CADオペレーターとは?年収や持っていると有利な資格を解説

CADオペレーターは製造業や建築業界、メーカーなど、ものづくりの現場に欠かせない存在です。今後も一定の需要が見込まれるCADオペレーターを目指す人に向けて、仕事内容や役割、将来性などを詳しく解説します。

この記事のポイント

CADオペレーターの役割
CADオペレーターは、設計者やデザイナーの指示を基に正確な図面を作成・管理します。
使用するCADの種類や知識は業界ごとに異なる
CADオペレーターに必要なスキルや知識は、建築業界や土木業界、自動車業界など業界ごとに異なります。
CADオペレーターは未経験からでもなれる
基本知識やCADの操作を習得すれば、未経験からでもCADオペレーターを目指せます。

CADオペレーターとはどのような職業?

パソコンで作業をするCADオペレーター

(出典) pixta.jp

製品の製造や建物の建築には、正確な図面の作成が欠かせません。設計者やデザイナーをサポートし、重要なプロセスを担うのがCADオペレーターです。

ここでは、CADオペレーターの業務内容など基本的な情報を解説します。

そもそもCADとは?

CADは「Computer Aided Design」の頭文字を取った略語で、コンピュータを利用した設計支援ツールです。

寸法や形状を正確に示した図面を効率的に作成・管理するために利用します。CADには2次元(2D)と3次元(3D)の2種類あり、2次元は三角法を用いた3面図で表現するのがルールです。

CADが登場する以前は手書きで作図しなければならず、図面の修正や変更、複製、管理などが大変でした。

コンピュータの性能向上やソフトウエアの改良により3次元モデルの作成や簡易的な操作も可能になり、今では作業の効率化や品質向上に欠かせないツールの1つです。

業界ごとに求められる機能が異なるため、AutoCADやCATIAなど業界の要求に対応したCADが使われています。

CADオペレーターの主な業務内容

CADオペレーターは作図の専門家です。製品や建築物の設計者とは異なり、設計者が仕様に従って考えた構想物を正確な寸法・形状でモデルや図面にすることが仕事です。

設計者はCADオペレーターにラフな概念図やイラストで伝えることもあり、アイデアを理解するスキルが要求されます。

CADオペレーターが作図する正確な寸法・形状の図面やモデルを基に設計者や関係者は検討を繰り返し、必要な変更を加えて設計を完了します。

現場では図面の情報を基に加工や組み立てが進むため、誰が見ても理解できる正確な作図が必要です。製品が複雑で大規模になるほど図面の数も増加するため、管理する作業にも慎重さが求められます。

設計者やデザイナーとの違い

設計者やデザイナーは製品や建築物の仕様を決め、仕様を満たすデザインを考えるのが主な役目です。

CADオペレーターは設計者が構想したデザインを、正確な形状や寸法を記した図面にします。設計者はCADや作図の専門家ではないため、細かいルールを知らないケースもあります。

CADオペレーターはCADの機能や作図に必要な知識を有し、設計者が設計した物を製造できるようサポートする役割です。

設計者やデザイナーの中には自分で作図する人もいますが、CADオペレーターは製図のプロとして設計者の作成する図面の不備を指摘し、改善を提案する役目もあります。

CADオペレーターの年収

作業をする作業着姿の男女

(出典) pixta.jp

スタンバイに掲載された2025年2月1日〜2月28日のCADオペレーター求人の統計データによると、正社員として採用されているCADオペレーターの平均年収は388万円、年収の中央値は398万円でした。

2024年8月からの平均年収の推移は横ばいですが、2月は1月より約18万円ほど減少しています。

CADオペレーターの正社員の求人件数は、2024年8月から年末にかけて減少傾向にありましたが、1月に上昇に転じました。

「令和5年賃金構造基本統計調査」の結果では、CADオペレーターが属する製図工(建物・土木施設)の全国平均所定労働時間は166時間、平均年齢は41.8歳でした。また、「令和2年国勢調査」の結果によると、就業者数は全国で28万9,300人です。

出典:CADオペレーター - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

業界ごとのCADオペレーターの役割

デスクの上に広がる資料

(出典) pixta.jp

物の製造に図面は欠かせないため、さまざまな業界において正確な図面作成や厳密な図面管理が求められます。

CADオペレーターが担う役割を主要な業界ごとに見てみましょう。ここでは、建築業界と土木業界、その他の業界の3つに分けて解説します。

建築業界

建築業界におけるCADオペレーターの主な役割は2つです。依頼者の要求や計画を適切に取り入れるため、設計者の指示を基にCADを用いて建築物の完成予想図を作成します。

図面を見ながら顧客と設計者は完成に向けて詳細な検討を実施し、必要があれば変更します。

もう1つは、CADを用いて設計者のスケッチなどを正確な建築図面にする作業です。寸法や形状が正確に記された図面は、費用の見積もりや実現性の確認などの重要な情報源です。

また、建築物はさまざまな法規制に対応しなければなりません。設計者の意図を正しく把握して図面に反映するには、建築基準法などの関連法について理解を深める必要があるでしょう。

土木業界

土木業界は道路やトンネルなど自然を相手にした構造物を設計するため、建築業界とは違う要素も考慮しなければなりません。

橋やダムは一般的な建築物よりも規模が大きく、専門知識を持つ土木設計技術者の指示の下で図面やモデルを作成します。

図面やモデルを使った設計計算やシミュレーションを行い、安全性や耐久性を確認するため、CADオペレーターによる正確な図面作成は重要な要素です。

土木業界で扱う材料や構造物は多岐にわたるため、常に知識を収集する必要があるでしょう。また、構造物の図面を完成後も保存することでメンテナンスや補修の際に役立ちます。

その他の業界

図面の作成はものづくりに欠かせない作業です。そのため、製造業が主要産業である日本では自動車や船舶、電子機器、家電など幅広い産業でCADオペレーターが活躍しています。

メーカーで働くCADオペレーターは、機械製図に特化した作図を行います。3次元モデルと2次元モデルどちらも使用する可能性があるため、2次元図面にも慣れておくとよいでしょう。

設備CADオペレーターは建設会社などに所属し、設備設計技術者が作成する書類を基に建築物の電気、給排水などの設備図面を作成します。

インテリア業界で活躍するのが、内装CADオペレーターです。部屋のコンセプトや家具などを基に内装図面を作成します。

CADオペレーターは未経験者でもなれる?

