年収600万円を目指すには?手取り額や生活水準、資産形成のコツも

年収600万円と聞いて多いほうだと感じる人もいれば、もう少し欲しいと感じる人もいるでしょう。手取り額を聞くと、意外に少ないと感じるかもしれません。年収600万円の人の生活水準や、高収入を目指せる仕事などをチェックしてみましょう。

年収600万円は高収入?

たくさんのお札

(出典) photo-ac.com

まず年収600万円の人の割合や、日本の給与所得者の平均年収から実情を探っていきましょう。

給与所得者の平均より高い

年収600万円と聞いて、平均より高いのか低いのか気になる人は多いでしょう。2020年に国税庁が行った調査によると、全年齢の年収の平均は433万円となっており、年収600万円は平均よりも高めです。

男女別に見ると、男性の平均が532万円、女性の平均が293万円と男女で平均年収に大きな開きがあります。

雇用形態別に見ると正規社員の平均年収は496万円、非正規雇用の場合の全体の平均は176万円です。

参考:令和2年民間給与実態統計調査|国税庁

年収600万円を超えるのは全体の2割

1年間を通じて働いた給与所得者5,245万人を対象にした調査によると、600万円〜700万円以下の男性の割合は9.2%、女性の割合は2.6%です。600万円超の年収がある人は全体の約2割でした。

また、日本で最も多い年間給与額は300万円〜400万円以下の人々で、割合は17.4%です。

 

<年収別の割合>

  • 401万円〜500万円以下の割合…14.6%
  • 501万円〜600万円以下の割合…10.2%
  • 601万円〜700万円以下の割合…6.5%

参考:令和2年民間給与実態統計調査|国税庁

年収600万円の手取り額と計算方法

お札と電卓

(出典) photo-ac.com

年収600万円の人は平均的な年収の人よりも多くの税金を負担します。年収600万円の人の手取り額や、負担する税金の額などをチェックしましょう。

年間の手取り額は約470万円

手取り額は扶養家族の有無・加入している保険の種類・年齢などによって微妙に変わりますが、年間で600万円の給与所得がある人の手取り額は約460〜470万円です。

30歳で扶養家族が0人の場合、年収600万円の人の月あたりの手取り額は以下になります。

  • 月収50万円(ボーナスなし)‥手取り額は約41万円
  • 月収37万5,000円(ボーナス夏冬に75万円ずつ)‥手取り額は約31万円

40歳以上になると「介護保険料」が加わるので、使えるお金はさらに少なくなるでしょう。

標準報酬月額の確認方法

標準報酬月額は、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料を計算するために用いられる仕組みです。

社会保険料は企業と従業員が折半して負担しますが、月給の額は手当の有無によって変わり、時給制の人は毎月同じ額の給与がもらえるわけではありません。

社会保険料を計算する際に、毎月の変動をいちいち計算すると手間がかかってしまうので、4~6月分の報酬額の平均を基準に標準報酬月額を導き出し、標準報酬月額に応じた保険料を納めるようにしているのです。

社会保険料の計算方法

社会保険料は、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などがあり、それぞれ保険料率が異なります。負担額は標準報酬月額に「各種保険料率」を掛け算して導き出しており、収入と保険料率によって負担額が変わってきます。

全国健康保険協会に加入している人の2022年度の保険料率は9.81%(東京都の場合)なので、標準報酬月額が50万円なら「50万円×9.81%÷2=2万4,525円」が1カ月あたりの負担額になります。事業主と労働者で保険料を折半するので、2で割ります。

厚生年金保険料率は18.3%なので、実際に負担する額は「標準報酬月額×18.3%÷2」です。

また、雇用保険料は事業主と労働者の負担割合が異なります。雇用保険料率の労働者負担は一般事業の場合で0.5%(2022年10月1日~)なので、月収50万円なら「50万円×0.5」で、負担額は2,500円です。

2022年10月1日以降は雇用保険料税率が変更になり、労働者の負担は0.5%に引き上げられました。

参考:
厚生年金保険料額表|日本年金機構
令和4年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます|協会けんぽ
令和4年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省

所得税・住民税の計算方法

所得税や住民税は「課税所得金額×税率-各種控除額」で導き出されます。課税所得金額は、給与所得から給与所得控除・基礎控除額・社会保険料控除などを除いたものです。今回は、扶養家族なしの場合の計算方法を紹介しましょう。

給与所得者は収入によって給与所得控除額が変わり、収入360~660万円以下の場合は「収入×20%+ 44万円」となります。

600万円×20%+ 44万円で、164万円の控除が受けられる仕組みです。所得税の基礎控除額は48万円で、社会保険料控除額を90万円と仮定すると「600万円-164万円(給与所得控除)-48万円(所得税基礎控除)-90万円(社会保険料控除)」で、課税所得金額は298万円になります。

所得税額を出すためには、所得税率を利用します。課税所得金額が195万円~330万円以下のときの税率は「10%」なので、控除額は9万7,500円、所得税は「298万×10%-97,500=20万500円」となります。※復興特別所得税(基準所得税額の2.1パーセント)も上乗せ。

住民税は「課税所得金額×10%+ 5,000円(均等割、自治体により異なる)」で計算できます。基礎控除額は43万円なので「303万円×10%+ 5,000=30万8,000円」となります。

年収600万円の生活水準は?

