求人情報で目にする基本給とは、何を指すのでしょうか?月給や固定給など似た言葉が並んでいると、実際にいくらもらえるのかが分からないと感じる人もいるでしょう。基本給の意味や混同しがちな言葉との違いや、平均額などを紹介します。
この記事のポイント
- 基本給の意味と決め方
- 基本給とは、給与のベースとなる賃金のことです。年齢や学歴、遂行能力などを基準にしており、会社によって決め方が違います。
- 基本給と給与との違い
- 給与は会社が従業員に支払う労働対価全てを指し、基本給は給与の一部です。給与から税金などを控除した実際の振込額を、手取りといいます。
- 基本給の重要性
- 一般的に、ボーナスや残業代などは基本給をもとに計算されます。給与が同じでも、基本給が高いほど有利です。
基本給とは
少しでも良い条件の仕事を探すためにも、基本給に関する知識は欠かせません。まずは基本給が何を指すのか、意味を理解しましょう。
給与のベースとなる賃金を指す
基本給は、給与の土台となる賃金のことです。一定期間働けば必ずもらえる額で、交通費・残業代・各種手当・インセンティブなどは含みません。残業代・インセンティブは月によって変わりますが、基本給は一定です。
基本給の決め方や呼び方は会社によって異なり、一部の手当を基本給に含めるパターンもあります。基本給に関する規定は、就業規則に明記されています。現在就業中の人は、会社の就業規則を改めて確認してみるとよいでしょう。
基本給の決め方
基本給がどのようにして決まるのか、気になる人もいるかもしれません。基本給の決め方は主に3つあるので、それぞれの特徴を見ていきましょう。
仕事給式
仕事給式は欧米で広く使われている決め方で、近年は日本でも採用する会社が増えているようです。
仕事の内容や責任の重さ・業務遂行能力・成果など、個人の実力のみをもとに決まり、勤続年数の長さや学歴、年齢などは影響しません。
入社して間もない人でも、努力すれば高い基本給を得られる可能性があります。能力のある人にとっては、メリットが大きいといえるでしょう。
一方、成果が出なければ、何年働いても基本給は低いままとなってしまいます。
属人給式
属人給式は、仕事給式とは逆に、学歴・年齢・勤務年数といった従業員の属人的な要素で基本給を決める方法です。特に年齢・勤続年数を重視する「年功序列」は、日本で長く定着してきました。
属人給式では、長く働けば自動的に基本給も増えていくため、従業員にとっては将来の見通しを立てやすいメリットがあります。ただし、個人の努力が反映されないことから、若手従業員のモチベーションの低下につながるデメリットも指摘されています。
総合給式
現在日本の会社で広く使われているのが、仕事給型と属人給型を組み合わせた総合給式です。学歴・勤続年数などをベースに、仕事内容・個人の実績などを考慮して基本給を算出します。
勤続年数が同じでも、能力次第で基本給に差が付くイメージです。長年働き会社に貢献してくれたことへの評価と、個人の努力に対する評価の両方を取り入れて金額が決まるため公平性があり、モチベーションの維持・向上を図れるでしょう。
基本給と間違いやすい言葉
給料や収入に関する言葉には、さまざまな種類があります。基本給と間違いやすい言葉を挙げ、それぞれの意味や基本給との違いを解説します。
給与・給料
給与とは、本給・手当・ボーナスなど、会社が従業員に労働の対価として支払うもの全てを指す言葉です。所得税法第28条に、給与所得についての説明があります。
「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。」
現金以外に、自社製品の提供や値引き販売、記念品・食事・テレワーク用のパソコンなども、条件によっては給与と見なされます。その場合は所得税の課税対象となり、金額が給与明細に記載される決まりです。
給料は基本給と同じで、残業代や各種手当、ボーナスなどを含まない賃金を指します。求人票に「給料」とあれば、基本給のことと考えてよいでしょう。
額面
額面は給与と同じく、基本給に各種手当を足した会社からの総支給額を指します。求人情報に記載されている「給与」は、基本的に額面です。1年間の額面にボーナスを足せば、年収が分かります。
手当の種類は会社により異なり、名称や金額もさまざまです。会社が独自に設定する手当の代表例は、以下の通りです。
- 役職手当
- 資格手当
- 家族手当(扶養手当)
- 住宅手当
- 皆勤手当 など
