看護師を辞めたいと感じる理由は人それぞれですが、「人間関係」「業務量」などがネックとなることが多いようです。看護師として働くことがつらくなったら、どう対処すればよいのでしょうか?看護師を辞めたいと感じる理由や対処法、転職のコツを紹介します。
看護師を辞めたくなる理由
看護師が仕事を辞めたくなる理由には、どのようなものがあるのでしょうか?看護師になった人が悩みがちな事由について見ていきましょう。
人間関係のストレス
職場の人間関係がストレスになって、「看護師を辞めたい」と考える人は少なくありません。
看護師の仕事は、人とのつながりで成り立っているといえます。医師・先輩・チームメンバー・患者などとの関係は、どれを取っても重要で、あつれきが生じると業務がうまく回らなくなります。
職場の居心地が悪くなったり、気を遣いすぎて疲れてしまったりすれば、仕事のモチベーションも上がりません。「こんなにつらいなら辞めようかな」という考えに行き着いてしまっても、不思議ではないでしょう。
業務量が多すぎる
看護師は任される業務がたくさんあり、夜勤・残業も多めです。忙しい職場なら休憩時間も取りにくく、身体的・精神的な負担も大きくなります。毎日へとへとになるまで働けば、「もう辞めたい」と感じるのも無理はありません。
また、規模の小さなクリニック・医院だと、担当業務があいまいなケースが多々あります。「あれをやって」「これも」などと言われ続ければ、「なぜ自分が」という不満がたまってくるでしょう。
もっと条件のよい職場があるのではと感じ、辞めたい気持ちが強くなります。
仕事の責任が大きすぎる
看護師に課せられる責任の重大さに耐えられず、「辞めたい」と感じる人もいます。
医療現場で働く以上、看護師は人の命に関わる場面に立ち会わなければなりません。わずかなミスが文字通り命取りとなるケースもあり、現場の緊張感は並々ならぬものがあります。
看護師になりたての人やメンタルが弱い人などは、業務の重圧に耐えられなくなるでしょう。
また職務に慣れてくると、先輩として後輩の指導を任されたり、受け持ちの患者数を増やされたりします。負うべき責任範囲が広がることも、人によっては大きなストレスになります。
給与に納得できない
厚生労働省が管理する職業情報提供サイト「job tag」によると、令和3年度における全国の看護師の平均給与は498.6万円です。同年の給与所得者の平均年収は443万円ですから、大きな差はありません。看護師の激務を考えると、割に合わないと感じる人も一定数いるでしょう。
また、クリニック・医院の中には、夜勤がないために手当そのものがないところもあります。なかなか収入が上がらない場合は「ほかに仕事を探した方がよいのでは」という気持ちが湧いてきます。
参考:
看護師 - 職業詳細 | job tag|厚生労働省
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁 長官官房 企画課
看護師を辞めたいときにすべきこと
どんな理由であれ、一時的な感情で退職してしまうと、その時は良くても時間差で後悔するかもしれません。看護師を辞めたいと思ったときに、まずすべきことを紹介します。
現状を冷静に判断する
看護師を辞めるべきかどうか判断するとき、ポイントになるのは「自分の気持ち次第で現状を変えられるかどうか」です。
例えば、辞めたい原因が「仕事が合わない」「やりがいがない」「何となく向いていない気がする」などであれば、仕事に慣れたり仕事への取り組み方を変えたりすれば、状況が改善する可能性があります。
一方、職場いじめがある・組織体制に欠陥があるなどの場合は、自力で対処するのは不可能です。また、どちらの理由であれ身体的・精神的な不調が出ているのであれば、深刻化しないうちに職場を離れた方がよいでしょう。
休む・誰かに相談する
体の疲れは、心の疲れにもつながります。働き詰めで「もう辞めたい」と感じている人は、退職ではなく休職するのも一つの手段です。
つらい状態のまま働いても、状況は悪化するばかりです。仕事から離れてリフレッシュすることで、冷静な判断力を取り戻しやすくなります。
また、不平不満がたまっている人は、外に吐き出すことも大切です。職場についてため込んでいることがあれば、身近な人や同僚に話しましょう。
心の中をきれいにさらけ出すことで、自分の本心や今後の方向性が見えてくることがあります。
転職活動を始める
看護師は国家資格なので、誰にでもできる仕事ではありません。ニーズは多く、求人は常にあります。
どう考えても現状が変わらない・変えられないのであれば、「辞めた後」を想定して、転職活動を始めましょう。
転職活動を行う上での注意点は、今後のキャリアプランの見通しを立てることです。「どんな病院に行くか」「何科で働くか」などについて自分の理想を描き、目指すべきルートを設定してみましょう。
キャリアプランを具体的に立てられれば、転職活動が効率化します。辞める時期・タイミングについても考えやすく、辞めるまで・辞めた後がスムーズです。
看護師を辞めたいのに辞められないケース
看護師を辞めたいと思っても、スムーズに辞められるとは限りません。辞めたいのに辞められないケースとして、「病院の奨学金の返済が終わっていない」「引き止められてしまう」の2つを紹介します。
病院の奨学金の返済が終わっていない
病院の奨学金制度を利用して看護師になった場合は、返済がネックです。
奨学金の返済期間、いわゆる「お礼奉公」中に看護師を辞めると、一括返済を求められるケースがあります。資金に余裕がない場合は、辞めたいのに辞められない状態に陥ってしまうでしょう。
