50代の転職は難しい?成功させるためのコツとやることリスト

50代での転職を考えているなら、転職の事情と活動のポイントをきちんと理解しておきましょう。要所を押さえて行動すれば、50代でも転職を成功させることが可能です。知っておきたいポイントや仕事探しのコツを解説します。

50代の転職は厳しい?

履歴書

(出典) photo-ac.com

50代での転職は遅すぎるのでしょうか?公的なデータを参考にしながら、まずは50代転職の現状と考えられる問題を紹介します。

50代の転職の現状

厚生労働省の「2019年雇用動向調査結果」によると、男性の転職入職率は50~54歳が6.3%、55~59歳は5.3%です。20代29.4%・30代19.9%・40代12.1%に対し、50代は前半・後半合わせて11.6%と最も低くなっています。

ただし、転職者数の推移を見ると、50代で転職を検討するのが無謀とは言い切れません。総務省の「2021年労働力調査」からは、45~54歳男性の2012年における転職者数が約16万人だったのに対し、同じく2019年には約21万人まで増えていることが分かります。

2019年の男性転職者は総数が約165万人で、45~54歳は約21万人÷約165万人=約12.7%です。全体に占める割合は決して小さな数値ではありません。20~30代に比べると厳しい状況ではあるものの、まだまだチャンスはある年代だといえるでしょう。

参考:
2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概況 P15|厚生労働省
労働力調査 2021年(令和3年)平均 表15|総務省統計局

若い世代に比べて求人が少ない

厚生労働省職業安定局の調査結果を見ると、企業が中途採用において、年代別にどのような採用方針を取っているのかが分かります。

35歳未満の中途採用に関しては「積極的に採用を強化したい」が43.5%、「良い人材であれば採用したい」が52.2%と、前向きな回答をした企業が約96%に上りました。

一方で、年齢が上がるほど採用の積極性は弱まっていくことが分かります。35歳以上45歳未満の採用は「良い人材であれば採用したい」が64.1%、「積極的に採用を強化したい」は12.1%です。採用に前向きな企業は合わせて約76%です。

45歳以上については、「あまり採用は考えていない」の回答が48.9%と約半数に上りました。自社と合う人材がなかなか見つからない、ポストが空いていないといった理由が考えられるでしょう。

参考:中途採用に係る現状等について 図表19|厚生労働省職業安定局

年収が減ってしまうリスクがある

50代での転職には年収減のリスクがあります。住宅ローンの支払いや子どもの教育費など、50代は何かとお金がかかりやすい時期でもあるため、転職を検討する際は金銭的に妥協できるかどうかの検討も必要です。

厚生労働省の「上半期雇用動向調査結果の概況」には、2020年上半期における転職者の賃金変動状況が示されています。転職後に賃金が減少した人の割合は、50~54歳で34.6%・55~59歳の場合は48.9%です。

50~54歳では賃金が増えた人と減った人の割合にほとんど差はありませんが、55~59歳では減った人の割合が増えた人の2倍以上となっています。50代は転職までに時間がかかる傾向もあるため、転職に踏み切る前に収入面の対策も必要です。

参考:令和2年上半期雇用動向調査結果の概況 表8|厚生労働省

50代の転職で失敗する理由

パソコンを前に悩む中年男性

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50代の転職に失敗してしまう人には、ある程度の共通点があると考えられます。転職活動がうまく進まなくなる原因がないか、紹介する内容をもとに振り返ってみましょう。

自分の市場価値を客観的に見られない

50代の転職で失敗する理由の1つに、自身の市場価値を客観的に把握できないことが挙げられます。今の会社で通用しているスキル・経験が、他の会社でも通用するとは限りません。

これまでの経験やスキルが次の会社でも同じように評価されると考えていたり、前職での役職やキャリアがどこでも通用すると思い込んでいたりする人は、自らの価値を客観的に見られていない状態です。

今まで一度も転職したことがない場合、現在のスキルや経験を生かせるのは今の職場しかない可能性もあります。50代で転職を考える際は、自身の市場価値を客観的に捉えることが大切です。

