保育士の仕事で大変なことは?やりがいや目指し方も解説

保育士はよく「大変な仕事」といわれます。具体的にどのような部分に苦労する人が多いのでしょうか?公的なデータからも読み取れる、保育士の大変なことを紹介します。これから目指したいなら、やりがいや資格の取り方もチェックしておきましょう。

保育士の仕事で大変なこと5つ

赤ちゃんをあやす保育士

(出典) photo-ac.com

保育士の大変さとして挙げられるのは、子どもの世話に関する内容だけではありません。保育士の大変さとして代表的なものを、厚生労働省の「令和4年版厚生労働白書」から紹介します。

参考:令和4年版厚生労働白書 P.57〜59|厚生労働省

責任が重い

子どもたちを預かっている間、保育士には常に責任がのしかかります。遊び中の事故や子ども同士のけんかによるけが・急な体調の変化などに気を配り、適切に対応しなくてはなりません。

不審者の侵入や災害といった万が一の事態が起こった際には、子どもたちの安全を守ることが最優先とされます。責任の重さや、自分が子どもを守らなくてはならないプレッシャーをつらいと感じる保育士は多いでしょう。

実際「令和4年版厚生労働白書」では、厚生労働省職業安定局「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査(2013年)」で、資格だけ取得している潜在保育士が保育士として働かない理由に「責任の重さ・事故への不安」が挙がったとされています。

保育に関しての知識がある人でも、責任の重さは大変だと思う要素と考えられるでしょう。

保育士同士や保護者との関係

人間関係も、保育士の仕事において大変なことの1つです。気が合わない・保育に対する考え方が違うなど、保育士間の関係がよくない場合もあるでしょう。同僚とうまくいかなければ働きづらいだけでなく、保育の質に影響する恐れがあります。

保護者との関係も、保育士にとって悩みになり得る要素です。連絡ミスや子ども同士のちょっとしたいさかいが、保護者からのクレームにつながるケースもあります。

「令和4年版厚生労働白書」によれば、東京都福祉保健局の「東京都保育士実態調査(2019年5月)」で、保育士の退職理由として約33.5%から挙がったのが「職場の人間関係」でした。「保護者対応等の大変さ」も7.4%の退職者が挙げています。

知識と体力が求められる

保育士には相応の知識が求められます。保育士の仕事は、子どもたちの世話をしたり一緒に遊んだりするだけではありません。子どもたちの成長や発達をサポートし、見守るのも役割の1つです。

当然ながら子どもの年齢に応じた知識が求められます。国家資格を取って保育士として働くようになっても、新しい情報を吸収するための勉強が必要です。

保育士には体力も欠かせません。日常的に子どもたちを追いかけたり、ぐずる子どもを抱っこしてあやしたりする上、保育園内の片付け・清掃も担当します。

勉強し続ける苦労を感じたりスタミナ・筋力に自信がなかったりすると、知識や体力が求められる保育士は大変だと感じるでしょう。

年収が高いとはいえない

保育士は子どもたちの安全を預かるため、知識や体力も必要とされる大変な仕事です。しかし保育士の年収は、決して高いとはいえません。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」から算出した保育士の年収は、約382万円です。一方、国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」では、日本の給与所得者全体の平均年収は443万円でした。

保育士にはフルタイム以外の選択肢が多いことを考えても、国家資格が必要で大変な割に年収は低めといえるでしょう。仕事の大変さと年収が釣り合っていないと感じる保育士は少なくありません。

「令和4年版厚生労働白書」によれば、東京都福祉保健局の「東京都保育士実態調査(2019年5月)」で、約29%が「給料が安い」を退職理由に挙げています。

※賃金構造基本統計調査のデータは、一般労働者・企業規模10人以上のものを使用しています。
※保育士の平均年収は、賃金構造基本統計調査の「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合計した金額です。

参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

プライベートや休養の時間を取りにくい

保育士には、長時間勤務になりやすい大変さもあります。特に早朝から夜まで開園している保育園では、保育士の勤務が不規則になりがちです。また保育園には夏休みや冬休みもありません。

勤務時間中は多忙なため、書類作成や行事の準備を自宅に持ち帰る保育士もいます。平日の夜や土日にゆっくりできないほど忙しいケースもあるでしょう。

「令和4年版厚生労働白書」によると、東京都福祉保健局の「東京都保育士実態調査(2019年5月)」で、保育士の退職理由として約28%が「仕事量が多い」を、約25%が「労働時間が長い」を挙げています。

同調査では、過去に保育士として働いていた人が再就業にあたって求める条件にも、8割近くの人から「勤務日数」「勤務時間」が挙がりました。

登録後に保育士として働かない人は多い

資格を取得しても保育士として働いていない人は、実際に保育士になっている人より多いのが現状です。2020年時点で約167万3,000人が保育士として登録していますが、そのうち保育士として就業しているのは約64万5,000人に過ぎません。

厚生労働省職業安定局の意識調査(2013年)では、資格を取っても保育士にならない理由として、紹介してきたような大変さに関わる項目が多く挙がりました。

保育に関する勉強をしたり保育士の実情を調べたりして苦労を知り、職業として選ぶことをやめた人もいるでしょう。

保育士を目指すには、学校に通ったり試験を受けたりと一定の時間がかかります。今後の職業として選択肢に入れている人は、大変さと自分にとっての魅力をしっかり比較して判断することが大切です。

保育士のやりがいとは?

