休職中の転職活動は隠せる?メリットとリスク、発覚する要因も解説

休職中に転職活動を行うとき、会社や転職先に発覚するのではないかと不安になる人は多いでしょう。違法にあたるのではないかと、心配する人もいるかもしれません。休職中に転職活動を行うメリットや知られてしまう要因、リスクを解説します。

休職中の転職活動についての考え方

休職届を提出する

(出典) photo-ac.com

休職中に転職活動をしても大丈夫なのか、気になっている人は少なくないでしょう。まずは、休職と転職活動についての考え方を基本から押さえていきます。

「休職」状態の意味

「休職」という状態は、どのような理由があるにせよ、会社に籍を置いている状態です。そのため、休職の理由が解決したら会社に戻り、職場に復帰することが前提となります。

会社側としては「籍はそのままにしておくので、戻れる状態になったら元通り働いてください」という条件の下、従業員と話し合い、長期的に休みを認めているということです。

会社を欠勤すると、欠勤した分の給与は支払われませんが、休職は違います。休職の理由が病気・ケガである場合、休職中でも「給与の2/3相当」の「傷病手当金」が支払われます。

そのため、休職中であってもある程度の金銭的な補償を得ながら、心身を休ませて病気・ケガなどの回復に努めることができるのです。

休職中の転職活動そのものに違法性はない

休職は復職が前提にあるため、通常は復職のための準備を進めます。しかし、休職に至った原因などにより、復職ではなく別の会社への転職を考える人もいるでしょう。

会社から復職を期待されている状態での転職活動に、後ろめたさを感じると同時に、違法ではないのかと気になる人は多いはずです。

結論を言えば、休職中に転職活動をしても違法にはなりません。そのため、転職活動を休職中にしたからといって、罰則・罰金が発生することはなく、あくまでも個人の判断に任されます。

休職中に転職活動をするメリット

タブレットを操作する

(出典) photo-ac.com

休職中の時間を転職活動に費やすことのメリットは、どんなことが考えられるでしょうか?考えられるケースを具体的に紹介します。

自己分析に時間を費やせる

働いていると毎日時間に追われて、プライベートな時間を取ることはなかなか難しいものです。その点、休職中はゆとりがあるため、時間を有効に使うことができます。

休職中に自分自身を客観的に見つめ直し、本当の自分はどんなことが好きで何がしたいのか、なぜ休職することになったのかをじっくり考えることで、求めていた答えが見つかることもあります。

考える時間がないと、その場をやり過ごすことに慣れてしまいがちですが、改めて時間を取り自己分析をすることで、新しい自分を発見できる点は大きなメリットです。

時間の調整がしやすい

休職は一定期間会社を休めるため、通常通り働いている人よりも時間が多くある状態です。

そのため、転職活動で応募先と連絡を取りやすかったり、面接の時間に融通が利いたりなど、時間の調整をしやすいメリットがあります。

就業中の転職活動の場合、仕事と並行して行うため、応募先から電話がきても仕事中で出られないことは少なくありません。面接時間も、応募先の希望に添えないことも多いものです。

その点、休職中は時間に余裕があるので融通が利きやすく、転職活動を行いやすいといえます。

転職活動がうまくいかなくても復職の道がある

転職活動が全て自分の思い通りにいくのは、レアなケースです。一部条件が合わなかったり、面接に行ってみたらイメージと違ったり、希望の職種ではなかったりというのはよくあることです。

そのため、意気込んで転職活動してはみたものの、思ったほどうまくいかなかったということもあるでしょう。

無職であれば気持ちを切り替えて、必死に別の転職先を探さないといけないところですが、休職は元の職場に戻れるという「保険」があります。

休職中に傷病手当金も出ていれば、精神面だけでなく、経済面でもゆとりを持って日々を過ごすことができます。

 

休職中に転職活動をすることで起こり得るリスク

スマホを操作する

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休職中に転職活動することは違法ではありませんが、別のリスクがあります。ここでは、起こり得るリスクを3つ紹介します。

籍を置いている会社とトラブルになる

まず覚えておくべきことは、「休職中は会社に籍がある状態」ということです。会社には、復職を期待している人や、自分のことを心配している人がいることを念頭に置きましょう。