職種や転職条件にこだわりすぎる

再就職先の職種や転職条件にこだわりすぎることも、50代転職で失敗する理由の1つです。特にプライドが高い人は、こだわりが強くなってしまうかもしれません。

「パートや派遣社員は自分にふさわしくない」「年相応の賃金や役職はもらえて当然だ」と考えていると、自ら条件を狭めてしまい、転職がうまくいかなくなるでしょう。

こだわりを持って転職先を探すのは、決して悪いことではありません。しかし、選択肢を減らしてしまう原因になる可能性もあるため、重要度が高くない条件は多少妥協する意識も必要です。

適性に合わない職種に応募する

50代になると元気に働ける期間も残り少ないと感じやすくなるため、新しいことにチャレンジしてみたいと思う人もいるでしょう。しかし、適性に合わない職種に応募しても、採用される可能性は低くなってしまいます。

ポテンシャルで採用されやすい年代は、基本的に30代前半までと考えた方がよいでしょう。40代以上のミドルエイジを採用する企業の多くは、豊富な経験を応募者に求めています。

専門性の高さやモラル・責任感があることも、転職活動時の評価を高めるポイントです。50代で転職先を探すに当たっては、経験がある職種や適性に合った職種に応募しましょう。

50代から仕事を探すコツ

パソコンを前に考える男性

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50代での転職を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。50代から仕事を探すコツを紹介します。

転職で譲れないポイントをはっきりさせる

ポジション・給与・働きやすさなど、多くの転職条件を全てかなえようとすると、転職先の選択肢が大幅に減りかねません。

妥協できる部分は妥協し、譲れないポイントをはっきりさせておくことが大切です。転職に当たる希望条件に優先順位を付ければ、選択肢の幅が広がります。

ただし、譲れない軸を給与にする場合、選択肢が大きく減ってしまうことも考えられるでしょう。応募できそうな求人の年収を調べた上で、希望収入の現実的なラインを決める必要が出てきます。

どうしても年収キープを優先するなら、他の条件は多少我慢して現職にとどまるのも1つの方法です。

スキルや経験に合った職種を選ぶ

50代の人材を採用している企業の多くは、経験豊富な即戦力を求めています。入社後も実力を存分に発揮できるよう、自らのスキルや経験に合った職種を選ぶことが重要です。

能力や実績を生かせる企業を探すためには、自分のキャリアを冷静に自己分析する必要があります。ポテンシャルや体力の面では若年層に劣る可能性が高いため、企業の求めるスキルがあることをピンポイントでアピールしましょう。

ただ、転職先の業界が未経験であっても、コミュニケーション力・マネジメント力・課題解決力といったポータブルスキルが高いことを示せれば、評価を得られる可能性があります。

雇用形態にこだわりすぎない

50代から転職先を探すコツとして、雇用形態にこだわりすぎないことも大切です。正社員として転職できそうな企業が見つからない場合は、非正規雇用で働くことも視野に入れてみましょう。

現在は多くの企業で同一労働同一賃金の導入が進んでおり、以前より派遣・契約社員といった非正規雇用の待遇が改善されつつあります。

同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の仕事内容が同じなら、賃金や待遇に格差を設けてはならないとする考え方です。厚生労働省がガイドラインを策定しており、現在は全ての企業がガイドラインに沿った取り組みを求められています。

参考:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

幅広い方法で仕事を探す

50代の求人は若い世代に比べて数が少ないのが実情です。自分に合った転職先を見つけるためには、さまざまな方法で仕事を探す必要があります。

ハローワークや求人情報誌などに加えて、転職サイト・アプリも活用しながら幅広く職探しをするのがポイントです。キャリアの中で築き上げた人脈を頼りにするのもよいでしょう。

転職サイトで企業を探す場合は、Web上の求人を効率的に検索できる「スタンバイ」を利用するのがおすすめです。豊富な求人情報が掲載されているため、50代向けの求人も数多く見つかるでしょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

50代の転職で注意したいこと

悩む中年男性

(出典) photo-ac.com

50代の転職における代表的なリスクを知っておけば、対策を立てやすくなるでしょう。主な注意点と適切な対処法を解説します。

転職活動は長期戦になりやすい

50代の転職活動は若い世代に比べ、時間がかかりやすいことを覚悟しておきましょう。中には転職先がなかなか決まらず、再就職まで半年以上かかるケースも少なくありません。

