年収103万円以下のアルバイトも年末調整が必要?納税の仕組みとは

アルバイトによる年収が103万円以下でも、年末調整が必要なケースがあります。納税の仕組みや手続きの流れを理解しておけば、安心して仕事に取り組めるでしょう。年収103万円以下のアルバイトの年末調整について詳しく解説します。

年収103万円以下でも年末調整は必要?

電卓とお札

(出典) pixta.jp

年末調整とは、給与等の支払者である会社が、1年間の給与の支払都度に源泉徴収した所得税の合計と本来納めなくてはならない税額の過不足を精算する手続きです。年収が103万円以下なら、基本的に年末調整は必要ありません。

基本的には不要

年末調整が行われるかどうかは、そもそも収入に所得税がかかるかどうかによります。年末調整は所得税の過不足を精算する手続きであり、所得税がかからなければそもそも年末調整を行う必要がないためです。

所得税の課税対象となる給与所得には、原則として55万円の給与所得控除と48万円の基礎控除が適用されます。控除後の所得に所得税がかかるため、給与所得が55万円+48万円=103万円以下なら所得税は発生しません。

アルバイトの収入は通常、給与所得となるため、アルバイトで得る年収が103万円以下であれば所得税がかからず、年末調整も不要です。

参考:No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか|国税庁

アルバイトで年末調整が必要なケース

年末調整書類

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年収が103万円以下であれば基本的に年末調整は不要ですが、申告書を提出している場合や源泉徴収されている場合は、年末調整が行われます。アルバイトで年末調整が必要になるケースを確認しましょう。

勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している

年末調整を行うためには、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していることが前提となります。前年の年末調整の手続き時に、翌年の申告書も併せて提出するのが一般的です。

つまり、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出していれば、年収の金額に関係なく年末調整が行われることになります。

年収が103万円以下のアルバイトでも、申告書を提出している場合は、とりあえず年末調整が行われるのです。ただし、所得税が発生していなければ、実際に税金の過不足の調整は行われません。

参考:
Ⅱ 年末調整とは|国税庁
No.2665 年末調整の対象となる人|国税庁

月単位で源泉徴収されている

ひと月の収入が8万8,000円を超えた場合は、その月のみ源泉徴収が行われます。源泉徴収とは、給与から会社が所得税を差し引いて、会社が従業員の代わりに納税する手続きです。

源泉徴収で差し引かれる金額はあくまでも概算で求められるものであり、確定した税額ではありません。その年の所得税額は、年末調整により最終的に確定する仕組みです。

収入が8万8,000円を超えた月があっても、結果的に年収が103万円を超えなかった場合、その年は所得税が発生しないため、源泉徴収された分は全額戻ってきます。

参考:令和4年分 源泉徴収税額表|国税庁

そもそも年末調整とは?

源泉徴収票

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年末調整は会社が行う手続きです。その年の所得税を確定させるために行われます。年末調整のほかに所得税額を最終調整する手続きが、確定申告です。

所得税の過不足を精算すること

一定額の収入がある給与所得者は、毎月の給与から所得税が源泉徴収されています。しかし、源泉徴収税額はあくまでも概算の金額であり、最終的に確定する所得税額とはズレが生じます。

そもそも所得税は、1年間に支払われる総支給額に基づいて徴収されなければなりません。毎月の給与から源泉徴収することで、便宜的に会社が所得税を納める形になっているのです。

実際に1年間の総支給額が確定しなければ、正確な所得税額も確定しないため、年間総支給額が確定したタイミングで年末調整が行われて、所得税の過不足を精算します。

確定申告との違い

確定申告とは、その年の所得と所得税額を計算し、金額を確定させて税務署に申告する手続きです。会社が行う年末調整と異なり、確定申告は納税者本人が手続きを行います。

会社に年末調整をしてもらったケースでも、複数の会社に勤めている場合や給与収入が2,000万円を超えた場合は、確定申告が必要です。

年末の時点で働いていない人も、年の途中で収入を得ていた場合は、確定申告が必要になるケースがあります。年末調整は原則として、12月末時点で在籍する従業員のみが対象になるためです。

