正社員とパートの違いは?待遇の差やメリット・デメリットを解説

正社員とパートにはさまざまな違いがあり、どちらにもメリットやデメリットが存在します。自分に合った働き方を考えるためには、それぞれの違いについて理解することが大切です。正社員とパートの待遇差や、メリット・デメリットについて解説します。

正社員とパートの違いは?

握手をする二人の社員

(出典) pixta.jp

正社員とパートには、雇用形態によって正規雇用と非正規雇用という違いがあり、待遇などにおいてもさまざまな違いが生じます。具体的に見ていきましょう。

契約期間

正社員とパートの違いの1つは、雇用契約の期間です。正社員には、前提として契約期間がありません。一方、パートの場合、雇用契約に期間を定めない無期雇用のほかに、期間が定められている有期雇用があります。

契約期間は企業によって1年、3年など異なりますが、労働基準法では有期雇用の契約期間の上限は3年と定められています。

厚生労働省の「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況」を見ると、有期雇用パートタイムを雇用しているのは、企業全体の27.1%でした。

参考:
労働基準法 第十四条 | e-Gov法令検索
令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況

勤務日数・時間

正社員とパートは、所定の勤務日数や労働時間にも違いがあります。労働基準法では、従業員に1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならないと定められています。

いわゆる36協定を結んでいる場合を除き、原則としてこの時間を超えた勤務はできません。パートも同様に、この時間内であれば何時間でも勤務することは可能ですが、一般的に正社員より勤務日数や労働時間が少ないことがほとんどです。

しかし、企業によってはパートでもフルタイムで働くケースもあるため、時間だけでパートかどうかは判断できません。

参考:
労働基準法 第三十二条・第三十六条| e-Gov法令検索
36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省

給与形態

正社員とパートでは給与形態にも違いがあります。正社員の給与は月給や年俸制など、固定給となることがほとんどです。一方、パートの場合は、時給によって給与が計算されます。

どちらにも地域別の最低賃金が適用されますが、時間当たりの賃金は、正社員よりパートの方が低く設定されているのが一般的です。

また、正社員に賞与や昇給の機会がある企業の中には、パートにも賞与が支払われることもありますが、支給されないケースの方が多い傾向にあります。昇給についても、時給の大幅アップは見込めないことがほとんどでしょう。

しかし、2020年4月に「パートタイム・有期雇用労働法」が施行され、「同一労働同一賃金」という考え方が導入されました。翌2021年には中小企業にも適用が拡大されています。

参考:同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省

社会保険・雇用保険

正社員は、健康保険や厚生年金などの社会保険や雇用保険への加入が前提です。しかしパートの場合、毎月の収入や勤務時間によって加入するかどうかが変わります。

一定の基準を満たすと、パートでも会社の社会保険へ加入することになります。

【パート社員の社会保険加入基準】

  • フルタイムで働く人
  • 1週間または1カ月の所定労働日数がフルタイムの4分の3以上ある人
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上・月額賃金8万8,000円以上・勤務期間が1年以上見込まれる人
  • 学生ではない人
  • 従業員が101人以上の企業で働く人

雇用保険についても、一定の基準を満たすと加入が義務付けられます。

【パート社員の雇用保険加入基準】

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
  • 31日以上引き続き雇用されると見込まれること(短期契約を更新した場合も含む)

参考:
パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
アルバイトやパートタイム労働者は雇用保険の被保険者となりますか | 北海道ハローワーク

福利厚生

福利厚生には、法律で義務付けられている法定福利厚生と、企業が独自に定めている法定外福利厚生の2種類があります。

法定福利厚生は健康保険や厚生年金などの社会保険のことです。一方、法定外福利厚生には、保養所の利用や住宅手当などの各種手当がありますが、パートが対象者となるかどうかは企業によって異なります。

