給料から引かれるものとは?税金や保険料を基本から確認してみよう

月々の給料からは、税金や社会保険料・積立金などが差し引かれています。給料の明細を見ながら、何がどのくらい引かれているのかをチェックしてみましょう。基本給や各種手当など、会社から支払われるお金の内訳についても解説します。

社会保険料として給料から引かれるもの

給与明細と現金

(出典) pixta.jp

社会保険は、国の制度である健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の総称です。労災保険を除き、会社と従業員の双方がそれぞれの保険料を負担します。

会社は従業員の月々の給料から従業員の負担分を天引きし、会社負担分の額と一緒に納付する仕組みです。

※一般的に給料は基本給を指し、諸手当を含めませんが、本記事では諸手当を含めた給与を給料としています。

医療費負担の軽減に使われる「健康保険料」

健康保険は、病気・けが・出産・死亡・休業などに備える医療保険制度です。保険者には「全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)」「組合管掌健康保険(以下、組合健保)」などのほかに各種共済組合があり、中小企業の多くは協会けんぽに加入しています。

協会けんぽの健康保険料は、労使折半です。従業員が支払う金額は、以下のように算出します。

  • 毎月の健康保険料(従業員負担額)=標準報酬月額×都道府県別の保険料率÷2

標準報酬月額は、報酬の月額を一定の幅で分けたもので、全50等級に区分されています。都道府県ごとの保険料率は毎年変わるため、協会けんぽのホームページで確認しましょう。

組合健保では組合ごとに保険料率が異なり、必ずしも労使折半とは限りません。

参考:
全国健康保険協会
令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます | 協会けんぽ | 全国健康保険協会
人を雇うときのルール|厚生労働省

満40歳からは「介護保険料」も

満40歳に達すると、その日が属する月から「介護保険料」の徴収もスタートします。

介護保険は、各家庭の介護負担を軽減するために創設された公的医療制度で、市町村や特別区が運営主体です。加齢に伴う疾病で、利用条件を満たす要介護状態や要支援状態になった場合、介護保険を使って所定の介護サービスが受けられます。

国民健康保険に加入している人の保険料は市町村・特別区によって決定されますが、会社の健康保険に加入している人は、医療保険者ごとに保険料率が異なります。保険料は毎月の給料から、健康保険料と一緒に天引きされるのが原則です。

参考:
介護保険制度について|厚生労働省
協会けんぽの介護保険料率について | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

将来もらえる年金のベース「厚生年金保険料」

厚生年金保険は、会社員・公務員が加入する公的年金制度です。加入して厚生年金保険料を納めることで将来、老齢国民年金に上乗せして老齢厚生年金が受け取れます。

被保険者は国民年金のみの人より老後の年金受給額が増える上、個人の事情に応じて遺族年金や障害年金などを受給できるのがメリットです。保険料は労使折半で、月々の給料から天引きされます。

  • 毎月の保険料額(従業員負担額)=標準報酬月額×保険料率÷2

標準報酬月額は、被保険者の月々の給料を一定の幅で区切ったもので、等級は全32等級(1~32等級)です。毎年9月には、4~6月の報酬月額を基にして標準報酬月額が改定されます。

保険料率は2017年9月に最後の引き上げが終わってからは、18.3%で固定されています(2023年3月現在)。

参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構

失業や休業に備えるための「雇用保険料」

雇用保険とは、生活の安定と就職の促進を目指すために設けられた国の制度です。仕事がなくなったときや働けなくなったときに、失業等給付が受けられます。雇用保険料の算出方法は以下の通りです。

  • 毎月の保険料額(従業員負担)=賃金総額×雇用保険料率(0.6%)

雇用保険料は、会社と労働者の双方が定められた保険料率で負担します。2023年(2023年4月1日~2024年3月31日)における一般事業の雇用保険料率は、それぞれ以下の通りです。

  • 労働者負担:6/1,000(0.6%)
  • 事業主負担:9.5/1,000(0.95%)