なお、上記手当の有無にかかわらず、時間外・休日・深夜の労働に対する手当は必ず支給されます。
手取り
手取りは、額面から所得税や社会保険料などを差し引いた、実際に口座に振り込まれる金額です。生活に直結する、現実的な収入といってよいでしょう。
具体的には、以下の項目が差し引かれます。
- 税金:所得税、住民税
- 社会保険料:雇用保険、厚生年金保険、健康保険、介護保険
- その他:社宅費、積立金など
いくら引かれるのかは居住地や扶養家族の有無などで変わりますが、一般的に手取りは額面の70~80%といわれています。額面が30万円の場合、手取りは21~24万円になると考えてよいでしょう。
固定給・変動給
固定給とは、日給制・時給制のように、一定の時間・期間に対して定められた賃金のことです。基本給と違い、金額に「固定手当」が含まれます。
固定手当は、役職手当・住宅手当など毎月金額が変動しない手当です。時間外手当や休日出勤手当のような、変動する手当は別途支給されます。
働いた時間ではなく、業績次第で金額が変わる場合は変動給と呼ばれます。歩合制や出来高払いも、変動給と同じ意味です。
月給・月収
月給と月収は、いずれも1カ月の賃金を指しますが、含まれる範囲が異なります。月給は基本給に固定手当を合わせた、毎月必ず支給される賃金です。
残業代のように、月によって変動する手当は含みません。この点では、固定給と同じと考えてよいでしょう。
月収は1カ月の収入のことで、月によって変動する手当を含みます。つまり、その月の額面と同じといえます。月給は毎月一定で、月収は残業・休日出勤の多さによって変わる点を押さえておきましょう。
基本給の平均額と手取りの目安
給与の多くを占める基本給は、どのくらいあれば安心できるのでしょうか?平均額と、手取りの目安を紹介します。
年齢別の基本給の平均
基本給自体の公的な調査データはありません。平均額を知るには、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」が最も近く、参考になります。
ここでは、6月分の所定内給与額の平均が分かります。所定内給与額は、時間外手当や休日出勤手当を差し引いた、所得税などを控除する前の額です。年齢別・性別の平均は、下表の通りです。
年齢階級 | 男女計 | 男 | 女 |
---|---|---|---|
年齢計 | 31万8,300円 | 35万900円 | 26万2,600円 |
20~24歳 | 22万4,600円 | 22万9,300円 | 21万9,600円 |
25~29歳 | 25万8,300円 | 26万7,800円 | 24万5,800円 |
30~34歳 | 28万6,000円 | 30万2,100円 | 25万9,600円 |
35~39歳 | 31万4,800円 | 33万7,900円 | 27万100円 |
40~44歳 | 33万8,800円 | 37万1,800円 | 27万6,800円 |
45~49歳 | 35万5,700円 | 39万6,900円 | 28万1,700円 |
50~54歳 | 37万1,100円 | 41万7,700円 | 28万5,900円 |
55~59歳 | 37万6,400円 | 42万7,400円 | 28万1,700円 |
基本給が20万円の場合の手取り金額
求人に応募する際は、基本給だけでなく、手取り金額に注目する人も多いでしょう。実際にどのくらいもらえるのかをイメージすることで、自分なりに応募の判断基準を定められます。
先述の通り、手取りは額面(基本給+各種手当)から、税金や保険料を控除した金額です。基本給が同じでも、手当の額や税額によって、手取りも変わってきます。
仮に基本給が20万円で、住宅手当が3万円、残業代が2万円だったとしましょう。この場合額面は25万円で、その70~80%が手取りとなります。80%なら20万円、70%なら17万5,000円が給料日に口座に振り込まれることが分かります。
基本給によって金額が左右されるもの
基本給が低くても、毎月の給与が低くなるとは限りません。手当が高額だったり、残業が多かったりすれば、より多くの手取りを受け取れるからです。
ただし基本給によって、金額が大きく左右されるものもあります。ここでは、基本給が影響する代表例を見ていきましょう。
ボーナス
ボーナスの有無や算出方法は会社によって異なります。ボーナス制度がある会社では、その金額を基本給を基準に算出するのが一般的です。業績などが考慮されることもありますが、基本的には基本給が高い方がボーナスも高くなるといえます。
