年収400万円だとどんな暮らしぶり?適正な家賃や生活などを紹介

年収が少ない人にとって、年収400万円の人の暮らしはどんなに楽だろうと思うことがあります。しかし、実態を知るとそうでもないと感じるかもしれません。年収400万円の手取り額や生活の中で使える金額について紹介します。

年収400万円の実態

封筒の中のお札

(出典) photo-ac.com

年収400万円といっても、400万円を全てもらえるわけではありません。税金や社会保険料を引かれた後の手取り額は、大体いくらになるのか見ていきましょう。

手取り額は300万円台前半

年収400万円の手取り額は約312万円です。単純に12カ月で割ると約26万円で、ボーナスをもらっている人だと月収約19.5万円(12カ月+賞与2カ月分×夏冬2回で計算)という手取り額が想定されます。

会社員か自営業か、扶養家族の有無、年齢、賞与額などによっても金額が変わるので、同じ年収でも手取り額は異なる点を押さえておきましょう。

例えば、給与月額34万円(年収408万円、賞与なし)で、30歳の独身者を例にすると、給与の手取り額は28万円前後となります。

所得税や住民税はいくら支払っているか

給与の中から引かれる税金に、所得税や住民税があります。それぞれ、下記の計算式で算出でき、所得額に応じて納税額も高くなっていくことが特徴です。

  • 所得税‥.「課税所得額×税率-税額控除額」
  • 住民税‥.「所得割額+均等割額」

所得税は、所得額から所得控除を引いた課税所得額に税率を掛けて導き出します。所得控除は、基礎控除・給与所得控除・社会保険料控除などのことです。所得税の基礎控除は48万円、住民税は43万円となります。

課税所得額が1,000円~194万9,000円の場合の税率は5%です。年収400万円で課税所得額が170万円と仮定すると、所得税は「170万円×5%=8万5,000円」となります。

住民税の所得割の税率は、所得に対して一律で10%です。住民税の基礎控除は43万円で、扶養家族の数などで税金が控除された場合は安くなります。年収400万円の場合だと住民税は独身者の場合で17万円台、夫婦2人の世帯だと14万円台程度です。

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

年収400万円は平均よりやや低い程度

国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は433万です。年収400万円なら、平均よりやや低い程度の収入を得ていることになります。

男女別の平均給与に見ると男性は532万円、女性は293万円と大きな開きがあり、男女の格差が大きいことが分かるでしょう。

年収400万円台の割合が全体の14.6%であるのに対して、最も多い割合は301万円〜400万円以下の人の17.4%となっています。調査の対象となっているのは、1年を通じて勤務した給与所得者5,245万人です。

参考:令和2年分 民間給与実態統計調査|国税庁  

年収400万円の人の生活レベル

家計簿をつける

(出典) photo-ac.com

年収400万円の人は、どのような暮らしをしているのでしょう。適正な家賃や生活費の内訳の一例を紹介します。

適正な家賃は6~8万円

一般的に、適正な家賃は「手取り額の20~25%程度」とされます。年収400万円で手取り額が約312万円の人にとって、生活に無理が出ない範囲の家賃は6~8万円が目安です。

ただし、あくまでも目安の金額となります。食費や交際費などにそれほどお金をかけない人の場合、8~10万円程度の家賃でも無理なく暮らせることもあるでしょう。また、家族で暮らしている場合は、世帯年収から手取り額を導き出します。

生活費の内訳

年収400万円の人の生活費例を、独身者と子どものいる家庭に分けて見ていきましょう。

■独身者で月の手取り額が19万5,000円の場合

  • 家賃‥.6万円
  • 水道光熱費‥.1万5,000円
  • 通信費‥.1万5,000円
  • 食費‥.4万5,000円
  • 娯楽・交際費‥.4万円
  • 雑費‥.1万5,000円
  • 合計‥.19万円 貯蓄5,000円

■夫婦と未就学児1人の家庭で、手取り額が約19万5,000円+児童手当1万円の場合

  • 家賃‥.5万円
  • 水道光熱費‥.2万円
  • 通信費‥.1万8,000円
  • 食費‥.5万円
  • 娯楽・交際費‥.1万5,000円
  • 雑費‥.2万円
  • 養育費‥.2万円
  • 合計‥.19万3,000円 貯蓄1万2,000円

子どもがいる世帯の場合は養育費が増えるのと、教育費の積み立てをするための貯蓄を考えると、自由に使えるお金はそれほど多くありません。家賃なども抑える必要があります。