電卓と家計簿

(出典) photo-ac.com

年収600万円の人は、どのような暮らしをしているのでしょう。生活水準を知るためのヒントになる、生活費の内訳や住宅ローンなどを紹介します。

独身の場合は比較的余裕がある

独身で1人暮らしの場合、年収600万円であれば余裕のある生活が送れるでしょう。月あたりの手取り額を約31万円と仮定すると、以下のような生活費になります。

■30歳独身者生活費の内訳の一例

  • 家賃…10万円
  • 水道・光熱費…1万円
  • 通信費…1万円
  • 食費…4万円
  • 交際費…3万円
  • 趣味・娯楽費…2万円
  • 雑費…2万円
  • 合計:23万円 貯蓄:8万円

家賃は毎月出ていく固定費の中でも大きな割合を占めます。年収×20〜25%が、無理のない年間の家賃額だとされていますが、ライフスタイルなどによっても変わってくるでしょう。

子持ち世帯は余裕がないケースも

子持ち世帯の場合は、年収600万円であっても自由に使える金額は少なくなります。生活費の内訳の一例を見ていきましょう。

■30歳既婚者、妻専業主婦・子どもなし
月あたりの手取り額31万円

  • 家賃…12万円
  • 水道・光熱費…1万5,000円
  • 通信費…1万5,000円
  • 食費…5万5,000円
  • 交際費…2万円
  • 趣味・娯楽費…3万円
  • 雑費…2万5,000円
  • 合計:28万円 貯蓄:3万円

■30歳既婚者、妻専業主婦・子ども1人
月あたりの手取り額31万円(児童手当+1万円)

  • 家賃…10万円
  • 水道・光熱費…1万8,000円
  • 通信費…1万5,000円
  • 食費…7万円
  • 交際費…2万円
  • 趣味・娯楽費…2万円
  • 雑費…3万円
  • 養育費…2万円
  • 合計:27万3,000円 貯蓄:2万7,000円

家族がいることを考え、入院保険や生命保険などに加入するのであれば、支出はもう少し多くなるでしょう。

住宅ローンの借入は3,000〜3,500万円が目安

年収600万円の場合、無理のない住宅ローンの借入額は多くても3,500万円程度です。頭金・金利・借入期間などによっても変わってきますが、住宅の購入費用の目安は一般的に「年収の5〜6倍まで」とされます。

将来的に金利が上がるリスクがある変動金利で住宅ローンを組むのであれば、借入額は2,900万円程度にしておいた方がよいでしょう。無理のない返済比率は手取り額の20~25%以下とされ、返済比率は「年間のローン返済額÷年収×100」で求められます。

年収600万円の資産形成のコツ

貯蓄のイメージ

(出典) photo-ac.com

年収600万円の人は、日本の平均的な年収の人に比べれば、格段に貯蓄がしやすいはずです。しかし、人によっては全然お金が増えないと感じることもあります。資産形成のために、押さえておきたいコツをチェックしましょう。

支出を見える化してむだを減らす

生活費の内訳の一例を見ると、年収600万円だったとしても、好き勝手にお金を使っていれば貯蓄を増やすのは難しいことが分かります。

家計簿をつけて支出を「見える化」すると、むだ遣いを減らせます。スマホの家計簿アプリなどを使って、何にどれだけ使っているかをチェックしましょう。

支出がはっきりとしたらそれぞれの項目に対し、毎月いくらまで使ってよいかを決めて予算を守ればお金を貯められるはずです。

手取りの一定割合を貯蓄に回す

収支をチェックしてむだ遣いを減らすのと同時に、手取りの一定割合を貯蓄に回しましょう。年収600万円の場合、「手取り額の10~20%」を目安に貯蓄していく方法がおすすめです。

手取り31万円なら、毎月3万1,000円を目安にします。手元にあると使ってしまう人は、自動引き落としにして貯蓄用の口座に移しておくと安心です。

独身者で実家に住んでいる人は住居費にかかる割合が少なくなるので、1人暮らししている人よりも多くの貯蓄ができます。場合によっては、手取りの30%近くを無理なく貯蓄に回せるはずです。

