二級建築士を取得する方法は?難易度や独学のポイントも紹介

二級建築士は建築系の学歴がなくても取得できる資格です。とはいえ誰でも受験できるわけではなく、実務経験などの条件もあります。二級建築士を取得する方法や、試験の内容・難易度を解説します。独学で受験するためのポイントも紹介するので、参考にしましょう。

二級建築士の資格を取得する方法

手のひらに模型を載せている様子

(出典) photo-ac.com

建築士の資格を取得するには、建築系の大学などを卒業するのが一般的です。しかし、二級建築士の資格は、建築系の学歴がない人でも受験が可能です。どのような条件を満たせば受験できるのか、詳しく解説します。

実務経験を積んで受験する

建築系の学校などで、国土交通大臣が指定する科目を修了していない人でも、実務経験が7年間以上あれば、二級建築士の受験資格を得られます。

ゼネコン・ハウスメーカー・設計事務所などに勤務している人は、業務内容や携わっている期間によって、すでに受験資格を獲得しているケースもあるでしょう。

建築関係とは異なる業界で、働きながら二級建築士を目指している人は、建築業界へ転職して実務経験を積むことで、受験資格を得られます。

2020年の建築士法改正に伴い、実務経験と見なされる範囲が大幅に拡大されました。どのような業務が実務経験として認められるのか、しっかり確認しておきましょう。

参考:受験資格:建築技術教育普及センター

受験資格の対象となる実務

二級建築士を実務経験のみで受験する場合、国土交通省から対象と認められている業務に携わっている必要があります。

対象となる実務は「設計図書・施工図書などと密接なつながりのある業務」で、なおかつ「建築物全体を取りまとめる・建築関係の法規と整合性を確認する・建築物を調査・評価する」といった業務とされています。

対象となる主な実務は以下の通りです。

【対象実務】

  1. 建築物の設計に関する実務
  2. 建築物の工事監理に関する実務
  3. 建築工事の指導監督に関する実務
  4. 建築一式工事・大工工事・建築設備の設置工事の施工技術上の管理に関する実務
  5. 建築基準法第18条の3第1項に規定する確認審査などに関する実務
  6. 消防長または消防署長が建築基準法第93条第1項の規定によって同意を求められた場合に行う審査に関する業務
  7. 建築物の耐震診断に関する実務
  8. 大学院におけるインターンシップおよび関連する実務

参考:

実務経験に該当する例(新旧対照表)|建築技術教育普及センターホームページ国土交通省「新しい建築士制度の概要について」

二級建築士ができる仕事は?

設計をする手元

(出典) photo-ac.com

建築士は資格の種類によって、携われる仕事内容が異なります。二級建築士ができる仕事を具体的に見ていきましょう。

建築物の設計業務

二級建築士の仕事の1つは設計業務です。設計は、依頼主の要望をかなえつつ、利用する人の安全性や利便性などにも配慮した構造を考える業務です。なおかつ、建築関連の法令に基づいて進めていかなければなりません。

依頼主の要望が、安全上・法規上でも難しい場合は、納得できるように説明したり、代替案を提出したりすることもあります。依頼主が信頼し、安心して設計を任せられるのも、建築の専門家である建築士2級だからこそです。

二級建築士が設計できるのは、高さが13m以下かつ軒高9m以下で、延床面積1,000m2までの木造建築、または300m2までの木造以外の建物です。

参考:建築士の種類と業務範囲 建築技術教育普及センターホームページ

工事監理

二級建築士の仕事は設計業務だけではありません。工事監理も重要な仕事の1つです。工事監理とは、設計した図面通りに工事が進められているかを、現場に立ち会って確認・指導監督する仕事です。

法令を順守して設計しても、正しく工事が進められなければ安全性に欠けた建物が完成する可能性があります。

完成後の建物と設計図の記載が違っていると、行政処分を受けることもあるため、工事監理は、設計業務以上に重要な仕事ともいえるでしょう。

二級建築士を取得するメリットは?

家の模型を持っているスーツの男性

(出典) photo-ac.com

二級建築士を取得すると、収入面やキャリアにおいて、さまざまなメリットがあります。具体的に3つ挙げて紹介します。

収入アップにつながる

二級建築士の資格を取得すると、資格手当が支給されたり、昇給・昇進につながったりと、結果的に収入が増える可能性があります。建築士の平均給与は、民間の平均より高いといわれています。

国税庁の「民間給与実態統計調査」(2021年)によると、民間の平均年収は約443万円です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2021年)から算出した結果、建築士を含む建築技術者の平均年収は586万1,500円でした(注1)。

資格を取得して建築士と名乗れるようになれば、社内からの評価が上がるだけでなく、収入面にも反映されると考えられます。

注1:年収は「きまって支給する現金給与額(残業代や毎月の手当含む)」×12+「年間賞与その他特別給与額(ボーナスや期末手当など)」で算出。一般的に給料は基本給を指し、諸手当を含めませんが、本記事では諸手当を含めた給与を給料としています。

参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

転職で有利になる

二級建築士を取得していると、建築業界への転職で有利になることもあります。資格がなくても、建設会社やハウスメーカーなどへの転職は可能です。

しかし、建築士の資格があれば、設計や工事監理などもできるので、資格保有者は重宝されることが多々あります。建築士2級には設計できる建築物の規模に制限があるとはいえ、鉄骨や木造など構造材に関しては制限がありません。

