保育士資格の取り方とは?アプローチは大きく分けて2パターン

保育士は子どもが好きな人に人気の国家資格です。成長していく子どもたちを間近で見守れる保育士は、やりがいの大きな仕事といえるでしょう。保育士資格を取得する方法を確認し、自分に合った方法を選んでキャリアの第一歩を踏み出しましょう。

保育士資格を取る方法

子供を預かる保育士

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国家資格である保育士資格を取る方法には、2つのアプローチがあります。自分にはどちらの方法が合っているのかをよく考え、確実に保育士資格を取れる方法を選びましょう。

養成校に通ってカリキュラムを修了する

保育士資格を取る1つ目の方法は、厚生労働大臣が指定する指定保育士養成施設を卒業することです。

厚生労働省が指定する保育士養成施設には、大学・短期大学・専門学校があります。中でも最短2年で保育士資格を得られる短期大学や専門学校は人気です。

指定の学校を経由するルートでは、保育士試験を受けなくても卒業とともに資格が取れます。入学試験をパスする必要はありますが、勉強して別途資格試験に合格する必要がないため、保育士になる道として確実な方法といえるでしょう。

参考:保育士になるには?-厚生労働省

受験資格を満たして保育士試験に合格する

保育士資格を取得する方法の2つ目は、保育士試験を受けて合格する道です。保育士試験を受験する方法なら、指定養成施設に該当する学校に通う必要はありません。受験資格を満たしていれば、独学や通信講座の受講のみでも資格取得を目指せます。

保育士試験に合格するルートのメリットは、数カ月で保育士資格が取れる可能性がある点です。保育のプロとしていち早く現場に出たい人におすすめの方法といえるでしょう。

働いていて2年間も学校に通うのが難しい人でも、努力次第でスピーディーに保育士を目指せます。

保育士試験の受験資格

保育士試験は、幅広い受験資格が設けられています。

例えば1991年3月31日以前に高校を卒業した人の場合、追加の条件はなくそのまま受験が可能です。卒業した高校が保育科の場合には、1996年3月31日以前に卒業していれば受験資格が認められます。

高卒でどちらにも当てはまらない場合には、児童福祉施設における所定の実務経験が必要です。指定養成施設ではない大学・短大・専門学校を出ている人には実務経験の要件がなく、卒業後はすぐに試験を受けられます。

専門学校については、卒業した学校が「学校教育法に基づいた専修学校であること」と、「卒業した課程が修業年限2年以上の専門課程であること」が前提という点に注意しましょう。

参考:受験資格|一般社団法人全国保育士養成協議会

実務経験の内容とは

保育士試験の受験資格として、高卒者や中卒者に求められる児童福祉施設での実務経験は以下の通りです。

  • 高卒:2年以上かつ総勤務時間数にして2,880時間以上
  • 中卒:5年以上かつ総勤務時間数にして7,200時間以上

また、児童福祉施設で働いていた経験が実務経験として認められるかどうかは、勤めていた施設の種類によって決まります。具体的には、以下に代表される施設が対象です。

  • 利用定員20名以上の保育所
  • 保育所型認定こども園
  • 児童厚生施設
  • 児童養護施設

児童の保護や援護に従事していたとしても、その施設が認可外保育施設や幼稚園型認定こども園などであった場合、実務経験とは認められないことに注意しましょう。

参考:
高等学校卒業|一般社団法人全国保育士養成協議会
中学卒業|一般社団法人全国保育士養成協議会

保育士試験の基礎知識

カフェで勉強する女性

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保育士を目指すにあたって学校に通うか試験を受けるか迷っているなら、保育士試験の内容を判断材料にしましょう。試験のイメージをつかめば、独学や通信講座でも合格できそうか考えられるはずです。

試験の概要

保育士試験は筆記試験と実技試験に分かれており、筆記試験は2日間の日程で実施されます。実技試験が受けられるのは筆記試験の合格者のみで、筆記と実技両方に合格して初めて、保育士資格を得られる決まりです。

試験は年2回で、筆記試験は4月と10月、実技試験は7月と12月に実施されます。一部地域では、「地域限定保育士試験」が行われる年があることも覚えておきましょう。

地域限定保育士試験とは、一部の自治体だけで実施される保育士試験です。合格すると対象の地域でのみ保育士として働けます。勤務地域が制限されるのは3年間で、4年目以降はどの地域でも保育士としての勤務が可能です。

参考:
令和6年保育士試験について|こども家庭庁
地域限定保育士試験の実施について |報道発表資料|厚生労働省
地域限定保育士試験について|一般社団法人全国保育士養成協議会

出題される内容

マークシート形式で解答する筆記試験では、以下の科目について知識が問われます。

  1. 保育原理
  2. 教育原理
  3. 社会的養護
  4. 子ども家庭福祉
  5. 社会福祉
  6. 保育の心理学
  7. 子どもの保健
  8. 子どもの食と栄養
  9. 保育実習理論

