年収300万円でも慎ましい毎日を送っていれば、十分生活できます。ただ年収が上がらないままだと、将来は安心できないかもしれません。年収300万円の生活レベルや知っておきたいポイントを解説するので、年収300万円のリアルをチェックしましょう。
年収300万円は低収入?
世間一般の感覚だと、年収300万円は決して高収入とはいえない水準です。しかし改めて調査や統計に目を向け年収300万円を評価し直すと、別の側面も見えてきます。
年代によっては高めの水準
年収300万円と聞くと、低収入だと評価を下す人が大半でしょう。しかし給与所得者全体を見れば、年収300万円は決して低収入ではありません。
厚生労働省が発表している「標準労働者の年齢各歳、性、学歴別所定内給与額」という資料を元に年収を試算してみると、高卒の男性なら27歳まで、大卒の男性なら25歳までの人が年収300万円以下の給与で働いています。
ある属性に注目すれば年収300万円は低収入ですが、異なる属性に目を向ければ決して低収入とはいえなくなるのです。
参考:「標準労働者の年齢各歳、性、学歴別所定内給与額」(表番号25)|厚生労働省
給与所得者の平均は433万円
平均給与額から年収300万円の評価を検討してみましょう。「令和2年民間給与実態統計調査」によると、性別と正規・非正規の枠を超えた平均給与額は433万円です。
正規・非正規を分けて算出すると、正規社員の平均給与額は496万円で平均よりもやや高くなっています。一方、非正規社員の平均給与額は176万円で、全体の平均よりもかなり低い結果となりました。
ただ全体の平均が400万円を超えている事実を考慮すれば、年収300万円は低水準な年収といわざるを得ません。
年収300万円の手取り額
年収300万円の人の中には、年収が300万円もあるのに手元にお金が残らないと思っている人もいるでしょう。年収が300万円あったとしても、諸々のお金が天引きされており、手取り額が少なくなってしまっているためです。手取り額の詳細を解説します。
年間の手取り額は約240万円
所得税や住民税、社会保険料などの天引きを受けた後の金額が手取り額となります。年収に対する手取りの割合は、80%が一般的です。年収300万円なら約240万円が手取り額となります。
毎月受け取れる手取り額は、賞与の有無で変わってきます。賞与なしで年収300万円なら、月額の手取りは約20万円です。月収2カ月分の賞与を夏冬2回受け取っている場合には、毎月の手取りの額は約15万円となります。
年収300万円の所得税・住民税額
扶養家族がいない場合を例に、年収300万円から差し引かれる所得税と住民税の額を計算してみましょう。所得税の課税対象となる所得額は、給与収入から給与所得控除(年収300万円の場合には98万円)と所得控除を引いた額です。
所得控除には、基礎控除(48万円)や社会保険料控除などがあります。社会保険料控除を45万9,000円と仮定すると、課税所得額は108万1,000円、給料から天引きされる所得税額はその5%の5万4,050円です。
住民税も給与収入から給与所得控除と所得控除を差し引き、課税所得を求めて算出します。住民税の基礎控除は43万円なので、先ほどの例における課税所得の額は113万1,000円です。
住民税には一律10%の所得割と一律5,000円の均等割があるので、所得割が11万3,100円、均等割が5,000円となり(自治体により異なる)、天引きされる住民税の総額は11万8,100円です。
社会保険料算出には標準報酬月額を確認
給料から天引きされる社会保険料は、標準報酬月額をもとにして決まります。標準報酬月額とは、受け取る月額報酬を区切りのいい値で区分したものです。
実際の給与をもとに社会保険料を算出すると、変動する給与に合わせて毎月計算する手間が発生します。改定時にしか変動しない標準報酬月額をもとに計算すれば、面倒な計算が省ける仕組みです。
東京都で働く協会けんぽ被保険者を例にすると、年収300万円で報酬月額が25万円の場合、標準報酬月額は26万円になります。
参考:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ
社会保険料の計算方法
給与から天引きされる社会保険料には「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」などがあります。保険料を求めるときに用いる計算式は、「標準報酬月額×保険料率÷2」です。
年収300万円で報酬月額が25万円の場合、天引きされる健康保険料は1万2,753円となります。介護保険未加入の40歳未満なら、標準報酬月額の26万円に保険料率9.81%を掛けて2で割った値です。
厚生年金の保険料率は、全国一律で18.3%と決められています。年収300万円の人が支払う厚生年金保険料は、2万3,790円です。
雇用保険料は「総支給額×保険料率」の計算式で算出します。年収300万円の場合は従業員負担の保険料率は0.5%なので、納める保険料は1250円(月額)となります。
年収300万円の生活レベルは?
