深夜労働の手当はどう計算する?深夜手当と関連性が高い手当も解説

夜間に働く仕事を探しているなら、深夜手当を理解しておくのがおすすめです。賃金の割増率を知っておけば、収入の目安が分かるでしょう。深夜手当の勤務時間帯や計算方法、深夜手当と関連性が高い手当について解説します。

深夜手当の定義

深夜残業

(出典) pixta.jp

夜遅くから明け方まで働いた場合にもらえる深夜手当は、労働基準法で規定されている手当です。同じく夜間の労働により発生する夜勤手当と併せて、まずは意味を押さえておきましょう。

深夜の労働で割増される手当

深夜手当とは、22:00~翌5:00の時間帯に働いた場合に、通常の賃金に割り増しされる手当を指します。割増率は基準となる賃金の25%以上です。

深夜手当は労働基準法第37条に規定されています。22:00~翌5:00に働いた従業員がいるなら、原則として企業はその従業員に深夜手当を支払わなければなりません。

正社員だけでなく、アルバイトやパートにも深夜手当は適用されます。企業ごとの割増率は、就業規則で確認が可能です。

深夜手当は、本来休息すべき時間に働くことへのねぎらいいの意味があるとされますが、深夜労働を前提とした業界や業種でも、条件を満たせば深夜手当が発生します。

参考:労働基準法第37条「(時間外、休日及び深夜の割増賃金)」 | e-Gov法令検索

夜勤手当との違い

深夜手当と意味が似た手当に夜勤手当があります。夜勤手当は夜勤をした場合に支給される企業独自の手当です。法律で定められているものではありません。

夜勤手当も深夜手当と同様に夜間労働に対して発生する手当ですが、支払うかどうかは企業側が自由に決められます。賃金の割増率や対象となる時間帯も、企業ごとにさまざまです。

夜勤手当を支給する企業では、夜勤手当と深夜手当の両方をもらえます。ただし、22:00~翌5:00の時間帯以外にも夜勤手当が設定されている場合、当該時間帯以外に発生するのは夜勤手当のみです。

深夜手当の計算方法

電卓と現金

(出典) photo-ac.com

深夜手当の計算式は「基礎賃金×割増率×労働時間」です。金額を算出する上で、基準となる賃金を正しく割り出すことが特に重要です。

基準となる賃金を割り出す

深夜手当の計算に用いる基準賃金は、賃金の時間単価を意味します。時給で働く場合は時給=時間単価ですが、日給制と月給制の場合は、以下の計算式により時間単価を割り出します。

  • 日給:(所定日給-除外賃金)÷1日当たりの所定労働時間
  • 月給:(所定月給-除外賃金)÷1カ月当たりの平均所定労働時間

例えば、日給5,000円・除外賃金なし・1日の所定労働時間4時間の場合、基準賃金は(5,000円-0円)÷4時間=1,250円と計算できます。

除外賃金とは、労働時間や労働量と関係なく支払われる賃金のことです。除外賃金の代表例として、ボーナス・通勤手当・住居手当・家族手当が挙げられます。

割増率と労働時間を掛ける

自分の賃金形態に合わせて基準賃金を割り出したら、式に当てはめて計算します。次のケースを例に、深夜手当を算出してみましょう。

  • 所定月給:30万円
  • 除外賃金:なし
  • 1カ月当たりの平均所定労働時間:160時間
  • 深夜手当の割増率:25%
  • 深夜労働時間:40時間

上記の条件を深夜手当の計算式に当てはめると、以下のように計算できます。

(30万円-0円)÷160時間×25%×40時間=1万8,750円

上記のケースでもらえる深夜手当の金額は1万8,750円です。

深夜労働以外に手当をもらえるケース

給与明細と通帳

(出典) pixta.jp

決められた時間以外に働いた場合は、残業手当・時間外手当・休日出勤手当をもらえるケースがあります。深夜手当と併せて、これらの手当についても理解を深めておきましょう。

法定内残業

法定内残業とは、法定労働時間内で所定労働時間を超えている分の残業です。まずは、法定労働時間と所定労働時間の意味を押さえておきましょう。

  • 法定労働時間:法律で定められた労働時間(1日8時間・1週40時間)
  • 所定労働時間:会社が任意で決めた労働時間

就業規則や労働契約書に「始業9:00・終業17:00・休憩時間1時間」と記載されている場合、所定労働時間は7時間です。

法定内残業が発生した場合、会社に割増賃金を支払う義務はありません。労働時間が法定労働時間に収まっているためです。

例えば、所定労働時間が7時間の会社で8時間働いたケースでは、1時間は法定内残業となるため、会社は割増賃金を支払わなくてもよいのです。ただし、会社によっては割増賃金を支払うケースもあります。

参考:労働基準法第32条「(労働時間)」 | e-Gov法令検索

法定外残業

法定労働時間を超えた分の残業が法定外残業です。法定外残業が発生した場合、会社には割増率25%以上の賃金を支払う義務があります。

法定内残業で発生する手当を残業手当、法定外残業で発生する手当を時間外手当と呼ぶ場合もあります。残業手当を支払うかどうかは会社が任意で決められますが、時間外手当は必ず支給しなければなりません。

