ソーシャルワーカーとしての知識やスキルを示すには資格取得が役立ちます。今後のキャリアに役立てられるよう、ソーシャルワーカーの資格の特徴を見ていきましょう。資格取得までの道のりや取得方法、ソーシャルワーカーの種類などもチェックします。
ソーシャルワーカーに役立つ資格
ソーシャルワーカーに役立つ資格として、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士・社会福祉主事があげられます。それぞれどのような特徴のある資格なのでしょうか?
社会福祉士
社会福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」第2条第1項により定められている国家資格です。習得した専門的な知識を活用し、身体や精神の障害や環境的な要因から日常生活に困難がある人へ以下のようなサポートを行います。
- 相談内容へのアドバイス
- 相談内容への指導
- 福祉サービスや保健医療サービスを提供する関係者との連絡や調整
これらに当てはまらないサポートも必要に応じて行います。資格を取得していると、福祉に対する高い専門性を持っている人材として評価されやすいでしょう。実際の現場では、生活指導員や支援専門員として、サポートを必要とする人の相談に乗ります。
参考:
社会福祉士国家試験|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
社会福祉士及び介護福祉士法|e-Gov法令検索
精神保健福祉士
「精神保健福祉士法」第2条において定められている国家資格が精神保健福祉士です。精神障害者の保健や福祉についての専門知識を用い、精神障害の医療を受けている人や、社会復帰を促す役割を担う施設へ入居している人の相談に乗ります。
相談に対するアドバイスや指導の実施に加え、日常の暮らしをスムーズに送れるよう訓練するのも精神保健福祉士の役割の1つです。「令和4年版 障害者白書」によると、外来を受診する精神障害者の人数は以下のとおり推移しており、増加傾向であると分かります。
- 2011年:287万8,000人
- 2014年:361万1,000人
- 2017年:389万1,000人
精神保健福祉士を保有するソーシャルワーカーであれば、精神障害を持つ人に対し、より適したサポートを提供できるでしょう。
参考:
精神保健福祉士国家試験 資格制度の概要|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
精神保健福祉士法 | e-Gov法令検索
令和4年版 障害者白書 P.218|内閣府
介護福祉士
介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」第2条第2項で定められている国家資格です。介護福祉士が携わるのは、主に介護の現場における仕事です。身体や精神に障害があり、日常生活を送るのが困難な人をサポートします。
例えば食事の支度や洗濯などの生活支援や、食事・入浴などを手助けする身体介護などです。ほかにもよりよい介護を提供するために、利用者やその家族からの相談を受けたり、アドバイスを行ったりもします。
日常生活のサポートがメインの仕事になるケースが多く、ほかの資格と比べると体力が必要なシーンが多いでしょう。
参考:
介護福祉士国家試験|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
社会福祉士及び介護福祉士法 | e-Gov法令検索
社会福祉主事
社会福祉主事は「社会福祉法」第19条で定められている任用資格です。任用資格のため資格を取得しただけでは社会福祉主事と名乗れません。地方公務員試験に合格し福祉事務所で勤務し始めることで、社会福祉主事と名乗り業務に携われます。
福祉事務所では以下の職種で資格が必要です。
- 現業員
- 査察指導員
- 老人福祉指導主事
- 家庭児童福祉主事 ※加えて児童福祉事業従事2年以上等ほかの条件も必要
- 家庭相談員 ※加えて児童福祉事業従事2年以上等の条件も必要
- 母子相談員
公務員として各種相談所で児童福祉司・知的障害者福祉司・身体障害者福祉司として勤務するときにも、それぞれの福祉事業に2年以上従事することなどの条件に加え、資格保有が必要です。
ほかに民間の社会福祉施設で、施設長や生活指導員などの資格要件とされているケースもあります。
資格を取得するメリット
ソーシャルワーカーは社会福祉支援に携わる人のことを意味する言葉です。業務に必要な知識やスキルがあれば、必ずしも資格を持っている必要はありません。必須ではないソーシャルワーカーの資格には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
専門知識があるという証明に
初めて会う人材の持つ知識やスキルを正しく見極めるのは難しいことです。ソーシャルワーカーとして、より希望の条件に合う職場へ転職するとき、応募先の人事担当者へ自分の知識やスキルを客観的に示すときに資格が役立ちます。
資格を持っているということは、受験資格を満たすための勉強や関連業務へ従事した経験があり、その中で知識を身に付け合格していることを示せるためです。
実際に働き始めると、利用者やその家族から、専門家として信頼されやすいのもメリットといえます。
ソーシャルワーカーの資格の難易度
同じソーシャルワーカーの資格でも難易度は異なります。特徴を紹介した社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士・社会福祉主事の4種類について、難易度を見ていきましょう。
資格の種類によってさまざま
4種類の国家資格や任用資格の難易度をチェックするため、2022年に行われた試験の合格率を比較します。
- 社会福祉士:31.1%
- 精神保健福祉士:65.6%
- 介護福祉士:72.3%
- 社会福祉主事:認定講習受講で取得のため合格率はなし
