看護師の役割とチーム医療で求められることは?勤務先別の違いも紹介

看護師の役割は配属される部署によって異なります。また、最近注目されているチーム医療では、看護師がキーパーソンともいわれています。しかし、具体的にどのような役割を果たしているのか分からない人もいるでしょう。看護師の役割を勤務先別に紹介します。

看護師の基本的な役割

打ち合わせをする看護師と医者

(出典) photo-ac.com

公益社団法人日本看護協会の「ICN看護師の定義」によると、看護師の基本的な役割は、主に「健康の増進」「疾病の予防」「健康の回復」「苦痛の緩和と尊厳ある死の推奨」の4つに分けられます。

具体的にはどのような役割を担っているのか、勤務先の医療機関ごとに見てみましょう。

参考:ICN 看護師の倫理綱領(2021年版)|公益社団法人日本看護協会 | Japanese Nursing Association

クリニック・外来勤務の看護師の役割

クリニックや外来に勤務する看護師の役割は、医師の診療の介助や、採血などのサポートです。患者の病状などを捉え、必要なときは生活指導や処置の説明なども行います。

クリニックや規模が小さい病院などでは、他の医療機関から医師が来て診療する場合もあります。そのようなときの、医師のサポートも看護師の役割です。

個人経営のクリニックなどでは、看護業務以外に受付などを任されることも少なくありません。入院施設がある病院の外来では、入院が必要になった患者の情報を病棟看護師へ申し送りするのも重要な仕事の1つです。

病棟勤務の看護師の役割

病棟に勤務する看護師は、入院中の患者の安全と快適な生活を支える役割を担っています。具体的な業務は、バイタルサインの測定や、注射・採血・与薬など、患者の健康状態の観察や症状回復のサポートなどです。

患者からのナースコールへの対応・生活介助や、身の回りの世話なども看護師の役割とされています。これらの基本的な業務に加えて、配属される病棟ごとに異なる仕事内容もあります。

例えば、地域包括ケア病棟では、ソーシャルワーカーなど、他職種スタッフ間の連携や調整も、看護師に任されている大切な役割です。

看護師がキーパーソンとなるチーム医療とは

カルテを見ながら考えている看護師

(出典) photo-ac.com

近年、日本でも「チーム医療」による医療の提供が推進されています。チーム医療の定義や、チーム内で看護師の果たす役割について詳しく説明します。

複数の専門家が連携する医療

チーム医療とは、医師や看護師だけでなく、さまざまな医療スタッフがチームを組んで1人の患者のケアをします。

複数の医療の専門家が連携して関わることで、患者のQOL(生活の質)を維持・向上させ、その人にふさわしい治療を提供できるのがメリットです。

医療技術の進化によって医療機器も高度化したため、医師だけでなく臨床工学技士の専門性も必要になったことが、チーム医療推進の理由の1つとされています。また、患者の早期社会復帰のためにも、チーム医療の必要性が高まっています。

チーム医療での看護師の役割

チーム医療での看護師の主な役割は、患者やその家族と、チーム内のスタッフとの「橋渡し役」です。患者の中には、治療に対する自分の思いや不安などを上手に伝えられない人もいるでしょう。

そのため、患者に一番近い場所で医療行為に携わる看護師が、チーム内の医療スタッフに情報提供する必要があります。患者の家族とも連携して治療を進めるため、治療方針などの説明も看護師が担います。

また、他職種が医療に携わるチーム医療では、スタッフ間のスムーズな連携が重要です。看護師がキーパーソンとなって、スタッフ間の調整をします。

チーム医療での主な看護師の役割

看護師たちのミーティング

(出典) photo-ac.com

チーム医療は、対象となる患者の症状や医療内容によって、さまざまな種類に分かれています。主なチーム医療を6つ挙げて、看護師の役割を具体的に見ていきましょう。

呼吸ケアサポートチーム

呼吸ケアサポートまたは、呼吸サポートと呼ばれるチームでは、呼吸疾患などで人工呼吸器を装着するなど、呼吸に影響が疑われる患者を対象としています。

呼吸ケアサポートチーム内の看護師の役割は、24時間体制で患者の呼吸機能や全身の状態を観察・評価することです。

長期間寝たきりになっている患者や、人工呼吸器を装着した患者に対しては、痰を排出したり、誤嚥性肺炎などを防ぐために口腔内をケアしたりもします。在宅で酸素療法を行う患者へは、呼吸や排痰の仕方なども指導します。

リハビリテーションチーム

リハビリテーションチームでは、急性期を脱した患者の身体機能回復や、心身に障害があり、日常生活に支障がある患者のリハビリを目的としています。

看護師の役割は、大きく分けて身体状態の管理・リハビリ看護・精神的なサポートなどです。24時間体制によるバイタルチェックで全身状態を観察・評価し、安全にリハビリできるのか判断してチーム内のスタッフに情報共有します。

入院が長期化する患者の不安や悩みに寄り添ったり、退院後の在宅療養に向けて生活指導したりするのも看護師の役割です。

緩和ケアチーム

緩和ケアチームは、末期がんや治療が困難な難病などで、余命宣告された患者を対象にしています。チームの目的は、患者の苦痛を取り除き、生活の質を改善することを目的としています。

チーム内の看護師の役割は、患者の価値観や意志を尊重しながら、家族も交えて必要なケアの内容を考えていくことです。

基本的に病気回復を目的とした治療はしないため、患者が自分らしく終末期を過ごせるよう、心理的・社会的にサポートします。また、患者が亡くなった後の家族への精神的なサポートも、看護師の大切な仕事です。

