社会福祉士はどんな仕事?仕事内容や仕事場、求められる適性を紹介

社会福祉士は、さまざまな事情を抱えた人々が不安なく日常生活を送れるよう、相談支援を行うのが仕事です。勤務場所は主に福祉関係施設などで、仕事内容は勤務先によって異なります。社会福祉士が行う業務や仕事場、社会福祉士に必要な適性を紹介します。

社会福祉士の主な仕事内容

お年寄りと介護職員

(出典) photo-ac.com

社会福祉士は、福祉の専門家です。いわゆる「ソーシャルワーカー」と同義ですが、国家資格を持つ人のみが「社会福祉士」と呼ばれます。

社会福祉士がどのような仕事を行っているのか、具体的に見ていきましょう。

相談・支援業務

社会福祉士は、身体的・精神的な障害を抱えている人、環境的要因で困難な社会生活を強いられている人、経済的な問題を抱えている人などの相談に乗り、具体的な支援を行うのが仕事です。

例えば、介護関係の社会福祉士なら、補助金制度やサービスの適用範囲を説明したり、実際に福祉施設を紹介したりなどを行うことになるでしょう。

相談に訪れる人にはさまざまな背景があり、解決すべき課題・問題は異なります。社会福祉士は困っている人の相談を受けながら、どのような支援が必要かを適切に見極めなければなりません。

関係先との連絡・調整業務

相談者が快適な、あるいは自立した生活を送る上で、医療・行政の支援が必要なケースは多々あります。

社会福祉士は、関係機関と密に連絡を取り、困っている人が適切な福祉サービスを受けられるよう調整を行わなければなりません。

また、実際に福祉サービスが行われた場合には、その内容が適正かを精査します。万が一、福祉サービスが相談者の課題解決につながらないと判断される場合は、別のプランを提案する必要があるでしょう。

社会福祉士の1日のスケジュール例

社会福祉士のスケジュールは、携わる分野・勤務場所によって異なります。

例えば、介護老人福祉施設で働く社会福祉士の場合は、以下のようなスケジュールが考えられます。

  • 9:00~:出勤・ミーティング
  • 10:00~:入所希望者との面談・施設紹介・契約業務など
  • 11:00~:休憩
  • 12:00~:食事介助
  • 13:00~:入所希望者との面談・施設紹介・契約業務など
  • 16:00~:入所者の状況確認
  • 18:00 :夜勤担当への申し送り後、退勤

介護老人保健施設で働く社会福祉士は、相談・支援業務に加え、入所者の介助まで行うケースがほとんどです。

忙しいときは予定がいくつも重複するため、スケジュール管理の徹底や業務効率化の取り組みが必要となるでしょう。

社会福祉士の仕事場所

介護職員と話すお年寄り

(出典) photo-ac.com

社会福祉士が必要とされる場所はさまざまあり、それぞれ仕事内容は異なります。社会福祉士を目指すのであれば、「どの分野の専門家になるのか」の方向性を決めておくことが必要です。

多くの社会福祉士が活躍する、仕事場を見ていきましょう。

高齢者福祉関係施設

自治体の決まりや施設にもよりますが、社会福祉士の資格があれば、特別養護老人ホーム・デイサービスセンターなどに常駐する「生活相談員」として勤務できます。

生活相談員とは、老人福祉施設で入所者の入退所手続きや、相談支援などの仕事を行う人のことです。入居者が快適な施設生活を送れるようサポートを行い、随時見守りを行います。

また、入居者の家族との面談・相談も、重要な業務の1つです。必要に応じて医師・行政機関と連絡を取り、支援に抜け漏れがないよう取り計らわなければなりません。

施設の規模によっては介護業務を兼務するケースもあり、カバーする業務内容は多岐にわたります。

なお生活相談員は、介護施設で働く相談員を指すのが一般的です。老人保健施設の相談員は「支援相談員」と呼ばれます。

障害者福祉関係施設

社会福祉士の中には、障害のある人・家族の生活をバックアップする「相談支援専門員」として働く人もいます。相談支援専門員とは、障害のある人・家族と福祉サービスをつなぎ、適切な支援を行う職種です。

相談支援の種類には、主に以下の4つがあります。

  • 障害のある人の自立を支える「地域相談支援」
  • 各人に最適な福祉サービスを見極める「計画相談支援」
  • 障害児の施設通所に関する「障害児相談支援」
  • 相談内容を限定しない「基本相談支援」

ただし、相談支援専門員になるためには、社会福祉士資格のみでは不十分です。まずは、障害者福祉関連業務に一定期間以上従事し、「相談支援従事者初任者研修」を修了しなければなりません。

