基本給とは何?手取り・月給・給与との違いや注意する点を紹介

求人票に書かれている給与に関する情報には、基本給・月給・固定給など、似たような言葉が並んでいることも珍しくありません。全部が同じものだと誤解していると、思わぬ失敗をしかねません。基本給の意味や、混同しがちな言葉について理解を深めましょう。

基本給とは何?

給料とカレンダー

(出典) photo-ac.com

少しでもよい条件で働きたいと考えているなら、基本給に関する知識を深めておいて損はありません。基本給の意味や、決め方などを解説します。

給与のベースとなる金額のこと

基本給は会社から支給される給与のベースとなる部分です。原則として、残業代・交通費・インセンティブなどの各種手当は含みません。残業代やインセンティブなどは、その月によって変動しますが、基本給は一定です。

基本給に各種手当を加えた金額が毎月の給与となり、そこから税金や社会保険料が天引きされた額が手取り額となります。一概に、基本給が高いから月収が高くなるとはいえません。

基本給が同じ求人であっても、残業や夜勤などの割合によって、月にいくらもらえるかが変わってきます。実際に支給される金額と、基本給は異なるということを押さえておきましょう。

基本給の決め方

会社によって基本給の決め方は異なり、個々の能力や勤続年数などに応じて定期的に見直されるのが一般的です。

どのような基準で基本給を決めているかは就業規則で確認でき、主に仕事給式・属人給式・総合給式の3種類に分けられます。

仕事給式は、仕事内容や能力に応じて基本給を決める方法です。属人給式は、勤続年数・年齢・学歴などで金額を決定する方法で、業績に左右はされていないといわれています。総合給式は、能力や勤続年数などを総合的に判断して決められます。

基本給と間違いやすい言葉の意味

給料袋と明細

(出典) photo-ac.com

給料に関する言葉にはさまざまな種類があり、基本給と混同しやすいものが少なくありません。求人情報の内容を正確に読み取るために、間違えやすいそれぞれの言葉の意味を見ていきましょう。

給与・給料

給与は、基本給と各種手当を合計したものです。手当の種類は会社や職種によって異なります。主な種類は、通勤手当・住宅手当・慶弔見舞金・出張手当・資格手当・役職手当・職能手当などです。

ボーナスや現物給与も給与の中に含まれます。現物給与とは、制服や食事などの現物が支給されることをいいます。

会社の商品やサービスを値引き販売してもらった場合や、福利厚生施設などを無償または、割安で提供してもらった場合なども、現物給与に含まれます。

給料は基本給と同じように、ボーナスや各種手当を含まない状態を指す言葉です。残業や夜勤の多さなどで変動する給与とは違い、会社で規定されている一定額が支払われるのが一般的です。

参考:所得税法 第二十八条|e-Gov法令検索

固定給

固定給は、給与のうち一定の勤務時間に対して、金額が固定されているお金のことです。例えば、住宅手当や役職手当などが固定給に含まれます。

日給制・時給制・月給制などは固定給の一種で、業績などに左右されず、あらかじめ定められた一定額をもらえる制度です。残業が発生した場合は、固定給とは別に手当をもらえます。

業績次第で給料額が変わる場合は変動給と呼ばれ、歩合制や出来高払いも変動給と同じ意味になります。

額面・手取り

額面とは、会社から支給される総支給金額を指し、給与と同じ意味です。額面給与と呼ぶこともあります。

求人票や募集要項に書かれている金額は、額面給与である場合が少なくありません。実際に振り込まれる額とは違う点を押さえておきましょう。

手取りは、額面から税金や各種保険料などを引いたお金のことです。実際に振り込まれる金額を、手取り額と呼びます。額面から天引きされるものは、住民税・健康保険料・雇用保険料・介護保険料・厚生年金保険料などがあります。

介護保険料は40歳以上の労働者が負担します。年収や扶養家族の有無などによっても異なりますが、手取り額の目安は額面の70~80%程度といわれています。

日給・月給・月収

日給は、働いた日数分だけ賃金が支払われる給与体系のことです。月給は月単位で支給される固定の賃金のことで、基本給と固定手当を合計したものを指します。

月収は、年収を12カ月で割った金額を指し、時間外手当や通勤手当のような変動手当も含まれています。

似た意味の言葉に日給月給制があります。こちらは1日単位で規定の出勤日数を満たせば、1カ月分の給与が支払われる仕組みです。

早退や欠勤などで働いていない分は引かれ、休んだ日数によって給与が決まります。労働日数が多ければそれだけ給与が増え、自分がどれだけ稼いだかを把握しやすいのが特徴です。また、条件を満たしていれば有給休暇の取得もできます。