褥瘡管理チーム

褥瘡(床ずれ)管理チームは、寝たきりや寝たきりに近い患者をはじめ、栄養状況が悪い患者や常時車椅子を使用している患者などを対象としています。褥瘡管理チームの看護師の役割は、褥瘡予防や早期発見・患部のケアなどです。

24時間体制で全身の状態を観察し、オムツや寝具の交換・肌の保湿ケアなどを行います。寝たきりになっている患者には、褥瘡予防のために体位変換をアドバイスしたり、寝具を調整したりしなければなりません。

褥瘡ができている場合は、薬剤や傷口を保護するドレッシング材などを使って治癒を目指します。車椅子を使用している患者には、圧迫によってお尻に褥瘡ができないよう、座面のマットを調整します。

栄養サポートチーム

栄養サポートチームは、経管栄養投入中や栄養状態が悪化している患者を対象としています。栄養状態の改善をサポートし、症状の悪化・合併症の予防が目的です。

看護師の主な役割は、患者の栄養管理や、本人・家族への説明です。経管栄養を実施している患者の輸液を管理したり、経口摂取が可能な患者の摂食状況や、嚥下状態の確認・口腔内のケアをしたりします。

患者の栄養状況や、味覚・嗜好に合わせた栄養補助食品の選択や、適切な栄養補給のサポートもします。

リエゾンチーム

リエゾンチームとは、フランス語の「リエゾン(仲介、橋渡し)」の意味の通り、患者の状態を把握し、精神科の専門的な医療が必要だと判断したときには、精神科医療へとつなぐのがチームの目的です。一般病棟への入院中に、せん妄や抑うつなどの症状が現れ、心理状態が悪化した患者らを対象としています。

リエゾンチームには、基本的に精神看護専門の看護師が配属されます。看護師の役割は、主に精神看護の必要性を見極めるためのアセスメントなど、患者や家族に対するケアです。

病棟看護師へのアドバイスや、心理的サポートも仕事のうちに含まれます。さらに、精神看護教育や専門看護師資格取得を目指す人へ向けて、ガイダンスや指導もします。

病院以外に勤務する看護師の役割

カルテをつける白衣の女性

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看護師は、病院以外にも多種多様な場所で働いています。病院以外の職場を4つ挙げて、具体的な役割を紹介します。

一般企業で働く看護師の役割

一般企業の医務室などに所属して、産業看護師として働いている人もいます。一般的に1つの企業に1人だけ配属されていることがほとんどです。産業看護師の主な役割は、従業員の健康管理です。

健康診断の準備や、結果によっては保健指導や生活改善などの支援もします。従業員のケガや病気など、緊急時の応急処置だけでなく、過重労働への対策や、メンタルヘルスに関する相談などにも対応します。

メンタルケアが必要な従業員と、産業医が面談できるよう調整するのも、産業看護師の大切な仕事です。

保育園・幼稚園で働く看護師の役割

保育園や幼稚園に勤務している看護師は、基本的に医療行為を行いません。主な役割は、子ども・職員・保護者の健康管理や、施設内の衛生指導です。

具体的な業務には、ケガや体調不良を起こす園児への対応・アレルギーや障害のある子どもへのケア・職員への緊急対処法の指導などが含まれます。

園内で行う健康診断・身体測定・歯科検診などの補助や、保健だよりの発行・予防接種の情報提供なども看護師の仕事です。また、保育園では看護師1名を保育士としてカウントできるので、主に0~1歳児の保育をサポートするケースもあります。

訪問看護ステーションで働く看護師の役割

訪問看護ステーションで働く看護師の役割には、療養に関するサポートと、地域での他職種連携の2つがあります。

療養に関するサポートでは、利用者の自宅へ訪問して、病状の観察・医師の指示の下による医療行為・リハビリ・褥瘡の予防や、処置・認知症ケアなどを行います。

療養生活を安全かつ、快適に過ごすための環境調整も、訪問看護師の仕事です。余命がわずかな人へのターミナルケアでは、家族へのアドバイスや精神的なサポートもします。

地域の他職種との連携では、介護保険サービスの利用方法に関する相談や、医療機関や自治体の窓口の紹介なども対応します。

健診センターで働く看護師の役割

健診センターで働く看護師の役割は、主に検査をスムーズかつ、安全に実施できるようにすることです。患者が対象ではないので、医療行為は行いません。

問診・身体測定・血圧測定・採血などの健診項目の実施や検査補助のほか、健診結果のチェックや、精密検査の予約・手配などが看護師の主な仕事です。

受診者の不安を取り除き、リラックスして健診を受けられるよう、もてなす役割を求められることもあります。また、勤務する施設によっては検診車での巡回健診への同行や、宿泊を伴う出張健診などにも対応します。

看護師に求められる役割は働く場所によって異なる

カルテを持っている白衣の女性

(出典) photo-ac.com

看護師の基本的な役割は、患者の健康維持や回復に向けた治療の補助・介助です。基本的な役割に加えて、勤務している職場で求められる役割が異なります。しかし、どのような職場でも共通しているのは、患者や家族と一番近い存在にいるキーパーソンとして、重要な役割を果たしていることです。

命に関わる職種なので、役割を果たすプレッシャーや負担は重いですが、その分大きなやりがいを得られます。今回紹介した以外にも、看護師が重要な役割を果たしている職場は数多くあります。

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古市菜緒
【監修者】バースコンサルタント代表、助産師・看護師・保健師古市菜緒

助産師として1万件以上の出産に携わり、8千人以上の方を対象に産前・産後のセミナー講師を務める。海外での生活を機にバースコンサルタントを起ち上げ、現在「妊娠・出産・育児」関連のサービスの提供、アドバイスを行う。関連記事の執筆・監修、商品・サービスの監修、産院のコンサルタント、国・自治体の母子保健関連施策などに従事。

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