家購入の目安額は2,000万円程度

年収400万円の人が、住宅ローンを組んで家を購入する際の目安となる金額は2,000万円程度です。

頭金・金利・借入期間などの要素もあるので、一概にいくらと言い切れない部分もありますが、大体の金額は「年収倍率」で導き出せます。

年収倍率は、年収に対する住宅購入価格の比率がどれくらいかを表したものです。無理のない返済ができる物件価格は「年収の5~6倍」とされ、年収400万円の場合は2,000~2,400万円となります。

金利が低いときは融資額が増える傾向ですが、毎月の支払い計画に無理があると生活が破綻してしまうので、慎重に考えた方がよいでしょう。

年収400万円の人におすすめの節税対策

iDeCoのイメージ

(出典) photo-ac.com

年収400万円の人の手取り額は300万円程度であり、人によっては物足りなさを感じる額です。節税して、使えるお金を増やしましょう。

iDeCo

iDeCo(イデコ)は老後資金を補うための、個人型確定拠出年金です。自分で選んだ運用商品で掛金を運用する特徴があり、掛金の合計額や運用成績によって受給額が変わります。

「掛金の全額が所得控除」されるだけでなく、確定拠出年金制度内での運用益が非課税となり、受給時にも所得控除を受けられる仕組みです。所得控除を受けられる分、個人的に運用するよりも節税になります。

掛け金には上限があり、会社員の場合で企業年金がない人は月2万3,000円までとなっています。企業型確定拠出年金のみがある場合は月2万、確定給付型企業年金のみがある場合は月1万2,000円が上限です。

また、2024年12月から公務員や確定給付型の他制度を併用の場合でも、iDeCoの拠出限度額が1万2,000円から2万円に引上げられることが決定しています。

医療費控除・セルフメディケーション税制

その年に支払った世帯ごとの医療費や医薬品の購入費を合算して、医療費控除を確定申告すると住民税が減額され、節税になります。

医療費控除は保険金などで補填される金額をのぞき、実質的に支払った金額が10万円を超えた場合に利用できる制度です。

「(実際に支払った医療費の合計額-保険金)-10万円」で導き出される金額の所得控除を受けられる仕組みで、上限額は200万円となります。

セルフメディケーション税制は、世帯での年間購入額が1万2,000円以上の場合に利用でき、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬も合算できる決まりです。

参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
参考:セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
参考:セルフメディケーション税制対象品目一覧

節税ではないがお得な制度のふるさと納税も活用

ふるさと納税は寄付をした自治体から、返礼品をもらえる制度です。寄付した額から2,000円を超える部分に対し、税金の還付と控除を受けられる制度で、2万円を払った場合は1万8,000円の控除を受けることになります。

ふるさと納税をしない場合、ただ税金を払うだけでは返礼品はもらえません。返礼品の返礼割合は寄付額の「30%以内」に設定されているので、2万円払った場合は6,000円分の品物を受け取ることができます。実質的な節税になるわけではありませんが、税金を払うだけより、お得といえるでしょう。

ふるさと納税の納税上限額は、家族構成によって異なります。年収が400万円で配偶者あり(専業主婦)の場合、控除上限額の目安は約3万3,000円です。

年収400万円を目指す方法

考え事をする男性

(出典) photo-ac.com

年収400万円は日本の平均的な年収に近い額なので、現実的な目標として設定できます。年収400万円を目指す方法を見ていきましょう。

同じ企業でキャリアアップを狙う

年収400万円を目指すなら、まずは今働いている企業でキャリアアップを狙うのが常道です。一般的な企業では勤続年数が長くなるほど、年収も増えます。

厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」を見ると、男女差は大きいものの、基本的には年齢が上がるにつれて給与も上がっているのが分かります。

キャリアを重ねて役職がつくようになると、入社して間もないころでは考えられなかった年収が手に入ることは珍しくありません。どの業界でも、ほぼ同じことがいえます。

昇給の条件は企業によって異なり「資格取得」が条件となっている場合もあるので、キャリアアップのために何が必要なのかを考えて行動することがポイントです。

参考:令和2年賃金構造基本統計調査の概況|厚生労働省

転職する

所属している企業で実績を積んでいるのに、なかなか評価されず昇給が見込めない場合は、思い切って転職する方法もあります。同じ業界で他社に転職する方法なら、これまでのキャリアを生かすのは比較的簡単です。

業界によっても収入の上がりやすさは違います。そもそもの年収水準が高い業界や、実力や実績を評価してくれる企業へ転職できれば、年収がアップするでしょう。

「令和2年賃金構造基本統計調査」の産業別・年齢別のデータを見ると、情報通信業・金融業界・学術研究・教育学習支援などの業界で、高い水準の給与をもらっていることが分かります。