また、有給休暇や育児休暇などの法定休暇に関しては、一定の基準を満たすことでパートも取得の対象となります。

なお、産前・産後の休暇や育児休暇などは、雇用形態にかかわらず全ての人に与えられた権利なので、パートでも無条件で取得可能です。

参考:労働基準法 第三十九条・第六十五条 | e-Gov法令検索

仕事内容

正社員とパートの仕事内容を明確に定義した法律はないため、原則としてパートだからこの仕事をしなければならないということはありません。

パートでも正社員と分け隔てなく仕事を任されている人もいるでしょう。しかし、実際には、パートは正社員のサポートのような業務を任されるのが一般的です。

例えば、スーパーや飲食店などの接客業では、配膳やレジ打ちなどを主にパートが担当し、売り上げ管理やシフト調整などは正社員の仕事となることがほとんどです。

事務系の場合も、パートは電話応対やデータ入力など、比較的負担の軽い業務や単純作業などを任されることが多い傾向にあります。

正社員として働くメリット

働く女性社員

(出典) pixta.jp

正社員として働くことを選んだ場合、どのようなメリットがあるでしょうか。具体的に2つ挙げて説明します。

収入が安定している

正社員として働くメリットの代表的なものは、安定した収入が得られることです。給与形態は企業によって異なるものの、ほとんどの場合が月給や年俸制などの固定給制を取っています。

固定給制の場合、時給制とは異なり、勤務日数の変化によって基本給が変わることはありません。毎月の収入額が安定すれば、キャッシュフローなどの計画も立てやすくなり、安定した生活を送れるでしょう。

また、正社員のみが賞与・昇給や、仕事の成果によるインセンティブの支給対象となる企業もあります。

福利厚生の範囲が広い

福利厚生の範囲が広いのも正社員のメリットといえます。正社員は、社会保険などの法定福利への加入が前提となっています。保険料は企業と従業員の両者で納めるため、少ない負担で保障を受けられるのが魅力です。

また、正社員は法定外福利厚生の対象にもなるため、企業によっては、家賃補助・住宅ローンの補助など、さまざまな手当が支給されることもあります。

退職金制度を導入している企業の場合、会社を辞める際に退職金を受け取れるのも正社員ならではのメリットといえます。

正社員として働くデメリット

働く女性

(出典) pixta.jp

正社員には、メリットだけでなくデメリットと感じることも存在します。どのようなことがデメリットとして考えられるのか見てみましょう。

異動や転勤の可能性がある

正社員になると、自分の希望とは別に、異動や転勤などを命じられる可能性があります。異動や転勤となる理由・タイミングや、異動先などは、企業によってさまざまです。

社内異動や現在の勤務地と同一地域への転勤だけでなく、引っ越しを伴わなければならない転勤を命じられるケースも少なくありません。海外に拠点がある企業の場合、海外転勤となることもあるでしょう。

会社から転勤などを命じられると、基本的には断れないのが一般的です。異動や転勤の範囲によっては、家族にも影響が及びます。

仕事の責任が重くなる

正社員とパートでは、仕事の内容に違いはないものの、正社員の方が責任の重い仕事を任されているのが現状です。

雇用年数に期限のない正社員と、期限が定められているパートでは、与えられている役割が異なる企業も少なくありません。

長期雇用となる正社員の方が責任の重い仕事を任される傾向にあるのは、ある意味必然ともいえるでしょう。

勤務年数が長くなると、裁量が大きくなったり、責任のある立場に任命されたりすることもあります。責任が大きくなることで仕事へのやりがいを感じられる人もいますが、人によってはプレッシャーと感じてしまうかもしれません。

パートとして働くメリット

働く女性たち

(出典) pixta.jp

パートにはどのようなメリットがあるでしょうか。パートとして働くメリットを2つ紹介します。

プライベートと仕事のバランスが取りやすい

パートで働く場合、1日4時間・週2~3日など、正社員に比べて勤務時間が短いため、プライベートと仕事のバランスを取りやすいのがメリットです。

短時間労働になるので負担も少なく、育児中や介護中の人でも働きやすいというメリットもあります。子どもの体調不良など、突発的なことが起きたときも、正社員に比べて融通を聞いてもらいやすい企業もあるでしょう。

また、自分の都合に合わせて勤務時間や日数を調整しやすいので、子どもの学校の行事やプライベートの予定などを優先できます。

未経験でも就ける仕事が多い

パートを募集している企業は多く、仕事を見つけやすいのもメリットです。結婚・出産・介護など、ライフステージの変化によってブランクがある人でも採用されやすく、未経験者可の求人も数多くあります。

自宅の近くで働きたいなど、希望の条件に合う仕事も、正社員よりパートの方が見つけやすいでしょう。

また、正社員では採用されにくい大手企業などでも、パートでなら募集していることも少なくありません。正社員登用制度がある企業ならば、パートとして勤務し、経験を積んで正社員を目指すことも可能です。

