仕事復帰する際に、フルタイムと扶養内勤務のどちらにすればいいのか分からず、悩む人は少なくありません。そこで、扶養内勤務にする場合の年収の上限や、扶養の種類を紹介します。メリットとデメリットについても確認し、働き方を検討しましょう。
扶養内勤務で働く年収の壁
扶養内勤務で働く場合は、年収の上限があります。上限は扶養の種類によって異なるため、よく分からないという人もいるのではないでしょうか?複数ある上限を紹介するので、詳細を確認しましょう。
被扶養者が住民税を納める「100万円」
被扶養者の年収が100万円を超えると、住民税を納める必要があります。住民税は、前年の1月1日~12月31日までの所得に対して課され、支払いは翌年の6月からです。
課税される所得は、収入から給与所得控除額(最低55万円)を差し引いた額です。住民税の所得割の非課税限度額は45万円なので、両方を足した100万円以下であれば、住民税がかかりません。
なお、住民税は地方に納める地方税で、自治体によって上限額が異なるケースもあるため、詳細については居住している地域の自治体に確認しましょう。
参考:家族と税|国税庁
被扶養者が所得税を納める「103万円」
被扶養者に対して所得税がかかるのは、年収が103万円を超えた場合です。所得税は、年収から給与所得控除額を引いた所得に対してかかります。
給与所得控除額が最低55万円で、所得税の基礎控除額が最低48万円なので、それらを足した103万円以下であれば、所得税がかからないのです。
また、年収103万円以下であれば「配偶者控除」が受けられ、103万円を超えると「配偶者特別控除」に切り替わります。いずれの場合も、控除額は扶養者(世帯主)の年収によって異なり、1,220万円を超える場合は控除が受けられません。
社会保険の適用範囲が拡大「106万円」
社会保険を負担する必要があるのは、年収が106万円以上で社会保険の適用範囲に当てはまる場合です。
2022年10月から適用範囲が拡大され、対象となる勤め先の従業員数が501人以上から101人以上に変更になりました。さらに2024年10月からは51人以上に拡大されます。
対象となるのは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満で、月額賃金が8.8万円以上の場合です。2カ月を超える雇用の見込みがある点や、学生でないことも条件です。
参考:配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま|社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省
社会保険の扶養から外れる「130万円」
年収が130万円を超えると、扶養者の社会保険から外れます。自分が勤務している職場の厚生年金や健康保険に加入する必要があります。勤務先で加入できない場合は、国民年金や国民健康保険への加入が必要です。
このように、130万円を超えると社会保険料の自己負担額が増え、手取りが減る結果になるため、しっかり検討することが大切です。
配偶者特別控除の満額条件額「150万円」
扶養控除には、配偶者控除と配偶者特別控除があります。年収が103万円までは配偶者控除で、103万円からは配偶者特別控除です。扶養者(世帯主)の年収が1,220万円以下の場合に適用されます。
控除額は、満額条件額である年収150万円を超えると、徐々に減っていきます。例えば、自分の年収が140万円で、扶養者(世帯主)の年収が800万円の場合の控除額は38万円ですが、自分の年収が170万円になると控除額は21万円です。
配偶者特別控除の範囲の上限「201万円」
配偶者特別控除の範囲の上限は、141万円から201万円に拡大されました。満額条件である150万円を超えると控除額が徐々に減りますが、201万円までは控除を受けられます。
例えば、扶養者(世帯主)の年収が800万円で自分の年収が103万~201万円の間である場合は、年収に応じて3万~38万円の控除を受けられます。
年収が201万円を超えると、配偶者特別控除の上限に達するため、対象外になります。なお、扶養者(世帯主)の年収が1,220万円を超える場合も控除の対象外です。
扶養には2種類ある
扶養には2種類あることを知らない人もいるのではないでしょうか?種類と併せて、それぞれどのようなものなのか分かりやすく紹介します。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、年金や健康保険が対象です。扶養内である場合は、被扶養者の年金や健康保険の支払いが発生しません。
年収が130万円を超えると、扶養者の社会保険から外れます。勤務先の厚生年金や健康保険に加入できない場合は、国民年金や国民健康保険に加入する必要があります。
また前述した通り、社会保険の適用範囲が拡大されました。年収130万円を超えていなくても、年収が106万円を超えており、一定の条件を満たしている場合は社会保険に加入しなければなりません。
税制上の扶養
所得税と住民税に関するものが、税制上の扶養に該当します。年収が103万円を超えなければ、所得税はかかりません。