参考:確定申告が必要な方|国税庁

年末調整の流れと必要書類

書類に書き込む

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年末調整は会社が手続きを行うため、従業員がやることは限られています。年末調整の流れと必要書類、アルバイトを掛け持ちしている場合の対処法を見ていきましょう。

書類に必要事項を記入

年末調整が行われる年末の時期が近づいてくると、勤務先から年末調整に関する書類を渡されます。書類の必要事項を記入し、添付書類が必要な場合は準備して勤務先に提出すれば、従業員の手続きは完了です。

書類の提出期限は勤務先によって異なるため、指定された日までに提出しましょう。提出が遅れると年末調整の手続きが進まず、会社に迷惑をかける結果になってしまいます。

源泉徴収税額は、年末に確定する所得税額より多いケースがほとんどです。年末調整が無事に終わった後は、納めすぎた税金が会社を通して還付されます。

書類に記入する際のポイント

年末調整に関する必要書類は以下の4種類です。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、年末調整を行うすべての人が提出します。残りの3つは、対象となる人のみが提出を求められる書類です。

親の扶養内でアルバイトをしている人は、1枚のみの提出で大丈夫でしょう。配偶者控除や保険による控除が適用される場合は、税金が安くなる可能性があるため、ほかの書類も記入・提出する必要があります。

アルバイトを掛け持ちしている場合

年末調整を受けられるのは1社のみです。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合は、メインのアルバイト先で年末調整をしてもらう必要があります。

ほかのアルバイト先に関しては、源泉徴収票を集めた上で、自分で確定申告を行わなければなりません。確定申告が必要になるのは、メインのアルバイト先以外の所得(給与所得のみの場合は収入)が年間20万円以上になるケースです。

アルバイトを掛け持ちしている場合、一般的には最も収入が多いアルバイト先に年末調整をしてもらいます。源泉徴収票がない場合は、職場に依頼すれば発行してもらうことが可能です。

参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

年末調整しなかった場合はどうなる?

電卓を見ながら考える女性

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会社が年末調整を実施しなかった場合は、罰則を科される場合があります。従業員が年末調整をしないリスクも確認しましょう。

最悪の場合は企業に罰則が科される

年末調整の対象者がいる場合、雇用主には年末調整を行う義務があります。年末調整が適切に実施されなかった場合は、所得税法に抵触し罰則が科される可能性があります。

罰則の対象となるのは、虚偽の申告をしたケースや所得税を適切に徴収しなかったケース、徴収した所得税を納税しなかったケースなどです。それぞれ、懲役刑や罰金刑の対象になります。

会社に年末調整を拒否された場合は、会社の住所を管轄する税務署に相談しましょう。年末調整を行うように税務署が指導を行います。

参考:所得税法 第二百四十条、第二百四十二条 | e-Gov法令検索

従業員は還付を受けられない

従業員が年末調整をしないまま確定申告も行わなかった場合、戻ってくるはずの還付金を受け取れません。納めすぎた所得税を返してもらうためにも、期限までに書類を提出しましょう。

また、納税の義務が発生していた場合は、延滞税などのペナルティが科されるケースもあります。確定申告をしなかった場合も同様です。

年末調整をしなければ各種控除を受けられないため、翌年の住民税が高くなる可能性も考えられます。住民税は前年の所得をもとに算出されるためです。

月々の収入をきちんとチェックしよう

通帳と電卓とペン

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アルバイトの年収が103万円以下なら、基本的に年末調整は不要です。ただし、申告書を会社に提出している場合や、月単位で源泉徴収されている場合は、年末調整が必要になる可能性もあります。

月々の収入をきちんとチェックし、年末調整が必要になる場合は適切に手続きを進めましょう。