パートとして働くデメリット

電卓と女性の手元

(出典) pixta.jp

パートは、勤務日数や時間などの面で働きやすいメリットがある一方で、正社員と比べて収入面などに対してはデメリットがあるといえます。パートとして働くデメリットを2つ挙げて解説します。

収入が不安定になりやすい

パートで働くと収入が安定しにくいというデメリットがあります。基本的に、パートの給与形態は時給制になることがほとんどなので、毎月決まった収入が支給されるわけではありません。

シフトの入れ方によって月内の勤務日数が変われば、収入も変動します。賞与が支給されなかったり、昇給の機会も少なかったりなど、長期的に見ても大きな収入アップは見込みにくいと考えられます。

また、退職金制度のある企業でも、パートが退職時に退職金をもらえることはほとんどありません。

社会的な信用度が低い傾向にある

パートは、収入が安定せず社会保険などの福利厚生がないことも多いため、社会的信用度が低いと見なされる場面も少なくありません。住宅ローンなどの審査に通りにくいケースもあるようです。

クレジットカードを含めたローンの審査で見られるのは、返済能力の高さといわれています。毎月決まった収入がある正社員に比べると、収入の額が変動しがちで長期的な雇用を約束されていないパートは、返済能力がないと判断されてしまいかねません。

これから住宅や車のローンを組もうと考えている人は、パートが審査に通る難易度は高くなることを知っておきましょう。

パートタイム・有期雇用労働法とは

就業規則

(出典) pixta.jp

パートタイム・有期雇用労働法とは、同じ企業で働く正規労働者と非正規労働者間の不合理な待遇差をなくし、どのような雇用形態であっても労働者が納得して働き続けられる「同一労働同一賃金」の実現を目的として定められた法律です。

2021年4月から、中小企業も含め、全ての企業に対して施行されています。1週間の所定労働時間が正社員より短いパートタイム労働者や、有期雇用労働者が対象です。

法改正によってどのような点が変わったのか、3つのポイントについて解説します。

参考:2021年4月1日からパートタイム・有期雇用労働法が中小企業も適用に。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

正社員とパート間の不合理な待遇差を禁止

同じ社内で勤務する正社員とパートの間に、不合理な待遇差が生じることが禁止されました。

厚生労働省によるガイドラインでは、基本給・昇給・賞与・各種手当などの支給や、福利厚生施設の利用・慶弔休暇・教育訓練などにおいて、不合理な待遇差を禁止しています。

例えば、社員食堂がある企業では、正社員だけでなくパートやアルバイトにも利用する機会を与えなければなりません。食堂が狭いからなどの理由で正社員だけに利用させた場合、不当な待遇差と見なされます。

労働者の待遇に関する説明義務の強化

もしも、正社員とパートの間で待遇差があった場合、その内容や理由についてパート社員本人が事業主に説明を求められるようになりました。

説明を求められた事業主には、不合理な差ではないことを説明する義務があります。このとき「正社員とパートでは業務上の役割が違う」など、説明の内容が漠然としている場合、合理的な理由とはなりません。

また、説明を求めたパート社員に対し、解雇や減給などの不利益な処遇を与えることは禁止されています。

不合理な待遇差によるトラブルを行政が解決援助

正社員とパート間の不合理な待遇差によって、労働者と事業主との間でトラブルが生じたときは、行政による裁判外紛争解決手続き(行政ADR)を利用できるようになりました。

行政ADRとは、労使間のトラブルを裁判以外の方法で解決するための手続きであり、迅速、かつ簡易に解決できる手段です。労働者と事業主の一方、または双方の申し出があれば、都道府県労働局において無料・非公開で手続きできます。

正社員とパートの違いを知って自分に合う働き方を決めよう

オフィス

(出典) pixta.jp

正社員とパートの間には、雇用形態だけでなく、給与形態や福利厚生の範囲などにさまざまな違いがあります。

パートタイム・有期雇用労働法の施行によって、不当な格差はなくなる動きがあるとはいえ、福利厚生などで同一の待遇を得るには、一定の基準を満たす必要があります。

どちらの働き方がよいかは個人のライフスタイルなどによって変わるため、それぞれの違いをしっかり理解しておくことが大切です。正社員とパートの、メリット・デメリットも比較して、自分に合った働き方を決めましょう。

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