130万の壁に交通費は含まれる?扶養内のままにするための条件とは

年収が130万円以上になると、原則として社会保険上の扶養から外れます。会社から交通費を支給されている人の中には、130万円に交通費は含まれるのか気になる人もいるのではないでしょうか。130万円の壁と交通費の関係について詳しく解説します。

①「130万の壁」に交通費は含まれる?

電車

(出典) pixta.jp

「130万円の壁」とは、社会保険上の扶養に入れるかどうかのボーダーラインを意味します。会社から交通費が支給されている場合は、交通費を意識して年収を計算することが重要です。

交通費も含まれる

130万円の壁を考える上で、年収には労務の対価として受け取る全ての収入が含まれます。つまり交通費も収入として扱われるのです。

定期券などの現物で支給されている場合や、経費として実費精算されている場合も、金額に換算して年収に含める必要があります。

交通費が含まれる理由は、社会保険料が標準報酬月額を基準にして計算されるためです。標準報酬月額とは、労務の対価として支給されるものであり、基本給以外に交通費を含む各種手当やボーナスも該当します。

130万円の壁を考慮して働きたい場合は、交通費が含まれることを念頭に置かなければなりません。

参考:
被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
標準報酬月額・標準賞与額とは? _ こんな時に健保 _ 全国健康保険協会

具体的な月の収入

年収が130万円の場合、月の収入は130万円÷12カ月=約10万8,300円です。交通費をもらっている人が130万円の壁を考えるなら、約10万8,300円に交通費を含めなければなりません。

年収130万円に別途交通費が支給されている場合は、130万円の壁を超えてしまうことになります。例えば、交通費を毎月5,000円受け取っているなら、月の収入を約10万8,300円-5,000円=約10万3,300円以下に抑える必要があるのです。

交通費が高額になっている人は、年収がうっかり130万円に達してしまうこともあるため、きちんと計算して仕事をするようにしましょう。

交通費を計算していなかった場合

130万の壁に交通費は含まれないと考えていた場合、年収がうっかり130万円を超えてしまう可能性もあります。しかしこのようなケースでも、扶養からすぐに外れてしまうとは限りません。

扶養から外れるかどうかは、原則として保険者が決めます。健康保険法第39条で定められているルールです。一時的に130万円を超えてしまったような場合でも、その年についての扶養の認定は取り消されないケースがほとんどです。

ただし、130万円の壁を超えていることを黙っていると、後から認定を取り消されてしまう恐れもあります。うっかり超えてしまった場合は、その旨を保険者にきちんと伝えましょう。

参考:健康保険法 | e-Gov法令検索

②「106万円の壁」にも交通費は含まれる?

電車に乗る人

(出典) pixta.jp

年収が130万円以上になると無条件で社会保険上の扶養から外れますが、年収が106万円に達した場合も、一定の条件を満たせば扶養から外れます。106万円の壁と交通費との関係を確認しておきましょう。

106万の壁には含まれない

一定の条件を満たしたケースでは、年収が106万円になった場合も社会保険上の扶養から外れます。106万の壁における月の収入の目安は8万8,000円です。

8万8,000円には各種手当やボーナスが含まれません。106万の壁を考える場合は130万円の壁と違い、年収に交通費を含まなくてもよいことになります。

なお、106万の壁については、2022年10月に社会保険の適用条件が以下のように変わりました。

  • 勤務先の従業員数:501人以上→101人以上
  • 継続した雇用が見込まれる期間:1年以上→2カ月超

勤務先の従業員数の条件に関しては、2024年10月からは101人以上から51人以上に変更されます。

参考:社会保険適用拡大ガイドブック P1 | 厚生労働省

106万の壁に関する条件

2023年4月時点で、106万円が壁となる条件は次の5つです。

  • 従業員数が101人以上の企業で働いている
  • 2カ月を超える期間の雇用が見込まれる
  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
  • 賃金が月額8万8,000円以上
  • 学生ではない

上記の要件を全て満たした場合には自分で社会保険への加入が必要となるため、社会保険上の扶養から外れることになります。

参考:社会保険適用拡大ガイドブック P2 | 厚生労働省

③「103万の壁」には交通費が含まれる?

つり革

(出典) pixta.jp

年収の壁には130万円と106万円以外に、103万円の壁もあります。年収が103万円を超えるとどうなるのか、交通費との関係も併せて理解しましょう。

社会保険ではなく所得税のボーダーライン

年収103万円の壁は、税制上の扶養に入れるかどうかのボーダーラインです。年収が103万円を超えると、社会保険上の扶養には影響を与えませんが、税制上の扶養からは外れます。

103万円という金額は、給与所得控除55万円と基礎控除48万円を足したものです。給与所得者の所得には所得税がかかりますが、年収が103万円を超えなければ収入の全てを控除できるため、課税所得がなくなり所得税もかかりません。

一方、年収が103万円を超えると、超えた分に対して所得税が発生します。それまで扶養者だった人にも課税されるようになるため、自分と扶養者だった人の双方の税負担が重くなる点に注意が必要です。

交通費は含まれない

年収103万円の壁には、原則として交通費は含まれません。所得税や住民税を計算する際は、非課税となる通勤手当などの金額を除いた総支給額を用います。

ボーナスには所得税がかかるため、年収103万円に含めなければなりません。日給などの中にあらかじめ交通費が含まれている場合も、その交通費は課税対象です。

交通費の金額や通勤手段によっても、交通費に課税されるケースがあります。高額な交通費が支給されている人や、長距離を自家用車で通っている人は、年収103万円の壁に交通費が含まれる可能性がある点を覚えておきましょう。

交通費の非課税限度額はいくら?

