建築士試験の受験資格は?試験内容・難易度・攻略法を詳しく解説

仕事をしながら建築士の資格取得を目指している人もいるのではないでしょうか。初めて受験する人は、試験内容を知った上で学習を始めるのがおすすめです。建築士試験の概要や出題内容のほか、合格するための攻略法も紹介します。

建築士試験の概要や難易度は?

試験会場

(出典) photo-ac.com

建築士の資格には一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類があります。ここでは、ゼネコンなどの大手建設業でも活躍できる一級建築士と、取り扱える構造材に制限のない二級建築士の試験概要や難易度について解説します。

一級・二級それぞれの受験資格

一級・二級の建築士試験の主な受験資格要件は以下の通りです。

【一級建築士の受験資格要件】

  • 大学・短期大学・高等専門学校などで国土交通大臣が指定する科目を修了し卒業していること
  • 二級建築士
  • 建築整備士
  • 国土交通大臣が上の2者と同等以上の知識及び技能を有すると認める者

【二級建築士の受験資格要件】

  • 大学・短期大学・高等専門学校などで国土交通大臣が指定する科目を修了し卒業していること
  • 実務経験が7年以上あること
  • 都道府県知事が上の2者と同等以上の知識及び技能を有すると認める者

二級建築士の受験資格要件である実務経験の対象範囲は、2020年の建築士法改正で拡大されています。しかし、新たに追加された実務を改正前に行っていたとしても、経歴としてはカウントされないので注意しましょう。

なお、1級と2級は試験日が違うため、制度上は同時受験が可能です。しかし、難易度などの観点から、どちらかに絞って受験するのが現実的です。

参考:
1級建築士試験の受験資格:建築技術教育普及センター
2級建築士試験の受験資格:建築技術教育普及センター

試験科目は学科と製図

一級・二級どちらの建築士試験も、学科と設計製図に分かれており、双方とも合格する必要があります。1級・2級のどちらも、学科試験は例年7月に実施されています。

設計製図試験の日程はそれぞれ分かれており、例年だと一級は10月に、二級は9月に行われます。学科に合格した人だけが設計製図の受験が可能で、一級・二級の試験科目の領域は同じですが、出題の基準が異なります。

【一級建築士の学科試験の出題科目】

  • 学科1…計画(20問)
  • 学科2…環境・設備(20問)
  • 学科3…法規(30問)
  • 学科4…構造(30問)
  • 学科5…施工(25問)

【二級建築士の学科試験の出題科目】

  • 学科1…建築計画(25問)
  • 学科2…建築法規(25問)
  • 学科3…建築構造(25問)
  • 学科4…建築施工(25問)

設計製図の試験では、一級・二級のどちらも、あらかじめ公表された課題を満たした建物の設計をします。

参考:試験について 建築技術教育普及センターホームページ
出題科目、出題数等 建築技術教育普及センターホームページ

難易度と合格率

建築士の試験は、各科目および、合計の基準点に達していなければ合格できません。合格基準点は、その年の試験結果によって補正が入ります。

2022年のそれぞれの合格率は以下の通りです。

【一級建築士試験合格率】

  • 学科試験…21.0%
  • 設計製図試験…33.0%
  • 総合…9.9%

【二級建築士試験合格率】

  • 学科試験…42.8%
  • 設計製図試験…52.5%
  • 総合…25.0%

参考:試験結果 建築技術教育普及センターホームページ

一級・二級建築士の試験内容

建築士の設計デスク

(出典) photo-ac.com

一級・二級建築士の学科・設計製図の試験は、どちらも同じ領域から出題されますが、基準はそれぞれの難易度に合わせて異なります。試験の内容を具体的に見ていきましょう。

計画・環境・設備

一級の試験では「計画」と「環境・設備」の2科目に分けて出題されます。「計画」は、主に建築的な常識があれば解答できる設問が多い傾向にあり、試験範囲が広く、得点差があまり出ないのが特徴です。

「環境・設備」は、環境工学と建築設備の分野から出題される科目です。環境工学の分野では、光・熱・空気などの自然条件と建築物の関係や、人体にとっての快適な室内環境などについて問われます。建築設備で出題されるのは、空調・給排水・電気・防火などの設備に関する問題です。

二級の試験では、計画各論・環境工学・建築史・都市計画・建築設備の5分野をまとめて「建築計画」として出題されます。過去の出題傾向を把握しておくと高得点を狙えるでしょう。

法規

1級の「法規」・2級の「建築法規」は、建築基準法やその他建築に関連する法令についての試験です。1級建築士の試験では、建築基準法をはじめ、建築士法・耐震改修法・バリアフリー法などからも出題されます。

1級・2級どちらの試験も法令集の持ち込みが可能です。出題傾向も比較的明確なので、出題されそうだと予測できるところには、アンダーラインなどを引いておくのも1つの方法です。

構造

一級の「構造」・二級の「建築構造」は、構造力学・各種構造・材料の3分野で構成されています。学科試験の中でも難易度が高く、採点結果に差が出やすい領域です。各種構造と材料は、構造方式や建築材料など、覚えることが多い分野でもあります。

耐震設計など、実務的な出題が増えている傾向にあるといわれているため、点数を稼ぎにくいという特徴もあります。「構造」「建築構造」で高得点を目指すには、構造力学分野を強化しておくのがおすすめです。

構造力学は、いわゆる計算問題なので、公式や解法を繰り返し解くことで、自然に身に付いていくでしょう。

施工

一級の「施工」・二級の「建築施工」は、各種工法に関する実務的な知識や、技術を問われる問題です。机上での学習が難しい科目なので、いきなり細かい部分から勉強を始めると、理解できず挫折してしまう可能性もあります。