配点は教育原理と社会的養護のみ50点満点、他は100点満点です。出題された全ての科目で6割以上の正答率があれば、合格となります。

実技試験は次の3分野から、2分野を選んで実演する形式です。

  • 音楽に関する技術:ピアノ・ギター・アコーディオンのどれかで課題曲を演奏しながら歌う
  • 造形に関する技術:保育の一場面を鉛筆や色鉛筆で描く
  • 言語に関する技術:課題のお話を披露する

配点はそれぞれ50点満点です。

参考:
筆記試験(前期)概要|一般社団法人全国保育士養成協議会
実技試験(前期)概要|一般社団法人全国保育士養成協議会
令和5年試験案内|一般社団法人全国保育士養成協議会

合格率と難易度

保育士試験は比較的難易度の高い試験です。こども家庭庁が公表する「保育士試験の実施状況(2022年度)」によると、合格率は29.9%前後です。

2011年頃まで10%台前半の年も多かったことを考えれば、近年の合格率は上がっています。それでも10人に3人ほどしか受からないと考えれば、簡単ではないことが分かるはずです。

保育士試験が難しい理由の1つとして、筆記試験の9科目全てで6割以上得点しなければならない点が挙げられます。9科目中1科目でも合格点を下回れば不合格のため、合格を目指すにはバランスのよい学習が必要になるでしょう。

参考:
保育士試験の実施状況(令和4年度)|こども家庭庁
保育士の現状と主な取組 P.9|厚生労働省

保育士養成校の選び方

タイピングする手元

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試験に合格する自信がない人には、指定養成施設に該当する学校への進学がおすすめです。指定養成施設には、4年制大学と短大・専門学校など複数の選択肢があります。どのように選べばよいのでしょうか?それぞれのメリットとともに解説します。

幅広い選択肢から進路を選ぶなら4年制大学

4年制大学はカリキュラムが充実しているので、履修する科目によっては幼稚園教諭や臨床心理士などの免許・資格を取得することも可能です。もちろん、保育士に必要な知識とスキルもじっくり学べます。

ただし、4年制大学に入学するには当然ながら、入試に合格する必要があります。学力に自信がない人にとっては、入学が大きなハードルになるかもしれません。保育士資格を得るために4年間学ぶ必要があるため、学費と時間も必要です。

時間とお金に余裕があり、幅広い知識を付けたい人に向いた選択肢といえるでしょう。

短期間で基礎を固めたいなら短大や専門学校

1日でも早く保育士として活躍したい人には、短大や専門学校がおすすめです。短期大学や専門学校なら、最短2年で保育士資格が得られます。

4年制大学よりも学費を安く抑えられるのも、短大や専門学校のメリットです。コスパよく保育士資格を取りたい人に適しています。

短期大学や専門学校にも注意点があります。短大の場合は大学と同じく、入学試験への合格が必要です。専門学校の場合、将来的に就ける仕事の選択肢が狭まってしまう可能性が高いでしょう。

保育士を目指すことが明確に決まっており、資格取得までのスピードを重視したい人に向く道です。

仕事や家庭と両立したいなら通信制大学

働きながら勉強して保育士資格を取りたい人には、通信制大学がおすすめです。通信制大学はインターネットを活用した学習がメインのため、通学の必要がなく仕事や家庭とも両立しやすいでしょう。

学費が格安なのも、通信制大学のメリットの1つです。資格取得に伴う経済的負担を最小限に抑えられます。

ただし、通信制大学の中には、卒業するだけでは保育士資格を得られない学校もあるため注意が必要です。通信制大学を選ぶ場合には、卒業とともに保育士資格を得られるかどうか、しっかり確認しましょう。

社会人が独学で保育士試験に合格するには?

考え事をする女性

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社会人が働きながら保育士を目指すなら、保育士試験への合格にチャレンジする道があります。独学で試験を突破するには、どのような流れで取り組めばよいのでしょうか?希望するペースごとに、スケジュールの目安を紹介します。

最短で合格を目指す場合

最短で保育士試験の合格を目指すなら、一度の試験で合格できるように全科目を勉強していく必要があります。余裕を持って勉強を進めるなら試験の半年前から、短期集中で試験に臨むとしても、試験の3カ月前には勉強を始めましょう。

試験の1カ月前になったら、本番を想定した総仕上げを進めます。過去問を本番のスケジュール通りに解いて、試験に備えましょう。

4月か10月に筆記試験を受けたら、気を抜かずに実技対策へとかじを切る流れです。筆記試験に合格した後、7月か12月に実技試験にチャレンジします。ここで合格をつかみ取れば、晴れて保育士資格が手に入ります。

自分のペースで合格を目指す場合

仕事と勉強の両立で勉強時間をまとめて取るのが難しい人には、2年かけて全科目の合格を目指すスケジュールがおすすめです。

保育士試験の筆記試験は科目ごとに分かれており、一部の科目のみ合格した場合は、合格した年を含めて3年間その科目の試験が免除されます。必ずしも1回の試験で、完全合格を目指す必要はないのです。