子供を連れた保育士

(出典) photo-ac.com

保育士の大変さを知りたいと思っている人は、少なからず職業としての魅力にも興味があるのではないでしょうか?保育士が感じられるやりがいを把握して、目指すかどうかの判断に役立てましょう。

子どもたちの成長を実感できる

昨日までできなかったことができるようになる、新しい単語を覚えるなど、子どもたちは驚くほどの速さで成長します。たくさんの子どもたちが変わっていく姿を毎日のように間近で見られるのは、保育士にしか味わえない醍醐味といえるでしょう。

担任を持っていれば、子どもたち1人ずつの成長に加えて、集団生活の中でクラス全体がまとまっていく過程も一緒に体験できます。1年の間に子どもたちと作り上げた信頼関係は、大切な思い出になるでしょう。

進級や卒園で子どもたちを送り出すときや、卒園後に元気な姿を見せに来てくれたときの感動は、保育士の大きなやりがいです。

行事を通して達成感や連帯感を得られる

運動会や生活発表会といった行事の準備は、時間的・体力的にハードで大変さの一因にもなっています。

しかし大変な分、行事の中で子どもたちの元気な姿や楽しそうな笑顔を見られれば、大きな喜びを感じられるでしょう。保育士同士の連帯感にもつながります。

また、行事の準備は保育士だけではできません。保護者の協力も不可欠なため、お互いにコミュニケーションを深める機会になります。子どもたちにとっても、保育園の先生と親が一緒に準備してくれているのはうれしい場面です。

行事が無事に終わり、子どもたちが喜んでくれたときには、一緒に達成感を味わえるでしょう。

地域や社会への貢献につながる

保育士は保育を通じて、働く保護者をサポートするだけでなく、間接的に社会に貢献しています。安心して預けられれば、保護者は子どもがどうしているか心配することなく、仕事に打ち込めるでしょう。仕事の効率や生産性のアップにもつながります。

また、保育士の働く場所は幼稚園(幼稚園教諭の免許が別に必要)や保育園のほか、学童保育施設や福祉施設などさまざまです。一時保育や保育関連のイベントなどを通じて、子育てに悩みや困りごとを抱えている人の手助けをする機会もあります。

地域の子どもたちの健全な成長に貢献している実感は、保育士のやりがいになるでしょう。

保育士として働くには

子供と遊ぶ保育士

(出典) photo-ac.com

保育に関わる仕事は資格がなくてもできます。しかし無資格でできる仕事は「保育補助」にとどまり、保育士を名乗ることはできません。これから目指す人のために、保育士になるにはどうすればよいのかを紹介します。

保育士資格を取得して登録する

保育士の資格を取得する方法には、次の2つがあります。

  • 保育士養成施設の指定を受けている大学や短期大学を卒業する
  • 保育士試験を受けて合格する

学校に通う場合は卒業と同時に保育士資格が付与されるので、試験を受ける必要がありません。ただ、高卒者や指定養成施設以外の学校(大学・短期大学など)を卒業した場合、保育士試験の合格を目指す方がスタンダードでしょう。

例えば高卒の場合、1991年3月31日以前に高校を卒業している(科は問わない)か、1996年3月31日以前に高校の保育科を卒業していれば保育士試験を受けられます。

それ以外の高卒者は、保育所や児童養護施設など児童福祉法第7条により定められた児童福祉施設で、2年以上かつ2,880時間以上の実務経験があれば受験が可能です。子どもに関わる分野への転身を考えるなら、まず児童福祉施設で経験を積みましょう。

保育士養成施設にあたる学校を卒業するか保育士試験に合格した後は、保育士として働くために登録事務処理センターで登録手続き済ませる必要があります。登録完了まで約2カ月かかるので、資格を取得したら早めに手続きした方が安心です。

参考:
保育士になるには?-厚生労働省
高等学校卒業|一般社団法人全国保育士養成協議会

大変さとやりがいを考えて保育士を目指そう

子供と遊ぶ保育士

(出典) photo-ac.com

保育士の仕事に大変なことが多いのは、公的なデータを見ても事実です。しかし一方で、子どもたちの成長を間近で感じられる、元気な姿や笑顔を見られるといったやりがいや喜びも得られます。

保育士を目指すかどうか迷っているなら、大変さとやりがいのどちらもしっかり理解しておくと、後悔のない選択がしやすくなります。

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