賃金

賃金は雇用主が労働者に対し、労働の対価として支払う全てを指します。給料・手当・賞与など、名称を問わず、労働の対価として支払われるもの全てが当てはまります。

慶弔見舞金や退職金などは、労働の対価ではないので、賃金には該当しません。ただし、就業規則で雇用主に支払いの義務があると定められていれば、賃金にあたります。

社宅の利用や、レクリエーション施設の利用といった福利厚生や、働くにあたって必要となる制服・備品や、出張の際にかかる旅費などは賃金に含まれません。

参考:労働基準法 第十一条 |e-Gov法令検索

職能給

職務遂行能力で決まる手当を職能給と呼び、その人ができる仕事内容に応じて基本給とは別に加算されます。職務遂行能力とは、業務を最後までやり切る力のことをいいます。

職能給は成果主義型とは違い、仕事の成果に左右されるわけではありません。勤続年数が長くなればなるほどできることが増え、評価の対象となる能力も高くなっていくため、給与が高くなる傾向にあります。

長い目で見たときに、人材の育成効果が期待できるのはメリットといえます。職能給によって給与が増えていく仕組みがあれば、腰を据えて働き続けられるでしょう。

勤続年数に応じて段階的に給与が上がっていくので、労働者が将来的な資産の計画を立てやすいところもメリットです。

デメリットは、仕事の成果そのものが直接給与に反映されない点だといえます。給与の額が年功序列になりやすく、若い社員がモチベーションを失う原因にもなるでしょう。

基本給により影響をうけるもの

給与明細

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基本給が低いからといって、必ずしも給与が低くなるとはいえません。しかし、基本給が各種手当の金額に影響することを理解していないと、損をする場合があります。基本給と各種手当との関係性を見ていきましょう。

ボーナス額に関係する

ボーナスは、基本給を基に算出されることが少なくありません。「基本給×倍率+調整額」で計算される場合、基本給が高ければ、それだけ多くのボーナスを受け取れることになります。

この計算方法が取り入れられている場合、基本給が低ければ、ボーナスの額はそれほど期待できないでしょう。

また、個人や企業の業績と連動してボーナスが支給されるケースでは、実力によってボーナスの額が決まります。従業員のモチベーションを高められる一方で、年収が不安定になりやすい点がデメリットといえます。

時間外手当に関係する

法定労働時間を超えて働いた場合、時間外労働手当が付きます。時間外労働をした場合、割増賃金が支払われる決まりです。割増される賃金は、基本給を基にしているので、基本給が高ければ受け取れる額も高くなります。

割増率は、労働時間や働いた時間帯によって変化する仕組みです。例えば、1日8時間・週40時間を超えた分の割増率は、25%とされています。

月給制の人が時間外労働手当がいくらになるのかを計算するには「基本給÷1カ月の労働日数÷1日の所定労働時間」で時給を導き出してから、割増率を掛けましょう。

退職金にも影響する

退職金は、基本給をベースに算出している会社が一般的です。会社によって詳しい算出方法は異なりますが、退職時の基本給や勤続年数を利用して計算されます。

より多くの退職金を受け取りたければ、基本給が高い方がよいと考えられます。また、退職事由によっても支給率が変化することもある点に注意しましょう。例えば、早期退職の場合は、割増で退職金を支払うと決められているケースもあります。

ただし、近年は退職金を算出するにあたって、基本給を使わない計算方法を採用している企業も増えているようです。

基本給と連動させると支給額が多くなりすぎ、経営が苦しくなるケースがあるからといわれています。基本給を利用せずに決める場合、例えば企業への貢献度や保有資格などを参考に算出されます。

基本給のよくある疑問

お札と電卓とペン

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基本給の意味や各種手当への影響について理解すると、新たな疑問が湧いてくるでしょう。税金や固定残業代についてなど、よくある疑問を解消します。

基本給以外にも税金はかかる?

