フリーターで年収130万円になったら所得税や住民税はいくらになる?

親の扶養に入りながらフリーターとして生活している場合、収入を増やしたいなら年収130万円の壁を考慮しましょう。年収130万円の所得税や住民税がいくらになるのか、社会保険に加入すると何が変わるのかについて解説します。

扶養には2つの種類がある

電卓と万札

(出典) pixta.jp

年収が100万円を超えるあたりから、所得税などの税金が課せられるようになります。いわゆる「年収の壁」です。

年収の壁を考える際は、扶養について理解しなければなりません。

扶養の種類には、社会保険上の扶養と税法上の扶養の2つがあります。まずは、それぞれの意味を理解しておきましょう。

社会保険上の扶養

社会保険上の扶養とは、主に世帯主が加入する健康保険や厚生年金の被扶養者になることです。フリーターの場合は、親の扶養に入るケースが多いでしょう。

健康保険や厚生年金に加入している人は、自分で保険料を納めなければなりません。しかし、社会保険上の扶養の対象範囲は、保険料の負担なしで社会保険に加入している状態になります。

配偶者・子・孫・祖父母・兄弟姉妹・曾祖父母なら、扶養者と同居していなくても社会保険上の扶養に入ることが可能です。被扶養者の年齢が75歳に達すると医療保険を抜けて、後期高齢者医療制度に加入し直すことになります。

税法上の扶養

子や親などの親族が一定条件を満たした場合に、生計維持者納税者の所得から扶養人数に応じた金額を控除できる制度が税法上の扶養です。

扶養控除が適用された場合は一定額の所得控除が受けられるため、所得税額や住民税額も減ります。

親や子が税法上の扶養に入ると納税者が納める税額が抑えられ、結果的に生活費の負担も軽減されることになるのです。

配偶者控除や配偶者特別控除も、税法上の扶養の一種として扱われます。税法上の扶養が適用されるためには、親族の範囲や年齢の条件を満たした上で、扶養親族と生計を共にしていなければなりません。

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

フリーターは年収103万円の壁に注意

家計簿をつける

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フリーターが年収と税金の関係を意識すべきタイミングについて解説します。税法上の扶養から外れるだけでなく、自分の収入に課税されるポイントも理解しましょう。

住民税のボーダーラインはおよそ年収100万円

フリーターが収入を増やしていく過程で最初にぶつかる壁は、年収が約100万円に達したときです。およそ100万円を超えると、住民税が課せられるようになります。

住民税の非課税限度額は自治体により異なるため、必ずしも100万円で課税されるわけではありません。年収が90万円を超えた頃から住民税が発生する自治体もあります。

毎月8万円の収入がある場合、年収は96万円となり、住民税がかかるボーダーラインの目安になります。具体的な住民税のボーダーラインを知りたい場合は、自分が住んでいる自治体に直接聞いてみましょう。

103万円を超えると税法上の扶養から外れる

親の扶養に入っていたフリーターの年収が103万円を超えると、そのフリーターは扶養親族に該当しなくなります。親が扶養控除を受けられなくなり、親の税負担が増すのです。

扶養控除が適用されなくなった親の所得は、扶養控除の分だけ増えることになります。所得税や住民税は所得を基準に算出されるため、所得が増えると所得税や住民税も増えるという仕組みです。

年収が103万円に達するのは、月の収入が約8万6,000円になったときです。年収103万円を意識して月収を考える際の参考にしましょう。

自分にも所得税が課されるようになる

給与収入がある人の所得からは、給与所得控除額55万円と基礎控除額48万円が引かれます。所得が55万円+48万円=103万円を超えると、所得税を納めなければなりません。

フリーターも給与収入がある人に含まれます。フリーターの年収が103万円を超えた場合、親が扶養控除を受けられなくなるだけでなく、自分にも所得税を納める義務が発生するのです。

所得税の税率は、課税所得が195万円未満なら5%となっています。例えば、年収105万円の場合、所得税は(105万円-103万円)×5%=1,000円です。(このほかに、2037年までは復興特別所得税が2.1%徴収されます)

参考:
No.1410 給与所得控除|国税庁
No.1199 基礎控除|国税庁
No.2260 所得税の税率|国税庁

フリーターで年収130万円以上になったら?

