雇用保険被保険者証をもらっていない理由は?対処法や使い道を確認

雇用保険被保険者証を手元で大切に保管している人もいれば、一度も見たことがない人もいるでしょう。そもそも、何に使うものなのか分からない場合もあるはずです。雇用保険被保険者証をもらっていない理由や、対処法などを見ていきましょう。

雇用保険被保険者証をもらっていないのはなぜ?

バインダーを手に考える男性

(出典) photo-ac.com

雇用保険被保険者証が必要になって、探しても見つからず、もらっていないことに気付く場合があります。雇用保険被保険者証をもらっていない理由は何でしょうか。

会社側で管理しているから

雇用保険被保険者証は、健康保険証とは違って在職中に本人が使用する機会がほぼないため、会社側で預かっている場合が多くあります。従業員に渡すと紛失の恐れがあることから、なくさないように配慮している企業は少なくありません。

会社で雇用保険被保険者証を預かっているケースでは、退職時に渡されて初めて見たという人が多いでしょう。

ただし、どの企業も同じように預かってくれるわけではなく、入社後に雇用保険加入の手続きと同時に、従業員1人ひとりに渡し、個人で保管するように言われる場合もあります。

もらっていないと思っていたのに、「実は自宅にあることを忘れていた」というパターンもあるでしょう。もし、もらっているかどうかが分からなくなってしまったときは、会社の人事労務担当者に聞いてみましょう。

担当者が渡し忘れている

従業員が退職するときは人事労務担当者が、雇用保険被保険者証・離職票・源泉徴収票・年金手帳などをまとめて退職者に渡すことが一般的ですが、渡すものが多いので、うっかり忘れる場合もあるでしょう。

退職日の前に有給休暇をまとめて消費してから退職する形をとると、退職の手続きがすべて済んでから、「退職時に必要な書類一式」がまとめて送付されるケースが一般的です。

臨機応変な対応をするために、退職者が直接受け取りに来られないときは、郵送に対応している企業は少なくありません。

繁忙期や退職者が多い時期の場合、時間がかかる場合もあるので、しばらく待ってみることが大事です。2週間程度が過ぎても必要書類が届かない場合は、会社に問い合わせてみましょう。

そもそも雇用保険に加入していない

雇用保険被保険者証は仕事を辞めたら必ずもらえるわけではなく、雇用保険に加入していなければもらえません。

雇用保険は労働者を1人でも雇っている企業に対し適用され、正社員であれば入っていることが普通ですが、勤務時間が短い人や週に数回程度のアルバイトは雇用保険に加入しません。

雇用保険の適用は「雇用期間の定めがない」「雇用期間が31日以上」「1週間の所定労働時間が20時間以上」などの、複数の条件を満たすことが求められます。

自分が雇用保険に入っているかどうか不明な場合、給与明細を見て雇用保険料の欄をチェックしましょう。給与から雇用保険料が天引きされていれば、加入していることになります。

雇用保険被保険者証とは何か

資料を手にしている男性

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家で雇用保険被保険者証を保管しているか確認したくても、どのようなものなのかが分からなければ、うまく探せません。雇用保険被保険者証は、どういうものなのか見ていきましょう。

雇用保険への加入を証明するもの

雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入した従業員1人に対し1枚がハローワークから発行され、「雇用保険に加入している証明書」となります。

微妙に書式が異なる場合がありますが、被保険者番号・氏名・生年月日の3つが記載されているはずです。事業所名や資格取得日などが、記載されている場合もあるでしょう。

被保険者番号は、転職などで勤務先が変わっても引き継がれる番号です。一度番号を取得しても、長期間雇用保険が適用された状態で働いていないときは抹消されます。

雇用保険の目的

「そもそも、なぜ雇用保険に加入しなくてはならないのか?」と、思う人もいるでしょう。雇用保険には雇用に関する総合的な機能があり、再就職の援助を行い、雇用を安定させることを目的としています。

適用基準を満たす労働者が雇用保険の被保険者となった場合は、ハローワークに届けることが企業側の義務です。労働者の意思に関係なく、届けなければなりません。

1人でも労働者を雇う企業は、雇用保険の加入手続きをしなければならない決まりです。通常は、入社時に雇用保険に加入するかの意思確認は行われないので、自分は加入していないと誤解してしまう場合もあるでしょう。

参考:雇用保険の手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省

雇用保険被保険者証の使い道

失業保険関連資料

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働いているときはあまり身近な存在ではない雇用保険被保険者証ですが、必要な機会が訪れることもあります。主な使用方法を見ていきましょう。