現在の会社を辞めた後に転職活動を始めると、無収入の期間が長引く懸念もあります。在籍中にできるだけ早く職探しを開始し、収入が途絶えないようにすることが安心して仕事を探すポイントです。

不安・焦りから転職を急ぐと、自分に合わない選択をしがちになります。結局は譲れない条件まで妥協することにならないよう、余裕と計画性を持って転職活動に臨みましょう。

同じポジションでの入社にこだわらない

50代の転職では、前職と同じポジションに就くのは難しいかもしれません。役職制度は社内でのキャリアの積み重ねをベースにするのが基本であり、転職者が高い役職に就くと既存社員の不満が高まりやすくなるためです。

ただ、役職が下がることで得られるメリットを理解しておけば、転職後のキャリアダウンも受け入れやすくなるでしょう。

大きなメリットとしては、プレッシャーから解放されることが挙げられます。役職の重圧がなくなると、純粋に仕事に向き合えるようになるため、やりがいを感じられるようになる可能性もあります。役職の忙しさから解放されれば、プライベートもより充実するでしょう。

50代の転職でしておきたいこと

パソコンを操作する男性

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50代の転職では、家族の状況や経験・勤務年数の長さなどから、考えたいポイントがあります。スムーズな転職を目指すためには、何を済ませておくとよいのでしょうか?

家族への相談

50代での転職は、家庭に大きな影響を与える可能性があります。収入・勤務時間・勤務地などが変わると、家族のライフスタイルやライフプランにも影響があるでしょう。

家族に何の相談もせず転職活動を続ければ、転職後にさまざまな面で家族が対応できなくなる恐れがあります。特に収入が減った場合は、家族の関係が悪化することも考えられます。

50代で転職するなら、検討の段階で家族に相談することが重要です。自分の思いをきちんと伝えて十分な理解を得た上で、転職を応援してもらえるような状況を作りましょう。

企業研究とスキルの棚卸し

スキルや経験に合った職種を選ぶことが大切な50代では、転職に当たって応募先と自分を慎重にマッチさせる必要があります。まずは徹底した企業研究から、どのような人材を求めているのか把握しましょう。

企業が欲しがっている人物像が分かったら、次に自身がその人物像に近いのかどうか分析します。実績やスキルの棚卸しを通じて、自己分析を行うことが重要です。

企業分析と自己分析の結果を照らし合わせ、採用される可能性ができるだけ高い企業に応募すれば、転職を成功に導きやすくなります。

面接での受け答えの対策

転職活動中の面接では、スキル以外に人柄もチェックされます。こだわりが強かったりプライドが高かったりする人は、面接官から扱いにくい人材だと警戒されてしまうかもしれません。

50代での転職を成功させるためには、新しい環境や人間関係でもやっていけるような柔軟性や謙虚さがあることを示すとよいでしょう。

50歳を過ぎてから転職するとなれば、新しい職場で年下が上司になる可能性が高くなります。前職で年下の社員とも円滑に業務を進めていたエピソードを伝えれば、柔軟性や謙虚さをアピールできるでしょう。

退職金の確認

50代での転職において懸念材料になりやすいのが、お金の問題です。転職で現在より収入が減ってしまう可能性があるため、経済的に困らないための計画を立てておく必要があります。

資金計画を立てるためにも、現在の職場から退職金が出るのかを確認しておきましょう。出る場合はいくらなのか、一時金と年金どちらの形でもらえるのかのチェックも必要です。

退職金の金額によっては、転職先の給与について大きく妥協できる可能性もあります。譲れない給与のラインが下がれば、転職先の選択肢も増やせるでしょう。

コツと対策をつかんで転職の準備を

ネクタイを締める男性

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50代での転職は40代までに比べて厳しくなりますが、コツをつかんでおけば十分に成功するチャンスがあります。過度なこだわりやプライドをなくした上で、自分のスキルや経験に合った職種を選ぶことが大切です。

50代転職は長期戦になりやすく、収入が下がる可能性もあるため、お金の計画も練っておく必要があります。しっかりと準備をしてから、万全の態勢で転職活動に臨みましょう。