同じ年収300万円の人でも、実家暮らし・一人暮らし・家族ありの場合では生活実態が大きく異なります。理想とする生活のイメージが具体的にある人は、自身の状況と突き合わせながら生活レベルを確認しましょう。
独身実家暮らしは無理なく生活可能
独身で子どももなく実家で生活が可能なら、年収300万円でも余裕のある生活が可能です。家賃や水道光熱費を支払う必要がないため、貯蓄もできるでしょう。
実家暮らしでかかる費用は、外食費・通信費・交通費などです。家賃がかからないのが大きなメリットで、その分浮いたお金を趣味に費やしたり、交際費に充てたりできます。
やりくり上手でなくても、まとまった額の貯金もできるでしょう。実家に一定のお金を納めていたとしても、毎月数万円の貯金ができる程度の余裕が持てます。
一人暮らしの場合は家賃の影響大
一人暮らしでも分相応な生活を心掛ければ、年収300万円でも生活が可能です。
支出のうち大きなウェイトを占めるのが家賃です。切り詰めても4万~8万円はかかるため、負担が重くなるでしょう。それでも生活費を15万円程度まで抑えられれば、毎月数万円の貯金ができる程度の余裕は作れます。
ただ、居住するエリアによっては家賃相場が高く、負担が大きくなる可能性もあります。年収300万円で一人暮らしをしたいなら、家賃が安いエリアに住む必要があるかもしれません。
家族がいる場合は共働きなら余裕あり
結婚している年収300万円の人でも、共働きの配偶者がいれば家計に余裕が生まれます。収入源が増えて世帯年収がアップするからです。配偶者の働き方がパートやアルバイトでも、収入源が複数あれば自由になるお金も増えます。
家族がいる分広い家に住まなくてはならないため、家賃はアップします。しかし2人分の収入があれば、家賃の上昇も対応可能でしょう。
共働きでない場合には、厳しい生活が待っているといわざるを得ません。生活費を賄うのが精一杯なので、貯金をするのも難しくなるでしょう。
年収300万円で住宅ローンは組める?
年収300万円の人の中にも、「将来的にはマイホームを手に入れたい」という願望を持っている人もいるはずです。しかしマイホームの購入には、住宅ローンの借入が欠かせません。年収300万円でも住宅ローンは組めるのか解説します。
年収300万円でも借入は可能
年収が300万円でも、正社員として働いているなら住宅ローンは組めるでしょう。安定した収入があるかどうかは、ローンを組む上で重要なチェックポイントです。
住宅ローンは長期にわたって返済が必要になります。非正規雇用だといつ職を失うか分からないため、返済が滞るリスクが高いと判断され、ローンを組むのが難しくなります。
ローンが組める下限年収を定めている金融機関もありますが、たとえ年収が低くても、正社員として安定した収入を得ているなら、住宅ローンが組める可能性は十分にあるのです。
借入可能額の目安は1,500万円
住宅ローンで借り入れられる金額の相場は、年収の5~7倍です。年収300万円なら、融資を受けられる金額は借入金利や借入期間にもよりますが、1,500万~2,100万円となります。
ただし、借入可能額のぎりぎりまで融資を受けるのはおすすめできません。ぎりぎりの返済計画で家計をやりくりしていると、転職やリストラで収入が減少、またはなくなってしまったときに対応できず、ローンの返済ができなくなってしまいます。
住宅ローンを借りるなら、余裕を持って返済できる額にとどめておくと安心です。年収300万円なら1,500万円程度を目安にしましょう。
家賃によっては購入の方が得
賃貸に住んでいて毎月一定の家賃を払い続けているなら、思い切ってマイホームを購入した方が得かもしれません。家賃の額によっては、住宅ローンの返済額と大差がない可能性があります。
マイホームは資産価値がある財産で、いざとなれば売却も可能です。住む場所を借りるために家賃を払い続けるのと、財産を手にするためにローンを払うのとでは、同額の出費でも意味合いが異なります。
例えば貯蓄が300万円あり、家賃8万円の賃貸に住んでいる場合には、約2280万円の戸建て住宅が購入できると考えられます。
年収300万円では将来が不安?
