講師と教師の違いとは?講師として働くメリット・デメリットも解説

数学教師や体育教師など、学校で子どもに教科を教える「教師」は、多くの人にとってなじみのある存在でしょう。一方で、教師と似た「講師」と呼ばれる人々も少なくありません。混同されがちな「教師」と「講師」の違いを知っておきましょう。

講師と教師の違い

セミナー

(出典) photo-ac.com

「講師」と「教師」は同じ文脈で使われる場合もありますが、両者には明確な違いがあります。まずは、それぞれの定義と役割を理解しておきましょう。

講師とは

講師はさまざまな場面において、他者に特定の物事を教える立場の人を指します。社会人向けセミナーの講師や予備校の講師などは、聞きなじみのある言葉でしょう。

大学においては、教授や助教の立場ではなく、特定の期間で契約して学生に講義をする人も講師と呼びます。

ただし、小学校から高校の学教教育の分野における講師は、一般的に教員免許はあるものの教員採用試験に合格していない人や、そもそも試験を受けていない人です。

つまり非正規雇用の教員であり、各地域の教育委員会に講師として登録し、要請を受けて学校で授業をします。通常、学校が講師と雇用契約を結ぶのは1年間単位です。

教師とは

教師とは学校で学業を教える人を指し、子どもを教え導く立場の人です。また家庭教師のように、子どもにマンツーマンで科目を教える立場の人や、宗教関連の指導者も教師と呼ばれるケースがあります。

学校教育での教師は、学問や技能を教え伝える人であり、特に小学校から高校で授業をする役割を持つ正規雇用の職員を指します。「教師」の他に、「教員」や「教諭」と呼ばれる場合もあります。

なお「教師」は家庭教師を含む言葉ですが、「教員」は学校に勤めて授業をする人のみを指します。さらに、教員免許を持っている正規雇用の職員を指す場合は、「教諭」という呼称を用いるケースが多いでしょう。

講師の種類は2つ

会話する講師

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講師はさまざまな立場の人を指しますが、雇用形態でいえば、常勤講師と非常勤講師に分けられます。それぞれの立場の違いも押さえておきましょう。

常勤講師

常勤講師は正規雇用の教員の代わりに採用される場合が多く、仕事内容や勤務形態なども基本的に教師と同じです。

「臨時的任用教員」とも呼ばれており、正規の教員が産休や育休、あるいは病気などで長期の休みに入る際の代替教員として、雇用されるのが一般的です。

正規教員と同様にフルタイムでの勤務となり、給与水準もほぼ変わりません。部活動の顧問を任されるケースもあります。

非常勤講師

非常勤講師は一般的に、教科の指導のみを担当する講師であり、授業があるときだけ勤務する立場です。授業した分のみ報酬が発生する雇用形態になっており、複数の学校に勤務するケースもあります。

また、部活動の顧問や職員会議への参加など、一般教員に課せられる仕事は原則として業務対象外で、授業のみに専念します。

常勤講師(臨時的任用教員)に比べると給与水準が低めで、1カ所のみの勤務では生活が厳しい人も多いのが実態です。そこで塾の講師や、他の場所での勤務などと掛け持ちしている人もいます。

なお、非常勤講師として勤務しながら、教員採用試験を目指している人も少なくありません。ある程度は時間の融通が利くため、将来的な教員採用を目指して勉強に集中できる環境を得やすいのも、非常勤講師の特徴といえるでしょう。

講師として働くメリット

スマホを操作するスーツの女性

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教師と講師の違いを解説しましたが、講師の立場として働くメリットは何でしょうか?教師ではなくあえて講師の立場を選ぶ人もおり、その理由はさまざまですが、一般的には以下のメリットが挙げられます。

教師としてのキャリアを積める

講師は正規雇用ではないものの、教える立場で生徒や他の職員と共に時間を過ごすことで、教師としての経験を積めます。教員採用試験に再チャレンジする際にも、生徒に指導した経験が役立つでしょう。

また、教師になる前に講師の立場を経験することで、指導者としての適性を見極めることも可能です。

教師として学校に着任してからは、辞めるのはなかなか難しくなりますが、講師の立場であれば契約を延長せずに辞めることもできます。将来的に塾の講師を目指している場合にも、学校に勤務した経験を生かせるでしょう。

採用試験一部免除の可能性も

教員採用試験に不合格になった場合の進路として、最も多いのが非常勤講師といわれています。その理由は、次回の試験が一部免除になる可能性があるためです。

期間の条件が指定されるケースもありますが、講師として採用された経験がある場合、教員採用試験の一部(筆記試験)が免除される場合があるので、他の試験項目に集中できるのがメリットです。

都道府県や地域によって条件は異なるので、特例を受ける人は確認しておきましょう。近年は教員のなり手が不足しているため、現在講師として勤務している人を含め、各地で広く人材を集める傾向にあります。

今後さらに、教員採用試験の受験資格や条件などが変更される可能性もあるので、定期的にチェックしておきましょう。

参考:試験免除・加点・特別の選考|文部科学省

非常勤は時間に余裕がある

非常勤講師の場合、勤めている学校に拘束される時間は、基本的に授業時間のみです。それ以外の時間は自由に使えるため時間的な余裕があり、教員採用試験の勉強に集中したり、他の仕事をしたりできます。

