介護の仕事は人手不足?人手が足りない原因や解決策、介護の魅力とは

介護業界はこれまでにない人手不足の問題に直面しています。超高齢社会に突入している日本において介護ニーズが高まる中、足りない人手をどのように埋めていけばよいのでしょうか?今後の業界の動向や人手不足に陥る原因、介護職の将来性などを解説します。

この記事のポイント

介護業界が人手不足な原因
介護職は給与水準が低い傾向にあることが理由の1つとなります。また、体力面での不安から離職率も高いことが原因となっています。
人手不足を解決する方法
介護職員の負担軽減の試みとして、ITを導入する業界が増えています。2022年には処遇改善における新制度を儲けるなど、賃上げ効果も期待できます。
介護の仕事の魅力とは
自分の仕事にやりがいや誇りを感じることのできる仕事です!未経験からでも始められ、長く働くほど収入は安定します。

介護業界は人手不足なのか?

高齢者と笑顔の介護士

(出典) photo-ac.com

テレビや新聞などで「介護業界は人手が足りない」という話を耳にしたことはないでしょうか? 日本では、総人口に占める高齢者の割合が年々高くなっています。介護ニーズが高まる中、介護業界の人手は足りているのでしょうか?

データから確認する業界動向

公益財団法人介護労働安定センターが2021年に実施した「介護労働実態調査」によると、介護事業所全体における「人材の不足感」は、前年の60.8%を上回る63.0%でした。

  • 大いに不足:8.5%
  • 不足:21.5%
  • やや不足:33.0%
  • 適当:36.6%
  • 過剰:0.4%

職種別では、訪問介護員の不足感が最も顕著で、80.6%となっています。

厚生労働省によると、要介護者の増加に伴い、介護職員の必要数も年々増加しています。以下は、第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数です。

  • 2023年度:約233万人
  • 2025年度:約243万人
  • 2040年度:約280万人

参考:
令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について|公益財団法人 介護労働安定センター
第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省

人手不足の背景

人手不足の背景には、日本の少子高齢化が急速に進んでいることが挙げられます。「令和4年版高齢社会白書」によると、2021年10月における日本の高齢化率(総人口に対する65歳以上の人口の割合)は28.9%にも上っているのが実情です。

国内では生産年齢人口が減少しており、高齢者の増加と生産年齢人口の減少というアンバランスな状態が続いています。

少子高齢化による人手不足は、介護業界に限りません。多くの業界では、激しい人材獲得競争に勝ち抜かなければ、優秀な人材が獲得できない状況になっているのです。

参考:1高齢化の現状と将来像|令和4年版高齢社会白書(全体版)|内閣府

介護業界が人手不足な原因

介護士の女性

(出典) photo-ac.com

介護業界では人手不足が慢性化しています。介護職は大きな需要が見込まれる職種なのにもかかわらず、なぜ人手不足が解消されないのでしょうか?

人材確保が難しい

2017年に実施された「介護労働実態調査」によると、人手が不足する原因の第1位が「採用が困難である(88.5%)」でした。高齢化に伴って事業所数が増える一方で、肝心の働き手が確保できない状態になっているのです。

採用が困難であると回答した事業所のうち、56.9%が「同業他社との人材獲得競争が厳しい」と答えています。他よりも魅力的な労働条件を提示できなければ、人材確保が困難であることがうかがえるでしょう。

参考:平成29年度 「介護労働実態調査」の結果|公益財団法人 介護労働安定センター

仕事が大変というイメージ

「介護職は仕事が大変」というイメージが、多くの求職者を遠ざけているようです。介護職の仕事は、生活援助・身体介護・通院介助に大別されます。

中でも、利用者の体に直接触れて行う身体介護は、肉体的・精神的な負担が大きく、誰でも簡単にこなせる仕事ではありません。加えて、入居型の介護施設では夜勤があるため、生活のリズムが不規則になる可能性があります。

実際「腰痛や体力に不安がある」として離職する人が多く、人手不足に拍車がかかっているようです。

仕事内容に比べて給与水準が低い

仕事が大変でも収入が多ければ働く意欲が湧きますが、介護職は給与水準が低い傾向があります。介護業界の人手不足は、他業界に人が流れていった結果ともいえるでしょう。

「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、介護職員(医療・福祉施設等)の平均年収は約352万円※です。民間給与実態統計調査によれば、民間における給与所得者の平均年収は約443万円なので、比較すると給与水準は決して高くはありません。

なお、2022年には「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金(2~9月)」を経て、介護職員の処遇改善のための「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算(10月~)」が設けられました。新制度の下では、一定の賃上げ効果が期待できるでしょう。

※決まって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額で算出

参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | 政府統計の総合窓口
令和3年分民間給与実態統計調査結果について|国税庁企画課

人手不足を解決する方法は?

