社会福祉士になるには?資格を取る準備から社会福祉士の仕事内容まで

社会福祉士は、老人介護施設や児童相談所など、高齢者や障害者・児童の福祉に関わる広い分野で活躍しています。社会福祉士を目指している人や資格に興味のある人は、受験資格を得る方法や実務経験について、試験の基本知識を確認しましょう。

社会福祉士になるには

社会福祉士

(出典) photo-ac.com

社会福祉士は、高齢者介護施設や児童相談所・役所の福祉課など、さまざまな職場で活躍しており、社会的に重要な役割を果たしています。そんな社会福祉士に魅力を感じているなら、まず目指すための前提を確認しておきましょう。

国家試験に合格する必要がある

社会福祉士を、ソーシャルワーカーと同じように単なる職種名と認識している人も多くいます。しかし、社会福祉士は弁護士や公認会計士などと同様に国家資格です。社会福祉士として活動するには、社会福祉士国家試験を受験して合格する必要があります。

さらに誰でも無条件で受験できるわけではなく、福祉系大学や福祉系短大・社会福祉士養成学校の卒業や、特定の福祉職での実務経験といった資格要件が定められています。

まったくの独学だけでは、そもそも国家試験を受験できない点に注意しましょう。まずは受験資格を得なければ、社会福祉士への道は開けません。

参考:社会福祉士・介護福祉士等|厚生労働省

社会福祉士の受験資格を得るルート

福祉系の大学で勉強する学生

(出典) photo-ac.com

社会福祉士の受験資格を得るには、福祉系の大学・短大を卒業するか、社会福祉士の短期養成施設・一般養成施設を経由する必要があります。それぞれのルートを確認していきましょう。

参考:社会福祉士の資格取得方法|厚生労働省

福祉系の大学・短大を経由

社会福祉士になるための最もシンプルなルートは、福祉系大学で社会福祉士として必要な「指定科目」を履修することです。指定科目を学んで福祉系の4年制大学を卒業すれば、受験資格を得られます。

福祉系の2年制・3年制の短大の場合には、指定科目の履修だけでなく、相談援助実務も必要です。

3年制の短大では、1年間・2年制の短大では2年間の相談援助実務を経なければ受験できません。短大での教育期間と合わせて、最低でも4年の期間が必要になります。

短期養成施設等を経由

福祉系の4年制大学や短大に進学した場合でも、社会福祉士の受験に必要な「基礎科目」しか履修しておらず、指定科目の単位を取得していない場合は、卒業後に短期養成施設での6カ月以上の履修が求められます。

大学や短大で履修しなかった指定科目の内容について、短期養成施設で学ぶ必要があるためです。

4年制の福祉系大学であれば、卒業後すぐに短期養成施設で必要カリキュラムを履修でき、卒業後に最短半年で受験資格を得られます。

短大の場合は、卒業して短期養成施設に入る前に相談援助実務が必要です。3年制なら1年間・2年制なら2年間の実務経験を積んだ後、短期養成施設で指定科目にあたる内容の履修をする流れになります。

また、社会福祉主事の養成機関で学んだ場合も、2年間の相談援助実務の経験を積んだ後、短期養成施設で指定科目分の履修が可能です。

ただ、児童福祉司や身体障害者福祉司などの実務経験が4年以上ある場合は、相談援助の実務経験は必要ありません。卒業後にそのまま短期養成施設で履修し、受験資格を得られます。

一般養成施設等を経由

福祉系以外の大学を卒業した場合、卒業後に一般養成施設で1年以上カリキュラムの履修が必要です。4年制大学なら卒業後すぐに一般養成施設で履修が可能で、履修後に社会福祉士の試験を受けられるようになります。

