親の扶養に入りながらバイトをしている場合、収入を増やそうと考えるなら社会保険の壁を意識する必要があります。社会保険に加入する条件やメリット・デメリットを理解し、これから先の働き方について考える材料にしましょう。
バイトでも社会保険に入れる?
社会保険の加入要件は、20歳以上でフルタイムの3/4以上働いていることです。ただ、その労働時間に満たないバイト・パートでも、一定の条件を満たした場合は社会保険に加入します。
条件を満たせば加入することになる
社会保険への加入条件は以下の5つです。全ての条件を満たした場合、自動的に社会保険へ加入することになります。
- 所定労働時間が週20時間以上
- 月額賃金が8万8,000円(年収106万円)以上
- 2カ月を超える雇用期間が見込まれる
- 従業員数が101人以上の企業で働いている(2024年10月以降は51人以上)
- 学生ではない
社会保険の適用要件は、以前に比べて拡大しています。加入するかどうか自分で選べるわけではなく、上記の条件を全て満たせばバイトでも加入することになる点に注意しましょう。
参考:パート・アルバイトのみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省
社会保険の基本
企業で働く従業員が加入する社会保険は、以下の5つです。
- 健康保険:医療費負担が3割になる
- 厚生年金:老後にもらえる国民年金に上乗せされる
- 雇用保険:失業中に失業手当を受けられる
- 労災保険:仕事中のケガや病気に対して給付を受けられる
- 介護保険:40歳になると自動的に加入する
このうち、労災保険は会社の100%負担です。そのほかの保険料は会社と従業員で支払うことになります。
会社の社会保険に加入すると、健康保険には会社を通して加入することになります。
バイトで社会保険に入る?入らない?
社会保険の加入・未加入は条件を満たしているかどうかで決まるため、入れない理由があるなら働き方をコントロールするしかありません。加入するのがおすすめの人、慎重に考えた方がよい人の違いを考慮して、シフトを決めましょう。
加入・加入しないは働き方で決まる
一定以上の収入を得ていたり、諸条件を満たした働き方をしていたりする場合、社会保険への加入は義務です。任意で入らない選択肢はなく、条件によって加入することになります。
社会保険への加入を自分で決めたい場合は、主にシフトに入る時間をコントロールするしかないでしょう。労働時間や月額賃金を抑えれば、加入条件を満たさずに働くことが可能です。
参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構
加入がおすすめな人
とにかく収入を増やしたい人は、社会保険に加入するのがおすすめです。社会保険の加入条件には月額賃金や年収の条件がありますが、加入するラインを超えれば給与が増えることを気にする必要がありません。
収入を増やしていく過程で社会保険加入のボーダーラインを超えると、社会保険料が引かれる分だけ一時的に年収が減ることになります。しかし、手取り額が元に戻るまで収入を増やせば、後は収入が増えるにつれて手取りも増えていく一方です。
将来を見越して安定した働き方をしたい人も、社会保険に加入するのが適しています。厚生年金に加入すれば、国民年金のみ加入している場合より、老後にもらえる年金額が大幅に増えるためです。
慎重に考えた方がよい人
本人の所得税が発生しない年収103万円以下で親の扶養に入って働いている場合、20歳以上でも、基本的には国民年金のほかに社会保険料を支払う義務がありません。
従業員101人以上の会社で2カ月を超えて働く場合でも、103万円以下なら月額賃金8万8,000円(年収換算で106万円)の要件を満たさないので、バイト先の社会保険への加入・保険料の支払いが不要です。
しかし、年収103万円を超えると所得税の負担義務が発生します。さらに年収106万円以上になると、社会保険料を支払う可能性も出てきます。
現状103万円以内に収まっていて、今後も税制上・社会保険上の扶養に入ったままでいたいのなら、働き方を調整した方がよいかもしれません。
働ける時間に制限がある、バイト先のシフトを増やせないといった事情があって社会保険料の分を取り返せそうにないケースでも、加入しない方が金額的には損をしないでしょう。
社会保険加入のメリット
社会保険への加入に頭を悩ませているなら、加入することによって得られるメリットを知っておきましょう。収入の上限を気にせず働けること以外のメリットを紹介します。
個人で加入するより負担が少ない
企業の社会保険に加入すれば、個人で加入するより保険料の負担が少なくなります。自分だけでなく企業も保険料を負担してくれるためです。
個人で加入する国民年金や国民健康保険の保険料は全額自己負担です。しかし、企業の社会保険に入ると健康保険料や厚生年金保険料は企業と折半になり、雇用保険料も一部を企業が負担します。
所得税を源泉徴収される場合は、毎月の給与から社会保険料と併せて源泉所得税も差し引かれます。所得税は社会保険料とは異なり全額自己負担です。
参考:社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入手続はお済みですか? | 厚生労働省
将来に受け取る年金が増える
厚生年金に加入すると、国民年金より老後に受け取る年金額が増えます。厚生年金は国民年金に上乗せされた年金だからです。
