自衛隊入隊に学歴は必要?社会人が自衛官になる方法も解説

自衛隊への入隊は最終学歴によらず可能です。全ての人が入隊を目指せるルートのほか、学歴ごとに異なるルートもあるため、それぞれの詳細を紹介します。また社会人が応募できる中途採用もあるため、応募の仕方を見ていきましょう。

自衛隊に入るにはどのような方法がある?

行進する自衛隊

(出典) pixta.jp

自衛隊へ入るために特別な資格や経歴は必要ありません。学歴を問わず自衛官を目指せるルートもあるため「なりたい」と思えば誰でもチャレンジしやすいでしょう。

どのような経歴や学歴からでも目指せる

経歴や学歴を問わず多様な人材を採用している自衛隊には、自衛官になるためのルートが複数あります。自分の学歴や入隊後に目指すポジションに合わせ、適したルートを選びましょう。

どのルートで入隊したとしても、多様なキャリアパスが用意されているのも特徴です。例えば高卒で一般曹候補生として入隊しても、希望すれば幹部を目指せる道も用意されています。

就任するポジションに必要な資格取得にも挑戦できるため、スキルアップにも取り組みやすい環境です。

自衛隊に入るルートをチェック

複数ある入隊のルートは、どのようなものなのでしょうか?具体的に確認しましょう。

  • 18歳以上33歳未満なら誰でも受けられる一般曹候補生か自衛官候補生の試験を受け入隊する
  • 一般大学や大学院を卒業し幹部候補生として入隊する
  • 高校卒業後に防衛大学校や防衛医科大学校で学び幹部候補生として入隊する
  • 高校・中等教育学校卒業、高専3年修了、高卒程度の学力があると認められる人が航空学生になりパイロットとして入隊する
  • 中学校卒業後に高等工科学校の生徒となり入隊する
  • 社会人が中途採用で入隊する

次からは紹介したルートの詳細を紹介します。

学歴を問わず自衛隊を目指せるルート

後ろ手に立っている自衛隊

(出典) pixta.jp

学歴を問わず自衛官を目指せるのは、一般曹候補生と自衛官候補生としての入隊です。年齢の基準を満たしていれば応募できますが、決して簡単に合格できる試験ではありません。

一般曹候補生になる

一般曹候補生として入隊し、陸上・海上・航空自衛隊の曹を目指すには、日本国籍を持ち18歳以上33歳未満であることが応募条件です。

他の条件は問われないため、最終学歴が大卒でも中卒でも同じように応募できます。年齢の条件さえ満たしていれば応募できるため、さまざまな経歴を持つ人がいるルートです。

曹は指揮を受け直接任務を遂行する士の指導と、幹部の補佐を行うポジションです。入隊すると、まずは士として合計2年9カ月過ごし、選考により曹になります。その後、選抜で曹長になると、幹部候補生学校へ進めます。幹部として活躍するチャンスです。

自衛官候補生になる

自衛官候補生として入隊すると、自衛官になる訓練を3カ月受けます。その後、任期制自衛官になり、指揮の下直接任務を遂行する士に任官されるルートです。

1任期は陸上自衛官が原則1年9カ月、海上・航空自衛官が2年9カ月です。任期満了後は選抜を受けて曹を目指し、その後幹部になれる可能性もあります。

支援を受けながら企業や官公庁などへの就職・入職を選んでもよいでしょう。業務を想定した各種資格をはじめ、自衛官を辞めボイラー技士やネイリストなどの技能訓練や、公務員試験受験対策講座を受け、希望の仕事を目指すことも可能です。

また大学へも進学できます。通信教育で予備校の授業を受けられるのに加え、条件を満たせば進学のための給付金が支給される制度も利用可能です。

試験の内容や合格率は?

一般曹候補生になるには、1次試験の筆記試験と適性試験、2次試験の口述試験と身体試験に合格しなければいけません。また自衛官候補生の試験では、筆記試験・口述試験・適性試験・身体試験・能力を総合的に評価する経歴評定があります。

応募条件を満たす人は大勢いますが、合格率はそれほど高くありません。2021年は一般曹候補生への応募者2万8,426人に対し採用者数は6,450人で合格率は約22.7%、自衛官候補生への応募者2万8,272人に対し採用者数5,350人で合格率は約18.9%でした。

