バイトで社会保険に入りたくないときは、シフトの調整が必要です。社会保険の主な加入条件や年収の目安を紹介します。社会保険に入らないメリット・デメリットや注意点、バイト探しのポイントも確認しましょう。
バイトで社会保険に入りたくないときの対処法
社会保険は加入要件を満たすと、入りたくなくても加入しなければなりません。バイト先の社会保険に入りたくない場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?
なお、この記事では、健康保険・厚生年金保険・介護保険を「社会保険」、雇用保険・労災保険を「労働保険」として解説します。
要件を満たさないようシフトを調整する
バイトで社会保険に入りたくないときは、加入義務が生まれないようシフトを調整するのが基本です。会社の規模によって異なるため、バイト先がどの要件に該当するか確認した上でシフトの調整を検討しましょう。
以下の条件をどちらも満たす場合、会社の規模や立場を問わず、社会保険加入義務が発生します。
- 週所定労働時間および月所定労働日数がフルタイムの3/4以上
- 雇用見込みが2カ月を超える
社会保険の「特定適用事業所」に該当する場合は、加入要件が異なるため注意しましょう。2023年5月時点では従業員101人以上の企業、2024年10月からは51人以上の企業が「特定適用事業所」に該当します。
学生以外で「週の所定労働時間が20時間以上」「月額賃金が8万8,000円以上」「雇用見込みが2カ月を超える」の要件を全て満たすと、労働時間・日数がフルタイムの3/4に満たないバイトでも、社会保険に加入しなければなりません。
参考:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
例外的なケースに注意
以下の3つの要件を満たす場合、100人以下の企業や学生であっても社会保険の加入が必要な例外ケースがあります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8万8,000円以上
- 雇用見込みが2カ月を超える
主なケースは、「夜間学生」「休学中の学生」です。本来学生は労働時間がフルタイムの3/4以上でなければ、加入義務は発生しません。しかし、夜間学生や休学中の人は「学生」の定義に該当しないため、加入対象になります。
2023年5月時点で100人以下の企業は社会保険の適用が任意ですが、労使の同意があれば101人以上の企業と同じ扱いにできます。
小規模な会社でも任意で社会保険を適用しているバイト先であれば、労働時間や月額賃金・雇用期間によって、加入義務が発生することを覚えておきましょう。
社会保険に入らないメリットとデメリット
社会保険には、加入しないメリットとデメリットがあります。現在の手取り収入や将来を考えた上で、調整するかどうかを検討しましょう。特に、社会保険に入りたくない理由がはっきりしていない場合は、よい面と悪い面を理解して決めるのがポイントです。
手取り収入が多くなる
社会保険に入ると、健康保険料と厚生年金保険料が収入から引かれます。40歳以上の場合は介護保険料も差し引かれます。社会保険に入らないようシフトを調整すると、その分手取り収入が多くなるのがメリットです。
社会保険は、加入人数が多くても引かれる金額が変わりません。親や配偶者の保険に入っているのであれば、扶養内で働くと家族全体の手取りも増えるでしょう。
社会保険料は収入の15%が目安です。月10万円のバイトなら月1万5,000円程度が社会保険料として引かます。手取りを多くしたいときは、加入要件を満たさないように調整しましょう。
参考:
厚生年金保険料額表|日本年金機構
令和4年度保険料額表(令和4年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会
老後に受け取れる年金が減ってしまう
日本には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は「基礎年金」、厚生年金は2階建ての上乗せ部分です。社会保険に加入すると、支払った厚生年金の金額に応じて上乗せされた年金を受け取れます。
扶養内で働く人は扶養者の社会保険に加入していますが、自分で厚生年金を支払ったことにはならず、老後に厚生年金を受給できません。自分で国民年金を支払っている人も、将来受け取れる年金は基礎年金のみです。
社会保険に入らないようシフトを調整すると、老後に受け取れる年金が減ってしまいます。厚生年金に加入している期間が長いほど受け取れる金額が多くなるため、将来の年金を増やしたいときは社会保険に加入できる働き方を目指しましょう。
働けないときの保障が受けられない
