教員の定年に関する法改正を知り、教員になった場合の将来が気になっている人もいるのではないでしょうか?教員の定年と併せて退職金についても紹介します。定年後の働き方も確認し、ライフプラン作成の参考にしてください。
教員の定年は何歳?
法改正を受けて、教員の定年年齢は変わりました。何歳で定年になるのか確認します。法改正に至った経緯や、今後の課題についても見ていきましょう。
法改正による段階的な引き上げで65歳に
2021年の通常国会において、国家公務員の定年を65歳まで段階的に引き上げるという「改正国家公務員法」が成立し、2023年4月に施行されます。これに伴い、地方公務員法の一部も改正されました。
法改正に至った主な理由は、平均寿命が伸びたことや少子高齢化が進むことを踏まえ、知識や経験が豊富な教員が活躍できるようにするためです。
また、公的年金の支給が開始される年齢が65歳に段階的に引き上げになったことも理由の1つです。現行のままだと60歳で定年となり、無給期間が生じます。定年延長は、無給期間がないようにするための対応でもあるのです。
定年延長のスケジュール
定年年齢は、一気に引き上げられるわけではなく、2年ごとに1歳ずつ段階的に延長されます。2023年度から始まり、2031年で完了します。
2023~2024年度は61歳、2025~2026年度は62歳、2027~2028年度は63歳、2029~2030年度は64歳、2031年度以降は65歳です。
2023年度は定年退職者がおらず、その後も2年おきに定年退職者がいない年度があることになります。
定年延長にまつわる課題
定年が延長されることで、懸念されている課題も少なくありません。例えば、勤務年数が長いベテランが増えれば、支払われる給与額も高くなります。その結果、若手の給料が上がりにくくなり、減額の可能性も考えられます。
近年は教員不足が問題になっていますが、さらに深刻化する可能性があるという点も課題の1つです。定年延長により教員が増え、新規採用される人数が減るというイメージから、教員を志望する人が減るのではないかと考えられています。
また、拘束時間の長さや体力的な負担の改善も課題です。60歳以降でも無理せず働ける環境を整える必要があるでしょう。
定年延長のメリットは?
前述の通り向き合わなければならない課題はあるものの、定年延長にはプラス面もあります。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
生涯年収や年金が増える
5年間長く働けることで、生涯年収や年金が増えるのはメリットです。60歳以降の基本給は、それ以前と比較して7割と減額になりますが、勤務年数が増える分、生涯年収が増えます。
例えば、年収500万円とすると、500万円の7割の350万円×5年となるので生涯年収は1,750万円も増えることになります。
また、納める厚生年金保険料が増えるため、将来受給を見込める年金額が増えるのもメリットです。基礎年金も増える可能性があります。満額支給の納付期間は、40年です。定年が延長されることで、満額支給の条件を満たせる人も増えるでしょう。
医療費の自己負担を軽減できる
定年を延長することで、共済組合への加入を続けられるため、医療費の自己負担の軽減が延長されます。
共済組合では、公務によらない病気やけがで欠勤し報酬が支払われない場合には、「傷病手当金・傷病手当金附加金」が支給されます。また、自分ではなく家族の病気やけがによる欠勤でも「休業手当金」が支給されます。
このように、さまざまな手当金の支給資格が延長されるのもメリットです。
定年延長後の給料はどうなる?
定年延長後に収入や手当がどうなるのか、気になっている人もいるのではないでしょうか?定年延長が給料と手当に与える影響について紹介します。
基本給は7割に
当面は、61歳に達する年度以降の基本給は、定年延長前の7割になります。例えば、基本給が40万円だった場合は、28万円という具合です。
特例もありますが、管理職の場合は60歳の誕生日から最初の4月1日までの期間に、管理職ではないポストに降任になります。基準となる基本給は、降任になる前の金額です。
例えば、基本給が50万円で、降任後に40万円になったとします。この場合は、40万円ではなく50万円の7割となり、定年延長後は35万円です。
参考:国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)|内閣官房
定年延長後の手当への影響
手当については、定年延長後に下がるものと変わらないものに分かれます。基本給同様に7割になるのは、地域手当や時間外勤務手当、期末・勤勉手当などです。変わらないものには、住居手当や扶養手当、通勤手当などがあります。
管理職手当など、別途設定されるものもあります。管理監督職は、定められた期間内に非管理監督職のポストに就くことになっていますが、公務に支障が生じる場合などは、異動期間を延長することが認められているのです。
教員の定年後にもらえる退職金
退職金は、定年後のライフプランを立てる上で大切なポイントです。教員の退職金は、どのくらいなのか紹介します。定年延長した場合の退職金への影響についても確認しましょう。
60歳で定年退職した場合
60歳で定年退職した場合は、約2,000~2,300万円の退職金がもらえます。ただし、自治体や勤務する学校の種類、勤務年数などによって金額は異なります。
教育公務員の60歳定年退職者の平均支給額が最も高いのは約2,327万円の兵庫県で、次いで約2,305万円の静岡県です。三重県、京都府、神奈川県と続きます。最も支給額が低いのは、約2,061万円の沖縄県です。
また学校の種類では、大学教員の定年退職金が最も高く、次に高校教員が続きます。小学校と中学校の教員は、同じ自治体に所属しているため、同額です。
公立と私立の退職金の差
私立の場合の退職金は、約1,800万~2,300万円といわれており、公立と大差はありません。ただし、私立の場合は学校ごとに就業規則が定められており、基本給が公立よりも高い学校もあれば、低い学校もあります。
退職金は基本的に勤務年数に基本給をかけて算出されるため、基本給が高い私立では退職金も高くなる傾向があるといえるでしょう。
定年延長で退職金に影響はある?
