休日出勤したのに代休が取れないのは違法?知っておくべき注意点

休日出勤後に代休を取らせてもらえなかったり、代休を強引に取得させられたりすることは、違法にならないのか気になっている人もいるでしょう。代休は、労働者が使うことができる休み方の1つです。休日出勤や代休の考え方を詳しく解説します。

休日出勤と代休の考え方

スケジュール手帳

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会社の繁忙期などに、休日出勤を頼まれることがあります。まずは、休日出勤と代休の基本的な考え方を見ていきましょう。

休日出勤した後に別の労働日に休む「代休」

会社員が休日出勤したとき、その代わりとして取得できる休みが「代休」です。代休は、有休や欠勤とは意味が異なります。

代休を取るには、休日出勤した日の「後」である必要があります。休日に労働した対価を、「代わりの休暇」や「割り増しの賃金」という形で得るのです。

会社員にとって、適度な休みを取ることは大切です。代休は、会社員が安心して働くために欠かせない制度といえます。

代休は休日出勤した労働者に認められた権利

休日出勤は休みの日に働くことなので、当然ながら予定されていた休みが減ります。「せっかくの休日が減ってしまった」と、残念に思う人もいるかもしれません。

しかし、休日出勤をした場合は、代休を取得して減ってしまった分の休みを補うことができます。

代休は休日出勤分の対価としての意味があり、会社に代休のルールが設けられている場合、その申請・取得は労働者に認められている権利といえます。

代休を取得しても割増賃金の対象になる

代休は、休日出勤をした代わりに与えられる休みです。代休を取っても、休日に働いたことに変わりはないので、割増賃金の対象となります。

法定休日に出勤した場合、割増率は「35%」です。一方で、法定外休日に出勤したときは、基本的に賃金の割り増しはありません。

しかし、法定労働時間(週40時間)を超えたときは、時間外労働分の「25%」の割増賃金が発生します。

またいずれの場合でも、深夜労働が加わると、それぞれの割増率に「25%」が加算されます。つまり、法定休日の出勤は「60%」に、法定外休日の出勤(法定労働時間超過)は「50%」の割り増しとなるのです。

休日出勤したときの代休の取得方法

記入する手元

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「代休の仕組みは分かったけど、どのように代休を取ったらよいのか分からない」という人もいるでしょう。ここでは、代休を取得する方法を紹介します。

代休は時間単位で取得もできる

オフィスで働く会社員の場合、通常は1日丸ごと休みとなることがほとんどです。場合によっては、午前中や午後だけ休む「半休」という休み方ができる会社もあります。

代休も同じように、時間区切りで取得することができるケースがあります。例えば、5時間だけ休日出勤したのであれば、代休も5時間分だけ取得するといった具合です。

代休の取り方は会社によってさまざまなので、自分が働く会社の取り決めを確認しておくことが大切です。

代休を強制取得させる会社も

中には、代休を取らずに、給料の手取り額を多くしたいと考える人もいるでしょう。35%の割増となる休日出勤は、同じ時間分を働いても賃金が高くなります。

しかし、会社から代休を取るように言われるケースもあります。「代休を強制的に取らせるのは違法ではないのか」と疑念が湧くかもしれませんが、違法ではありません。

参考:労働基準法 第35条| e-Gov法令検索

代休取得の決まりは会社により違いがある

労働基準法は、労働者の休日に関しては定めていますが、「代休のルール」にまでは干渉していません。

そのため、会社によって代休の取り方は異なります。中には、休日労働の割増賃金のみを支払い、代休は付与しないという会社もあるようです。

また、会社が代休の取得期限を設けている場合もあります。取得期限が過ぎていて取れなかったということがないように、あらかじめ代休の取得ルールを確認しておくことが大切です。

代休と振替休日の違い

業務デスクと手帳

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休みの中でも、代休と振替休日は違いが分かりにくく、意味を混同しがちです。代休と振替休日には、どのような違いがあるのでしょうか?

休日出勤日の前に休む日を決めておく「振替休日」

代休と振替休日は、一見同じように思えますが、実際には大きく異なります。代休は休日出勤した「後」に取る休日ですが、振替休日は休日出勤の「前」に取得する日を決めておくものです。

振替休日は、休日に出勤する予定があるときなどに、事前にほかの日を休日とします。例えば、日曜日に出勤する場合、あらかじめ次の火曜日を代わりの休日に設定するといった具合です。

代休と振替休日の給与には違いがある

代休と振替休日とでは、割増賃金に違いがある点が大きなポイントです。事前に代わりの休日を決める振替休日の場合、休日に働いても休日出勤の扱いにはなりません。

代休であれば35%の割増があるにもかかわらず、振替休日は所定労働日として扱われるため、割増賃金が発生しないのです。

「せっかく休日に働いたのに、割り増しされていない」と勘違いしないためにも、代休と振替休日の違いについてはよく理解しておきましょう。

休日出勤して代休がもらえないのは違法か

休暇申請

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休日出勤した分の代休を取ることが認められなかったり、休日手当をもらえなかったりすることがあります。

このようなときは違法にならないのか、疑問に思う人もいるでしょう。ここでは、よくあるケースを2つ紹介します。

休日手当が支払われないのは違法

会社の繁忙期には、休日出勤をしなければ仕事が回らないほど忙しいことがあります。事前に振替休日を決めずに、法定休日に出勤をした場合は、通常賃金に加え、割増賃金が当然支払われなければなりません。

このような場合に、割増賃金がもらえなかった場合は違法にあたります。会社側には、休日出勤させた労働者に、相応の対価を支払う義務があるのです。

労働基準法第37条では「社員に休日の労働をさせた場合、割増賃金を支払わなくてはならない」ことが定められています。

参考:労働基準法 37条| e-Gov法令検索

振替休日取得の強制は合法だが対応策も

会社側から「今週の日曜日に出勤してもらうから、どこかでその分の休みを取って」と振替休日を取るように言われるケースがあります。

「会社が振替休日の取得を強制させることは、違法にあたるのでは?」と思うかもしれませんが、このケースは合法です。

しかし、対策もあります。就業規則などに休日の振替についての決まりがないケースでは、労働者は振替休日の取得の申し出に応じなくても違法にはなりません。

休日出勤と代休を理解し気持ち良く働こう

出勤中の女性

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会社員として働いていくためには、休日出勤と代休の意味・役割をしっかりと理解することが大切です。休日に出勤した場合、代休を取得するケースは少なくありません。

しかし、労働者の意向に関係なく代休が取れなかったり、会社から代休ではなく振替休日を取るように言われたりすることもあるでしょう。

違法ではないのか気になったときは、状況をよく確認してから判断することが大切です。休日出勤や代休、振替休日の意味をしっかりと把握し、気持ち良く働きましょう。

和田雅彦
【監修者】All About 社会保険労務士/年金ガイド和田雅彦

大学卒業後、銀行勤務を経て社会保険労務士資格を取得し独立開業。上場企業をはじめ数多くの企業の人事労務管理の相談指導、給与計算業務等に携わる。また年金問題についての執筆、講演も多数。
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