社会保険には、「健康保険」が含まれます。会社の健康保険には傷病手当金や出産手当金などの保障がありますが、社会保険に入っていないと申請できません。
何かあって働けないときに健康保険から出る手当を活用したいのであれば、社会保険に入る方がよいでしょう。
なお、働けなくなったときの主な手当である「失業保険」は、雇用保険に加入していると受給できます。雇用保険の加入要件は、雇用見込みが31日以上かつ、所定労働時間が週20時間以上の従業員です。
参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか! |厚生労働省
扶養内でバイトをするときの注意点
親族の扶養に入っているときは、社会保険以外にも注意点があります。扶養内でバイトをするときに、気を付けたいポイントを見ていきましょう。
年収103万円以下に収めるのがベスト
特定適用事業所では、賃金が月額8万8,000円以上になると社会保険の加入要件を満たす可能性があります。年収にすると約106万円です。加入要件を満たす年収の目安として、「106万の壁」と呼ばれます。
親族の扶養に入っている場合は、さらにシフトを減らして年収103万円以下に収める方がよいでしょう。
103万円以下なら扶養する人が「配偶者控除」や「扶養控除(一般の控除対象扶養親族の場合)」を適用できます。103万円以下の場合、所得税の計算で年収から差し引ける「給与所得控除(55万円)」と「基礎控除(48万円)」を引くと課税所得が0円以下になるので、自分で所得税を払う必要もありません。
103万円を超えてくると、あと数日働くだけでも社会保険の加入対象にもなる可能性が出てきます。シフト調整が難しくなり、うっかり加入要件を満たしてしまうリスクもあるでしょう。
親や配偶者が家族手当を受け取っていると、103万円以上になったとき、扶養親族の対象から外れる可能性もあります。余裕を持ってやや少なめに収めるのがおすすめです。
参考:家族と税|国税庁
106万円未満なら社会保険の扶養から外れない
社会保険上の扶養から外れる年収の目安は、130万円です。例えば協会けんぽでは、60歳未満の場合は「年収が130万円未満かつ被保険者の年収の1/2未満」を扶養の範囲としています。
短時間労働者の社会保険加入要件「106万円の壁」を超えないよう働くのであれば、社会保険上の扶養から外れることはありません。
親や配偶者の社会保険に入っていて自分で社会保険に入りたくないのであれば、106万円の壁を超えないようシフト調整をしておく方が安心でしょう。
参考:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
社会保険に入らなくてよいバイトの探し方
社会保険に入らなくてよいバイトの求人は、多数あります。労働条件が合うバイトを見つけるには、仕事の探し方が重要です。バイト探しのコツとポイントを紹介します。
求人サイトをフル活用する
社会保険に入りたくないときは、シフトや勤務条件を細かく調べてから求人に応募しなければなりません。求人サイトを使うと、時給・週のシフト・雇用期間など細かい条件で仕事探しが可能です。
「スタンバイ」では扶養内で働けるバイト求人も多く、さまざまな選択肢が見つかります。24時間いつでも検索ができる求人サイトは、学生や主婦など、仕事以外のプライベートが忙しい人にもおすすめです。
希望エリアや職種で絞り込み、条件に合う求人を手早く見つけましょう。
面接で社会保険について確認する
社会保険に入らずバイトをしたいときは、応募や面接の際に社会保険に加入しない範囲で働きたいことをはっきり伝えましょう。
扶養範囲内で働きたい場合は、社会保険の加入要件よりも月収がやや低い範囲で雇用契約を結ぶケースもあります。要件を満たす月と満たさない月が混ざると、判断が難しくなるためです。
面接時にしっかりと確認しておけば、勤務先で社会保険に入らなくて済むようシフトを調整してもらえます。扶養内で働くことが難しい労働条件であれば、別のバイトを探すこともできるでしょう。
労働条件の希望は、お互いに把握しておかなければなりません。恐縮せず、社会保険に入りたくない理由を伝えましょう。
社会保険の加入は働き方で調整できる
加入要件を満たさないようシフト調整すれば、社会保険に入らずバイトができます。会社の規模によって要件が異なるため、よく分からない場合はバイト先に確認するのが確実です。
これから扶養内で働くことを検討しているなら、労働時間や賃金が税制上・社会保険上のラインを超えない求人を探しましょう。面接の際に社会保険に加入できないことを伝えるのも大切です。
理由が明確でない場合は、加入のメリットも理解した上で加入・未加入決めましょう。