介護業界に将来性はある?現状や可能性を知って転職を検討しよう

介護業界は人手不足が続いているといわれていますが、未経験でも就職できる可能性はあるのでしょうか。労働条件や離職率なども把握して、転職活動の参考にしましょう。介護業界の現状や将来性、キャリアアップの方法などを紹介します。

介護業界の現状とは

介護士の男性

(出典) pixta.jp

介護業界が人手不足という情報は、ニュースなどでよく見聞きします。どの程度不足しているのか、現状を見ていきましょう。

人手不足が深刻化

介護業界の人手不足は、年々深刻化しているのが現状です。人手不足の主な原因としては、日本の少子高齢化が指摘されています。

内閣府が発表している「高齢社会白書」によると、1990年には12.1%だった高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)は、2021年に28.9%に達しました。

一方で15~64歳の人口が総人口に占める割合は、1990年の69.5%から59.4%まで減っています。高齢者が増えれば、介護職への需要も高まるのは自然な流れです。

厚生労働省がまとめた介護職員の必要数に関する推計では、2019年度の介護職員数211万人に対して、2023年度は約233万人、2040年度には約280万人が必要になるとされています。

参考:
高齢化の現状と将来像|令和4年版高齢社会白書(全体版)|内閣府
第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について|厚生労働省

地域によって差異がある

人手不足の深刻度は、地域によって差があります。厚生労働省が発表した都道府県別の介護職の有効求人倍率によると、全国平均の3.97倍に対して、東京都は6.97倍、愛知県が6.49倍、大阪府が5.01倍といずれも高めです。

埼玉県・千葉県・神奈川県でも4倍を超えており、北海道や東北、九州など地方との開きが見られます。

なお産業全体の有効求人倍率の全国平均は、1.46倍です。都市部ほどではありませんが、地方でも2~3倍となっているため、介護業界の人手不足はやはり深刻といえるでしょう。

参考:介護人材の処遇改善について|P7「地域別の状況」|厚生労働省

なぜ介護業界は人手不足なのか

悩む男性と女性

(出典) pixta.jp

介護職は目指す人が少ない上に、辞めてしまう人も多いのが現状です。少子高齢化だけではない、人手不足の理由を見ていきましょう。

厳しい労働条件

介護業界は他の業界に比べて、労働条件が良好でないと思われがちです。体力的にも精神的にも「きつい」上に、「汚い」「危険」な仕事も避けられず、いわゆる「3K」のイメージが強いといえるでしょう。

介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査」でも、事業所の職員採用が困難な理由として「他産業に比べて、労働条件等が良くない」が2位に入っています。

労働条件の厳しさは、介護職を目指す人を減少させるだけでなく、現役職員の離職にもつながっています。家事や子育てとの両立が難しく、結婚・出産を機に辞める人も多いようです。

参考:介護労働の現状について|P7「介護人材の不足感と不足理由」|公益財団法人 介護労働安定センター 

賃金が低め

労働条件が厳しい職種でも、それなりの賃金がもらえれば目指す人も増えるでしょう。しかし介護職の賃金は、他の産業に比べても低めです。2021年の給与所得者の平均給与は年443万円ですが、介護職の平均年収は2022年時点で約363万円です。

介護労働実態調査でも、男女ともに介護職を辞めた理由として「収入が少なかったため」が5位に入っています。

介護職の賃金が低い理由は、介護保険制度にあります。介護保険内のサービスは報酬単価が決まっているため事業者が売上を伸ばすことが難しく、職員の賃金も上がりにくいのです。

介護職の待遇改善に向けて国も対策を講じてはいるものの、いまだ十分とはいえない状況です。

参考:
介護労働の現状について|P17「男女で異なるやめた理由」|公益財団法人 介護労働安定センター
賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) 一般労働者 職種|e-Stat
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

将来設計を構築しづらい

介護職を辞める理由の1つに、将来設計を構築しづらい現状が挙げられます。介護労働実態調査においても、「自分の将来の見込みが立たなかったため」というのが男性の離職理由の1位です。

仕事を続けるなら、いずれは管理職へと昇進し、収入・モチベーションともに高めたいと考える人は多いでしょう。しかし介護施設では、事業所ごとに職位の人数に制限があるため、昇進の見通しを立てにくいのが現状です。