2年で合格を目指す場合も、勉強のスケジュールはあまり変わりません。1回目の筆記試験にチャレンジした後は、取りこぼした科目も合格できるように勉強を重ねます。2回目の筆記試験が終わったら、すぐに実技対策にシフトしましょう。

参考:免除・一部科目合格の有効期間について|一般社団法人全国保育士養成協議会

保育士試験で合格をつかむポイント

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保育士試験の合格に向け、頭に入れておきたいポイントを解説します。要点を押さえて対策を進めれば、難関の保育士試験も無事に突破できるでしょう。

自分に合った勉強方法を選ぶ

保育士試験をクリアするには、自分に合った勉強方法を選ぶことが肝心です。徹底的に費用を抑えたい人は、独学がよいでしょう。テキスト代しかかからないため、コストを重視して勉強法を選びたい人に適しています。

確実に合格をつかみ取りたい人は、通学講座を選びましょう。分からないところはリアルタイムに質問できるので、勉強につまずきやすい人でも安心です。

独学と通学講座のいいとこ取りをしたい人には、通信講座が適しています。カリキュラムが整っているため、講座に則って勉強を進めていけば着実に合格へと近づけます。

インプットとアウトプットを組み合わせる

保育士試験に合格するための学習のコツは、インプットとアウトプットを繰り返すことです。インプットだけの学習だと効率が落ちるので、両者を組み合わせた学習計画が望まれます。

必死にインプットだけを繰り返す勉強をしていても、覚えた知識を実際の試験で思い出せなければ得点につながりません。

独学で学習を進めていると、ついインプットに偏った勉強になりがちです。大事な部分やキーワードをテキストで学んだ後、しっかり頭に入っているかアウトプットして確認するくせを付けましょう。

実技試験は自分の得意な分野を選択する

実技試験に挑む上で大切なのは、高得点を狙える科目選びです。科目選びのポイントは、自分の得意分野を選択することに尽きます。試験ではひとまず、現場で求められるかどうかより、合格できるかどうかに主眼を置いて科目を選びましょう。

楽器を習った経験がある人は「音楽に関する技術」を、イラストが得意なら「造形に関する技術」を、国語の音読で褒められた経験がある人は「言語に関する技術」をというように、自分の得意分野から科目を選ぶのが賢明です。

音楽に関する技術と言語に関する技術については、事前に課題が発表されるので、課題を何度も練習して本番に臨みましょう。

保育士資格を取得したら

子供をあやす保育士

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保育士資格を取ったからといって、すぐに保育士として働けるわけではありません。資格を取った後、保育士として働くために必要な登録についても、事前に把握しておきましょう。

保育士登録をしないと働けない

保育士資格を得ても、都道府県知事に対して登録を申請し、審査を通過して保育士証の交付を受けなければ保育士として働けません。保育士登録ができるのは保育士資格を取得した、以下のどちらかに当てはまる人です。

  • 厚生労働大臣が指定した養成校を卒業・修了し、保育士(保母)資格証明書か指定保育士養成施設卒業証明書、または保育士養成課程修了証明書を持っている人
  • 保育士試験に合格し、保育士(保母)資格証明書か保育士試験合格通知書を持っている人

保育士として働くにあたって不適切とされる「欠格事由」に当てはまらなければ、登録申請ができます。保育士資格を手に入れたら、忘れずに登録作業を済ませ、保育士証の交付を受けましょう。

参考:
保育士(保母)資格証明書
保育士の登録と罰則規定 | 登録事務処理センターの役割 | 保育士の定義 | 保育士登録の制度と登録事務処理センター | 保育士の登録 - 登録事務処理センター

保育士登録の流れ

保育士登録をするには、まず申請書や記入例などが同封された「保育士登録の手引き」を登録事務処理センターから取り寄せます。次に手引きに同封されている払込用紙を使い、登録手数料4,200円を支払いましょう。

手数料の支払いを済ませたら、必要書類をまとめて登録事務処理センターへ送付します。同封する書類は以下の通りです。

  • 保育士登録申請書
  • 振替払込受付証明書
  • 保育士となる資格を証明する書類の原本(保育士(保母)資格証明書・指定保育士養成施設卒業証明書・保育士養成課程修了証明書・保育士試験合格通知書のいずれか)
  • 現在の戸籍抄本(戸籍の個人事項証明書)

申請の受付から約2カ月後に、保育士証が交付されます。

参考:保育士登録申請手続き(新規登録) | 保育士登録申請手続き(新規登録)確認ページ | 保育士の登録 - 登録事務処理センター

資格を取って保育士のキャリアをスタート

子供を抱く保育士

(出典) photo-ac.com

保育士資格を得るには、指定養成施設を卒業するか保育士試験に合格する必要があります。自身の置かれている状況を考慮して、確実に保育士資格を取れる方法を選ぶことが重要です。

高卒で保育士試験を受けるには、基本的に実務経験が必要です。受験資格をクリアできる実務経験がないなら、児童福祉施設に転職して実務経験を積みましょう。

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