2023年4月1日からは、時間外労働が月60時間を超えた場合、すべての企業において60時間を超えた分の割増率が50%以上になります。

参考:労働条件管理の手引 P16 | 福岡労働局

参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます | 厚生労働省

法定休日労働

労働基準法では、毎週1日または4週を通じて4日以上の休日を、労働者が最低限取るべき休日として定めています。これが法定休日です。

法定休日に働いた場合、会社は割増率35%以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。日曜日のみを休日にしている会社で、日曜日に働くケースでは、労働時間にかかわらず休日出勤手当を支給する必要があります。

法定休日労働は残業扱いにならないため、別途時間外手当が発生することはありません。会社に支払い義務があるのは、割増率35%以上の賃金のみです。

参考:労働基準法第35条「(休日)」 | e-Gov法令検索

法定外休日労働

法定休日以外に会社が定めた休日を法定外休日といいます。週休2日制で毎週土日を休日としている場合は、一般的に日曜日が法定休日、土曜日が法定外休日です。

法定外休日労働は法定休日に働いているわけではないため、法定休日労働ではなく残業扱いになります。法定外休日労働のうち、1週40時間に収まる分は法定内残業、1週40時間を超えた分は法定外残業です。

月曜日から金曜日まで7時間ずつ働いた週の土曜日にも7時間働いた場合、トータルで42時間労働したことになるため、土曜日の2時間分のみ割増率25%以上の賃金を支払う義務が発生します。

深夜手当の具体例

時計とキーボード

(出典) pixta.jp

残業手当と休日出勤手当を同時にもらうことはありませんが、深夜手当は他の手当と合算される場合があります。ケース別の具体例を確認しましょう。

深夜手当のみ

22:00~翌5:00をメインの時間帯として働く場合は、深夜手当のみになるこ場合が多いでしょう。例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 所定労働時間:1日8時間
  • 勤務時間帯:22:00~翌7:00(休憩1時間)

上記の働き方では、22:00~翌5:00の時間帯に深夜手当が発生します。実労働時間は8時間となり、法定外残業は発生しないため、5:00~7:00は割増なしの賃金です。

深夜手当+残業手当

深夜の労働が時間外労働に当たる場合は、両方の割増率が合算され、25%+25%=50%となります。具体例を以下で確認しましょう。

  • 所定労働時間:1日7時間
  • 勤務時間帯:13:00~23:00(休憩1時間)

夕方に休憩をとった場合は、21:00を迎えると労働時間が7時間となります。21:00~22:00が法定内残業、22:00~23:00が法定外残業+深夜労働です。

21:00~22:00について企業が割増賃金を支払う必要はありませんが、22:00~23:00の労働には割増率50%の賃金を支給しなければなりません。

深夜手当+休日出勤手当

法定休日労働が深夜に及んだ場合も、両方の手当が発生します。合算後の割増率は35%+25%=60%です。

法定休日労働には法定労働時間の概念が適用されないため、労働時間にかかわらず22:00を超えて働いたら、法定休日労働+深夜労働になります。

例えば、法定休日の労働時間9:00~24:00と21:00~24:00を比較した場合、どちらも深夜労働時間は2時間となり、22:00以降の労働には深夜手当+休日出勤手当を支払う必要があります。

深夜手当・深夜労働のよくある疑問

深夜残業のイメージ

(出典) pixta.jp

深夜手当や深夜労働について疑問に感じやすいポイントをまとめました。一通り目を通し、深夜手当や深夜労働への理解をより深めましょう。

管理職も深夜手当をもらえる?

管理監督者に該当する場合、時間外手当は出ませんが深夜手当はもらえます。時間外手当の割増率25%は合算されないため、手当の割増率は深夜手当の25%のみです。

管理監督者とは、以下すべての条件に当てはまる人を指します。

  • 労働時間や休日の規制を超えて働かざるを得ない職務内容・責任・権限を有している
  • 実際の働き方も労働時間や休日の制限がなじまない
  • 地位にふさわしい待遇を受けている

肩書きだけでは管理監督者かどうか判断できない点に注意が必要です。

残業が深夜に及んだ場合の休憩時間は?

労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は最低45分、8時間を超える場合は最低1時間の休憩時間を義務付けています。

ただしこれ以外に規定はないため、残業が深夜に及んでも労働時間全体に対して計1時間の休憩を与えていれば、会社としては違法になりません。

朝から働いて昼食休憩をとった後、労働時間が深夜にまで及ぶ場合、昼食後に休憩をとらせなくても会社に責任はないことになります。残業が長くなりそうな会社への転職を希望する場合は、適度に休憩できるのか聞いておくのがおすすめです。

参考:労働基準法第34条「(休憩)」 | e-Gov法令検索

固定残業代に深夜手当は含まれる?

固定残業代制とは、実際の残業時間とは関係なく、毎月一定の残業代を支給する制度のことです。残業代と深夜手当は別物であるため、固定残業代制となっている場合も、深夜手当は支払われます。

ただし、中には深夜手当を固定残業代に含んでいる企業も一定数存在します。昼間と夜間の賃金が変わらない求人は、深夜手当が支払われない恐れがあるため注意が必要です。

求人によっては、深夜手当の25%分を引くと最低賃金を下回るケースもあります。深夜手当が必ず発生するものである以上、このような条件で働かせるのは違法です。

深夜手当を理解して求人票をチェック

伸びをする女性

(出典) pixta.jp

深夜手当は22:00~翌5:00の労働に対して支給される手当のことです。基準賃金×割増率×労働時間の計算式で、金額を算出できます。割増率は25%以上です。

残業や休日労働に対して発生する手当も併せて理解しておけば、求人票に記載されている内容をより理解しやすくなるでしょう。

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