社会福祉士の合格率は合格率が発表される3種類の中で1番低く、福祉系の国家資格の中では高難易度です。精神保健福祉士や介護福祉士の難易度はそれほど高くありません。必要な学習に取り組んでいれば合格できるでしょう。
試験ではなく認定講習のみで取得できる社会福祉主事は、4種類の中で難易度の低い資格です。必要な講習をもれなく受講すれば取得できます。
参考:
第34回社会福祉士国家試験合格発表|厚生労働省
第24回精神保健福祉士国家試験の合格発表を実施します|厚生労働省
第34回介護福祉士国家試験合格発表|厚生労働省
資格の取得方法
ソーシャルワーカーとして働くときに役立つ4種類の資格は、決められている数種類のルートを進まなければ受験資格を得られません。資格を取得するまでのステップを紹介します。
社会福祉士
社会福祉士の受験資格を得るルートは12種類です。養成施設へ通わずに受験資格を得られるのは、福祉系の大学や短期大学で指定科目を履修した場合に限られます。
そのほかのルートでは6カ月以上の短期養成施設か、1年以上の一般養成施設へ通わなければいけません。養成施設の中には通信制もあるため、働きながら受験資格を得て資格取得を目指すことも可能です。
加えて養成施設へ通う前に相談援助の実務経験が必要なルートもあります。国家資格に合格すると、登録により社会福祉士の資格を取得できます。
参考:社会福祉士国家試験 受験資格 資格取得ルート図|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
精神保健福祉士
精神保健福祉士の受験資格を得るには11種類のルートがあります。保健福祉系の大学や短期大学で医学概論や障害者福祉など22の指定科目を履修すると、養成施設へ通うことなく受験資格を得られます。
福祉系大学・短期大学等で12の基礎科目を履修している場合や、社会福祉士の登録者であれば、6カ月以上の短期養成施設等へ通えば受験資格を獲得可能です。また一般の大学や短期大学を卒業したか必要な4年の実務経験があれば、1年以上の一般養成施設等で受験できます。
短期養成施設や一般養成施設は通信制もあるため、近隣に対象の養成施設がない場合や働きながら学ぶ場合も取り組めます。試験に合格し登録を済ませれば、精神保健福祉士の資格を取得可能です。
参考:精神保健福祉士国家試験 受験資格 資格取得ルート図|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
介護福祉士
介護福祉士の受験資格を獲得するルートは大きく分けて以下の4種類です。
- 養成施設ルート:高校卒業後に養成施設へ通う
- 実務経験ルート:実務経験と研修への参加
- 福祉系高校ルート:福祉系高校へ進学する ※特例高校等は実務経験や講習の受講も必要
- 経済連携協定(EPA)ルート:介護福祉士資格取得のための研修を受けながら働く ※インドネシア人・フィリピン人・ベトナム人のEPA介護福祉士候補者のためのルート
受験資格を得たら、筆記試験と必要に応じて実技試験を行い、合格後登録すると資格を取得できます。
参考:介護福祉士国家試験 受験資格|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
社会福祉主事
社会福祉主事の任用資格を取得するには5種類の方法があります。
- 大学等で社会福祉に関する科目を3科目以上履修し卒業
- 全社協中央福祉学院社会福祉主事資格認定通信課程もしくは日本社会事業大学通信教育化の修了
- 指定養成機関の修了
- 都道府県等の行う講習会の受講
- 社会福祉士・精神保健福祉士等の資格を持っていること
試験に合格する必要はなく、定められた科目の履修や講座の受講などで取得可能です。
ソーシャルワーカーの種類
ソーシャルワーカーが活躍する範囲は広く、分野によって求められる知識やスキルが異なります。就職・転職に向け今後のキャリアを考える際の参考になるよう、3種類のソーシャルワーカーをチェックしましょう。
医療ソーシャルワーカー
主に病院の福祉相談室で働くのが医療ソーシャルワーカーです。病院へ入院している本人やその家族はさまざまな悩みを抱えています。
悩みの解消に向け、社会制度の利用方法をアドバイスするのは医療ソーシャルワーカーの役割の1つです。例えば高額の入院費用を負担するのが難しいという人には、高額療養費制度を案内します。
退院後の生活サポートとして、福祉用具のアドバイスや介護施設を紹介することもあります。
コミュニティーソーシャルワーカー
高齢者や障害者・子育て中の親など、支援を必要とするあらゆる人をサポートするコミュニティーソーシャルワーカーは、活躍の範囲が広いのが特徴です。
課題を抱えている人の中には、公的な福祉制度では対応しきれないケースもあります。どの制度にも該当せず必要なサポートを受けられない場合や、これまでとは全く異なるサポートを必要としていることもあるでしょう。
必要な支援ができるよう、人材・制度・サービスなど利用できる資源を組み合わせるコーディネーターとしての役割を担います。
精神科ソーシャルワーカー
精神保健福祉士の資格を持ち、精神障害のある人やその家族をサポートするのが精神科ソーシャルワーカーです。患者の症状についての相談を受けるのはもちろん、生活する上での課題解決へ向けたアドバイスも行います。
適切な支援をするために、医師や医療機関との連携が欠かせません。主な職場は精神科のある医療機関や障害福祉サービス事業所・福祉行政機関などです。
資格を取得してソーシャルワーカーに
社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士・社会福祉主事といった資格は、ソーシャルワーカーの就職や転職に役立ちます。資格は必須ではないため取得しなくてもソーシャルワーカーの仕事は可能ですが、資格があると身に付けた知識やスキルを客観的に示しアピールしやすくなります。
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