年収が思ったように伸びない現実に対峙したとき、不安になるのが老後の生活です。毎日の生活さえぎりぎりの年収しかなければ、老後のための貯蓄もままなりません。年収300万円の人が直面する老後の生活を解説します。
年金受給額は毎月約12万円
生涯にわたって年収が300万円だった未婚会社員の場合、もらえる年金は月額約12万円です。年金額は「年収÷12か月×加入月数(※勤続年数×12か月)×55+国民年金」の計算式で導き出します。
年収300万円で厚生年金に40年間加入していた場合、国民年金は年額約77万7,800円なので、1年間にもらえる年金の額は「300万÷12か月÷1万×55×480か月+77万7,800円=143万7,800円」となります。月額に直すと、もらえる年金の額は約11万9,817円です。65歳未満で年金をもらっていない一定所得以下の配偶者がいると、世帯でもらえる年金額は約15万円になります。
年金だけでは生活費が赤字に
年収が300万円だった場合、年金だけでの生活は苦しいでしょう。年金受給額以上に生活費がかかる可能性が高いからです。
2020年に発行された「家計調査年報」によると、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月額13万3,146円、夫婦のみの無職世帯では月額22万4,390円です。独身なら毎月1万円強、配偶者がいるなら毎月4万円強の赤字になると計算できます。
年収300万円で会社員時代を過ごした場合、副業や投資などで資産を形成しなければ、将来的に苦しくなってしまうかもしれません。
参考:家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)|総務省
年収300万円で貯金をするコツ
年収300万円で一人暮らしをしていたり、家族を養っていたりすると、貯金は難しいかもしれません。しかしコツを身に付けて実践すれば、たとえ手取りが少なくても貯金が可能です。年収300万円で貯金をするときに押さえておきたいポイントを紹介します。
貯金の目標を決める
貯金を始めるときにまず考えたいのが、何のために貯金をするかです。目標がないと貯金に張り合いが持てず、途中で辞めてしまうでしょう。
「マイホームの頭金として500万円」「老後に趣味を満喫するために100万円」など、わくわくする目標を設定するのがおすすめです。貯金がポジティブな行為となり、継続しやすくなります。
貯金を始めて間もないときは、目標金額を低めに設定しましょう。目標が高すぎると、節約が苦しくなって断念してしまう可能性が高まります。貯金の習慣が身に付いてから、大きな目標にチャレンジするのが効果的です。
固定費を見直す
固定費とは、家賃や通信費など金額が毎月変わらない支出を指します。毎月かかる固定費を削減することは、節約効果が絶大です。
固定費を節約するときは、無理のない範囲で見直しを行いましょう。例えば携帯会社をキャリアから格安SIMに乗り換え、月々8,000円かかっていた通信費を3,000円程度まで圧縮できれば、毎月5,000円の貯金が可能です。
ただし、固定費がかかるサービスは生活に直結するため、安いという理由だけでサービスを選ぶと、利便性が損なわれる可能性があります。価格とサービス内容を天秤にかけ、納得できるサービスを選びましょう。
先取り貯蓄で確実に貯金する
貯金がなかなかできない人には、先取り貯蓄がおすすめです。先取り貯蓄とは、給与を受け取ったら一定の額を貯金に回す貯蓄方法です。
余ったお金を貯金するスタイルだと、節約がうまくいかなければ貯金できる金額が少なくなります。先取り貯蓄なら残ったお金で生活をするようになるため、節約せざるを得ない状況に自分を追い込めます。
先取り貯蓄に回す金額は、手取り収入の2割程度を目安にしましょう。年収300万円なら、毎月3万~4万円を先取り貯蓄として確保するのがおすすめです。
年収アップの方法
年収300万円の生活から抜け出したいけれど、「今の仕事が好き」「今の仕事が自分に合っている」と感じている人は、職を変えずに年収アップを目指す方法を試してみましょう。転職にチャレンジしなくても、努力次第で年収の底上げが叶います。
社内で評価される資格やスキルを身に付ける
仕事を変えずに年収アップを図るなら、資格やスキルの取得がおすすめです。社内での評価が上がり、年収アップが期待できます。
資格手当のある企業なら、対象の資格を取得するだけで、数千~数万円手取りがアップするでしょう。努力した分だけ見返りが期待できるので、目標を決めて一歩ずつ前進できる人にぴったりのアプローチです。
資格やスキルの取得は、転職にも有利に働きます。自分が属している業界で武器となる資格や、専門性の高いスキルを取得すれば、高給な仕事への転職が狙えます。
正社員登用を目指す