作業服を着た女性

(出典) pixta.jp

未経験者でもCADオペレーターになれます。CADオペレーターは年齢や経験に関係なく目指せる仕事です。

ただし、CADを使って作図するには、CADの操作方法を習得し、作図するための基本的なルールを学ぶ必要があります。

独学でCADの操作や知識を習得する方法もありますが、習得までに時間がかかります。効率的なのは、専門スクールや職業訓練を利用して体系的に学ぶことです。

養成講座を受けられるスクールは全国各地にあり、中にはオンラインで講習を受けられるプログラムも存在します。ハローワークでは離職者や求職者向けの職業訓練を提供しており、CADオペレーター関連の講座も受講可能です。

CADオペレーターが持っていると有利な資格

勉強をする男性の手元

(出典) pixta.jp

CADオペレーターとしての役割を果たせると証明できる資格を持っていれば、採用でも有利です。

さまざまな企業や組織がCADに関連する資格を提供していますが、認知度が高い以下3つの資格取得がおすすめです。希望する業界に適した資格を受験しましょう。

CAD利用技術者試験(コンピュータ教育振興協会)

一般社団法人コンピュータ教育振興協会が主催するCAD利用技術者試験は、CADの基本知識を備えていることを証明する民間資格です。

2次元CAD利用技術者試験と3次元CAD利用技術者試験の2種類があり、2次元CAD利用者技術者試験には1級・2級・基礎の3つのランクがあります。

2級と基礎の受験資格は特にありませんが、1級を受験するには2級の合格が必要です。2023年度の2級合格率は54.87%です。

3次元CAD利用者技術者試験には、1級・準1級・2級の3つのランクがあります。2級の受験資格はありませんが、1級と準1級は2級に合格していなければ受験できません。2023年度の2級合格率は68.35%です。

出典:CAD利用技術者試験|一般社団法人コンピュータ教育振興協会

オートデスク認定資格プログラム(オートデスク)

オートデスク認定資格プログラムは、建築業界で広く利用されているAutoCADを提供するオートデスクによる認定資格制度です。AutoCADの操作や活用スキルを証明できます。

AutoCADの初級者は「オートデスク認定ユーザー」の取得を目指すとよいでしょう。AutoCAD・Autodesk Revit Architecture・Autodesk Fusionの3種類があり、合格すると各製品の基本知識と操作技術を習得していると認定されます。

AutoCADユーザー試験は全部で30問の問題で構成され、70%以上の正解で合格と判定されます。選択式の回答と実技操作があり、試験時間は50分です。

オートデスクの製品は世界中の建設業界で利用されているため、日本だけでなく世界中でスキルや知識の証明が可能です。

出典:オートデスク認定資格プログラム|オートデスク

建築CAD検定試験(全国建築CAD連盟)

CADを使う作図の中でも建築用に特化した技量を認定するのが、一般社団法人全国建築CAD連盟が提供する建築CAD検定試験です。

建築用図面を作成する実力、与えられた建築図面をCADシステムで正しくトレースする技能などを測り、CADの操作に加えて実務能力も求められます。

試験の等級は準1級・2級・準2級・3級・4級の5種類ありますが、4級は高校での団体受験のみ可能です。どの等級にも受験資格の規定はありません。

3級は、与えられた建築図面をCADで正しくトレースできるかを問う試験で、2時間の制限時間内に合計4問出題されます。

全国建築CAD連盟の統計資料によると、2023年度の合格率は準1級が7.1%、2級が58.3%、3級が69.7%、4級が91.3%です。

出典:建築CAD検定試験|一般社団法人全国建築CAD連盟

CADオペレーターの将来性は?

並んでパソコン作業をする作業服の男女

(出典) pixta.jp

労働力不足とITの進歩を背景に、どの業界でも自動化による効率化が進んでいます。CADオペレーターの業務も、単純な作業はAIが行うようになるかもしれません。

一方、経験豊富で高度なCADスキルがあるなど、作業効率や品質の向上をサポートできるCADオペレーターの需要は将来も続くでしょう。

CADオペレーターは、スペシャリストとしてスキルを極めるケースが一般的です。中には設計に必要な知識やスキルを身に付け、設計者を目指す人もいます。

土木業界は労働環境が建築や製造業と比べて安定している傾向があり、ワークライフバランスを重視する人にとって魅力的な業界です。他業界から土木業界へ転職する人もいます。

スキルを身に付けて需要のあるCADオペレーターに

資料を見る作業服の男女

(出典) pixta.jp

CADオペレーターは、年齢問わず未経験からでもキャリアをスタートできます。業界ごとに必要となる知識やツールが異なるため、現場で経験を積みながらスキルアップを図ることが大切です。

単純業務はAIによって自動化される可能性もありますが、高度な機能を使いこなせる人材は需要が見込まれるため、継続的に学習しましょう。

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