雇用保険は労災保険とともに社会保険と分けて、「労働保険」と呼ばれることもあります。ただ、労災保険の保険料は事業主が全額を負担するため、従業員の給料からは引かれません。

参考:
令和5年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省
労働保険の適用・徴収 |厚生労働省

税金として給料から引かれるもの

給与明細と電卓

(出典) pixta.jp

毎月の給料からは、所得税と住民税が源泉徴収※されます。それぞれの特徴と計算方法を見ていきましょう。

※会社が給料から税金を天引きして、従業員の代わりに納税すること

所得に応じて国に払う「所得税」

会社勤めをしている人は、所得に応じて所得税が源泉徴収されます。所得税の「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた残額のことです。

会社から給料(給与)をもらっている人は、給与所得者と呼ばれます。給与所得には、基本給や賞与のほか、各種手当も含まれます。ただし一定額以下の通勤手当は、給与所得に含まれません。

所得税を計算するとき、サラリーマンの経費に当たる「給与所得控除」を年収から差し引きます。さらに個人の事情によって適用できる「所得控除」を引き、残りの金額(課税所得額)に所定の税率を掛けて税額控除額を引き、納める額を求める流れです。

計算が複雑なので、国税庁のホームページにある「所得税の速算表」を活用しましょう。

月々の給料から源泉徴収されている所得税額は、あくまでも概算です。年末に1年間の所得税額を確定させ、超過分や不足分を精算する手続きを「年末調整」と呼ぶことも覚えておきましょう。

参考:
所得税のしくみ|国税庁
No.1410 給与所得控除|国税庁
No.1100 所得控除のあらまし|国税庁
No.2260 所得税の税率|国税庁

住んでいる自治体に支払う「住民税」

住民税は、住所のある都道府県や市区町村に納める税金です。前年の所得に応じて税額が決まる前年所得課税のため、前年が無収入であれば課税されません。住民税には以下の2種類があり、合計金額を支払います。

  • 所得割:前年の所得に応じて負担する(一律10%)
  • 均等割:所得に関係なく負担する

会社員の場合、住民税の支払いは6月からスタートします。前年の所得に基づいて算出された税額が全12回に分割され、6月~翌年5月の給料から天引きされるのが原則です。

参考:総務省|地方税制度|個人住民税

そのほか給料から引かれるもの

通帳を見る男性

(出典) pixta.jp

税金や社会保険料のほかに、積立金が給料から引かれる人もいます。会社が独自に設定している積立金については、返金請求ができるケースがあります。支払っている積立金の種類と用途を、しっかり確認しておきましょう。

任意で利用できる「財形貯蓄」の積立金

会社が財形貯蓄制度を導入している場合、人によっては財形貯蓄の積立金が引かれます。財形貯蓄は、毎月一定額を給料から天引きし、自分の銀行口座にお金を積み立てていく制度です。

会社を介して貯蓄ができるため、手元にお金があるとすぐに使ってしまう人に向いています。制度への加入は任意で、会社が強制することはありません。

財形貯蓄には、以下の3つがあります。

  • 一般財形貯蓄:使途が自由な貯蓄
  • 財形年金貯蓄:老後の資金形成を目的とした貯蓄
  • 財形住宅貯蓄:持ち家の取得・増改築などを目的とした貯蓄

財形貯蓄には、利子が非課税になる税制優遇措置が設けられています。財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄を合わせ、元利550万円から生じる利息などが対象です。

参考:
お給料から少しずつ…でもいずれ大きく育つ「財形貯蓄」 | B.貯蓄する | 一般社団法人 全国銀行協会
財形貯蓄制度|厚生労働省

会社が独自に用意する制度の積立金

会社によっては、独自の積立制度を設けているところもあります。労使協定が結ばれていれば、会社が従業員の給料から積立金を天引きする行為は違法ではありません。

代表的な積立金には、社員旅行のための「旅行積立金」が挙げられます。親睦会費と称し、慶弔見舞金やレクリエーション費用を集める会社もあるようです。

なお労働基準法18条の第5項には、以下のような記載があります。

使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。

仮に旅行積立金が使われなかった場合、従業員は会社に対して金銭の返還を請求できます。

出典:労働基準法 第18条第5項 | e-Gov法令検索

参考:労働基準法 第18条第2項 | e-Gov法令検索

会社から支払われるお金には何がある?