年収600万円を目指す方法

デスクワークをしている男性

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ポイントを押さえれば、年収を伸ばしていくことは可能です。年収600万円を目指すには、どのようにすればよいのでしょうか。

スキルや資格を身に付ける

需要が大きいスキルや資格を身に付ければ、年収がアップする可能性は十分にあります。

例えば、IT業界は人材の供給が追い付かず、常に人手不足に陥っている業界です。プログラミング系やITエンジニア向けのスキルを持っていれば、収入のアップを狙えます。

ITとの直接的な関連性がない業界であったとしても、ITリテラシーは現代のビジネスマンにとってなくてはならない要素です。ITを使いこなすための知識を持っていると、現職に生かせるだけでなくキャリアアップにも役立ちます。

また、特定の資格を持っている人を対象に資格手当が支給される企業は多く、資格の取得がキャリアアップの条件になっている場合も少なくありません。

年収をアップするには、その職種や業界でどのようなスキルや資格が求められているのかを理解し、取得を目指すことが重要でしょう。

年収の高い企業や職種に転職する

最初から年収が高い企業や職種に転職すれば、年収アップが実現します。同じ職種でも、中小企業より大企業の方が給与水準が高い傾向です。

給与水準が低い企業であっても、勤続年数を重ねるにつれ年収が上がります。しかし元々の水準が低い場合は、大きな給与アップは期待できません。

現職を続けて勤続年数を増やすのも1つの方法ですが、限界を感じているのであれば転職して、今よりも条件がよい企業への入社を目指すとよいでしょう。

若いうちの方が伸び代があるので、転職が成功する可能性は高いといえます。中小企業で十分な経験を積み実績を持っているなら、大企業に採用される可能性はあるでしょう。

「スタンバイ」では年収や職種で検索条件を絞って、希望の仕事を探せます。転職を視野に入れている人は、ぜひご利用ください。

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年収600万円を目指せる仕事

デスクワークをしている男性

(出典) photo-ac.com

高収入が得られる仕事にはさまざまな種類がありますが、年収600万円を目指せる仕事には特徴があります。どのような仕事を狙えばよいのか、見ていきましょう。

社員数の多い大企業の正社員

「令和2年民間給与実態統計調査」の事業所規模別の平均給与を見ると、社員数が多い企業ほど給与水準が高いことが分かります。

従業員10人未満の事業所の平均給与は348万円ですが、従業員5,000人以上の事業所は509万円と大きな差があり、大手企業への入社を狙えば年収がアップすることは明確です。

大手企業はブランド力があるため安定して高い売り上げを確保でき、従業員が高い水準の給与をもらえます。

参考:令和2年民間給与実態統計調査|国税庁

給与水準の高い業界

「令和2年民間給与実態統計調査」の業種別の平均給与を見ると、電気・ガス・熱供給・水道業・金融業・保険業・情報通信業などの業界の平均給与が、高い傾向であると分かります。

年齢層別の平均給与を見ると、年齢が高くなるに従って平均給与も高くなっていき、男性は55~59歳が最も高い水準の給与をもらっているのです。

一方、女性は25~59歳までの格差はそれほど大きくありません。そのため、給与水準が高い企業や業界に転職した方が、年収アップのチャンスがあると考えられます。

成果主義を導入している職種

歩合制を採用している職種は、自分の成績が給与に直結します。歩合制は「固定給+歩合制」と「完全歩合制」に分けられますが、完全歩合制は業務委託契約を結んでいる場合にのみ適用される給与形態です。

事業主と雇用関係を結んでいる給与所得者の場合は、固定給+歩合制となっています。歩合制が取り入れられていることが多い職種は、不動産営業・タクシードライバー・保険営業・アパレルの販売スタッフなどです。

歩合制で働く人は、契約数や売上金額などによって固定給に歩合給が加算されているので、自分の頑張り次第で月収が多くなります。

固定給の企業で多くの実績を上げている人は、給与形態が歩合制の企業に転職すれば、給与が飛躍的に上がる可能性は十分にあるでしょう。

年収600万円は実現可能な目標

笑顔で働く男性

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年収600万円あれば、独身なら余裕のある生活ができます。貯蓄を増やすには計画的にお金を使い、収入の一定割合を貯蓄に回すなどの工夫が必要ですが、むだ遣いさえしなければ生活費には困らないはずです。

年収を増やすには給与水準が高い企業や業界への転職を目指すか、現職で経験を積み重ね勤続年数を増やしていく方法があります。大企業への転職が難しいと感じるなら、成果主義を導入している企業への転職を視野に入れるとよいでしょう。

拝野洋子
【監修者】All About 年金・社会保障ガイド拝野洋子

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