給与収入とは?含まれるものや手取りとの違い・控除の種類を解説

労働の対価として受け取るお金を表す言葉には「給与収入」「手取り」「年収」「所得」などがあります。これらの言葉の違いを理解していないと、勤め先から受け取っているお金の額を正しく人に伝えられません。今回は給与収入と手取りについて解説します。

給与収入と手取りはどう違う?

給料

(出典) pixta.jp

雇われて働くなら知っておきたい、給与収入と手取りの違いを説明します。両者の違いを知って、勤め先からもらっているお金について理解を深めましょう。なおこの記事では、一般的な「給料」を「給与収入」として扱っています。

給与・賞与を合計した金額

給与収入とは、労働の対価として支払われる全収入のことです。

給与収入には基本給だけでなく、時間外手当・休日出勤手当・住宅手当などの各種手当や賞与(ボーナス)も含まれます。

また現物として支給されるものも給与収入に含まれます。これを現物給与といい、無料や低価格で受け取った自社製品や会社所有の不動産などが現物給与に当たります。

手取りは実際に受け取る金額

手取りとは給与所得者が実際に手にする金額のことです。労働者は「手取り」の金額を実際に受け取り、自由に使うことができます。

給与収入から所得税・住民税・社会保険料などを差し引いた後のお金が手取りです。給与明細では「差引支給額」などと記載されます。

手取額は給与収入の75~85%が一般的

一般的には給与収入の75~85%がだいたいの手取り額となります。例えば給与収入が400万円であれば、手取り額は300万~340万円と推察できます。

給与収入から各種税金や社会保険料を差し引いた金額が手取りになるので、給与収入よりも手取りは少なくなると覚えておきましょう。

給与収入から引かれるものは?

ペンと給与明細

(出典) pixta.jp

給与収入から差し引かれているお金の存在を知っていても、源泉徴収票をまじまじと見た経験がなければ、どのようなお金が引かれているのか分からないはずです。給与収入から引かれているお金にはどのようなものがあるのか解説します。

所得税

所得税とは1年間に稼いだ所得に対してかけられる税金のことです。所得とは給与収入から必要経費を差し引いた金額を指します。会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者の場合には、給与収入から給与所得控除(55万~195万円)を引いた金額が所得です。

所得税は「超過累進税率」を採用しています。超過累進税率とは所得の額が増えるにつれて税率が上がり、納める所得税の額が多くなる計算方法のことです。

給与所得者が所得税を計算するには、まず給与収入から給与所得控除額を引き給与所得を求めます。次に給与所得から基礎控除や配偶者控除などの所得金額を差し引いて「課税所得」を計算しましょう。最後に算出した課税所得金額に税率をかけ、税額控除額を差し引くと納めるべき所得税が割り出せます。

参考:
No.1410 給与所得控除|国税庁
所得税のしくみ|国税庁

住民税

住民税とは居住する自治体に支払う税金のことです。「区市町村民税」と「道府県民税」(東京都23区は特別区民税、都民税)の2つで構成されていて、両者を合わせた額を住民税として納付します。

また住民税は「均等割」と「所得割」に分けられます。一定以上の所得がある人に定額の負担を求めるのが均等割で、所得の額に応じて納める住民税の額が変わるのが所得割です。

給与収入がある人の場合、住民税は「特別徴収」で納めるのが一般的です。特別徴収とは、原則として、企業が従業員に給与や年金が支払う際に、給与などから差し引いて市町村に納める方法を指します。

参考:住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか? : 財務省

社会保険料

社会保険料という言葉は「狭義の社会保険」と「広義の社会保険」に分けて使われることがあります。

狭義の社会保険は、医療費の負担を軽くする「健康保険」、要介護状態になったときに介護サービスを受けられる「介護保険」、老齢年金・障害年金・遺族年金を受給するための「厚生年金保険」の3つが該当します。

それに加えて、失業したときの生活資金や再就職への支援金を受け取るための「失業保険」と、通勤・業務上で負った傷病等に対して保険金が給付される「労災保険」があり、この5つをあわせて「広義の社会保険」という意味で用いられます。

労働組合費や共済費が引かれるケースもある

企業によっては労働組合費や共済費が差し引かれる場合もあります。労働組合費とは、労働組合が企業に対して給与アップや労働時間の削減など、労働条件の改善を求める活動をするために徴収されるお金のことです。

共済費とは、共済組合の事業に必要な費用として徴収されるお金です。共済組合とは国家公務員や地方公務員などを対象にした相互扶助を目的とする団体のことで、短期給付事業・長期給付事業・福祉事業を行っています。

収入を変えずに手取りを増やす方法

ふるさと納税のイメージ

(出典) pixta.jp

給与収入が同額でも、手取り額を増やす方法もあります。どのような方法があるのか具体的に見ていきましょう。

控除を利用する

控除を利用することで、課税対象となる金額を減らすことができます。

年間にかかった医療費が一定金額を超えた場合に受けられる「医療費控除」、生活に必要な財産が災害や盗難などで失われたときに受けられる「雑損控除」、そのほかにも生命保険料控除や地震保険料控除などがあります。

年末調整や確定申告をする際には適用できる控除を探しましょう。

参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

ふるさと納税

ふるさと納税を活用すると寄付金控除(寄附金額に応じて適用される控除)が受けられます。

ふるさと納税とは、任意の地方自治体に寄付することで、控除上限額の2,000円を超えた分の寄附金額が控除されるシステムです。節税をしながら地場産品をはじめとする返礼品がもらえます。

ふるさと納税を利用して控除を受けるには、基本的に確定申告が必要です。ただ寄付先が5自治体以内に収まっている場合には、確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる「ワンストップ特例制度」を利用できる場合があります。

参考:総務省|ふるさと納税のしくみ|ふるさと納税の流れ

iDecoやNISAで資産運用を始める

iDeCoやNISAを活用して資産運用を始めるのも有効な節税対策です。iDeCoとは、公的年金の不足分を補うことを目的に設けられている年金制度です。

iDeCoは運用中に発生する収益が非課税になることに加え、掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になるため、課税所得を減らす効果が期待できます。

NISAとは少額投資のための非課税制度です。現行の制度では、NISAは一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類です。それぞれは併用できず、非課税となる金融資産の保有期間にも上限が設定されています。

しかし2024年からはNISAに関する制度が大幅に変わります。NISAに興味がある人は新NISAをしっかりチェックしておきましょう。

参考:
iDeCoの概要 |厚生労働省
NISAとは? : 金融庁

給与収入と手取りについて知っておこう

通帳を見る男性

(出典) photo-ac.com

給与収入は、税金や保険料が差し引かれる前の全ての収入を指します。一方で手取りは、給与所得者が実際に受け取れる金額のことです。年収や給料の話をするときは両者の定義を理解した上で話すと、認識のズレを防げるはずです。

手取りが少なくて悩んでいる人は、控除の活用を検討してみましょう。控除を利用して課税所得が減れば、納めるべき所得税や住民税の額が減るので、給与収入を変えずに手取りを増やせます。手取りが少ないと感じている人は、利用できる控除がないかチェックしてみましょう。