保育士は現代の社会において必要不可欠な職種ですが、保育士を目指す人の中には勤務体制や労働環境を不安視する人もいるでしょう。中でも保育士は、勤務時間が長いイメージが根強いことも事実です。実際に働く保育士の勤務時間や労働環境について解説します。
保育士の主な勤務体制
保育士の勤務体制は就業する保育園によって異なりますが、主に3種類の勤務体制で働くのが一般的です。それぞれの勤務体制について解説します。
決められた勤務パターンで働く「シフト制」
「シフト制」は、曜日や時間が固定ではなく、交代制で働く勤務体制のことを指します。
多くの保育園で採用している勤務体制は、シフト制です。主に以下のような種類で分けられます。
- 完全シフト制…保育園側の勤務パターンの中から、希望する曜日や勤務時間を選ぶもの
- 固定シフト制…事前に双方の話し合いで決めた曜日や勤務時間で働き続けるもの
シフト制の勤務時間は、1日8時間の実働時間で、週2日の休日が含まれるのが一般的です。開園時間が長い保育園では「朝番」「中番」「遅番」の3パターンでシフトを組み、保育士が交代で勤務します。
また、公立保育園で延長保育がないところでは、2交代制のところもあり、シフトの組み方は、園の規模や保育士の人数により異なります。
同じ時間で働く「固定時間制」
固定時間制とは、勤務時間が「8時から17時」「9時から18時」など、各保育園の就業規則によって、実働時間が8時間になるよう固定された勤務体制のことを指します。
一般企業のように働く曜日や勤務時間が固定されているので、保育士としては予定が立てやすく、働きやすいというメリットがあるでしょう。子育てとの両立もしやすいため、固定時間制を希望する保育士もいます。
1日の勤務時間を自由に変えられる「変形労働時間制」
変形労働時間制は、月や年の中で勤務時間を調整できる勤務体制のことを指します。業務量の多さに応じて調整できるため、効率的な働き方が可能です。
例えば、園の行事が集中する繁忙期などは1日10時間勤務にし、業務量が比較的少ない夏休みや冬休み期間を短時間勤務にするなど、定められた労働時間の中で加減調整することで効率よく勤務できます。
労働基準法では、1日8時間(週40時間以内)が法定の労働時間です。それを超えた労働時間は、残業時間として計算されます。
変形労働時間制は、週単位・月単位・年単位があり、就業する保育園によって異なるようです。
保育士の勤務時間と休日の傾向
保育士を目指す人にとって、勤務時間や休日についても気になる部分ではないでしょうか。実際に働く保育士のデータを元に解説します。
正規職員の実働時間の平均は週40時間
「全国保育協議会会員の実態調査報告書2021」によると、正規職員の1週間あたりの実働時間は以下のように報告されています。
- 週40時間以上50時間未満…約6割
- 週30時間以上40時間未満…約4割
この分布から分かる通り、正規職員の保育士のほとんどは、1週間あたり30時間から50時間の間で働いています。平均すると1週間あたりの実働時間は約40時間で、週5日の稼働とすると1日約8時間です。
また、民間保育園の方が、公立保育園よりも実働時間がやや長い傾向にあることも確認できます。
参考:全国保育協議会会員の実態調査報告書2021|社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国保育協議会
やむを得ないサービス残業もある
女性の就業率の増加に合わせて、保育園側も延長保育などのサービスを充実させ、受け皿を広げています。
延長保育により保育の時間が長くなると、保育以外の業務を行う時間が減ってしまいます。そのため、業務時間内に終わらなかった仕事を、やむを得ず自宅に持ち帰る保育士もいるようです。
自宅で行う業務は、保育園の仕事であっても残業手当は発生しないため、ほとんどの場合、サービス残業になります。
保育士の残業時間はさほど多くはないものの、勤務時間が長いといわれるのは、こうした実態も要因の1つといえるでしょう。
保育士の主な休日は日曜・祝日
保育士の休日は、一般的に保育園が休みとなる日曜日と祝日です。
保育園によっては土曜日も預かり保育などで開園していたり、行事があったりした場合は、休日出勤を求められることもあるでしょう。