相談支援専門員となった場合は、地域の「相談支援事業所」や「基幹相談支援センター」で働くこととなるでしょう。

児童・母子福祉関係施設

児童・母子福祉の専門家となった場合は、「家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)」「母子支援員」などの選択肢があるでしょう。

家庭支援専門相談員の仕事は、家庭環境問題から施設に入所している児童の保護・支援です。保護者との連携・調整も行い、適切な親子関係が再構築できるよう細やかなサポートを行います。

一方の母子支援員は、社会的自立が困難な母子の保護・支援を行うのが仕事です。勤務場所は主に「母子生活支援施設」で、地域の福祉施設と連携しながら必要なサポートを行います。

このほか地方公務員試験に合格すれば、児童相談所で勤務することも可能です。

病院・医療センター

社会福祉士として病院・医療センターなどで働きたい場合は、「医療ソーシャルワーカー」になる方法があります。

医療ソーシャルワーカーは、病気・ケガで社会復帰が困難になった人や、十分な治療費を用意できない人などの相談を受け、適切な支援を行うのが仕事です。

患者・家族から直接相談を受けるのはもちろん、関係機関との調整役を務めたり、申請書の作成を行ったりなども仕事に含まれます。行政と連携するシーンも多いため、調整役としてうまく立ち回らなければなりません。

なお、国公立病院・保健所などでの勤務を希望する場合は、公務員試験に合格する必要があります。

企業・地域福祉活動支援センター

社会福祉士には、「産業ソーシャルワーカー」「コミュニティソーシャルワーカー」として働く道もあります。

産業ソーシャルワーカーとは、企業で働く人の悩み・課題を解決するための相談員です。企業専属となったり、フリーランスで業務委託契約を結んだりといった働き方があるでしょう。

一方、地域福祉活動支援センターで地域住民のフォローを行うのが、コミュニティソーシャルワーカーです。業務内容はさまざまですが、地域内に住む生活困難者を支援したり、セーフティーネットの構築に携わったりといった仕事があります。

いずれも社会福祉士の資格が必須というわけではありませんが、職務の性質上、社会福祉士の資格があると有利です。

社会福祉士に求められる資格・資質

パソコンを見ながら勉強する女性

(出典) photo-ac.com

社会福祉士として働くためには、社会福祉士資格が必要です。また支援・相談がメインとなるため、「優しさ」「コミュニケーション能力」が求められるでしょう。

社会福祉士を目指す上で、持っておきたい資格・資質を紹介します。

社会福祉士資格

国家資格である社会福祉士の受検には要件が定められており、実務経験・福祉関連の知識が必要です。

例えば、大卒・短大卒で福祉関連業務の経験がない人は、まず一般養成施設で1年以上学ぶことが必要となります。

受検・合格の後に社会福祉士として登録されれば、「社会福祉士」の肩書きで仕事を探すことが可能です。

なお「第34回社会福祉士国家試験」では、合格率は31.1%と低めでした。スムーズな合格を目指すなら、それなりに準備が必要となるでしょう。

参考:第34回社会福祉士国家試験合格発表|厚生労働省

相手の立場に寄り添える優しさ

相手の立場になって考えられる人なら、社会福祉士として本当に必要とされる支援・提案を行えるでしょう。

どこで働くにせよ、社会福祉士のメイン業務は相談支援となります。相談者と信頼関係を築くには、常に相手の立場に寄り添える優しさが必要です。

ただし相手によっては、支離滅裂だったり理不尽だったりすることもあります。社会福祉士は相手の気持ちに寄り添うとともに、感情に流されない冷静さ・イライラしない我慢強さも必要です。

高いコミュニケーション能力

コミュニケーション能力の高い人は、人に共感したり話しやすい雰囲気を作ったりすることが得意です。相談者と適切な信頼関係を築きやすく、業務がスムーズに進行します。

また、コミュニケーション能力が高ければ、関係機関と良好な関係を構築・維持するのも難しくはありません。

社会福祉士として、広いネットワークを持つことは非常に重要です。必要な情報の共有・伝達の精度が向上し、相談者にとって有益な提案・解決策を提示しやすくなるはずです。

社会福祉士の仕事は相談支援業務がメイン

お年寄りと女性

(出典) photo-ac.com

社会福祉士は、社会的に弱い立場にある人や課題・問題を抱えた人をサポートし、解決に向けた道筋を作るのが仕事です。

実際に社会福祉士となった場合は、高齢者福祉関係施設や障害者福祉関係施設などで業務に就くこととなります。

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小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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人材紹介の仕事がよくわかる本
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