教員採用試験の合格を目指している人はもちろん、教師や講師以外の職種に興味がある人にとっては、仕事の掛け持ちができる点はメリットといえるでしょう。

家事や育児に時間を費やさなければならない場合も、非常勤講師の立場ならば時間を取りやすいのがメリットです。複数の教育機関で講師をしていたり、講師として働く以外の時間を趣味に使ったり、自分で教室を運営していたりする人もいます。

講師になるデメリット

廊下を歩く講師の女性

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講師として働くメリットは多いですが、以下のようなデメリットもあります。メリットとデメリットをよく理解した上で、自分に合ったキャリアプランを考えてみましょう。

常勤の場合は多忙さがネック

常勤講師は正規雇用の教師の代わりに着任する場合が多く、専任と同じ仕事内容に従事するため、忙しい傾向にあります。

採用試験に向けた勉強時間を十分に確保するのは困難でしょう。給与体系は一般教員と変わりませんが、教員採用試験に集中したい場合は、非常勤講師の方が向いています。

また、常勤講師はクラス担任になる場合もあり、さらに中学校では部活動の顧問を任されるケースもあります。一般教員と同じ責任を負うため、自由にできる時間を確保しづらいのがデメリットです。

任期が短い

非常勤講師は任期が短く、ほとんどは1年間単位での契約になります。

正規雇用の教師が産休や育休、病休などの期間中、代わりに着任する場合が多いので、その教師が復職する際には、契約が更新されない可能性もあります。長期的に考えると、安定している立場とはいえません。

ただし、着任期間中にしっかりと実績を残して認められれば、継続的に契約を結べる場合もあり、常勤講師への道が開かれる可能性もあります。

非常勤の場合は収入が少ない

非常勤の場合、月給制ではなく授業の分だけ報酬が発生するため、どうしても収入が不安定になりがちです。

複数の学校に講師として勤めていたり、塾の講師や他の仕事を掛け持ちしたりして、収入を確保している人が数多くいます。基本的に昇給や賞与もないため、ダブルワークが前提の立場といえるでしょう。

ただし、さまざまな学校や教育機関に勤めてみたい人や、他の職種にも興味がある人にとっては、正規雇用の教師や常勤講師に比べて、自由度が高く魅力的に感じられる場合もあります。

非常勤は健康保険の負担が大きいケースも

非常勤講師の場合、原則として国民健康保険への加入となり、毎月の健康保険料の負担が常勤講師に比べて高くなる傾向にあります。

健康保険料は住んでいる地域の自治体によって変わり、所得額によって異なるものの、年間20~30万円以上になるケースが多く、全額自分で納付しなければいけません。

社会保険料の半分が学校負担となる正規雇用の教師に比べると、実質的な負担が大きくなるケースが多いのは、明らかなデメリットといえるでしょう。

講師になる方法

スーツの足元

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講師として学校で仕事をするための方法を解説します。これから講師を目指す人は、採用に至るまでの流れを押さえ、必要な準備を進めておきましょう。

採用までの流れ

常勤講師(臨時的任用教員)や非常勤講師になる道は、自治体によって異なりますが、一般的には東京在住の場合は東京・神奈川・千葉・埼玉など、各自治体の教育委員会のWebサイトから講師登録を行います。

登録の際に提出した書類は当該地域の教育委員会が管理し、講師が必要になった学校からの要請に応じて送付されます。

資料の送付を受けた学校は、自校に適任な人材かどうかを判断し、合格と見なせば登録している人材に連絡が入る流れです。そこから校長や教育委員会の採用担当者による選考が実施され、問題なければ着任に至ります。

TFJフェローシップ・プログラムに参加

講師としてのキャリアを歩む方法として、認定NPO法人「Teach For Japan(ティーチフォージャパン)」のフェローシップ・プログラムを利用する道があります。プログラムに参加すれば、学校で公立学校の教師として2年間働くことが可能です。

同プログラムはTFJが選考した者に研修を受けてもらい、学校で教師として働いてもらう取り組みで、クラス担任を受け持ったり、部活動の顧問として活躍したりするケースもあります。

プログラムの終了後のキャリア選択は自由ですが、そのまま講師として働き続ける人も少なくありません。

独自の研修を受けられるので、講師に興味のある人はもちろん、教育分野で何らかの活躍したい人も、プログラムへの参加を検討してみるとよいでしょう。

参考:Teach For Japan|教室から世界を変える

講師からでも教師を目指せる

ホワイトボードに書き込む講師の女性

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講師と教師の違いに加えて、講師として働くメリットやデメリットを解説しました。教員採用試験に不合格になった場合でも、講師として教壇に立てる可能性があり、再び採用試験に臨むための経験を積むことも可能です。

非常勤講師は収入が安定しないデメリットはあるものの、試験勉強に充てる時間も確保しやすく、講師以外の経験を積める機会もあります。また、人によっては正規雇用の教師ではなく、講師を続ける方が合っている場合もあるでしょう。

いずれの道を選択するにしても、メリットやデメリットをよく理解した上で、どういったキャリアを進むべきか、じっくり考えることが大事です。