ありきたりな理由をパートの志望動機に挙げても、採用担当者の心にはなかなか響きません。応募した理由を掘り下げると同時に、自分を採用するメリットを盛り込みましょう。例文やNG例を挙げながら、伝わるパートの志望動機を作るコツを解説します。
パート採用で採用担当者が重視する要素
パートの志望動機が思い付かないときは、採用する側の立場に立ってみましょう。自分が担当者ならどんな人を採用したいかを考えると、志望動機に盛り込むべき内容が見えてきます。
誠実に長く働いてくれるか
採用担当者が最も重視する要素の1つが、誠実に長く働いてくれるかどうかです。パートに限った話ではありませんが、人を雇うには採用コストがかかります。
せっかく採用したスタッフが短期間で辞めてしまえば、それまでに費やしたコスト・時間・労力が水の泡になるでしょう。
採用担当者は応募者の志望動機を通じ、安定した勤務が可能な人かを見極めています。応募先への共感や熱意を示したとしても、安定勤務が難しそう・急な欠勤が多そうと判断されれば、正社員でなくても採用されにくいと考えるのが妥当です。
即戦力になってくれるか
パート採用では、即戦力になれるかどうかが重視されます。即戦力とは、過去の経験や自分の強みを生かして、採用直後から活躍できる人のことです。
特に人手が足りない店舗や会社では、やり方を手取り足取り教えている余裕がほとんどありません。これまでの職務経歴や保有資格などを見て、少しでも即戦力になってくれそうな人を優先する傾向があります。
歓迎されやすいのは、過去に同じ業界・職種で働いていた人です。例えばファミレスで調理担当をした経験がある人なら、居酒屋やカフェのキッチンでも活躍できるでしょう。
家事を担当してきた主婦・主夫の場合、料理や後片付けといった日常生活での経験が高く評価されるケースもあります。
主婦・主夫が志望動機を考える際のポイントは?
結婚や介護を機に、専業主婦・主夫を選択する人は少なくありません。個々の事情が一段落してパートから社会復帰しようとしたとき、履歴書の志望動機に頭を悩ませる人も多いのではないでしょうか?
主婦・主夫がパートの志望動機を考える際の留意点を解説します。
パートで働く目的を明確にする
志望動機を用意するにあたって、まずはパートで働く目的を明確にします。興味があったからという理由だけでは、採用担当者はその人を選ぶメリットを感じないでしょう。
採用する側は、安定して長く働ける人を求めています。パートの目的が明確であればあるほど、安定勤務ができる証明となるのです。働く目的がはっきりしている人は、採用担当者から見ると、すぐに辞めず安定して働いてくれるだろうと期待が持てます。
経験や強みをアピールする
パートの志望動機を伝えるとき、過去の経験や強みは積極的にアピールしましょう。特に同じ業界・業種に応募する際は、即戦力になれる人材として重宝されます。
専業主婦・主夫でブランクが長い人は、日々の子育てや家事で得た経験を伝えても構いません。限られた時間の中で効率よく家事をこなせる人は、マルチタスクや時間の管理に長けていると評価されるでしょう。
子ども向けの商品・サービスを展開している店舗であれば、主婦・主夫ならではの視点や子育て経験が買われるケースがあります。
自分の希望条件をしっかり伝える
パート応募者には、勤務地・勤務形態・時給といった仕事上の希望条件があり、条件そのものが志望動機になっているケースがほとんどです。
採用する側としても、パートの採用では企業理念への共感やコンセプトへの賞賛よりも、応募者の生活状況に即した本当の志望動機を知りたいと考えます。ミスマッチが起こらないよう、応募先を選んだ経緯とともに、自分が望む働き方を伝えましょう。
ただし「時給がよかったから」「勤務地が近かったから」だけでは、採用担当者に好印象を与えられないのが実情です。自分都合の志望動機だけを並べるのではなく、採用するメリットも伝わるような表現方法を考える必要があります。
希望条件を「伝わる志望動機」にする方法