車いすを押す介護士の女性

(出典) photo-ac.com

慢性化する人手不足に対し、国や事業者はただ手をこまねいているわけではありません。人材確保と介護職の処遇改善を目的に、さまざまな施策を講じています。

働きやすい環境を整える

人手不足を解決するには、現場の環境整備が欠かせません。職員一人一人の負担が軽くなるような仕組みを導入することが、離職率の低下につながると考えられます。

介護職員処遇改善のための国の施策を最大限に活用するとともに、事業所内の業務効率化を図っていくことが重要です。

近年は、業務効率化や人手不足の解消のため、ITを導入する業界が増えています。介護現場でも記録の電子化やICT機器の導入によって、介護職員の負担を軽減しようとする試みが始まっているようです。

外国人労働者の採用

人材確保の大きな柱となっているのが、外国人労働者です。少子高齢化によって労働人口がますます減少することを考えれば、採用対象を日本人以外にも広げる必要性があります。

「事業所における介護労働実態調査結果報告書(令和3年度介護労働実態調査)」によると、外国籍労働者を受け入れている事業所は8.2%に留まりました。「新たに活用する予定がある」とする事業所は11.7%です。

外国人労働者の採用に当たり、「利用者等との意思疎通において不安がある」と答える事業所が59.1%を占めており、言葉の壁をどう乗り越えていくかが課題となるでしょう。

参考:外国籍労働者の受け入れ(問16①②③)|事業所における介護労働実態調査結果報告書(令和3年度介護労働実態調査)|公益財団法人 介護労働安定センター

介護の仕事の魅力とは

高齢者と介護士の女性

(出典) photo-ac.com

介護職を経験したことがない人は、仕事の大変さや賃金の低さばかりに目がいきがちですが、自分の仕事にやりがいや誇りを感じている現役の職員は少なくありません。介護の仕事にはどのような魅力があるのでしょうか?

感謝の言葉をもらえる

介護職は、高齢者や体が不自由な人のサポートをする仕事です。身の回りのことが自分でできない利用者にとって、介護職員の存在は大きいといえるでしょう。

利用者やその家族に「ありがとう」「いつも助かっているよ」という感謝の言葉をかけてもらったとき、多くの人は介護職をやっていてよかったと感じるようです。

世の中にはたくさんの職業がありますが、感謝の言葉を直接聞ける仕事はそう多くはないでしょう。「誰かの役に立ちたい」「困っている人に手を差し伸べたい」という人にとっては天職といえるかもしれません。

人生の先輩から学べることが多い

介護を必要とする人のほとんどは、65歳以上の高齢者です。介護職未経験の人は「高齢者ばかりで刺激がない」と思うかもしれません。

しかし見方を変えれば、高齢者は「人生の大先輩」です。介護の仕事を通して、さまざまな学びや気付きを得る人は少なくありません。

介護施設には、人生の最期を迎える人も多く入所しています。利用者を看取る経験をすることで、どのような人生を過ごし、どのように最期を締めくくりたいかを考えさせられる人も多いようです。

未経験からでも働ける

介護の仕事は、未経験からでも始められます。デイサービスや老人ホームなどの介護施設内で働く場合は、必ずしも資格や経験を必要としません。

先輩職員の下で経験を積みながら、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修などの資格を取る人もいます。実務経験を積み重ねる中で、取れる資格が増えていくことも魅力といえるでしょう。

人手不足が続く介護業界は他業種に比べて求人情報が多く、就職・転職がしやすいのもメリットです。勤務年数が長いベテラン職員や有資格者に対する手当も充実しており、長く働けば働くほど収入は安定するでしょう。

将来性を考えるなら介護はおすすめの仕事

手を取る介護士と高齢者

(出典) photo-ac.com

少子高齢化の影響で、介護職のニーズは右肩上がりです。介護職は経験や年齢を問わないため、「何か新しい仕事に挑戦してみたい」という人にはぴったりでしょう。給与水準が低いといわれていますが、処遇は年々改善しています。

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