短大の場合は卒業後に相談援助実務が必要で、1年または2年の実務経験を積んだ後、一般養成施設での履修が可能です。

また、学校での教育は受けず4年以上の相談援助の実務を経験している人も、一般養成施設で1年以上の履修を受ければ、社会福祉士国家試験を受験できるようになります。

受験資格に必要な実務経験とは

ファイルを持つ相談員

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社会福祉士国家試験には、学歴によって相談援助の実務経験が求められます。では、具体的にどのような仕事が実務経験にカウントされるのでしょうか?当てはまるものを把握して、受験資格を判断する参考にしましょう。

実務経験に相当する職種

社会福祉士国家試験の受験資格で定められる「実務経験」には、分野ごとに次のような職種が当てはまります。

  • 児童福祉:児童相談所の児童福祉士や相談員、母子生活支援施設の支援員や指導員、児童養護施設の指導員や保育士など
  • 高齢者福祉:介護保険施設の生活相談員や支援相談員、地域包括支援センターの職員、養護老人ホームの相談員や指導員、高齢者総合相談センターの相談員など
  • 障害福祉:身体障害者更生相談所の身体障害者福祉司や心理・職能判定員、精神保健福祉センターの相談員やソーシャルワーカー、知的障害者更生相談所の知的障害者福祉司や心理・職能判定員など
  • その他:保健所での精神保健福祉相談員や精神保健福祉士・精神科ソーシャルワーカー、病院・診療所での相談員、救護施設や更生施設での生活指導員など

他にも福祉関係で相談援助に関わる仕事が、幅広く実務経験として認められます。全ての職種を知りたい場合は、社会福祉振興・試験センターの公式ページで確認しましょう。

参考:社会福祉士国家試験 受験資格(相談援助業務【実務経験】)|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

混同しやすい職種に注意

福祉関係の職種であっても、社会福祉士の受験資格に定められた実務経験に該当しないものもある点に注意しましょう。例えば、介護職員は混同されやすい職種ですが、「相談援助の実務」とは見なされません。

さらに、医師や看護師としての業務も、社会福祉士として活動するための相談援助実務に該当しないことに注意しましょう。一定レベルの医療・福祉関連の資格があれば、社会福祉士の受験資格を得られるわけではないのです。

社会福祉振興・試験センターの公式ページで紹介されている職種だけが、実務経験にカウントできる仕事と考えましょう。

参考:社会福祉士及び介護福祉士法施行規則 第2条(指定施設の範囲)|e-Gov法令検索

社会福祉士試験の基礎知識

社会福祉士の試験勉強をする人

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社会福祉士試験を目指すにあたって、知っておきたい基本的な知識を紹介します。すでに社会福祉士試験の受験資格がある人はもちろん、これから受験資格を得ようと考えている人も、出題される内容や有効な勉強方法などを押さえておきましょう。

試験の出題範囲と合格基準

社会福祉士試験の出題範囲は幅広く、複数の領域をカバーしなければ合格できません。以下は出題される分野の例です。

  • 人体の構造や機能・病気について
  • 心理学の理論について
  • 社会システムについて
  • 地域福祉や福祉計画について
  • 保健医療サービスについて

もちろん相談援助業務の基盤・理論といった、実際の業務に直結する内容も問われます。

合格には問題の総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度に応じて補正された点数以上の得点が求められます。その年の出題の難易度によって、合格ラインが変わることに注意しましょう。

合格率は3割程度と難易度が高めです。事前にしっかりと計画を立てて、効率的に勉強を進める必要があります。

参考:第34回社会福祉士国家試験合格発表

社会福祉士試験に向けた勉強法

社会福祉士試験に向けた対策としては、難易度が高い他の試験と同じく、試験範囲をしっかりと押さえた上で地道に反復するのが基本です。試験直前まで過去問を徹底的に解き、インプットだけでなくアウトプットも取り入れた勉強を意識しましょう。

効率よく学習を進められれば、1~2カ月集中して試験対策をするだけで合格する場合もあります。

販売されている対策テキストの種類は豊富です。基本知識を身に付けられる参考書と、3~5年分の過去問題を中心に学習するとよいでしょう。

合格後は登録を忘れずに

社会福祉士の試験に合格したら、厚生労働大臣宛に申請書を送付し、登録を受ける必要があります。たとえ試験に合格しても、合格証書を所持しているだけでは社会福祉士としての業務に就けません。