また、扶養者(世帯主)の年収にもよりますが、被扶養者の年収が103万円以下であれば、配偶者控除が受けられます。103万円を超えると、配偶者特別控除に切り替わります。
地方税に関しては、被扶養者の年収が100万円を超えなければ住民税がかかりません。ただし、自治体によって上限が異なるため、確認しましょう。
扶養内勤務のメリット
扶養内での勤務を選んでいる人は、少なくありません。どのようなメリットがあるのでしょうか?主なメリットを紹介するので、働き方を検討する際に役立てましょう。
扶養者の手取りが増える
税法上の扶養内で働くことで、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられます。税金の納付額が抑えられ、世帯の手取りが増える場合もあります。控除額は最大で38万円なので、家計が助かると感じる家庭も多いでしょう。
職場によっては、「扶養手当」や「家族手当」が支給されるケースもあります。対象者の条件は職場によって異なりますが、条件を満たす限り毎月手当を受けられるのもメリットでしょう。
保険料を納めずに年金受給、医療費3割負担
扶養内勤務であれば、被扶養者は保険料を支払うことなく、国民年金を受給できます。保険料を支払っていなくても、納付済みとして扱われるのです。
国民健康保険についても同様で、保険料を支払わなくても保険証が発行されます。医療費を3割負担する必要はありますが、医療機関で受診することが可能です。
年金や健康保険は、生活する上で大切な保障です。納付しなくても年金や健康保険を享受できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
扶養内勤務のデメリット
先に紹介した通り、扶養内勤務には複数のメリットがあります。しかし、同時にデメリットもあるため、両方を知った上で扶養内勤務を選ぶか決めることが大切です。具体的にどのようなデメリットがあるのか確認しましょう。
厚生年金の受給額が低くなる
被扶養者は年金を納めなくても年金が受給できますが、受給できるのは国民年金だけであるため、厚生年金の受給額が少なくなります。
また、年金額を増やせる「付加年金」や「国民年金基金」といった制度も利用できません。老後の生活に必要な資金が足りず、経済的に苦しい状況に置かれる可能性もあるといえるでしょう。
扶養に入らずに働けば、年金を納める必要がありますが、将来の受給額を増額できます。
キャリアアップが難しくなる
さまざまな制限が出てきてしまうため、キャリアアップが難しくなるのもデメリットです。扶養内勤務にする場合は、被扶養者の年収に上限があります。そのため、時給や勤務時間などに制限が生じるケースが珍しくありません。
制限があるために仕事の選択肢が減り、やりたい仕事に就けない場合もあるでしょう。勤務時間が短いことで、責任のある重要なポストに就けないなど、キャリアアップが難しくなる事態も考えられます。
いずれ正社員に復帰したいと考えている場合も、キャリアアップが難しくなることで、復帰に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
扶養内勤務をするポイント
自分にとって、どのような働き方がベストなのか分からず悩む人は少なくありません。扶養内勤務にするかどうか決める際に目を向けたい大切なポイントを紹介するので、じっくり考えてみましょう。
手取り額のみで判断しない
手取り額だけでなく、将来を見据えて総合的に判断することが大切です。例えば、年収103万円と120万円では、手取り額がほとんど変わらないケースもあります。
年収120万円だと社会保険料を納める必要があるので損だと思われがちですが、そうとも限りません。手取りは同じでも、受給できる年金額が増えるというメリットがあります。
また、年収に制限があることで、希望する仕事が見つかりにくかったり、キャリアアップが難しくなったりする可能性もあります。
法改正によって、社会保険加入の対象者も拡大しているので、メリットとデメリットを把握した上で、将来を見据えた働き方を検討しましょう。
手当や残業代もチェック
扶養内勤務にする場合は、年収の上限を超えないようにする必要があります。年収に含まれる手当や収入とそうでないものがあるため、きちんと把握しておくことが大切です。
例えば、社会保険料を納める106万円の壁では、交通費や残業代、時間外労働、休日出勤など所定外給与は年収に含まれません。冠婚葬祭などで勤務先から支払われた手当や賞与など、臨時手当も対象外です。
社会保険の扶養から外れる130万円の壁では、交通費や残業代、公的給付金などが年収に含まれます。
扶養内勤務の仕組みを知ろう
扶養には社会保険上と税制上の2種類があり、複数の年収の壁があるため、仕組みをしっかり理解しましょう。扶養内勤務は手取りが増え、保険料を納めなくても年金を受給できたり、扶養している人の勤務先の健康保険組合に加入できたりするのがメリットです。
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