扶養についての書類

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税法上の扶養から外れる年収103万円の壁を超えた後、次にぶつかるのは社会保険上の扶養から外れる年収130万円の壁です。年収106万円が壁になるケースもあります。

社会保険上の扶養から外れる

フリーターで親の扶養に入っている場合、年収が130万円以上になると社会保険上の扶養からも外れます。自分で社会保険料を負担しなければならなくなるのです。

年収が130万円以上になった人は、無条件で社会保険に加入することになります。勤務先の健康保険と厚生年金に加入するか、自分で国民健康保険と国民年金に加入するかの選択肢しかありません。

社会保険上の扶養から外れたくない場合は、年収が130万円以上にならないように、バイト先から得る給与を調整する必要があります。

年収106万円がボーダーラインになることも

年収130万円未満の場合でも、年収106万円以上で一定の要件に当てはまる人は、社会保険上の扶養から外れて社会保険への加入が必要になります。

年収106万円がボーダーラインになる要件は次の5つです。

  • 従業員数が101人以上の企業で働いている
  • 所定労働時間が週20時間以上(残業は含まない)
  • 2カ月以上の雇用期間が見込まれる
  • 1カ月の賃金が8万8,000円超(手当・賞与は含まない)
  • 学生ではない

上記の要件を満たした場合、年収が106万円以上になると、社会保険への加入義務が発生します。なお、年収が130万円以上になった場合は、上記の要件に関係なく社会保険に加入しなければなりません。

所得税・住民税・保険料はいくら?

所得税・住民税・保険料の計算式はそれぞれ以下の通りです。

 

住民税:課税所得×税率+均等割額
所得税:課税所得×税率-税率に応じた控除額
社会保険料:自治体によって異なる

前年年収130万円で20代を想定した場合、所得税・住民税・保険料の目安は以下の通りです。

  • 住民税:約17,000円
  • 所得税:約3,800円
  • 社会保険料:約20万円

年収が130万円になると、それまで発生していなかった社会保険料が約20万円かかってくるため、手取りが大幅に減ります。

配偶者に関係する年収の壁

電卓を見て考える女性

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配偶者がいる場合は、年収150万円と201万円も税法上の扶養のボーダーラインとなります。配偶者に関係する年収の壁を見ていきましょう。

年収150万円の壁

配偶者がいる納税者は、配偶者控除を受けられます。配偶者控除とは、一定の要件を満たした場合に最大48万円の所得控除が適用される制度です。

納税者本人や配偶者の年収により配偶者控除が適用されないケースでも、一定の要件を満たせば配偶者特別控除を受けられます。配偶者特別控除を満額受けられるボーダーラインが、配偶者の年収150万円なのです。

納税者本人の所得が900万円以下で、配偶者の年収が150万円以下なら、原則として配偶者特別控除が満額適用されます。それぞれの所得や年収がボーダーラインを超えていくと、控除額は段階的に減っていきます。

参考:
No.1191 配偶者控除|国税庁
No.1195 配偶者特別控除|国税庁

年収201万円の壁

配偶者特別控除を適用できるのは、配偶者の年収が201万円に達するまでです。配偶者の年収のみにフォーカスした場合、年収150万円を超えた後は段階的に控除額が減っていき、年収が201万円になると控除額は0円になります。

配偶者特別控除を受けられる配偶者の所得上限額は133万円です。また、給与が201万円の場合の所得控除額は、201万円×30%+8万円=68万3,000円となります。

133万円+68万3,000円=201万3,000円となるため、年収(給与収入)が201万円を超えると配偶者特別控除が完全になくなるのです。

参考:
No.1195 配偶者特別控除|国税庁
No.1410 給与所得控除|国税庁

社会保険加入のメリット

保険と現金

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社会保険に加入すると、さまざまなメリットを受けられます。フリーターが年収130万円を意識して仕事の調整を検討する際の参考にしましょう。