転職時に必要になることがほとんど

雇用保険被保険者証は、国内で就職する際に必要になります。たとえ外資系の企業であっても、日本で働く限りは必要です。

暫定任意適用事業といって、労働者の数が5人未満で個人経営の農林水産の事業と認められ、労働保険(労災・雇用保険)の加入が任意となっている場合は除外されます。

すでに雇用保険に加入している状態で、長い期間を置かずにほかの企業でも雇用保険に加入して働き続けるのであれば、被保険者番号を引き継ぐ関係上、雇用保険被保険者証が必要です。

失業保険の給付を受けるとき

雇用保険に加入している人は、失業保険の給付を受けられます。失業保険を受け取る手続きには、雇用保険被保険者証が必要です。

一般的な退職の場合、「退職する日から遡って2年間に雇用保険の被保険者だった期間が12カ月以上あること」などの条件があります。「退職理由」によっても、条件が変わってくるので自分が受給条件を満たしているか確認しましょう。

企業の人員整理などで希望退職者となった場合や、家族の介護などの理由で辞めざるを得なかった場合などは、退職する日から遡って1年間に雇用保険の被保険者だった期間が6カ月以上あれば、受給を受けられます。

教育訓練給付金を受けるとき

教育訓練給付金は、各種資格の取得や専門学校の学費などを賄うために使用できます。教育訓練給付制度は、能力開発やキャリア形成を支援するための制度です。

教育訓練にはさまざまな種類があり、保育士や調理師などの「業務独占資格」の取得のための講座や、文部科学大臣認定の「キャリア育成促進プログラム」などが該当します。

教育訓練を受けることで、希望する仕事で必要とされる技能を磨くことができ、就職に有利になるでしょう。

利用に当たって雇用保険の加入期間が1年以上などの条件があり、受けたい講座によっても条件が異なります。ハローワークで支給要件の照会ができるので、気になる人はチェックしましょう。

参考:教育訓練給付制度|厚生労働省

失くしても加入していたなら再発行できる

ハローワーク

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雇用保険被保険者証をもらっていないのに、もらったことになっている場合や、誤って捨ててしまった場合も考えられます。このようなとき、どうしたらよいのか見ていきましょう。

ハローワークで再発行してもらう

雇用保険に加入していたことが明らかである場合、ハローワークへ行って紛失したことを伝えましょう。働いていた期間や事業所名などが分かれば、再発行してもらえます。

再発行の手続きをするには、近くにあるハローワークへ行き「雇用保険被保険者証再交付申請書」を提出しましょう。申請書はハローワークのホームページでもダウンロードできます。

雇用保険被保険者証再交付申請書には、被保険者番号を記載する欄があり、分からない場合は、窓口へ行って調べてもらった方が確実です。

求人情報の提供のみを行っている出張所では対応していないことがあるので、雇用保険の手続きを行っているハローワークへ行きましょう。分からない場合、電話で確認してから出かけた方が無駄足にならずに済みます。

再発行に必要な書類や情報

雇用保険被保険者証の再発行には、雇用保険被保険者証再交付申請書だけでなく「本人確認書類」や、退職した会社の正式名称・本社の住所・電話番号などが必要です。印鑑も忘れないようにしましょう。

本人確認書類は、パスポート・マイナンバーカード・運転免許証などの顔写真が入っているものを用意します。顔写真が入っていないものを使う場合、健康保険証と住民票の写しというように、2種類の確認書類が必要です。

ハローワークに行けないときは、電子申請による届け出や必要書類を郵送して再発行してもらうこともできます。ただし、窓口へ行く場合に比べて再発行までに時間がかかることが多いので、急いでいる場合は窓口に行った方が安心です。

雇用保険被保険者証をもらっていない人は要確認

資料に書き込む

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雇用保険被保険者証は雇用保険への加入を証明するもので、会社が預かっている場合があり、退職時にもらえます。再就職するときや失業保険の給付を受ける際などに必要になるため、もらっているか確認しましょう。

もらっていないときは会社の人事労務担当者が渡し忘れていたり、入社時に受け取って自宅に保管しているのを忘れていたりする可能性が考えられます。

紛失してしまった場合はハローワークで再発行してもらうこともできるので、慌てずに対処しましょう。

和田雅彦
【監修者】All About 社会保険労務士/年金ガイド和田雅彦

大学卒業後、銀行勤務を経て社会保険労務士資格を取得し独立開業。上場企業をはじめ数多くの企業の人事労務管理の相談指導、給与計算業務等に携わる。また年金問題についての執筆、講演も多数。
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