お礼奉公中でも、場合によっては分割納付が認められることもあります。しかしこれは、契約書の内容次第です。契約書に「途中退職する場合は一括返済」などの文言があれば、分割納付は難しいかもしれません。
なお、辞める意志を伝えると「違約金を払え」などと言われるケースがあります。労働基準法第16条では、「労働条件の不履行について違約金を求めてはいけない」と定められています。万が一違約金を求められても、応じる必要はありません。
退職を伝えても引き止められる
人手不足の職場は、1人抜けるだけでも大きな負担です。勇気を出して辞めたいと伝えても、「次の人が見つかるまで」「○○が終わるまで」などと言われて、引き延ばしされることがあります。
また新人看護師が相手だと、「ここを辞めても行くところはない」「どこも雇ってくれない」などと、不安をあおって引き止めるケースもあるようです。
「辞めたい」と伝えても話が進まない場合は、「より上の役職の人に言う」「労働基準監督署に相談する」などの方法があります。
まれに、一方的に退職届を送付して辞めてしまう人もいますが、円満な辞め方とはいえません。法律上では2週間前に退職を申し出れば問題ないとされてはいますが、今後のことも考えて、なるべく話し合いで解決するのがおすすめです。
すんなり辞めるためのコツ
スムーズに辞めるためには、タイミングを見極めることや、ブレずに辞めると伝えることが大切です。看護師を辞めたいとき、心掛けたいポイントを紹介します。
辞めやすい時期を見極める
年度末は、家庭の事情などで辞める人が出ます。病院にもよりますが、比較的スムーズに辞めやすいでしょう。
反対に避けたいのは、人手が不足しがちな年末年始や、病院全体が忙しくしているときです。特に上司が忙しい場合、退職を伝えても処理が進みません。上司の様子をチェックして、余裕がありそうなタイミングで話をするのがおすすめです。
注意したいのは、就業規則によって退職のタイミングが決められている点です。詳細は職場によって異なりますが、看護師の場合は「退職する2~3カ月前までに伝える」としているところが少なくありません。
就業規則で自分の職場のケースを確認し、タイミングを逃さないよう注意しましょう。
ポジティブにはっきりと退職を伝える
辞めると決めたのであれば、迷いなくはっきりと退職を伝えましょう。「まだ迷っている」と判断されれば、引き止めに遭う可能性が高まります。辞める意志を明確に伝え、どんな説得にも揺るがないことが大切です。
また、辞める理由を伝えるときは、職場の不満や人間関係の愚痴を伝えるのは控えましょう。退職が認められたとしても、実際に辞めるまでには数カ月残っています。
ネガティブな言い方で仲間の反感を買ってしまうと、辞めるまでがつらくなるかもしれません。
辞めたくならない職場を見つけるコツ
転職する場合は、「辞めたい」と言わずに済む職場を選びたいものです。看護師としてモチベーション高く働ける、理想の職場を見つけるコツを紹介します。
じっくり探す
今後のキャリアや理想の働き方につながらない職場だと、就職しても後悔する可能性があります。「早く次の仕事を決めなければ」という考えは捨て、時間をかけて職場探しに取り組むのがおすすめです。
例えば、気になる職場がある場合は、実際に見学してみるとよいでしょう。求人情報の説明文だけをチェックしても、職場の雰囲気や忙しさは伝わりません。現地に足を運んでチェックすることで、イメージと現実の違いを把握しやすくなります。
譲れないポイントを明確にする
職場を探すときは、理想の職場の条件を具体的にイメージすることが大切です。
「こんな病院で働きたい」という軸があれば、病院探しの効率もアップします。本当に働きたい職場を見つけやすく、転職の後悔を感じにくくなるはずです。
例えば、病院の情報を見るときは、「給与」「働き方」「業務内容」について求める条件を具体的に設定しましょう。それぞれに優先順位を振り、妥協できるポイントを設定することも必要です。
自分の理想と実際の求人とを比較検討すれば、「ここで働きたい」と思える職場にたどり着くのは難しくはありません。
自分に合う職場を見極める
実際のところ、看護師の業務負担や内容は、病院の規模・診療科目などにより異なります。職場を探すときは、自分の求める働き方にマッチしているかをチェックしましょう。
例えば、「夜勤がないこと」「残業が少ないこと」が重要なら、入院患者の受け入れがないクリニックなどが選択肢に入ります。
一方、企業社員として働きたいのであれば、「産業看護師」の求人がおすすめです。病院の看護師と比較すると勤務時間も規則的で、医療現場特有の慌ただしさがありません。
それぞれの職場の特性を理解して、自分との相性を適切に測りましょう。
看護師を辞めたいときは現状分析から
看護師を辞めたくなってしまった場合は、辞めるべきかどうかを冷静に判断しましょう。勢いや気分に任せて辞めてしまうと、後悔することになるかもしれません。
まずは、自分の置かれている立場を客観的にチェックし、退職の是非を判断することが必要です。
職場そのものに問題がある場合は、我慢して働く必要はありません。体・メンタルに不調が出る前に、転職活動に取り組むことをおすすめします。
次の職場探しに不安がある人は、国内最大規模の仕事・求人探しサイト「スタンバイ」で看護師の求人を探しましょう。雇用条件や福利厚生の詳細を確認すれば、自分に合った職場が見つかるはずです。
医療・お金・法律分野における三種の専門資格取得。医療、介護現場の生の声に応える、本当に知りたい情報を発信。企業、個人への医療・介護教育にも取り組む。
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