パートであっても、希望条件をそのまま志望動機とするだけでは採用するメリットが伝わりません。希望条件や個人の事情を「この人を採用したい」と思わせる志望動機に変えるために、どのような工夫ができるのでしょうか?ケース別に伝え方のコツを紹介します。
勤務地が家から近い
パートの勤務地が、自宅や幼稚園から近いことを第一条件にする人は多いものです。ただし「自宅から徒歩15分と近いから」と伝えるだけでは、採用担当者は物足りなさを感じるでしょう。
採用側からすると、以下のような表現の方がその人を選ぶメリットを感じられます。
- 自宅から徒歩15分の距離なので、雪の日でも遅刻せずに通える
- 自宅から徒歩15分の距離なので、無理せずに長く続けられそう
「遅刻せずに通える」「無理せずに長く続けられる」という言葉を加えるだけで、パート先にとってのメリットが伝わります。
時給が高い
「時給がいいから」「たくさん稼ぎたいから」という理由だけでは、他の応募者の中に埋もれてしまう可能性があります。なぜ時給の高い仕事を希望するのかを、具体的に説明しましょう。志望動機に使える理由には以下のようなものがあります。
- 子どもの教育費が必要だから
- 親の介護費用がかさんでいるから
- 住宅ローンの返済を急いでいるから
- 住宅の購入資金に充てたいから
稼ぎたい理由があって高い時給を志望動機にしているなら、精力的に働いてくれるだろうと期待される可能性もあります。稼ぎたい理由を伝えた後に、働くことへの意気込みをプラスすると効果的です。
子育てが一段落して時間ができた
主婦・主夫の中には、子育てや介護が一段落して自由な時間が増えた人も多いでしょう。ただし「時間があるから働きたい」とだけ伝えると、採用担当者によっては仕事をなめているように受け取られるかもしれません。
家庭の事情が一段落したことに加え、仕事への熱意や自分がどう貢献できるのかを伝えましょう。
子育てが一段落して自分の時間ができたため、以前より興味のあった編集に挑戦したいと思いました。小学校のPTAで広報誌の事務作業を担当した経験があり、基本的なパソコンスキルは習得しております。
育児が落ち着いたため、社会復帰をしたいと考えました。子どもが4月から保育園に通う予定なので、仕事への支障はありません。
自分の事情を伝えるだけで終わらせず、採用する側が安心できたり魅力的に感じたりする要素を付け加えるのがポイントです。
パート志望動機例を職種別に紹介
志望動機は業界や職種によって、アピールポイントが変わります。求められている人物像を的確に把握した上で、自分の強みや希望条件をアピールしましょう。志望動機の例を職種ごとに紹介します。
事務職の場合
事務職のパートでは主に、書類の作成・ファイリング・データ入力・電話応対などを担当します。WordやExcelなどの基本的なソフトを扱うスキルのほかに、周囲と円滑な人間関係を築くためのコミュニケーションスキルも欠かせません。
次のような志望動機なら、個人の事情や雇うメリットを分かりやすく伝えられます。
以前は、地元のカーディーラーで事務を担当していました。前職で培った経験を生かせると思い、貴社の事務職に応募しました。子育てが一段落したため、今後は自分のために時間を有効に使いたいと思っています。
WordやExcelの操作には慣れており、タイピングの正確さには自信があります。即戦力になれるように尽力する所存です。
デスクワークの経験がない人は、性格の几帳面さや作業の正確さなどをアピールしましょう。
飲食店の場合
飲食店のパートはホールとキッチンに分かれていて、どちらも臨機応変に動ける人が求められます。主婦・主夫の期間が長かった場合は、家事で培った手際のよさや、料理の腕をアピールするとよいでしょう。
ホール担当には、コミュニケーション力が必須です。業種が違っても過去に接客経験がある人なら、即戦力として採用される可能性があります。以下が志望動機の一例です。
住宅ローン返済で収入を増やす必要があり、時給のよい仕事を探していたところ、貴店の求人を見つけました。