具体的な登録手順は、合格通知に同封されている書類で確認しましょう。送付した申請書が受理されると、初めて社会福祉士を名乗れます。

登録しないまま社会福祉士として活動すると法律違反となり、罰金が科せられる可能性に注意が必要です。

参考:社会福祉士及び介護福祉士法 第53条|e-Gov法令検索

登録に必要な書類や費用

社会福祉士の登録に必要な書類は、次の通りです。

  • 登録申請書(収入印紙を貼付)
  • 貼付用紙(登録手数料の「振替払込受付証明書」を貼付)
  • 戸籍抄本の原本か戸籍の個人事項証明書の原本、または本籍が記載された住民票の原本

介護福祉士養成施設を卒業した人や、卒業する予定で経過措置による登録を受ける場合は、卒業証明書の原本も必要です。

また、登録には「登録免許税」として、1万5,000円分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付ける必要があります。

登録手数料(4,050円)に関しても、所定の払込用紙を利用した支払いが必要です。支払いを済ませたら、振替払込受付証明書の原本を専用の用紙に貼って提出しましょう。

参考:新規登録の申請手続き|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

社会福祉士の業務内容は?

相談を受ける社会福祉士の女性

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これから社会福祉士を目指すなら、実際どのような仕事をするのかもチェックしておきましょう。老人介護施設や児童相談所など、さまざまな場所で社会福祉士の有資格者が活躍しており、業務範囲も幅広いのが特徴です。

メインの仕事は相談業務

特別養護老人ホームや障害者支援施設・児童相談所・病院など、多くの場所で社会福祉士が活躍しています。共通する主な業務は、利用者からの相談を受けることです。

相談の内容に応じて、専門家の視点からアドバイスしたり相談者が利用できる各種支援制度を提案したりと、サポートに携わります。

介護費用や施設の入居費用など金銭面の相談も、社会福祉士が対応することの多い内容です。役所の福祉課に勤める社会福祉士であれば、生活保護に関する相談を受ける場合もあります。

サービスの見直しや改善・書類仕事も

行政機関や医療機関と連携し、施設の利用者に十分なサービスが行き届くように、提供内容の見直しや改善をするのも社会福祉士の仕事です。

支援計画の作成やサービスの記録・公的機関への書類の作成など、利用者と機関の間に立って、連絡や調整を担っている人もいます。

もちろん、具体的な業務は所属している団体や施設によって多様です。ただ、窓口として利用者の入居手続きをしたり、必要に応じて利用者のサービスの調整・見直しをしたりする「調整役」という点は共通しているといえるでしょう。

介護業務を兼任するケースあり

社会福祉士が老人介護施設や障害者支援施設などで働く場合、介護業務を兼任するケースもあります。相談業務が常にあるわけではないため、介護職員と協力しつつ、施設の入居者のサポートをしている人もいるのです。

複合型の障害者支援施設では、日中は入居者の自立訓練や就労支援に携わり、夜間は生活介護の役割を担っている社会福祉士も珍しくありません。就職先によっては、社会福祉士本来の業務の他にも兼任する仕事がある可能性を押さえておきましょう。

自分に向いているルートを確認しよう

社会福祉士として活躍する男性と女性

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社会福祉士は国家資格なので、試験に合格しなければ活動できません。さらに受験資格も明確に決まっています。これから社会福祉士を目指すなら、まず受験資格を得る必要があります。

ルートによっては実務経験が求められたり、養成施設で学ばなければならなかったりします。自分に向いているルートを判断し、計画的に今後の行動を決めていきましょう。

国家試験の難易度は高めになっています。過去問を中心にしっかりと学習を進め、十分に準備をしてから試験に臨むことが大事です。