専門知識がある人が求められる業界は、年収を高めに設定していることが少なくありません。「スタンバイ」では、勤務地や職種だけでなく、希望の年収から求人情報を絞り込んで、自分にピッタリな仕事を探せます。ぜひチェックしてみましょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

起業する

「日本政策金融公庫」の調査によると、起業した人の約半分は開業直前の収入よりも多くの収入を得ていることが分かります。独立開業できるようなスキルを身に付けている人なら、収入を増やせるでしょう。

ただし、起業後に収入をほとんど得られなくなるケースもあります。独立して自営業者になるよりも会社員の方が「給与所得控除」を受けられるので、実際に使える金額が増えるケースも少なくありません。

うまくいけば起業前よりも収入を増やせますが、経営センスがない場合は安定した収入を得られないリスクもあります。

年収400万円以上を狙える職業

ペンツールで描いている男性の手元

(出典) photo-ac.com

年収400万を超える職業には、どのようなものがあるのでしょう。ほかの職業に比べて、比較的高い年収をもらえる職業を紹介します。

IT・WEB系

ITエンジニアやWEBディレクターなどの、IT・WEB系の仕事は年収が400万円を超えることが珍しくありません。ITエンジニアの平均年収は400万円を超えており、ほかの職種と比較しても高い水準です。

マネジメント層への昇格を狙い、役職手当をもらえるようになれば、より高い収入も狙えるでしょう。

スキルを身に付ける努力は必要ですが、ほかの業界と比べて人材不足が深刻であり、人材を育てることに積極的な企業が多いので、比較的未経験者でも採用される可能性が高いところも魅力です。

参考:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省 

法人営業

法人営業は企業を対象に営業活動をする職種で、個人営業と比べると1回の取引の金額が大きく、高い給与をもらえる仕事です。

営業目標が高く設定されていることや、休みの日でも仕事の連絡が来る可能性が高いといった苦労はありますが、努力や実力がそのまま給与に直結するので、大きなやりがいを見出す人は少なくありません。

インセンティブを設けている企業では、営業成績がよいほど給与に反映されやすく、大幅な収入アップも狙えます。実績を伸ばし、役職を上げていくことでさらに年収がアップしていくでしょう。

保険会社の内勤営業

保険会社の内勤営業とは社内や店舗で営業活動をする職種で、来店した客に対して保険の相談や提案などの営業を行う仕事です。外回りをせず社内から出ないので、「カウンターセールス」と呼ばれることもあります。

金融・保険業界は、30~40代で400万円近い年収をもらえる可能性が高い業界です。保険会社の内勤営業は「保険の契約をしたい」という客が自分から訪れるので、未経験者でも成果を出しやすい特徴があります。

成功するためには契約者へのアフターフォローや集客のためのイベントなどをして、積極的に集客を増やす必要がある点も押さえておきましょう。

高級ブランドの販売員

販売員も実績次第で収入を伸ばしやすい職業です。歩合制やインセンティブなどを取り入れ、成績が給与に反映される仕組みを採用していることが多くなっています。

カジュアルなアパレルメーカーよりも、高級ブランドの方が年収が高くなる傾向です。ハイブランド・ラグジュアリーブランドと呼ばれるブランドは制服やスーツが支給されることが多く、衣類代を節約できるのも嬉しいところでしょう。

販売員は自社のブランドをいかに魅力的に見せて、購買意欲を刺激するかも重要な仕事の1つです。制服が支給されない場合、毎月の衣類代がかさんでしまいます。衣類代を抑えられるだけでも、自由に使えるお金が増えるので節約の仕方もポイントです。

400万円は贅沢をしなければ十分に暮らせる年収

勉強をしている女性

(出典) photo-ac.com

年収400万円の人は、贅沢な暮らしはできないものの独身者であれば、十分に暮らせる年収だといえます。子どもがいる世帯では、家賃が安い物件や実家で暮らすといった選択を視野に入れれば、楽になるはずです。

年収400万円は日本の平均的な収入ですが、一般的には勤続年数が長くなるほど給与が上がっていくので、若い世代の人ほど収入面で不利になります。

実力次第で年収がアップしやすい業界もあるので、転職をするなら給与水準の高い業界を狙ってみてはいかがでしょうか。

拝野洋子
【監修者】All About 年金・社会保障ガイド拝野洋子

FPとして随時相談業務をお受けしています。年金や失業給付など公的手当や共済、少額短期保険も活用した家計管理についての情報提供やアドバイスを行います。より良い人生の選択をサポートをして参ります。
All Aboutプロフィールページ
公式サイト

ブログ:
100万円得する!年金、給料、給付金、新NISA、家計のお金を増やす話