電卓を打ちながら計算する手元

(出典) pixta.jp

給料の明細には、会社から支払われるお金の詳細が記載されています。総支払額だけでなく、どのようなお金がいくら支払われているのかをチェックしましょう。

残業代や手当を含まない「基本給」

基本給は、各種手当やインセンティブを除いた基本の賃金です。基本給の決め方は会社ごとに異なりますが、能力や年齢・勤続年数などを考慮するのが一般的です。

時間外手当の金額は、基本給に諸手当を加えた基礎賃金から算出されます。ボーナスも「基本給×〇カ月」で算出する会社が多いため、基本給が低いほど時間外手当やボーナスの額が少なくなります。

例えば、ボーナスが基本給の3カ月と規定されていた場合、基本給が20万円なら60万円もらえますが、18万円だと54万円しかもらえません。

法定労働時間を超えると発生「時間外手当」

労働基準法では、1日8時間・週40時間を「法定労働時間」としています。原則、法定労働時間を超える労働は認められておらず、法定労働時間を超える「時間外労働」がある場合は、過半数組合(※)と労使協定(36協定)を結ぶ必要があります。

会社は、時間外労働をさせる従業員に対して、割増した賃金を支払うルールです。割増賃金は、時間外手当とも呼ばれ、割増率の最低ラインが次のように決められています。

  • 法定労働時間を超えた場合:25%以上
  • 時間外労働が限度時間(1カ月40時間・1年360時間など)を超えた場合:25%以上(25%を超える率とするよう努めること)
  • 時間外労働が1カ月60時間を超えた場合:50%以上

時間外手当のほかに、以下のような割増率も定められています。

  • 休日手当(法定休日に勤務させた場合):35%以上
  • 深夜手当(22時~5時の間に勤務させた場合):25%以上

※その会社で働く労働者の過半数で組織されている労働組合。過半数労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する人で代替される。

参考:
法定労働時間と割増賃金について教えてください。|厚生労働省
しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編|厚生労働省

会社ごとに設定「各種手当」

多くの会社では、基本給に上乗せする形で各種手当を設定しています。代表的な手当には以下のようなものがあります。

  • 役職手当:業務上の役職や役割などに応じて支給
  • 技能手当:会社が必要とする技能を持つ人に支給
  • 資格手当:業務に役立つ資格を持つ人に支給
  • 扶養手当:扶養する家族がいる人に支給
  • 住宅手当:家賃や住宅ローンなどに応じて支給
  • 皆勤手当:一定期間中に欠勤・遅刻がなかった人に支給

ただし、こうした手当は会社独自のものです。時間外手当や休日手当と違って、法律では義務付けられていません。

出退勤や出張に使う「交通費」

通勤や出張などにかかった費用は、交通費として支給されます。交通費の支給方法は、以下の3パターンです。

  • 全額支給:通勤や出張にかかった全ての交通費を支給
  • 一部支給:交通費の金額に上限を設けて支給
  • 一律支給:日・月単位で決まった額を支給

交通費の申請方法について、会社がルートを指定する場合もあれば、自己申告とする場合もあります。当月分の交通費は、その月の給料と一緒に支払われるのが一般的です。

従業員が交通費を立て替える形になるため、交通費が高額になりそうなときは、会社に相談するのも1つの手です。

税金や保険の仕組みを確認しておこう

電卓とパソコン

(出典) pixta.jp

手取り額だけを見て、毎月の給料から何が引かれているのかを確認していなかった人も多いのではないでしょうか?

手元に残るお金が少ないと感じている人は、給料から差し引かれる額を計算して、どのくらいのお金があれば十分に生活ができるかを考えてみましょう。

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