将来への見通しが不透明な職場で長く働き続けることに不安を覚えてしまう現実が、離職を後押ししているといえるでしょう。

参考:介護労働の現状について|P17「男女で異なるやめた理由」|公益財団法人 介護労働安定センター

介護業界の課題

高齢者の手を取る介護士

(出典) pixta.jp

介護業界が人材不足に陥っている背景には、業界ならではの課題が存在します。新規採用と継続雇用に関わる課題について、他の業界と比較してみましょう。

採用が難しい

介護業界は近年、採用が難しくなっています。介護労働実態調査では、従業員が不足していると回答した事業所は全体の65%を超えることも分かりました。不足している理由は「採用が困難である」が90.0%と圧倒的です。

1年間の入職者数を労働者数で割った「採用率」の推移を見ると、2017年の介護業界の採用率は17.8%で、2007年の27.4%から大きく下がっています。産業全体と比べるとやや高いものの、以前より人が集まりにくい状況であることが分かります。

また労働条件の厳しさや賃金の低さによって業界自体に人が集まらないことや、同業他社との人材獲得競争が激化していることが、採用を困難にしている理由として挙げられています。

参考:
介護人材の処遇改善について|P9「介護職員の採用率・離職率の状況」|厚生労働省
介護労働の現状について|P7「介護人材の不足感と不足理由」|公益財団法人 介護労働安定センター

離職率が高い

離職率が高いことも、介護業界の課題です。1年間の離職者数を労働者数で割った「離職率」は、2017年のデータで介護業界16.2%、業界全体が14.9%となっています。

産業全体と比較すると正社員の離職率が高いことも分かっており、採用できたとしてもなかなか定着しないのが実情です。

前述の通り、将来設計をしにくい点や賃金が上がりにくい仕組みなど、介護業界ならではの事情が離職率の高さに影響していると考えられます。

参考:
介護人材の処遇改善について|P9「介護職員の採用率・離職率の状況」|厚生労働省
介護労働者の確保・定着等に関する研究会中間取りまとめの概要について|厚生労働省

人手不足への対策

介護士の女性と高齢者

(出典) pixta.jp

介護業界の人手不足は今後も続くと予想されます。課題の解決に向け、国や事業者はどのように取り組んでいるのでしょうか。

処遇改善やキャリア管理の促進

日本政府は現在、職員の賃金引き上げや昇給・キャリアアップ支援など、介護業界の処遇改善策を進めています。2019年4月、厚生労働省は各都道府県に対して、「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」の導入を促す通知を出しました。

この制度は、職員の人材育成・処遇改善につながる事業者の取り組みに対して都道府県が評価し、一定の水準を満たした事業者に認証を付与するものです。制度の運営経費は、国が支援します。

評価項目には「明確な給与体系の導入」「新規採用者の育成」「キャリアパス制度導入」「資格取得支援」などがあります。介護職員が働きやすい環境づくりを促すと同時に、業界全体のイメージ向上につなげるのが制度の主な目的です。

参考:人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度について|厚生労働省

労働環境の整備

介護労働によって生じる身体的・精神的な負担を軽減するために、労働環境の改善に取り組む事業者も少なくありません。

例えば健康診断の徹底化や腰痛対策、カウンセリング体制の整備など心身の健康を守る取り組みや、ITを導入した事務作業の効率化などが進められています。

また介護業界には、女性の割合が圧倒的に高い特徴があります。施設等で働く職員の約73%、訪問介護員の約89%が女性です。このため今後は、育児休業や介護休業などを取得しやすい環境づくりも期待されています。

参考:介護人材と介護福祉士の在り方について|P2「介護職員の現状」|厚生労働省

ユニットケアを導入

ユニットケアは、2001年から本格的に始まった施設での介護方法です。10人程度の入居者を1ユニットとして、ユニットごとに決まったスタッフが介護にあたります。

ユニットは入居者ごとの個室と共有スペースで構成され、4人一部屋などの多床室が並ぶ施設よりも、プライバシーを保ちやすいのが特徴です。

介護職員にとっても働きやすいスタイルとされています。従来の集団的ケアでは、毎日違う入居者やスタッフとコミュニケーションを図らなければならず、人間関係がストレスになるケースもあります。

ユニットケアなら自分の担当ユニットに集中できるため、ストレスが少ない上に、やりがいも感じやすいでしょう。このため入居者の利便性だけでなく、職員の労働環境改善を目的に、導入する施設も増えています。

積極的な人材確保

労働者の中で介護職を目指す人が少ない現状についても、国が対策を進めています。2019年4月には、外国人労働者向けの在留資格に特定技能制度を新設し、介護業界を含めて全14業種で利用できるようになりました。

国内でも、以下のように積極的に人材確保に取り組むよう、関係各所に働きかけています。

  • 離職した介護士が再就職しやすい環境づくり
  • 教育機関と連携した介護業界への理解促進
  • 介護職未経験者への教育訓練機会の提供
  • 人材育成費用の助成
  • ハローワークの福祉人材確保機能の強化など

介護業界に将来性はある?