個人で国民年金に加入している場合は、国民年金の部分しかもらえません。老後に受け取る年金額を増やしたい場合は、私的年金に加入したり、国民年金の保険料を増額したりするしか方法がないのです。
しかし、厚生年金に加入すれば上乗せ分が加算され、老後に受け取れる年金額が国民年金に比べて大幅にアップします。老後の生活を不安に感じる人は、厚生年金に加入するのがおすすめです。
参考:社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入手続はお済みですか? | 厚生労働省
病気など万が一の保障が手厚い
社会保険加入のメリットとしては、いざというときの保障が手厚くなることも挙げられます。ケガや出産を理由に仕事を休まなければならなくなったときに、傷病手当金や出産手当金として賃金の約2/3の給付を受けられるのです。
傷病手当金と出産手当金は、国民健康保険にはない制度です。仕事を休んでいても給与額の約2/3を給付の形でもらえるのは、大きなメリットといえるでしょう。
また、厚生年金に加入していると、障害を負った場合に受け取れる障害年金の金額がアップします。遺族年金の給付が手厚くなることもポイントです。いざというときに備えたい人は、社会保険に加入することで大きなメリットを感じられるでしょう。
参考:社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入手続はお済みですか? | 厚生労働省
失業時の手当がある
会社の社会保険に加入する場合は、雇用保険にも加入することになるでしょう。雇用保険に加入していると、失業時に手続きをすることで失業保険を受給できます。
失業保険は失業者の生活を支えて、再就職を促進するために給付される手当です。給付開始時期・給付日数・給付金額は、退職理由や前職の給与額などにより異なります。
失業手当を全額受け取る前に再就職が決まった場合も、一定の条件を満たせば再就職手当として給付残日数分の一部を受け取ることが可能です。
失業保険や再就職手当を受け取るためには、雇用保険に加入していなければなりません。雇用保険への加入にも条件があるため、社会保険に加入する際は雇用保険への加入についても確認しておきましょう。
参考:ハローワークインターネットサービス - 基本手当について
社会保険加入のデメリット
バイトの収入を増やして社会保険に加入すると、手取り額が減ってしまいます。具体的な仕組みや対処法を理解しましょう。
手取り額が少なくなる
社会保険に加入する場合、毎月の給与から健康保険料や厚生年金保険料が天引きされます。銀行口座に振り込まれる時点で、既に手取り額が少なくなっているのです。
国民年金や国民健康保険より負担額が少ないとはいえ、最初から手取り額が減るため、デメリットに感じる人もいるでしょう。
ただし、天引きされた保険料は社会保険に役立てられ、将来的には自分にもメリットとして返ってきます。考え方を変え、決して無駄な支払いではないと意識することが大切です。
バイトの収入を増やしていけば、減った分の手取り額も取り返せます。バイト先のシフトを調整し、自分に合った働き方を選ぶとよいでしょう。
バイトの社会保険に関するQ&A
バイトの社会保険についての疑問とその回答を紹介します。一通り目を通し、社会保険への加入を検討する際の参考にしましょう。
バイトを掛け持ちしている場合は?
バイトを掛け持ちしている場合の社会保険については、それぞれのバイト先で社会保険の加入条件を満たしているかどうかで変わります。
両方満たしている場合は両方の社会保険に加入、片方だけの場合は満たしている方の会社で社会保険に加入、両方満たしていない場合はどちらにも加入できません。
なお、雇用保険に関しては、両方のバイト先で加入条件を満たしていても加入できるのは片方のみです。
参考:複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き|日本年金機構
社会保険に加入しているか調べる方法は?
自分がバイト先の社会保険に加入しているか知りたい場合は、給与明細を見てみましょう。控除欄に金額が記載されていれば、健康保険料や厚生年金保険料が控除されているため、社会保険に加入しています。
保険証の色でも確認が可能です。社会保険の保険証は一般的に青色、国民健康保険の保険証はピンクまたはグレーになっています。
保険証は会社から渡されるのが一般的です。渡された覚えがあるなら、社会保険に加入していると判断できます。
加入時に必要な手続きはある?
社会保険への加入手続き自体は会社が行うため、基本的に自分で行うことはありません。会社から指示された必要書類を会社に提出する程度です。
今まで親や配偶者の扶養に入っていた場合は、バイト先の社会保険に加入する際、親や配偶者の職場に申し出る必要があります。
国民健康保険に加入していた場合は、バイト先の社会保険に加入しても、国民健康保険は自動で切り替わりません。会社から保険証を受け取ったら、国民健康保険の資格喪失の届け出を自分でする必要があります。
社会保険を理解して状況に合ったシフト調整を
バイトでも一定の条件を満たせば社会保険に加入することになります。加入するかどうかは自分の意思で選べるわけではなく、働き方で決まります。
社会保険に加入するメリット・デメリットを理解し、状況に合わせてバイト先のシフトを調整するとよいでしょう。
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