そのため、中小の建設会社や設計事務所への転職では、建築士の資格を保有していると優遇されることもあります。建築士資格を採用条件としているところもあるでしょう。

キャリアアップに役立つ

国家資格の中でも、難関といわれている一級建築士を受験する際にも、二級建築士の資格が役立ちます。建築に関する学歴がない人でも、二級の資格を保有していれば、一級の受験が可能です。将来的に一級を目指している人は、まず二級の資格を取得しておくとよいでしょう。

また、土地家屋調査士など、建築系の資格取得の際に、二級建築士の免許があれば、一部の試験が免除されるなどの措置もあります。他の資格を取得すると、建築士以外にもキャリアの幅を広げたいときにも役立ちます。

二級建築士の試験概要

設計する手元

(出典) photo-ac.com

二級建築士の試験は、「学科の試験」「設計製図の試験」に分かれています。それぞれの試験の内容や難易度を解説します。

学科試験

二級建築士の学科試験の出題科目は、1~4に分かれており、マークシート方式で実施されます。

【二級建築士の学科試験出題科目】

  • 学科1(建築計画)
  • 学科2(建築法規)
  • 学科3(建築構造)
  • 学科4(建築施工)

各科目からは25問ずつ出題され、学科1・2で計3時間、学科3・4で計3時間の試験時間が割り当てられています。学科2の「建築法規」の試験時間内のみ、法令集の持ち込みが可能です。

合格すると、その年を含めた5年以内に実施される設計製図試験のうち、任意の3回まで学科試験を免除できます。

参考:出題科目、出題数等 建築技術教育普及センターホームページ

設計製図試験

設計製図試験は、学科試験に合格した人だけが受験可能です。試験前に公表されていた課題に則した建築物の設計図の作成を求められます。試験では、平面図・立体図・断面図など、要求図書を全て手書きで作成しなければなりません。

試験時間は5時間ですが、課題を基にいかに効率的に設計・製図できるかが問われます。法令違反などがあれば不合格になってしまうので、建築関連の法規を順守した設計にすることも重要です。

参考:出題科目、出題数等 建築技術教育普及センターホームページ

難易度

公益財団法人建築技術教育普及センターによると、二級建築士の2022年の合格率は、学科42.8%・設計製図52.5%で、総合合格率25.0%という結果でした。なお、一級の合格率は総合で9.9%なので、それよりも合格率は高い傾向にあります。

学科・設計製図試験のどちらも合格基準点が決まっており、基準点に達していなければ合格できません。

試験結果によっては、基準点が補正される場合もありますが、学科試験では、全ての科目の得点が13点に達していることが必要です。

参考:試験結果 建築技術教育普及センターホームページ
令和4年一級建築士試験「設計製図の試験」の合格者を決定

独学で二級建築士を目指すには?

勉強する手元

(出典) photo-ac.com

仕事をしながら二級建築士を受験するために、独学で試験勉強に取り組む人も多いでしょう。試験に合格するための効果的な学習方法を3つ紹介します。

試験日からさかのぼって計画を立てる

二級建築士の試験をクリアするには、計画的に学習するのがポイントです。試験は例年7月に学科試験、9月に設計製図試験が実施されます。試験を初めて受ける人は、約1,000時間の勉強時間が必要だといわれています。

そのうち7~8割程度を学科の勉強に使うのが理想です。試験当日から逆算し、しっかり学習計画を立てて取り組むことが重要です。なお、建築法規では法令集を引きながら答えるので、早い時期から引き方に慣れておくとよいでしょう。

学科はテキスト&過去問をこなす

学科の勉強は、テキストや過去問題を繰り返しこなすことが重要です。勉強に使うテキストは、自分が分かりやすいものを選びましょう。法改正などにも対応できるよう、最新版を用意するのも大切です。

「建築計画」「建築構造」「建築施工」の3科目は、出題傾向にあまり変化がないといわれているので、5年以内の過去問を解いていくと傾向がつかめるでしょう。

法令集を引きながらひたすら過去問を解いていくと、問題の理解度が深まります。繰り返すうちに、法令集の引き方にも慣れていくでしょう。

製図はスクールでの学習もおすすめ

製図の勉強は、独学だけでは難しいため、スクールや通信講座で学習するのがおすすめです。設計製図の試験では、いかに早くエスキス(プランニング)を決めるかがポイントです。

エスキスに時間を取られすぎると、図面作成の時間が足りなくなってしまいます。スクールや通信講座を使った学習では、エスキスのまとめ方を学べたり、分からないところを質問できたりするのがメリットです。

また、独学では、作成した設計図が正しいかどうかを自分で判断できないため、第三者に評価してもらう必要があります。ただし、独学に比べるとスクールなどは、費用がかかるため、両者のメリット・デメリットを比較して、自分に合った方法を選びましょう。

建築士を目指すなら二級取得から始めよう

建築士のイメージ

(出典) photo-ac.com

建築業界で働くに当たって、建築士の資格を保有していると多くのメリットがあります。建築士の資格取得は、建築系の学歴がなければ不可能だと思っている人も多いでしょう。

しかし、二級建築士は実務経験のみでも受験可能な資格です。1級の建築士資格と比べて難易度も低いと考えられるので、計画的に学習すれば働きながらでも取得を目指せます。

実務経験がない人は、建設会社などに転職し、受験資格の対象となる実務をこなしていくことから始めましょう。転職先探しには、求人数が豊富なスタンバイを活用するのがおすすめです。

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