派遣やアルバイトとして働いているなら、今の職場で正社員登用を目指すのも年収アップの手段です。一般的に非正規雇用よりも正規雇用の方が年収が高いので、正社員に登用されれば年収を底上げできます。
勤め先企業に正社員登用制度が設けられているなら、積極的に活用しましょう。面接や筆記テストをクリアすれば、転職活動を行わずとも正社員になれる可能性があります。
正社員登用制度がない場合には、転職を検討するのも手です。実績や経験を生かせる仕事への転職にチャレンジしましょう。
転職で年収を増やすポイント
年収アップを目指すなら、思い切って転職するのも手段の1つです。元々高い給与が得られる仕事に転職できれば、最短距離で年収アップが実現できます。年収アップを目的に転職活動をするときのポイントを紹介します。
なるべく早く転職活動を始める
転職を検討しているなら、早めに行動するのがおすすめです。転職に挑む年齢が低い方が、有利に転職活動を進められる可能性が高まります。
若いうちは輝かしい実績や他人と差別化できるスキルがなくても、若さ自体がアピールポイントになります。若ければその分、時間とお金を投資して有能な人材に育てていけるからです。
もし年収アップのために転職を考えているなら、一刻も早く転職活動を始めるのが正解です。最も若いこの瞬間に転職市場に飛び出す方が、あなたのポテンシャルを高く買ってくれる企業に出会える可能性が高まります。
給与水準の高い業界を狙う
年収を上げる目的で転職を図るなら、給与水準が高い業界に狙いを絞って転職活動をしましょう。どれくらいの給与がもらえるかは、身を置く業界に左右されます。
厚生労働省が発表している「産業別月間現金給与総額」によると、2020年において事業所規模30人以上の卸売業・小売業の給与総額は32万7,000円(月額)です。一方、金融業・保険業の給与総額は54万1,200円(月額)となっています。
この他にも給与水準が高い業界には、電気・ガス・熱供給・水道業などがあります。これらの業界を狙って転職活動をすれば、目標の年収を実現できる可能性が高まるでしょう。
未経験からチャレンジできる仕事を紹介
年収を底上げしたいなら、高給が期待できる仕事への転職を検討するのもおすすめです。未経験でも比較的就きやすい仕事なら、今からでも遅くはありません。未経験からチャレンジできる高収入の仕事を紹介します。
頑張り次第では高収入を狙える「営業職」
年収アップが見込める仕事として挙げられるのが、営業職です。営業成績によって歩合給が加算されるシステムを採用している企業が多いため、頑張り次第で高給が狙えます。
営業職へ転職するメリットは、求人数が豊富なことです。さまざまな業種で募集があるため、自分に合った企業を探しやすくなっています。
営業職への転職がうまくいく人は、コミュニケーション能力に長けた人です。商談相手と会話を重ねる中で相手のニーズを的確につかめるため、希望に添った提案が可能になります。
シフトの融通が効きやすい「コールセンター」
コールセンターも高給が狙える仕事の1つです。給与の高さに加え、シフトの融通が効きやすいのも大きなメリットといえるでしょう。
カレンダー通りに働くもよし、平日にオフを作ってもよし、比較的自由な働き方をデザインできます。年収はアップさせたいけれどプライベートを犠牲にしたくない、という人におすすめです。
未経験で始めやすいのもコールセンターの仕事の魅力です。対応マニュアルが完備されている職場が多いので、お客対応の経験がなくても安心して働けます。
手に職を付けられる「ITエンジニア」
ITエンジニアも未経験から高給が期待できる仕事です。ITエンジニアとは、開発言語やプログラミング言語を使ってシステムを設計する仕事です。
ITエンジニアはスキルがないとできない仕事と思われがちですが、実際には未経験から飛び込む人も多くいます。研修や仕事の中で技術を身に付けていけば、未経験でも十分に高給がもらえる可能性があるでしょう。
未経験からITエンジニアに転職するなら、書籍やオンラインサービスを使い、最低限の知識を身に付けてから挑むと転職活動が有利になります。
安定を目指すなら年収アップが近道
若いうちの年収300万円は、決して低水準ではありません。実家暮らしや一人暮らしであれば、十分余裕のある生活が送れるでしょう。
ただし、将来的な生活の余裕を実現するには、年収300万円は十分とはいえません。資格の取得や転職などで年収アップを図らなければ、年金だけでは厳しい老後生活が待っているでしょう。
年収300万円超えを実現するために転職をするなら、「スタンバイ」の利用がおすすめです。スタンバイで高給かつ自分に合った仕事が見つかれば、財布も心も豊かになるでしょう。
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