飲食店は初めてですが、アパレル店で働いた経験があるため、お客様とコミュニケーションを取るのは得意です。接客に磨きをかけ、1日でも早く仕事を覚えられるように頑張ります。
このように意気込みをプラスすることで、前向きな印象も与えられます。
軽作業の場合
軽作業とは、倉庫内で行う作業全般を指します。梱包・検品・シール貼り・ピッキングなどの単純作業がメインで、未経験からでもスタートができるのが魅力です。
とはいえ、志望動機に「自分でもできそうだったから」と書くのはやめましょう。手先の器用さや集中力の高さなど、軽作業の仕事に生かせそうな強みを伝える方が、採用後の活躍をイメージしてもらいやすくなります。
1つの作業をコツコツと続けることが好きな性格で、手先の器用さには自信があります。自分の長所が生かせると思い、貴社の検品スタッフに応募を決めました。正確でスピーディな作業ができるように精一杯頑張りたいと思います。
軽作業はルーティンワークが苦にならない人や、ものづくりに興味がある人にも向いています。過去に単純作業の経験があったり趣味で何かを作っていたりするなら、エピソードを盛り込んでもよいでしょう。
履歴書・面接で好印象を残すためのヒント
志望動機が問われる場面は、基本的に履歴書と採用面接の2回です。せっかくのチャンスを逃さないためにも、念入りに事前準備をしましょう。採用担当者に好印象を残すためのヒントを3つ紹介します。
できるだけ空欄・余白を作らない
履歴書を書く際は、できるだけ空欄や余白を作らないように意識しましょう。書き方だけで採用が決まることはありませんが、余白が多すぎると見た目がよくありません。一般的には、記入欄の8割以上を埋めるのが望ましいといわれています。
市販の履歴書には、以下のような種類があります。
- JIS規格
- 一般用
- 転職用
- パート・アルバイト用
パート・アルバイト用は、職務経歴や志望動機の欄が狭いのが特徴です。本人希望欄が広めに確保されており、勤務日や勤務時間などの希望条件がしっかりと記載できます。
一般用や転職用は、志望動機や職務経歴のスペースが広いため、人によっては空欄が埋まらないかもしれません。100~200字を目安として、2~3文に区切って記載するとバランスがよくなるでしょう。
履歴書の丸暗記は不要
パートの面接では、必ずといってよいほど志望動機を伝える場面があります。履歴書の内容と同じで構いませんが、丸暗記は不要です。
緊張して言葉が出てこなくなったり、不自然な棒読みになったりすれば、コミュニケーションスキルに欠けていると判断されるかもしれません。
採用担当者は、履歴書の情報を基に深掘り質問をします。「志望動機に〇〇とありますが、もう少し詳しく教えてください」と言われたときは、履歴書に書ききれなかった内容やエピソードの詳細を自分の言葉で伝えましょう。
ブランクがあっても自分を過小評価しない
専業主婦・主夫の期間が長くなると、年齢やブランクに負い目を感じやすくなります。仕事から長く遠ざかっていたことで、自分を過小評価してしまう人も少なくありません。
しかし実際のところ、家事や育児・介護といった家の中の仕事も立派なキャリアです。限られた時間の中でいかに効率よく家事をこなすかを考えたり、手がかかる子どもとの向き合い方に試行錯誤したりと、日々さまざまなスキルが試されます。
パートから社会復帰を目指すにあたっては、自分に自信を持つところからスタートしましょう。前職でのスキルやPTA活動の経験をアピールするのもおすすめです。
パートの志望動機は伝え方で変わる
パート採用では、安定勤務の可否や即戦力となるかどうかが問われます。本意ではない志望動機や企業への賞賛を並べても、採用にはつながるとは限りません。
パートの志望動機を作るコツは、生活状況に根付いた本音を、採用する側から見てメリットを感じられるように言い換えることです。同じ理由でも、伝え方1つで印象はがらりと変わります。
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