看護師の給料の平均は?内訳や手取り額を増やす方法も紹介

「看護師は仕事に困らない」といわれます。同世代と比べて給料が高めの傾向があるため、安定した仕事を得ようと看護師を目指す人もいるかもしれません。給料の手取りはどのくらいなのか、給料の内訳や手取り額を増やす方法などと併せて紹介します。

看護師の給料の手取り平均は?

給料と電卓

(出典) photo-ac.com

2022年10月分の「一般職業紹介状況」によると、看護師(看護師を含む保健医療サービスの職業)の有効求人倍率は2.48倍で、平均の1.35倍を大きく上回ります。「売り手市場」である看護師の給料は、平均でどのくらいなのか見ていきましょう。

日本の平均とほぼ同じぐらい

本来、給料とは各種手当を含まない基本給を指しますが、分かりやすいように給与(総支給額)=給料として解説します。

2021年の「賃金構造基本統計調査」の結果を基に計算(きまって支給する現金給与額×12ヵ月に、年間賞与その他特別支給額を足して算出)した看護師の年間の給料は約499万円となります。一般に年収の8割が手取りとされますので手取りは約399万円です。

一方、国税庁の発表では、同年の日本の平均給与は約443万円となっています。手取りでは約354万円と考えられるので、看護師の給料は平均的、場合によっては高めといえるでしょう。

参考:令和3年 賃金構造基本統計調査|厚生労働省

看護師の給料は病院の規模や地域差がある

笑顔の看護師たち

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看護師の給料は日本の平均とほぼ同じぐらいですが、全国一律ではありません。大規模病院や都市部にある病院に勤務する看護師の給料は、小規模・中規模病院や地方の病院に比べると高めです。また、男女でも多少の差があります。

規模の大きい病院や都市部は給料が高め

専門的な診療科や先進的な医療機器を備えているような大規模病院では、患者も多く抱えています。また、救急医療にも対応している場合がほとんどです。患者の容態が急変したり、救急車で患者が搬送されてきたりすることも日常茶飯事でしょう。

病棟や救急を担当する看護師は、終業時間が過ぎていたとしても、こうした事態に対応しなければなりません。そのため、どうしても時間外勤務が多くなります。時間外手当が増えればその分上乗せされるので、大規模病院の看護師の給料は高めになるのです。

また中規模以上の病院は、そもそも給料が高いという事情もあるでしょう。2021年の「賃金構造基本統計調査」によれば、従業員が10~99人の事業所(医療機関)と100~999人の事業所では、所定内給与額で約1万円、年間賞与その他特別給与額で約17万円の差が見られます。

また、東京都や人口100万人以上の都市がある道府県(北海道・大阪・愛知・広島・福岡など)では、その土地の物価や生活水準が反映されるため、看護師の給料も比較的高めです。

参考:賃金構造基本統計調査 一般 都道府県別_職種(特掲)DB|厚生労働省

男女で多少の差がある理由

2020年の「衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によれば、看護師の男女比は1:9となっています。男性看護師が増えてきたとはいえ、全体の10%にも達していません。看護師はまだ女性が主流といえるでしょう。

しかし給料の平均は、男性看護師の方がやや高めです。これは女性が結婚や出産といったライフステージの変化に伴い離職したり、パート勤務にシフトしたりすることで平均が押し下げられるためです。

ただし、あくまで平均なので、すべての男性看護師が女性看護師より給料が高いというわけではありません。継続的に働いている場合は、性別で給料の差がないケースもあります。

参考:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省

看護師の給料に含まれる主な手当

手当て

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看護師の給料の計算方法は「給与規定に基づく基本給+各種手当」です。看護師にも労働基準法が適用されるので、さまざまな手当が付きます。主なものを見ていきましょう。

資格・役職手当

資格手当は、看護師の資格そのものに対する手当です。病院によっては、基本給に資格手当分が含まれているケースもあります。

専門的な診療を行っている病院であれば、認定看護師や専門看護師の資格を持っていると、さらに上乗せされる可能性もあるでしょう。取得は簡単ではありませんが、看護師として給料だけでなくキャリアアップも狙うならおすすめです。

役職手当は、看護部長、看護師長、看護主任などの役職に就いている看護師に対する手当です。一般的に、役職が上がるほど、つまり責任が重くなるほど手当の額も高くなります。