例として、毎月の給与が30万円の人が「基本給の4カ月分」のボーナスをもらうケースで比べてみましょう。
30万円の内訳が「基本給20万円+手当10万円」の場合、ボーナスは80万円です。しかし「基本給25万円+手当5万円」だと、ボーナスが100万円となり、20万円もの差が生じます。
残業や休日出勤の手当
残業や休日出勤したときに支払われる時間外手当は、月給をもとに算出します。月給は基本給と固定手当のことなので、ここでも基本給が金額に大きく影響します。
時間外手当の算出方法は、以下の通りです。
- 1時間当たりの賃金×時間外労働した時間×割増率
1時間当たりの賃金は、月給を1カ月の平均所定労働時間で割って求めます。1カ月の平均所定労働時間は、1年365日から年間所定休日を引いた日数に、1日の所定労働時間をかけ、12で割った数です。
割増率は労働基準法第37条で定めている、時間外労働に対する割増賃金を算出するための率で、月の合計残業時間や残業した時間帯などによって異なります。例えば、1日8時間・週40時間を超えた場合の割増率は、25%以上です。
また固定手当には、家族手当・住宅手当のように、家族人数や家賃によって変動するものは含みません。ただし、会社が一律で支給している場合は含めることになっています。
退職金
退職金の額も、基本給を基準に決めるケースが一般的です。多くの場合、退職時の基本給または勤続中の平均基本給に、勤続年数別の支給率をかけて算出されます。このため額面が高くても、基本給が低いと退職金の額も低くなってしまうのです。
ただし、基本給を基準にすると退職金の額が高くなりすぎて、経営に影響する恐れがあることから、他の方法で算出する会社も増えています。在籍年数に応じてあらかじめ決めておいたり、業績・資格などをもとに算定したりなどの方法があります。
基本給にまつわるQ&A
求職中は賃金や給与について、さまざまな疑問を抱きがちです。最後に、基本給にまつわるよくある疑問を解消します。
基本給は最低賃金の対象?
基本給と一部の固定手当のように、毎月支払われる基本的な賃金は、最低賃金の対象です。最低賃金は、最低限支払わなければならないと決まっている1時間当たりの賃金で、地域により異なります。
万が一、基本給が最低賃金を下回っていた場合は違法ですので、過去にさかのぼり差額分を請求可能です。
日給制・月給制などは、1時間当たりの金額に換算して、最低賃金を上回っているかどうか確認できます。月給制なら時間外手当の算出時と同じように、1カ月の平均所定労働時間で割るとよいでしょう。
基本給が変わることはある?
採用時に提示された基本給が、上がったり下がったりする可能性は十分にあります。会社に昇給制度があれば、定期的に基本給は上がっていくはずです。
ただし、昇給のタイミングや回数などは会社によって異なります。定期昇給のほかに、勤続年数や仕事の実績により基本給が上がるケースもあるでしょう。
一方、会社都合による基本給の減額は、基本的に認められていません。しかし、有給休暇を使わない欠勤や遅刻・早退があった場合、その分だけ減額となります。
基本給に「固定残業代」は含まれる?
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働・休日労働に対し、一定額が支払われる仕組みのことで、「みなし残業」とも呼ばれます。基本給には固定残業代を含んでもよいことになっていますが、含まれているときもあれば、そうでないときもあります。
基本給に固定残業代を含む場合、会社側は求人に固定残業代の額と、残業時間を明記しなければなりません。求人情報に「固定残業代を含む」とあるなら、何時間分の残業代がいくらに設定されているのかを確認することが重要です。
出典:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。|厚生労働省
基本給をチェックして転職を成功させよう
基本給は給与のベースとなる賃金を指し、これに各種手当を足した額が給与として支払われます。基本給は、ボーナス・時間外手当などの算出に使われるため、給与額が同じ場合は基本給の占める割合が高いほど有利になります。
転職先での月収・年収の目安を知るためにも、基本給の額は必ずチェックしたい項目といえるでしょう。
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