当面の間は、延長後も定年を理由とする退職と同様の退職金が算定されます。定年を延長した場合は、60歳ではなく、実際に定年退職するタイミングでの支給です。
退職金を決める要因は、主に「退職時の給料月額」「支給率」「調整率」の3つです。定年延長後は給与が7割に減るため、退職金を算出する際の給料月額については、定年延長前と後で分けて計算されます。ただし、減額される場合、減額前の最高額を考慮して退職金の支給額を算定する「ピーク時特例」が適用されます。
支給率は勤務年数や退職理由により決まり、上限があります。通常、退職理由が自己都合よりも定年の方が支給率は高くなりますが、当面の間は定年延長後に自己都合で退職しても、定年扱いになり不利になりません。
調整率は官民格差の是正のために設定されており、定期的に見直されています。
教員定年後の働き方は?
定年後に働く方法には、延長だけではなく、いくつか選択肢があります。2つの制度と再就職について、どのようなものなのか詳細を確認しましょう。
暫定再任用制度
暫定再任用制度は、段階的引き上げ期間向けに設けられた制度です。フルタイムもしくは短時間勤務で働ける制度で、給与や手当などは現行の再任用制度と同じです。
例えば、定年の段階的引き上げ期間中に定年が62歳になった場合、62歳まで通常通りに働き、定年後に暫定再任用制度を利用して短時間勤務をし、年金が満額支給される65歳まで働けます。
ライフスタイルや体力などに合わせて勤務形態を選べ、年金が支給されるまでの無給期間がないのがメリットです。
参考:公務への再任用|人事院
定年前再任用短時間勤務制度
定年前再任用短時間勤務制度は、本人の希望により60歳に達した日以後の定年前に退職した人が対象です。一度退職しても本人が希望すれば、本来の定年時期まで短時間勤務ができる制度とされます。
フルタイム勤務はなく、給料については現行の再任用制度と同様で、定年まで働き続けるよりも金額が下がります。また、希望すれば必ず採用されるというわけではありません。
しかし、健康上の理由などで退職せざるを得ず期間が空いたとしても、再び働ける機会があるのはメリットでしょう。年金が支給されるまでの無給期間をなくしたい人にも適した制度です。
定年退職後の再就職
定年退職後もこれまでの経験を生かして働きたい場合は、ライフスタイルに合わせながら、教育関係の仕事を続けるという選択肢もあります。例えば、放課後学習支援員の仕事であれば、放課後に学校や公民館で子どもたちに勉強を教えることが可能です。
時間講師や非常勤教員として働く選択肢もあります。どちらもライフスタイルに合わせて、勤務形態をある程度柔軟に選べます。年齢制限がないため、長く働きたい人にも適しているでしょう。ただし、有効な教員免許状が必要です。
夜や週末でも働けるなど時間の融通が利く人は、塾講師や家庭教師という道もあるでしょう。
教員定年後のライフプランを考えよう
教員の定年は法改正によって段階的に引き上げられ、2023~2024年度は61歳、2025~2026年度は62歳、2027~2028年度は63歳、2029~2030年度は64歳、2031年度以降は65歳です。
定年延長後の基本給は7割程度に減りますが、生涯年収や年金が増える、医療費の自己負担が軽減するというメリットがあります。
教員の仕事は、定年後も働ける道が開かれている職業の1つです。安定した職業である教員の求人情報を探すなら、「スタンバイ」がおすすめです。勤務地や勤務形態など条件検索も可能なので、希望に合う求人が見つかるでしょう。