お金の乗った木製ブロックの階段

(出典) pixta.jp

交通費に課税されるかどうかは、交通手段や金額などにより異なります。以下に挙げる主な3パターンをチェックし、自分の交通費を考える際の参考にしましょう。

公共交通機関を利用した場合

通勤に公共交通機関を利用する場合、交通費の非課税限度額は月額15万円です。電車やバスを使った交通費が月額15万円を超えた場合は、交通費に税金がかかります。これは、最も経済的かつ合理的な経路・方法で通勤した場合に適用されます。

例えば公共交通機関で通勤できるにもかかわらず、よりお金がかかる自家用車で通勤している場合、合理的な理由がなければ非課税限度額に達していなくても交通費に課税される可能性があります。

グリーン車の利用も、経済的かつ合理的な通勤手段とは見なされません。

参考:通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁

車・バイクなどを利用した場合

車やバイクで通勤する場合、交通費の非課税限度額は通勤距離により異なります。通勤距離ごとの非課税限度額は以下の通りです。

  • 片道55km以上:3万1,600円
  • 片道45km以上55km未満:2万8,000円
  • 片道35km以上45km未満:2万4,400円
  • 片道25km以上35km未満:1万8,700円
  • 片道15km以上25km未満:1万2,900円
  • 片道10km以上15km未満:7,100円
  • 片道2km以上10km未満:4,200円
  • 片道2km未満:全額課税

2km未満の通勤距離は徒歩が可能な距離と見なされるため、交通費が発生している場合は全額が課税対象となります。

参考:通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁

公共交通機関と車などを併用した場合

複数の交通手段を併用して会社に通っている人もいるでしょう。例えば、自家用車で自宅から駅まで行き、駅からは電車に乗るといったケースが該当します。

公共交通機関と車などを併用した場合は、それぞれの交通手段にかかる月額費用の合計が15万円以下なら非課税です。

なお、徒歩通勤者に交通費が支給される場合は、交通費の全額が課税対象となります。また自転車通勤は、自転車の購入費用が発生していると判断されるため、非課税の対象です。

参考:通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁

社会保険と税法上の扶養の違い

説明する人

(出典) pixta.jp

扶養の種類は社会保険の扶養と税法上の扶養に分けられます。それぞれの具体的な内容を理解し、フリーランスの扶養についても押さえておきましょう。

社会保険の扶養

社会保険の扶養とは、家計を主に支える人(扶養者)が加入する社会保険の被扶養者になることです。扶養者の配偶者や、扶養者の3親等内の親族が該当します。

配偶者・子・親などは、扶養者と同居していなくても扶養に入ることが可能です。一方3親等内でも、同居していなければ扶養に入れないケースもあります。

被扶養者の年齢制限に下限はありませんが、上限は75歳未満です。75歳以上になると後期高齢者医療保険制度に加入する必要があります。

税法上の扶養

税法上の扶養とは、家族の生計を主に担っている人(扶養者)が、配偶者・子・親など収入の少ない家族を経済的に支えることです。

主に配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)が扶養の対象になります。対象となる年の12月31日時点で、16歳以上になっていることが条件です。

かつて扶養控除には年齢制限が設けられていませんでした。しかし、児童手当との重複が過剰な対応であるとされ、現在は児童手当の支給期限がボーダーラインになっています。

フリーランスの場合

フリーランスが税法上の扶養に入れるのは、年間の所得が48万円以下もしくは133万円以下のケースです。

税法上の扶養と同じく社会保険の扶養の場合も、必要経費を差し引いた所得額で考えます。ただし、一部の保険者では経費を差し引けないケースがあります。

経費を差し引ける場合でも、経費に含められるものの範囲が限られているでしょう。例えば、一般的に経費として考えられる交通費・広告費・交際費などを経費にできないのです。

保険に関しては、原則として国民健康保険に入ると考えられているため、保険者ごとに条件が細かく分かれています。一般的な106万や130万の壁だけに気を付ければよいわけではない点に注意しましょう。

130万の壁を正しく把握し希望の働き方を

通勤中の女性

(出典) pixta.jp

130万の壁には交通費が含まれます。扶養内で働き続けたい場合は、交通費を含めた年収が130万円以上にならないように注意が必要です。

106万円の壁や103万円の壁には、原則として交通費は含まれません。社会保険の扶養と税法上の扶養の違いも理解し、自分の希望に合った働き方を選択しましょう。

 

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