大卒から自衛隊になるルート

航空機のそばに立つ男性自衛隊員

(出典) pixta.jp

大学卒業後に自衛官を目指す場合には、幹部候補生として入隊するルートを選べます。定められた期間を候補生として過ごした後、幹部として活躍するポジションです。

幹部候補生になる

大卒で幹部候補生として入隊する場合、応募資格は文系や理工系の学生が受ける一般・歯学科の学生が受ける歯科・薬学科の学生が受ける薬剤科で以下のように異なります。

  • 一般:大卒か卒業見込みで22歳以上26歳未満の人、院卒者か修了見込みで20歳以上28歳未満の人
  • 歯科:専門の大卒か卒業見込みで20歳以上30歳未満の人
  • 薬剤科:専門の大卒か卒業見込みで20歳以上28歳未満の人

試験に合格し幹部候補生として入隊すると、一般・薬剤科は約1年間、歯科は6週間、幹部候補生学校で集団生活を送りながら、必要な知識や技術を学ばなければいけません。幹部になるとき大卒は3尉に、大学院卒は2尉になります。

試験の内容をチェック

試験は1次試験と2次試験の2回に分け行われます。試験内容は以下の通りです。

  • 1次試験:筆記試験(大学教養課程修了程度の一般教養・大学教養課程と大学専門課程修了程度の専門)・飛行要員希望者のみ筆記式操縦適性検査
  • 2次試験:小論文試験・口述試験・身体検査・飛行要員希望者のみ航空身体検査

2021年に一般幹部候補生の試験へ応募したのは4,998人でした。うち合格者数は333人で、合格率は約6.7%です。

高卒から自衛隊になるルート

自衛隊の集会

(出典) pixta.jp

高卒から自衛官になるには主に防衛大学校への進学・防衛医科大学校への進学・航空学生への入隊の3つのルートがあります。それぞれの入校・入隊後や試験について確認しましょう。

防衛大学校に進学し幹部候補生になる

21歳未満の卒業見込みを含む高卒、中等教育学校卒、高等専門学校の第3学年次修了の人が受けられるのが防衛大学校です。入校すると寮に入り集団生活を送りながら、科学的な思考力・広い視野・人間性などを4年間かけて磨き上げます。

将来的に幹部として活躍する人材になることが期待されているため、リーダーシップを発揮できる能力を身に付けることも必須です。4年間の防衛大学校を卒業すると、幹部候補生学校で約1年間学び、幹部として活躍します。

試験は3種類

防衛大学校へ入校するための試験は、高等学校長の推薦により受けられる推薦・AO入試に相当する総合選抜・一般の3種類です。3種類の試験はそれぞれ内容が異なります。

  • 推薦:学力試験(人文・社会科学専攻は英語と小論文、理工学専攻は英語・数学・理科)・口述試験・身体検査
  • 総合選抜:1次試験で学力試験(人文・社会科学専攻は英語と小論文、理工学専攻は英語・数学・理科)、2次試験で適応能力試験・問題解決能力試験・基礎体力試験・口述試験・身体検査
  • 一般:1次試験で学力試験(人文・社会科学専攻は英語・数学・社会のうち1教科と国語、小論文。理工学専攻は英語・数学・理科・小論文)、2次試験で口述試験・身体検査

防衛大学校の資料によると、2023年の一般採用試験を受験したのは8,547人で、1,203人が合格しています。倍率は7.1倍でした。

防衛医科大学校へ入校し幹部候補生になる

防衛医科大学校へ入校し、医師や看護師の幹部自衛官になるのがこのルートです。18歳以上21歳未満で、見込みを含む高卒か高専3年次修了者であれば受けられます。

医学科学生になると、6年間かけて医師として必要な知識や技術を身に付けます。同時に全寮制の団体生活の中で、あらゆる任務に就ける体力を養う期間です。

看護学科学生は4年間かけて保健師や看護師の資格を取得すると、幹部候補生学校に入校し、幹部に求められる知識と技術を身に付けます。その後、自衛隊病院や衛生科部隊などで勤務する流れです。

医学科と看護学科の2種類

試験は1次試験・2次試験に分かれており、学科ごとに内容が異なります。

  • 医学科:1次試験は学力試験(国語・数学・英語・理科)・小論文試験、2次試験は口述試験・身体検査
  • 看護科:1次試験は筆記試験(国語・数学・英語・理科・作文)、2次試験は口述試験・身体検査