基本的に勤務先から支給された給与は、全てが課税対象です。基本給だけでなく、ボーナスや退職金なども課税対象に含まれます。

ただし、通勤手当・宿直手当・日直手当・出張旅費などは、課税対象に含まれていないケースもあります。手当の種類によっては、課税対象となる範囲が定められている場合もあるので注意しましょう。

例えば、通勤手当が15万円を超えた分は、課税対象となります。宿直手当・日直手当は、1回あたり4,000円までの支給なら非課税とされています。

参考:通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁

参考:法第28条《給与所得》関係|国税庁

基本給に固定残業代は含まれる?

基本給に固定残業代が含まれている場合と、そうでない場合があります。固定残業代は「みなし残業」とも呼ばれ、一定時間分の時間外労働や休日労働に対し、一定額が支払われる仕組みのことです。

基本給に固定残業代を含んでもよい決まりですが、固定残業代を基本給に含む場合、企業側は求人に固定残業代の額と、残業時間を明記する必要があります。

いくら残業しても、支払われる額が変わらない状態では、労働者にとって不利益が生じかねません。求人票を見る際は、何時間分の残業代がいくらに設定されているのかをチェックすることが重要です。

参考:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。|厚生労働省

基本給は最低賃金にどう関係する?

最低賃金は雇用形態に関係なく、最低限支払わなければならないと決まっている1時間あたりの賃金のことをいいます。雇用形態に関係なく、全ての労働者に対し、地域別に最低賃金が定められています。

月給制の場合は「月給÷1カ月あたりの平均所定労働時間」で、1時間あたりの賃金を算出し、確認してみましょう。ただし、基本給と一部の手当が最低賃金には含まれますが、精勤手当・皆勤手当・家族手当・通勤手当は除外されます。

参考:最低賃金の対象となる賃金|厚生労働省

参考:最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省

求人票で基本給以外に確認したいポイント

就業規則とペン

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求人票を見る際、基本給だけにとらわれていると、思わぬ失敗をまねく恐れがあります。基本給以外に、確認すべきポイントを紹介します。

年間の休日数

求人票を見るときは、給与面だけでなく、年間の休日が何日間、設定されているかを確認します。年間休日数の平均は約115日とされているため、適正かを考える目安になるでしょう。

休日に関する制度としてよく用いられるのが、週休2日制と完全週休2日制です。週休2日制は、月に1回でも週に2回の休みがある場合に用いられます。

その月の1週目だけ土日が休みで、ほかの週は日曜のみが休みであっても、週休2日制となります。完全週休2日制は、1週間のうち2日の休みが設けられているという意味で、必ずしも連続した曜日が休みになるわけではありません。

企業によって何曜日が休みに設定されているかは異なり、労働者がある程度自由に選べるように設定されている場合もあります。

社会保険の有無

健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険などに加入していない会社も存在するため、社会保険の有無は必ず確認しましょう。

社会保険に加入していれば、会社と折半で保険料を納められますが、加入していないと、自分で国民健康保険に入らなければなりません。また、失業後に、失業保険を受け取れない点もデメリットといえます。

原則として、5人以上の従業員を雇用している事業所は、健康保険や厚生年金保険への加入が義務付けられています。雇用保険・労働保険は、労働者が1人でもいれば、加入しなければならない決まりです。

会社が社会保険に加入してくれない場合は、ハローワークや労働基準監督署などの公的機関に相談しましょう。

具体的な仕事内容

求人票を見ても、仕事内容が具体的に分からないときは、注意が必要です。仕事内容の記載がない場合、どんな仕事を任せるか決まっていないとも考えられます。

入社後に専門外の仕事を任される心配があり、想定していない仕事量を割り振られる可能性もゼロではありません。

仕事内容に関して、具体的な記載が一切ない状態の求人に応募するのは、リスクが高いといえます。仕事の流れや、担当業務・取扱商品などに関して不明点があるときは、応募時や面接時に必ず確認しましょう。

求人を探す際は基本給をチェックしよう

電卓とノートとペン

(出典) photo-ac.com

基本給は給与のベースとなる部分で、各種手当の額やボーナスと関係があります。基本給が低ければ、残業手当やボーナスが少なくなる可能性がある点に注意しましょう。

また、基本給が高くても休日が少なく設定されているケースもあり得ます。

求人票を見るときは、額面給与や手取りの違いなども理解しておくと、実際に受け取れる金額をイメージしやすくなります。また、給与だけでなく、休日や仕事内容に関する情報も目を通しておきたいポイントです。

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