ただし、その場合は振替休日があります。例えば土曜日に出勤した場合は、振替休日として別の出勤日を休みにする保育園が多いようです。
土日が固定休のところが多い一般企業と比較すると、保育士の年間休日は少ない傾向にありますが、平均して年間100日から110日が休日として与えられています。
保育士の勤務時間が長いといわれる要因
保育士の勤務時間や残業時間が長いといわれる要因は、どこにあるのでしょうか。詳しく解説します。
延長保育や夜間保育の増加
保育士の勤務時間が長いといわれる要因の1つが、延長保育や夜間保育によるものです。
女性の就業率が増加し、共働き世帯が増えたことにより、保育園を利用する家庭のニーズに合わせて延長保育や夜間保育を行うところが多くあります。中には深夜保育に対応したり、24時間保育を行ったりする保育園もあります。
早朝や深夜に働ける保育士は需要が高い一方で、日中よりも働きにくい時間であることから人手が集まりにくい側面もあります。そのため、深夜はパートや派遣の保育士がシフトに入ることが多いようです。
早朝や深夜の時給は、日中に比べると高いため、効率よく稼ぎたい保育士にとっては魅力といえます。
保育士の慢性的な人手不足による負担増
厚生労働省の調査によると、2017年末時点で不足している保育士の人数は、約7.4万人となっています。保育士は全職種と比較しても有効求人倍率は高い水準であるものの、全国的に慢性的な人手不足の状況です。
さらに、2019年末からは新型コロナウイルス感染症も流行し、職員の感染から通常の保育体制を整えられず、人手不足や負担増加も深刻化しています。
保育園によっては通常時でも適正な保育士の人数が足りず、少ない保育士で園を運営するところもあります※。
この場合、現状の保育士で仕事を回さなければならないため、1人あたりの業務負担が増えざるを得ません。保育士の人手不足が原因により残業が増え、結果的に労働時間が長くなる傾向があります。
※厚生労働省「児童福祉施設最低基準」を満たしている範囲
参考:
保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて|厚生労働省
保育⼠の有効求⼈倍率の推移(全国)|こども家庭庁
児童福祉施設最低基準の条例委任について - 厚生労働省
保育士を取り巻く労働環境の変化
保育士の人手不足が問題になっている中、保育士の重要性が見直され、より働きやすい環境にするための取り組みが行われています。主な2点について解説します。
キャリアアップがしやすい取り組み
保育士が役職へキャリアアップするには、長期にわたる勤続年数が必要とされていました。例えば「主任保育士」では平均勤続年数21年、「園長」では平均勤続年数24年です。これを改善するため、厚生労働省により保育士がキャリアアップをしやすくする以下のような取り組みが行われています。
- キャリアアップ研修の創設
- 職務分野別リーダー・副主任保育士・専門リーダーを新たに設ける
保育士の労働環境を改善し、給与改善や保育の質を向上させるための取り組みです。今までより保育士のキャリアアップへの敷居が低くなることで、モチベーションを維持できる人も多いでしょう。
参考:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ|厚生労働省
保育士の重要性が見直され給与改善も
保育士は国家資格が必要で、なおかつ子どもの命を預かる重要な職種にもかかわらず、仕事内容に見合わない給与や待遇の低さがあるといわれてきました。
厚生労働省では、民間保育園で働く保育士の仕事の重要性を見直し、給与改善が取り組まれています。
2022年2月から、保育士・幼稚園教諭を対象に、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げる措置がとられるなど、保育士を取り巻く労働環境は改善されつつあります。
自分が無理なく働ける環境の保育園で働こう
保育士を目指している人の中には、実際に保育士として働く際の勤務時間の長さや、休日が気になる人も多いでしょう。
保育園の規模や運営方針などにより勤務時間は異なるため、就業場所の勤務条件を吟味し、自分が無理なく働ける環境の保育園を選ぶのが大切です。
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