まずは工事全体の流れや進め方をイメージし、徐々に各種工法についてを学習していくのがおすすめです。イメージが湧かないときは、実際の現場やインターネット上の画像などで確認しておくのもよいでしょう。

また、施工特有の専門用語を理解しておく必要があります。

設計製図

設計製図試験の課題は、どちらの場合も、事前に実施機関のホームページ上で発表されます。しかし、設計条件の詳細は当日まで分からないため、課題が発表された時点から、さまざまなパターンを準備しておくことがポイントです。

設計製図試験では、決められた時間内に建物の計画から、要求に沿った設計・各種図面作成までを終わらせなければなりません。

時間配分が重要になるので、過去問を繰り返し解いたり、設計図を模写したりしながら、エスキスを早くまとめられるよう練習しておきましょう。

建築士試験の攻略法は?

積み上げた本

(出典) photo-ac.com

建築士資格の試験対策として、スクールなどに通う方法もあります。しかし、仕事をしながら取得するとなると、通学の時間が取れず、独学でチャレンジする人も多いでしょう。独学で建築士試験に合格するための攻略法を紹介します。

二級建築士から取得するのもおすすめ

二級建築士の試験は、実務経験だけでも受験資格を得られるので、建築系の学歴がない人でも受験可能です。

二級建築士の免許があれば、設計や工事監理の仕事ができるため、ハウスメーカーや工務店などへの転職も可能です。

資格手当などが支給され、収入アップにも期待できるでしょう。2級建築士として活躍した後は、一級建築士へとステップアップする道もあります。

学科は過去問や問題集を繰り返し解く

学科試験の勉強は、参考書で内容を理解した後、過去問や問題集を繰り返し解くことが基本です。過去問を何度も解きながら、出題されやすい問題を分析しておくとよいでしょう。

法改正にも対応できるよう、最新の問題集にも取り組んでおくことが重要です。法規は、法令集を調べながら問題の正誤を解答する形式なので、法令集の引き方に慣れておくことが大切です。

メモ書きなどをしてカスタマイズするのもおすすめですが、許可されない書き込みもあるので、事前に確認しておきましょう。

製図は添削を受けるのがおすすめ

製図試験の勉強のポイントは、製図を書くためのエスキス(プランニング)が素早くできるように練習しておくことです。設計図の模写などで、図面の書き方に慣れておく必要もあるでしょう。

しかし、作成した設計図面の課題を自分で見つけるのは困難なため、製図の勉強だけスクールや通信講座を受講する方法もあります。

製図は第三者から添削を受けることで、理解度が向上しやすくなります。スクールや通信講座を受けない場合は、建築士の知り合いなどに採点してもらうのもよいでしょう。

建築士試験後のキャリアプランは?

ノートに記入する女性

(出典) photo-ac.com

建築士資格を取得し、建設業界へ転職する人も多いでしょう。建築士が活躍する場所は多くありますが、どのような仕事をしたいかによって、その人にふさわしい職場が異なります。希望する仕事の内容別に、建築士が働く場所を紹介します。

構造設計をしたい人

構造設計は、建物の安全性や経済性を考慮して設計する仕事です。建物の土台や骨組みが、建築基準法に適合するように設計することも重要です。

構造設計に興味がある人は、建設会社や設計事務所で建物の建築に携わるだけでなく、建築材料の耐久度などの知識を生かして建材メーカーに転職する道もあります。

また、一級建築士として構造設計の実績を積んだ後、上位資格の構造設計1級建築士へとキャリアアップするのもおすすめです。

意匠設計をしたい人

意匠設計とは、依頼主の要望を聞き、建物の間取りや、外観・内観のデザインを決めていく仕事です。意匠設計を中心に仕事をしたい人には、設計事務所・工務店・ハウスメーカーなどがおすすめです。

一級建築士の資格を保有していれば、大手ゼネコンなどで大規模なビルや、商業施設などのデザインにも携われるでしょう。2級建築士でも、ハウスメーカーや工務店などで自分のセンスを生かしたデザインや、設計が可能です。

また、ケースとしては少ないながら、建築家が立ち上げたアトリエ事務所でデザインなどを学びながら働く人もいます。

設備設計をしたい人

設備設計は、建物を利用する人が快適に過ごせる環境を考えて、水道・電気・空調などを設計する仕事です。設備設計に興味がある人の転職先としては、建設会社のほかに設備メーカーなどがあります。

一級建築士を取得していれば、建築士としての設備設計の実績を積んだ後、上位資格の設備設計一級建築士へのステップアップも可能です。

設備設計一級建築士になると大規模な建物の設備設計が可能になるので、ゼネコンや、設備設計に特化した設計事務所へ転職するなどのキャリアも開けます。

計画的に準備して建築士の試験を攻略しよう

不動産の打ち合わせ

(出典) photo-ac.com

建築士の試験は、一級・二級どちらも出題範囲が幅広いため、膨大な時間を使って勉強しなければなりません。理論や知識だけでなく、設計の技術も問われるため、学習計画をしっかり立てて勉強を進めていく必要があります。

試験に合格するためには、どの科目も繰り返し過去問題を解いて、出題傾向をつかんでおくことが重要です。建築士の資格を取得すれば、転職で有利になるなど、さまざまなメリットがあります。

今から建築業界への転職を考えている人は、勤務地・職種・こだわり条件から自分に合った職場を探せるスタンバイを利用するのがおすすめです。

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