残業手当

残業手当は残業代、時間外手当とも呼ばれます。法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて勤務する場合に支払われる手当です。通常の残業で25%、残業時間が月60時間を超えた場合は50%など、条件によって1時間当たりの賃金が割り増しになります。

中規模~大規模病院勤務の看護師の場合、患者の急変や救急搬送の対応など、緊急性の高い業務が多いので、必然的に残業時間も増える傾向があります。個人のクリニックや介護施設などの看護師に比べて給料が高くなるのは、これらもひとつの理由です。

休日手当

法定休日(使用者が必ず設けなければならない休日で、労働基準法に基づいて定められている)に働いた場合には、休日手当(休日出勤手当)が支払われます。

土日祝日ではなく、それぞれの企業が定めた休日が対象です。割増率は1時間当たりの賃金の35%とされています。

ただし、入院患者を多く抱えているような大規模病院は、基本的に24時間365日稼働しています。看護師の勤務体制も特殊なので、法定休日ではなく、シフト上休みの日に出勤した場合としている病院がほとんどでしょう。

病院によっては、休日手当を支払う代わりに振替休日を取れるケースもあります。

夜勤に関する手当

看護師に支払われる手当の多くを占めているのが、夜勤に関する手当です。午後10時から午前5時までに勤務した場合に、1時間当たりの賃金に25%上乗せされる「深夜勤務手当」と、病院が独自に定めている夜勤1回ごとに支払われる「夜勤手当」があります。

深夜勤務給は、残業が長引いて深夜におよんだときや、休日出勤してさらに深夜残業になってしまったときにも適用されます。割増し率はそれぞれ、時間外勤務(通常残業)25%+深夜残業25%で50%、休日労働35%+深夜残業25%で60%になります。

夜勤手当は、病院の規模や勤務形態によって金額が異なるのが一般的です。例えば、病床の多い病院や専門性の高い病院、救急指定病院などは、比較的夜勤手当が高めです。

その他の手当

看護師の手当はその他にも、さまざまな種類があります。救命救急センターや結核病棟・精神科病棟などに勤務する看護師に支払われる特殊勤務手当や、専門的なスキルや長時間の勤務が必要とされる手術室担当の看護師への手術室勤務手当などです。

危険手当は特殊勤務手当や手術室勤務手当に含まれるケースもありますが、看護師に危険がおよぶ可能性が高い業務を担当する場合に支払われます。

また、助産師の資格を持っている看護師が分娩介助を行った際には、回数に応じて助産師手当が支給されるケースもあります。

看護師が給料の手取り額を増やすには

悩む看護師の女性

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看護師が働きながら給料の手取り額を増やす方法として、すぐに実践できるのは夜勤の回数を増やすことでしょう。体力的に不安があるなら、資格を取ったり役職を目指すのもおすすめですが、ある程度の時間が必要です。

夜勤の回数を増やす

看護師の仕事をしながら手取り額を増やしたいなら、まず夜勤に入ることを検討しましょう。深夜勤務手当に加えて、夜勤手当も支給してもらえます。積極的にシフトに入れてもらえば、翌月には給料に反映されるでしょう。

ただし、働きすぎは禁物です。給料の手取り額を増やせても、体を壊したり仕事を休まなくてはならなくなったりしては元も子もありません。特に大規模病院や救急指定病院は夜間でも忙しいことが多いので、休憩も取りづらいでしょう。自分の体と相談して、無理をしないのがポイントです。

また、ほかのスタッフとの夜勤回数のバランスも考慮が必要です。まずは、自分の体調を見たうえで、職場の上司と相談し、無理をしない勤務体制で働くことが大切です。

資格を取る

認定看護師や専門看護師の資格を取得することで、資格手当の上乗せが期待できます。

認定看護師は「現行の認定看護分野(21分野:2026年度をもって教育終了)と新たな認定看護分野(19分野:2020年度から教育開始)において、対象の患者に質の高い看護を実践できる」と認定された看護師のことです。

看護師の資格を取得しており、認定看護分野の実務研修3年以上を含む通算5年以上の実務研修という条件を満たす必要があります。その上で認定看護師教育機関に入学し、規定のカリキュラムを修了し、認定審査に合格しなければなりません。

専門看護師は、がん看護や精神看護などの特定の14分野において質の高い看護を実践しつつ、「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の6つの役割を担う看護師を指します。