車椅子を押す女性

(出典) pixta.jp

現在の介護業界は人手が足りていないため、その気になればいつでも働けそうなイメージがあります。こうした状況は、いつまで続くのでしょうか。介護業界の将来性をチェックしましょう。

需要が増え続けている業界

日本では高齢者の人口・高齢化率ともに上昇しており、特に近年は75歳以上の後期高齢者の増加が顕著です。政府の推計によると、少なくとも2065年までは高齢化率が上昇を続ける見込みです。

一方で核家族化や女性の社会進出が進み、自宅で親を介護するケースは少なくなっています。介護保険制度が始まって民間の介護サービスが充実してきたこともあり、介護職員の需要は今後もますます高まると考えてよいでしょう。

参考:高齢化の現状と将来像|令和4年版高齢社会白書(全体版)|内閣府

多くの人にチャンスがあるのも魅力

常に職員の人数が不足している事業所はたくさんあります。このため経験・学歴・スキルなどにかかわらず、多くの人に介護職への門戸が開かれています。

無資格の人には資格取得をサポートする事業所もあり、働きながら資格を取ってキャリアアップを目指すことも可能です。

年間を通じて求人が見つかり、中途採用者が多いのも介護業界の特徴です。職を転々としてきた人や、アルバイトから正社員になりたいと思っている人も、自分に合う職場を見つけやすいでしょう。

介護業界を目指すには

勉強する女性

(出典) pixta.jp

これから介護職を目指すなら、長く続けられる方法をチェックしておくことをおすすめします。仕事の探し方やキャリアアップの方法、役立つ資格を紹介します。

自分に合う職種や職場を選ぶ

一言で介護職といっても、介護職員や介護助手・ケアマネージャー・生活相談員・介護事務など、さまざまな種類があります。まずは職種について知り、自分がどのような仕事をしたいのか考えておきましょう。

また同じ職種でも、職場によって働きやすさは異なります。待遇面はもちろんですが、未経験者にとっては研修や教育体制が整っているかどうかも重要なポイントです。合わずに辞めてしまう事態を避けるためにも、応募先は慎重に選びましょう。

介護業界でキャリアアップする方法

介護業界には無資格で就ける職種もありますが、キャリアアップを目指すなら「介護福祉士」などの資格取得は必須といえます。

厚生労働省の調査によれば、保有資格がある人の月の平均給与は31万円台、ない人は27万円台と、賃金面でも明らかに差があることが分かります。

経済的・時間的な余裕があれば、転職活動を始める前に資格取得を検討してもよいでしょう。もちろん資格不要の職種から始めて、働きながら取得することも可能です。

参考:「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」|P166「第99表」|厚生労働省

介護業界で役立つ資格

介護業界でのキャリアアップに役立つ資格として、介護福祉士・ケアマネージャー・社会福祉士などが挙げられます。

介護福祉士は国家資格でもあり、保有者は施設利用者の家族への助言やスタッフの指導など、さまざまな仕事ができるようになります。自治体や医療機関が運営する施設の応募条件になるケースも多く、転職にも有利です。

ケアマネージャーは、利用者に適したケアプランを作成し、利用者とサービスの仲介を行う専門職です。他の職種に比べて肉体労働が少なく、体力に自信のない人でも働きやすいでしょう。

社会福祉士は、生活相談員や支援相談員になるために必要とされる国家資格です。ただしいずれの資格も、受験要件を満たすためには、実務経験や下位資格の取得、指定科目の履修などが必要です。

自分がどの方面で活躍したいのかをよく考えた上で、目標とする資格を決めて取得に向けて準備するとよいでしょう。

まとめ:未経験でも挑戦しやすい介護業界

高齢者を迎えに来た介護職員の女性

(出典) pixta.jp

人口構成の変化やライフスタイルの多様化により、介護が必要な人やその家族は年々増加しています。一方の介護業界は人手不足が深刻化しており、未経験者でも採用されやすい状況が今後も続くでしょう。

近年は国や地方自治体、事業者の努力によって、賃金引き上げや資格取得の支援体制なども充実しつつあり、転職したい人にとってはチャンスともいえます。

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