防衛医科大学校の公表している資料によると、2023年度に医学科へ入校予定の受験者は5,684人、うち合格者は324人で倍率は17.5倍でした。

看護学科は自衛官候補看護学生の受験者が1,386人、うち130人が合格し倍率10.7倍です。技官候補看護学生は430人が受検し77人が合学、倍率は5.6倍です。

航空学生からパイロットになる

パイロットを目指すなら航空学生として入隊する方法もあります。卒業見込みを含む高卒もしくは高専3年次修了者で、海上自衛隊は18歳以上23歳未満、航空自衛隊は18歳以上21歳未満が応募資格です。

学生宿舎で規律を守った団体生活を送りながら2年間の教育を受けた後は、飛行訓練を中心に行う操縦課程へ進みます。士や曹として任務に従事し、曹長となると幹部候補生学校へ進み、幹部を目指すことも可能です。

試験は3次まである

航空学生の試験は以下のように3次試験まであるのが特徴です。

  • 1次試験:筆記試験(国語・数学・英語と、地理歴史・公民・理科のうち1科目)・適性検査
  • 2次試験:航空身体検査・口述試験・適性検査
  • 3次試験:海上自衛隊は航空身体検査、航空自衛隊は操縦適性検査・医学適性検査

2021年には2,049人が応募しており、150人が採用されています。合格率は約7.3%です。

中卒から自衛隊になるルート

訓練する自衛隊

(出典) pixta.jp

男子であれば中学校卒業後に高等工科学校に入校し、自衛官を目指す道もあります。卒業後は陸上自衛官として任務に就くルートです。

高等工科学校を経て陸上自衛官になる

高等工科学校に入校し陸上自衛官を目指せるのは、17歳未満の男子で見込みを含む中卒の人です。入校後は高等学校の普通科と同等の教育を受けつつ、陸曹として任務に従事するために必要な技術を学び各種訓練を受けます。

高機能化・システム化された車両や機器などを使いこなすための知識や技能を身に付けられるよう、専門課程も設けスペシャリスト育成に力を入れているのが特徴です。

また神奈川県横須賀市にある学校内の生徒舎で団体生活をしながら、規律ある生活を送ります。

推薦試験と一般試験がある

試験は学校長の推薦が必要な推薦試験と一般試験の2種類です。推薦試験では口述試験・作文を含む筆記試験・身体検査により、採用の可否が決まります。一般試験は1次試験と2次試験があり、試験内容は以下の通りです。

  • 1次試験:筆記試験(国語・社会・数学・理科・英語・作文)
  • 2次試験:口述試験・身体検査

2021年の試験では1,779人の応募があり、採用されたのはうち341人です。約19.2%が合格しています。

社会人が自衛隊で働く方法

匍匐前進する自衛隊

(出典) pixta.jp

社会人から自衛官になるには、一般曹候補生や自衛官候補生として入隊する方法のほかに、中途採用に応募する方法もあります。中途採用では、事務職や技能職の募集が行われるタイミングもあるでしょう。社会人経験を生かし、自衛隊に入れるかもしれません。

中途採用へ応募する

自衛隊の採用情報ページをチェックすると、中途採用も行っていると分かります。求められる応募資格や経験は職種ごとにさまざまです。過去に募集されていた職種の応募資格を見てみましょう。

  • 総合職(事務系)相当:大学卒業後に企業や官公庁などで通算4年以上、正社員や正職員としての職務経験がある人
  • 一般職(行政区分)相当:大学卒業後に企業や官公庁などで通算9年以上、正社員や正職員としての職務経験がある人
  • ボイラー・配管工:中卒以上で機械・配管設備の維持管理業務について、直近3年以内に当該実務経験を1年以上連続してもつ人、ボイラー技士免許・ボイラー整備士の免許を持つ人

スタンバイにも自衛隊の求人が掲載されています。「自衛隊」とキーワードを入力し、勤務地などの条件を選ぶと希望に合う仕事の検索が可能です。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

自衛隊は自分に合うルートで目指せる

どこかへ向かう自衛隊

(出典) pixta.jp

自衛隊を目指すルートは複数あります。最終学歴によらずどの段階でも入隊可能なため、自分に合った方法で自衛官になれるのが特徴です。加えて、どのルートで入隊しても幹部を目指せます。

社会人になってからも、年齢の条件を満たしていれば一般曹候補生や自衛官候補生として入隊可能です。さらに中途採用で、社会人経験を生かせる職種に従事できる可能性もあります。

自衛隊の仕事を探す際にはスタンバイでも検索してみましょう。掲載されている求人の中には、自衛隊病院の医療事務・事務補佐員・弾薬検査を行う技官など、さまざまな職種があります。

スタンバイを活用すれば、これまでの経験を生かした職種で自衛隊に入れるかもしれません。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら