失業手当の受給中に、条件をクリアして新しい職に就くと再就職手当がもらえます。しかし自分は対象外ではないかと、心配な人もいるかもしれません。受け取れないケースや条件に満たせなくても受給の可能性がある手当、損をしないためのポイントを解説します。
再就職手当がもらえないケース
再就職手当は、失業手当(雇用保険の基本手当)の受給資格のある人が、一定の条件を満たして新たな仕事に就いた際に支給される手当です。再就職のインセンティブのようなもので、早く就職するほど手当の金額が増えます。
ただし、受給条件をすべて満たしていないと受給できません。再就職手当がもらえない6つのパターンを解説します。
代表的な4パターン
再就職手当が受け取れないときの代表的なパターンは、以下の4つです。
- 失業手当の給付日数が残っていない
- 雇用保険に加入していない
- 待期期間中に再就職した
- 再就職した仕事を1年以内に辞めることが決まっている
再就職手当は、基本手当の所定給付日数を1/3以上残していないと支給されません。また、前職で雇用保険に加入していなかった人は、そもそも雇用保険の受給資格がないため注意が必要です。
待期期間とは失業状態にあることを確認するための期間で、7日間設けられています。この間に再就職した場合は失業状態にあったと認められず、手当も受け取れません。
また、新しい職場で1年を超えて勤務し続けなかった場合も、対象外となってしまいます。
1年までの雇用で就業手当がもらえる場合も
就業手当とは基本手当(失業手当)を受給できる人のうち、再就職手当の受給要件外で就職した場合に受けられる可能性がある手当です。具体的には、契約期間が1年以下(契約期間が1年で更新の見込みがあるものを除く)の仕事が該当します。
受給条件で特に気を付けたいのが、基本手当の所定給付日数を1/3以上かつ45日以上残していなければ受給できないことです。所定給付日数が100日の場合、残り34日残っていても、「45日以上」の条件に当てはまらず就業手当を受け取れません。
支給額は「就業日×30%×基本手当日額」で計算できます。条件を満たしているようなら、目安額を計算してみましょう。
※1日当たり1,857円(60歳以上65歳未満は1,501円)
うっかり忘れがちな2パターン
再就職手当を受け取れない原因のうち、以下の2つは少々特殊です。
- 前職と同じ会社や、前職と関連性が高い会社へ再就職した
- 過去3年以内に再就職手当を受給している
いわゆる出戻りや、前職と密接な関係にある会社への再就職は支給の対象外です。当該会社への就職を前提とした、計画的な退職だと疑われてしまうためです。子・親会社はもちろん、取引面で高い関連性が認められる会社も該当します。
また、過去3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受給している場合も、支給されないことに注意が必要です。
裏技を使ったり、短期間で何回も制度を利用したりする行為は認められていないことが分かるでしょう。
正社員以外で再就職手当がもらえるケース
正社員以外で就職した場合は、手当をもらえないと思っている人も多いかもしれません。しかし条件をクリアすれば、正社員でなくても再就職手当が支給されるケースがあります。それぞれ見ていきましょう。
アルバイト・パート
アルバイトやパートであっても、必要な期間だけ雇用保険に加入しており、新たな職場で1年を超えて働く予定なら再就職手当をもらえる可能性があります。雇用保険の加入条件は、次の条件をどちらも満たしていることです。
- 所定労働時間が週20時間以上
- 31日以上の雇用の見込みがある
この条件をクリアして雇用保険に加入しており、加入期間の要件も問題ないのであれば、雇用形態を問わず再就職手当の支給対象となります。
直近で1年以上アルバイトやパートとして生計を立てる予定があって、雇用保険の諸手当を受け取りたい人は、加入条件内で働く選択肢も視野に入れましょう。
派遣社員
派遣社員の場合は、1年を超えて雇用され続ける見込みがあるかどうかがポイントです。通常、派遣社員の契約は数カ月単位ですが、更新され続ける可能性があれば受給資格を満たしていると見なされるケースがあります。
しかし、明らかに更新の可能性がなかったり紹介予定派遣だったりする場合は、受給条件を満たさない可能性が高いことに注意しましょう。
紹介予定派遣では6カ月以内に雇用主が派遣会社から紹介先の企業に切り替わるため、形式上は1年以内の退職と見なされてしまいます。
個人事業主
失業手当を受けている求職活動を経て個人事業主になると、新たな仕事では雇用保険に加入できないため、再就職手当の対象外だと思う人も多いかもしれません。
しかし、1年以上安定的に事業を続ける見込みがあると判断された場合は、再就職手当がもらえる可能性があります。
ただし、開業日に注意が必要です。開業日は早くとも、待期期間7日間の後1カ月は開ける必要があります。
独立するときは、誰しも経済的な不安を抱えるものです。再就職手当をうまく利用すれば、立ち上げ期の経済的不安を和らげられるでしょう。
再就職手当の受給条件と申請手順
再就職手当は、受給の条件を満たしていれば積極的に利用するのがおすすめです。詳しい条件や金額、申請のやり方を見ていきましょう。
受給条件
再就職手当を受給するには、以下の8点を満たす必要があります。
- 7日間の待期期間後に就職・開業した
- 基本手当の所定給付残日数が1/3以上である
- 前職やそれと関連性の高い企業への就職ではない
- 給付制限があり、待期期間から1カ月以内に再就職した場合はハローワーク経由での採用である
- 1年を超えて勤務することが確実である
- 原則、雇用保険の被保険者である
- 過去3年以内に再就職手当や常用雇用支度手当を受け取っていない