会社によっては、就業規則などで休職中の転職活動を禁止しているケースもあります。注意程度で済めばよいですが、規則によっては懲戒処分など厳しい罰則を受けることもあります。

休職中の転職活動にはリスクがあることを踏まえて、より慎重に行動する必要があるのです。

応募会社からネガティブな印象を持たれる

後から休職の事実が発覚するリスクを考えて、最初から提出する書類に休職中である旨を正直に書く人もいるでしょう。

しかし、応募先の会社が休職中であることを知ったときに、「なぜ休職中なのに転職しようと思っているのだろう」「病気を治療中なのにうちの会社に来て大丈夫なのか」など、ネガティブな印象を抱くことがあります。

転職先に不安な印象を与えないためにも、転職してもしっかりと働けるということを、正当性のある理由とともに伝えることが大切です。

休職を隠したことが原因で信用を失う

休職を隠したまま転職できたとしても、その事実が露見すると転職先から経歴詐称と受け取られ、信用を失ってしまう可能性があります。失った信用を取り戻すことは難しいことです。

信用を失った状態で仕事をしていくのは、精神面にも負担がかかります。周りから不信の目で見られ、会社に居づらくなることもあるでしょう。

会社によっては、内定を取り消されることもあるので、大きなリスクがあると理解しておくことが大切です。

休職中の転職活動は無理や後悔をしない方法で

資料を手にしている女性

(出典) photo-ac.com

休職中の転職活動には、リスクが伴います。そのため、自分自身が無理や後悔をしない方法で行うのがベストです。

休職中は心身の回復が最優先

休職中は、社会から切り離されているような気持ちになり、焦りを感じることもあるでしょう。時間的にもゆとりがあるため、さまざまな思いが巡り、「この先の自分の人生はどうなってしまうのだろう」と不安を感じる人もいるはずです。

しかし、不安や焦りを感じながら過ごしていても、良い答えは見つかりません。休職中は自分が好きなことをしたり、新しいことに挑戦してみたりなど、自分自身にとってプラスになるような過ごし方にシフトするのがおすすめです。

転職活動は、心身がしっかり回復してからでも遅くはありません。

転職活動の下準備を念入りに行う

休職中に時間をかけて考えた結果、復職せずに転職しようと決心することもあるでしょう。しかし、次の転職先を早く決めたいがあまりに、休職中に転職活動を本格化するのはおすすめしません。

自分の選択を実現したいのなら、どんなことでも下準備を十分に行うことが大切です。準備が不十分なまま面接に行っても、実力を十分に発揮するのは至難の業です。

それよりも、転職先が求めている人材を入念にリサーチしたり、業界や職種の情報を詳しく調べたりなど、休職中だからこそできる下準備に時間を使います。転職活動のカギとなる面接や、履歴書の対策を行うのもよいでしょう。

休職中は下準備をしっかりと行い、転職活動に備えることがポイントです。

復職か転職かよく考えて答えを出す

まずは自分が置かれている状況を、客観的に見て考えることが重要です。休職に至る理由は人によってさまざまですが、いっときの感情で転職する決断はしないことです。

休職中の時間を使って自分を見つめ直し、冷静になってから復職か転職かの判断をしましょう。転職すると決めた場合は、籍を置いている今の会社に迷惑を掛けることも認識しておく必要があります。

メリット・デメリットを両方理解した上で、自分にとってベストな答えを出しましょう。

転職活動は復職後に行うのがベター

退職届と履歴書

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休職中は時間に余裕があるので、さまざまなことを考えてしまうものです。今の状況やこれからのことを考えると、焦りを感じるときもあるでしょう。

しかし、休職中の転職活動は、発覚したときのリスクが少なくありません。社会人にとって大切な信用を失うことは、とても大きなリスクです。

本格的な転職活動は、休職を終えてから行うのがベターな選択といえます。転職活動を急ぐよりも、休職中だからこそできることに時間を使いましょう。

和田雅彦
【監修者】All About 社会保険労務士/年金ガイド和田雅彦

大学卒業後、銀行勤務を経て社会保険労務士資格を取得し独立開業。上場企業をはじめ数多くの企業の人事労務管理の相談指導、給与計算業務等に携わる。また年金問題についての執筆、講演も多数。
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