看護師免許を持ち、看護系大学院修士課程修了者で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位を取得していること、実務研修が通算5年以上あり、うち3年間以上は専門看護分野の実務研修であることといった条件を満たし、認定審査に合格することが必要です。

どちらも取得は簡単ではありませんが、キャリアアップにもつながります。時間をかけても看護師として自分を高めていきたい人は、挑戦してみてはいかがでしょうか。

昇進(昇給)を目指す

役職を目指すのも、給料を増やす方法の1つです。基本給は昇給の時期まで変わりませんが、役職手当が付くので手取りや年収がアップします。

長く働きたい人にもおすすめです。まずは現場の看護師を取りまとめて業務をスムーズに回し、看護師長をサポートする看護主任を目標にするとよいでしょう。

ただし、役職は自分で希望したからといって就けるものではありません。看護主任を例に挙げると、上司である看護師長や看護部長、周囲の看護師からの評価が必要なので、目指しても時間がかかる可能性があります。

また、役職に就くと看護の実務とは別に、それなりの責任が伴う点も知っておきましょう。

節税する

節税も手取りを増やすのに有効です。世帯の合計医療費が年間10万円を超えた場合や、ドラッグストアでセルフメディケーション税制の対象商品を年間1万2,000円以上購入した場合は、確定申告を行いましょう。

申告額に応じて、還付金を受けられる可能性があります。申告に備えて領収書やレシートを保管しておきましょう。ただし、医療費控除とセルフメディケーション控除はどちらか一つしか受けられません。金額の大きい方を選んで申告するのがおすすめです。

iDeCoやふるさと納税(寄附金控除)などの制度の利用も、検討する価値があります。給料から引かれる税金が少なくなれば、それだけ手取り額が増えるので、積極的に活用しましょう。

参考:セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について|厚生労働省

看護師への転職は免許の取得が必須

履歴書とペン

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看護師に転職するなら、まず免許を取得しなければなりません。看護師免許は国家資格なので、取得するには時間も努力も必要です。

看護系短期大学や専門学校なら3年で受験可

看護師になるには、少なくとも3年かかります。最短で看護師を目指すなら、3年制の看護系短期大学や専門学校を選ぶとよいでしょう。大学に行くより1年早く受験資格を得られるので、早く看護師になりたい人や、学費を抑えたい人に適した方法です。

また、看護系短期大学や専門学校を卒業していれば、4年制大学の2年次または3年次への編入もできます。ただし、4年制の看護系大学が増えるに従い、短期大学は減少傾向にある点も知っておきましょう。

専門学校の多くは、看護の実技や実習に力を入れています。即戦力を身に付けたい人におすすめですが、どうしてもカリキュラムが過密になるので注意が必要です。

4年制大学なら保健師や助産師の受験資格も

これから看護師への転職を目指すなら、4年制大学がよいでしょう。一般教養も看護もじっくり学べます。

大学のなかには、卒業時には看護師だけでなく、保健師または助産師(助産師課程を修了している場合のみ)の受験資格も得られるところもあります。看護師国家試験に合格した上で、保健師や助産師の国家試験に合格すれば、キャリア形成にも役立ちます。

ただし、保健師や助産師の国家試験に合格しても、看護師国家試験が不合格の場合には資格は得られないと知っておきましょう。

入学するのが大変、看護師になるのに1年長くかかるといったデメリットもありますが、将来の仕事の選択肢を増やせるでしょう。

看護師はやりがいと収入アップが期待できる

看護師のミーティング

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看護師への転職は、収入アップだけでなくやりがいも期待できます。今後ますます少子高齢化が進むことが予想されるので、需要がなくなる可能性も低いでしょう。

看護師として働きながら給料の手取り額を増やすための努力を続けることで、キャリアアップにもつながります。看護師になるには、3年または4年の時間がかかりますが、それに見合うメリットは十分得られる仕事です。

古市菜緒
【監修者】バースコンサルタント代表、助産師・看護師・保健師古市菜緒

助産師として1万件以上の出産に携わり、8千人以上の方を対象に産前・産後のセミナー講師を務める。海外での生活を機にバースコンサルタントを起ち上げ、現在「妊娠・出産・育児」関連のサービスの提供、アドバイスを行う。関連記事の執筆・監修、商品・サービスの監修、産院のコンサルタント、国・自治体の母子保健関連施策などに従事。

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