- 受給資格が確定する前に採用が決まっていない
受給できないパターンを逆に考えると、条件が分かります。紹介していなかった4番目と8番目について、詳しく理解しておきましょう。
4番目は自己都合で会社を辞めた人が該当します。7日間の待期期間後1カ月以内に就職先を見つけて再就職手当を受けるには、ハローワーク経由で採用が決まる必要があります。それ以降については、民間の求人サイトをはじめ他のルートでも問題ありません。
8番目については、すでに採用が決まっているならそもそも失業状態にないため、最初から手当を受け取る資格がないということです。
再就職手当の金額
再就職手当の金額は、主に基本手当の所定給付日数がどれだけ残っているかによって変わります。
- 所定給付日数が1/3以上残っている場合:基本手当日額×支給残日数×60%
- 所定給付日数:2/3以上残っているなら「基本手当日額×給付残日数×70%」です。
例えば、所定給付日数が90日・基本手当日額が5,000円の人が、所定給付日数を60日以上残して就職先が決まったとしましょう。この場合は「5,000円×60日×70%=21万円」が支給されます。
就職先がなかなか見つからず、残日数が30日になると、再就職手当は「5,000円×30日×60%=9万円」となります。
基本手当日額には上限があることに注意しましょう。以下が2023年4月時点の上限額です。
- 離職時の年齢が60歳未満:6,190円
- 60歳以上65歳未満:5,004円
金額は毎年8月1日に改定されるので、2023年7月31日までは上記のままです。
申請手順
再就職手当を申請するには、次の手順を踏む必要があります。
- 新しい就職先から「就労証明書」を受け取るか「採用証明書」に記入してもらう
- 1と「雇用保険受給資格者証」「失業認定報告書」をハローワークに提出し、「再就職手当支給申請書」を受け取る
- 再就職先に必要事項を記入してもらう
- 雇用保険受給資格証やその他の必要書類を添えてハローワークへ提出
その他書類とは、就職先が離職前の会社と無関係であることを証明するものや、勤務実績を証明するもの(タイムカードのコピーなど)を指します。いずれもハローワークから求められた場合に必要となります。
申請の期限は、入社から1カ月以内です。会社に記入をお願いする書類も多いので、スピーディーに進めましょう。
再就職手当で損をしないためのFAQ
再就職手当をもらうなら、受け取り損をしたくないと思う人が多いでしょう。再就職手当についてよくある疑問について解説します。
申請し忘れた場合はどうすればいい?
再就職手当は、原則として就職した次の日から1カ月以内に申請しなければなりません。まずは所定の期限内に済ませられるよう、計画的に動きましょう。
ただし、忘れた場合でも2年以内であれば請求できます。2年を過ぎると時効となってしまい、受け取れなくなるので注意しましょう。
時間が経つと段々と面倒くさい気持ちになって先延ばしにしやすいため、できるだけ早く手続きを始めるのがおすすめです。
参考:雇用保険の給付金は、2年の時効の期間内であれば、支給申請が可能です。|ハローワーク新宿
失業手当と再就職手当どちらが得?
金額だけを見ると再就職手当より、失業手当を満額もらった方が得です。しかし、新たな仕事で安定した給与収入を得る方が、多くの場合で失業手当を受け取り続けるより金銭的なメリットが大きいでしょう。
失業手当として受け取れるのは、前職の給料の50~80%ほどです。人によっては、生活がままならない可能性があります。
早く仕事が見つかれば、長期的に安定した収入に加えて、条件を満たせば再就職手当がもらえます。ただし、仕事を辞めた事情や蓄えの程度は人それぞれのため、無理のない範囲で計画的に転職活動に臨むことが大切です。
ハローワークを使った方がいいの?
給付制限がある人は、待期期間と1カ月を過ぎれば、どのような経路で採用されても再就職手当の支給対象になります。
求人サイトをはじめとした民間のサービスにはハローワークで扱っていない求人も多いため、納得できる仕事が見つかりやすいメリットがあります。
ただし、早く就職した方が給与収入も含めた経済的なメリット・給付額どちらも大きくなります。ニーズによって動き方を柔軟に変えられるよう、最初はハローワークを中心に探しつつ、民間サービスも併用するのがよいでしょう。
転職先を探すなら、スタンバイがおすすめです。スタンバイには雇用形態を問わず、豊富な求人が掲載されています。納得のいく仕事を見つけるためにも、活用してみてはいかがでしょうか。
再就職手当をもらった後すぐ退職したときは?
再就職手当の受給は1年を超えて雇用されることが前提とされますが、予定と違ってすぐに辞めてしまった場合に返す必要はありません。
加えて基本手当の支給日数が残っていれば、その分も受け取れます。ただし、残りの基本手当を受給できるのは、前々職の離職日の翌日から1年間です。
失業保険では支給要件が細かく設定されているため、少しでも外れていると「きっともらえないだろう」と諦めてしまいがちです。
しかし、例外も多くあります。制度を理解して上手に利用しましょう。
参考:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~|厚生労働省
支給条件を満たしていたら早めの申請を
再就職手当は、次の仕事が早く決まるほど多くの金額を受け取れます。受給資格は全部で8個あり、複雑に思うかもしれません。しかし、紹介したポイントをチェックしていけば、自分が対象になるかどうか判断できます。
再就職手当を狙って早めに仕事が決まるよう動くことで、失業手当を受け取るよりも、金銭的なメリットが大きくなる場合がほとんどです。自分が条件を満たしていると思われる場合は、早めに手続きを進めましょう。