老後の年金が増える

勤務先の社会保険に加入すると、老後にもらえる年金額が増加します。厚生年金に加入することで年金が2階建てになり、上乗せ分が発生するためです。

公的年金は国民年金と厚生年金に分けられます。全ての国民が加入する年金が国民年金、主に会社勤めの人が加入するのが厚生年金です。

厚生年金は国民年金に上乗せして納める年金であり、国民年金のみの場合と比べて保険料が高くなる分、老後の年金額も増えます。社会保険に加入すれば、老後における金銭面での不安が軽減されるのです。

障害厚生年金が支給される

公的年金に加入していると障害年金を受け取れます。障害年金とは、病気やケガで働けなくなったり生活ができなくなったりした人に対して支給される年金です。現役世代でも受け取れます。

国民年金に加入している場合は、障害基礎年金が支給されます。一方、厚生年金に加入中の人は、障害基礎年金に加え障害厚生年金も受け取ることが可能です。

勤務先の社会保険に加入すれば、万が一の際にもらえる国からの年金が手厚くなるのです。なお、厚生年金加入者が亡くなった場合も、遺族に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。

参考:障害年金|日本年金機構

医療保険のサポートが手厚くなる

社会保険上の扶養から外れて働くことで、医療保険のサポートも手厚くなります。傷病手当金と出産手当金をもらえるようになることがメリットです。

傷病手当金や出産手当金の制度が適用された場合、病休・産休の期間中に給与の2/3相当額が支給されます。病気・ケガ・出産を理由に仕事を休む必要がある場合も、給与がゼロにならないため安心です。

保険料の負担が会社と折半になる

国民年金や国民健康保険に加入している場合、保険料は全額自分で負担しなければなりません。収入からそのまま社会保険料を納める必要があるため、大きな負担になるでしょう。

一方、勤め先の社会保険に加入する場合、厚生年金や健康保険の保険料は会社と折半で負担します。保険料自体の金額は高くなりますが、自己負担分は半分になるのです。

なお、給与から天引きされる保険料には雇用保険も含まれています。雇用保険とは、主に失業者の生活を保障するための制度です。雇用保険の保険料率は会社と従業員で異なり、会社の方が多めに負担します。

年収130万円の壁をどう考える?

通帳を眺める女性

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親の扶養に入りながらフリーターとして働き続ける場合、収入を増やそうと思っても年収130万円の壁が大きく立ちはだかるでしょう。年収の壁が気になる場合の考え方のヒントを紹介します。

フリーターである限り制約がかかる

年収130万円を超えないようにフリーターを続ける場合、いつまでも収入を増やせないことになります。月収10万円程度の収入なら、実家を出て1人暮らしをするのも難しいでしょう。

年収130万円を超えて社会保険に加入しても、フリーターである限りさまざまな制約がかかります。フリーターにはボーナスが支給されないケースが多く、各種手当や退職金といった福利厚生も基本的には対象外です。

フリーターは社会的な信用面においても不利になります。住宅ローンやクレジットカードを利用したくても、審査を通過するのは難しいでしょう。

フリーターとして過ごす時期が長くなると、キャリア形成の面でもリスクが高まります。30代に突入すれば転職するのも一苦労です。

制約のない正社員を目指そう

年収130万円の壁を意識しながらフリーターとして働くことには、さまざまなデメリットがあります。収入を増やしたいと考えるなら、制約のない正社員を目指しましょう。

正社員になれば年収130万円の制約を考える必要がありません。そもそも正社員なら年収130万円はほぼあり得ず、さまざまな面でフリーターよりメリットが大きくなります。

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収入を増やしたいなら転職にチャレンジしよう

履歴書と職務経歴書

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年収が100万円に満たない状況で働いている場合、収入を増やそうとするとさまざまな年収の壁にぶつかります。扶養に入ったまま働き続けたいのなら、税金や社会保険の仕組みをきちんと理解することが重要です。

しかし、年収の壁を超えてもフリーターとして働き続けると、さまざまな制約を受けることになります。収入を増やして今の生活を改善したいと考えるなら、正社員への転職にチャレンジしましょう。