上続けることは難しいと感じております。
面接の際○○の作業はないと伺っており何度か相談はしていたのですが、配置換えも難しいようですので、○日で退職させていただけないでしょうか?
体調や体力に不安がある
仕事をしていく上で、体調や体力面に不安を感じることもあります。試用期間中に体調面で問題があったときは、正直に申し出ましょう。主な例文を紹介します。
【例文1】
予想していたよりも運搬する荷物が重く、腰に負担がかかってしまったようです。かかりつけ医にも相談したのですが、状態が悪化しているようで、これ以上の勤務は難しいと診断されました。
突然で申し訳ありませんが、できれば○日で退職させてください。
【例文2】
1カ月業務に携わってみて、立ち仕事が多く体力的に勤務が難しいと感じました。試用期間中の判断となり申し訳ないのですが、○日で退職させてください。
会社の雰囲気が合わない
雰囲気や社風が合わず、職場になじめない場合も退職の理由になります。人間関係や雰囲気については理由をぼかした方が、トラブルを起こす心配がありません。
理由を伝えるときは、「自分自身に原因がある」「企業研究が足りなかった」として、相手に責任がないことを伝えるのもよいでしょう。
【例文】
試用期間はまだ終わっていないのですが、退職したいと考えております。私自身の問題で周囲とうまくやっていけず、申し訳ないのですがこれ以上の勤務が難しい状況です。できれば、○日までで退職させてください。
試用期間中の退職に関するQ&A
試用期間中に退職する場合、給与はどうなるのでしょうか?転職活動の際、履歴書に職歴として書くべきなのかも気になるところです。気になる疑問を、Q&A方式で確認しましょう。
試用期間中の退職は履歴書に書くべき?
試用期間中であっても、雇用契約は結ばれています。特に、社会保険に加入している場合、転職先で手続きが必要です。
どこでいつまで働いていたのか、転職先にも分かってしまう可能性が高いため、履歴書には事実を書きましょう。
試用期間中に1度退職しただけで、転職ができなくなるわけではありません。やむを得ず退職しなければならなかった事情があり、説明しておきたい場合は履歴書の特記事項に書くこともできます。
試用期間中に退職勧奨を受けることはある?
試用期間中には、会社側から「本採用は難しい」として退職勧奨を受けるケースがあります。もし退職するよう打診があった場合は、理由を確認しましょう。
試用期間中であっても雇用契約は結ばれているため、無期雇用の従業員を簡単に解雇はできません。労働基準監督署や弁護士に相談すれば、適切な理由であるか判断できるでしょう。
しかし、会社側は何らかの理由で本採用が難しいと考えています。心当たりがある場合は、気持ちを切り替えて転職を検討する方が、合う職場が見つかるかもしれません。
試用期間中の退職でも給与の支払いはある?
雇用契約が結ばれているなら、働いた時間分の給与は支払われます。試用期間中であっても、請求は可能です。
たとえ短時間であっても、働いた時間分は請求する権利があります。給与支払いがいつになるかは、確認しておきましょう。
しかし、働いた期間や社会保険の加入状況によっては、給与のほとんどが社会保険料で相殺されるケースもあります。必ず手元にお金が入ってくるとは思わず、早めに転職活動を進める方がよいでしょう。
試用期間中の退職は会社との合意が大切
試用期間であっても、退職自体に問題はありません。円満に退職できるよう、合意を得ましょう。納得できる理由があれば、退職もスムーズです。
退職手続きと同時に転職活動も進めておくと、次の転職先が早く見つかります。「スタンバイ」で求人を確認し、自分に合う仕事を探しましょう。
今回、何が合わなかったのかをしっかり理解し、企業研究を重ねると失敗のリスクも低くなります。