年末調整とはバイトでも必要なもの?必要な書類と書き方をチェック

バイトの年末調整は、必要になるケースと不要なケースがあります。提出書類を把握しておけば、年末調整が必要になった場合もスムーズに対応できるでしょう。年末調整の基本や確定申告との違い、必要な書類について解説します。

バイトも年末調整が必要?

年末調整にかかわる資料

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雇用形態にかかわらず、条件を満たした場合は年末調整の手続きが必要です。年末調整の対象になるケースとならないケースを確認しましょう。

年末調整が必要になるケース

年末まで雇用先に在籍している人で、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出済みの場合は、原則として年末調整を行う必要があります。

年末調整は、その年の収入から差し引かれた所得税の過不足を、年末に調整する手続きです。年収が103万円以下の場合は所得税が非課税となるため、年末調整は必要ありません。

ただし、年収が103万円以下でも給与が8万8,000円を超えている月があるなら、その月は所得税が源泉徴収されています。年末調整をすることで、納めすぎた所得税を還付してもらうことが可能です。

参考:No.2665 年末調整の対象となる人|国税庁

年末調整が不要なケース

以下の条件のいずれかに当てはまる人は、年末調整が不要になります。

  • 年末前に退職した
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない
  • 1年間の給与所得が2,000万円を超えている
  • 災害減免法の規定に当てはまる
  • 2カ所以上から給与の支払があり、他の勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出している

年末調整は会社が行う手続きであり、年末の時点でどこにも在籍していなければ年末調整は行われません。

また、災害により納税が困難になった人は、災害減免法が適用されて源泉徴収が猶予されるケースがあります。この場合も年末調整は不要です。

参考:No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除|国税庁

そもそも年末調整とは

資料を確認する手元

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年末調整がどのようなものなのかきちんと理解できれば、要不要も判断しやすくなります。そもそも年末調整とは何なのか、確定申告との違いと併せて理解しておきましょう。

所得税額を調整するためのもの

会社から給与をもらっている場合、給与が一定額を超えると、会社が給与から所得税を差し引きます。これを源泉徴収といい、源泉徴収された所得税は会社が従業員の代わりに納税してくれるのです。

ただし、源泉徴収される金額はあくまでも概算金額であり、その年の正確な納税額はすべての給与が支払われなければ確定しません。

年の途中で家族構成に変化があった場合にも、納税額が変動する可能性があります。そのため、すべての条件が確定する12月に年末調整を行い、源泉徴収された所得税額の過不足を調整する必要があるのです。

確定申告との違い

確定申告とは、その年の所得税額を確定し、税務署に申告する手続きです。所得税の清算手続きを行うという意味では、年末調整と変わりません。

年末調整は会社が行い、確定申告は自分で行います。例えば、個人事業主は会社に在籍しているわけではないため、自分で所得税を計算・申告・納税するしかないのです。

バイトやパートでも、条件を満たせば会社に年末調整の手続きをしてもらえますが、条件がそろっていなければ、自分で確定申告を行わなければなりません。

年末調整は1社のみでしかできない点もポイントです。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は2社以上には提出できないため、年末調整を受けていない会社からの給与所得が20万円を超える場合には確定申告が必要です。

参考:所得税等の確定申告とは|国税庁

年末調整に必要な書類は?

年末調整資料

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年末調整では複数の書類が必要になります。書類自体は会社に用意してもらえますが、自分で記入しなければならない部分もあるため、受け取ったら忘れずに提出しましょう。

参考:各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)|国税庁

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、給与所得者本人の基本情報や受けられる控除について記す書類です。この書類を提出していなければ、その年の年末調整は受けられません。

提出期限は、その年の最初に給与を受け取る日の前日までです。一般的には、年末調整の対象となる年の前年末に、他の必要書類と一緒に提出します。

源泉徴収額を正確に計算するための書類であり、厳密には年末調整で使うわけではありません。書類上部の記入欄には、従業員自身が記入する必要がありますが、会社側が既に印字してくれているケースもあるでしょう。

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は、基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除を受けるために必要な書類です。

1枚の用紙に3種類の申告書が含まれている形で、すべて自分で記入しなければなりません。左側の基礎控除の部分は、基本的に記入が必須です。

配偶者控除等申告書は、一定の条件を満たす配偶者がいる場合に記入します。配偶者控除や配偶者特別控除を受けるために必要な情報です。

所得金額調整控除とは、収入金額が年間850万円を超えている場合に、所定の条件を満たせば所得控除を受けられる制度です。こちらも条件に当てはまるのであれば、記入する必要があります。

給与所得者の保険料控除申告書

「給与所得者の保険料控除申告書」は、任意で保険に加入している人が記入する書類です。毎月の給与から差し引かれている社会保険料とは関係ありません。

生命保険・地震保険・私的年金・iDeCoなどを利用している場合、利用会社名や保険料・掛け金の金額を該当欄に記入すれば、所得控除を受けられます。自動車保険料は原則として所得控除の対象外です。

各種保険や私的年金を何も利用していない場合、給与所得者の保険料控除申告書を提出する必要はありません。逆に、該当する保険や年金を1つでも利用している場合は、税金が安くなる可能性があるため申告しておきましょう。

年末調整に関するよくある疑問

資料に書き込む女性

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バイトの年末調整について生じやすい疑問についてまとめました。後から困ることがないよう、ひと通り目を通しておきましょう。

バイトを掛け持ちしている場合は?

複数の会社で働いている場合でも、年末調整は1社でしか行ってもらえません。年末調整に必要な給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、前述の通り1社にしか提出できないためです。

バイトを掛け持ちしているケースでは、最も収入が多い1社を選んで給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出するのが一般的です。

他のバイト先での仕事は副業扱いとなるため、支給金額が年20万円を超える場合は自分で確定申告をして、所得税を納税する必要があります。

単発バイトを繰り返している場合は?

半日・1日単位で働く単発バイトは、年末調整が必要な人の条件に当てはまらないため、年末調整の対象外です。

ただし、単発バイトで得た収入の金額や契約内容によっては、報酬から源泉徴収される場合があります。年収によっては、納めすぎた税金が確定申告で戻ってくるケースもあるでしょう。

確定申告では源泉徴収票が必要になるため、会社からもらっていない場合は発行してもらわなければなりません。会社に依頼すれば発行してもらえます。

年末調整の提出を忘れてしまったら?

源泉徴収では一般的に所得税が多めに差し引かれているため、年末調整を行うと、ほとんどのケースで還付金を受け取れます。

しかし、書類の提出を忘れて年末調整が行われなかった場合、納めすぎた税金は戻ってきません。もらえたかもしれない還付金がなくなるリスクがあるのです。

また、住民税は前年の所得を基準に算出されます。年末調整を忘れると所得控除を受けられない分が発生するため、翌年の住民税が高くなる可能性があります。

年末調整の書類提出を忘れた場合は、バイト先にやり直しができないか相談しましょう。自分で確定申告を行うことでも対応できます。

確認事項が多い年末調整は早めに着手を

年末調整資料と印鑑

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バイトでも条件を満たせば年末調整は必要です。年末調整が行われることで、過剰に納めた所得税が還付金として戻ってきます。

年末調整では複数の書類を提出する必要があり、確認すべき事項も多いため、会社から書類をもらったら早めに着手しましょう。