医療業界の転職では、どのような志望動機が採用担当者の心を打つのでしょうか?他の応募者に差をつけるには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。医療業界の代表的な職種を例に挙げ、書き方のポイントを紹介します。
医療業界の志望動機を書くポイント
医療業界では働き手不足が深刻化しており、医師や看護師などの有資格者だけでなく、MRや医療事務などの職種にも高い需要があります。
転職活動をする中で、必ずといってよいほど聞かれるのが「志望動機」です。働く意欲や応募先への熱意を測るバロメーターでもあり、採用選考では書き方・伝え方で採否が決まる場合も珍しくありません。
企業が求めている人材を把握する
志望動機を考える前に、企業がどのような人材を求めているかを把握しましょう。人材採用をする企業では、募集ポジションや仕事内容に応じて「求める人材像」を設定するのが一般的です。
保有スキルや経験はもちろん、人柄やカルチャーフィット、ポテンシャルといった内面的要素も評価対象とされ、応募者に合致する要素が多ければ多いほど、採用の可能性が高まります。
企業が求める人材像への理解が深まれば、自分の長所や強みをどうアピールすべきかが明確になります。さらに、自分に合わない職場を早い段階で見分けられるため、採用のミスマッチによる離職を避けられるでしょう。
医療業界を目指す理由を明確にする
医療業界で経験を積んできた人であれば、キャリアアップや昇給を目的とした業界内転職はごく当たり前ですが、他業種から医療業界を目指す場合は、企業の採用担当者を納得させられるような理由が必要です。
いくら医療業界が働き手不足であるといっても、「就職がしやすいから」「将来性が期待できそうだから」という理由だけでは、相手の心は動きません。
多くの職種には専門的知識が必要であり、資格取得後も自己研さんに励む必要があります。強い意思と目標がなければ、キャリアを積んでいくのは難しいでしょう。応募にあたり、キャリアチェンジする理由をしっかりと言語化することが肝要です。
なぜその企業を選んだのかが重要
医療業界といっても、さまざまな職種・ポジションがあります。医療を通じて人の助けになりたい志も大事ですが、企業側としては「数ある企業の中からなぜ自社を選んだのか」を知りたいのが本音です。
応募企業でなければならない理由をしっかりと答えられる人は、労働意欲や熱意が高いと見なされます。逆に理由がありきたりだと、「自社でなくてもよいのでは?」「他に好条件の仕事が見つかればすぐに離職するのでは?」と思われかねません。
採用担当者の心を動かす志望動機を作るには、企業研究が不可欠です。募集要項やWebサイト、公式SNSなどをチェックし、その企業で働く魅力や価値、共感できる部分を探してみましょう。
志望動機を書く・答える際のポイント
伝え方が下手だと、採用担当者に熱意や本気度が伝わりません。場合によっては、コミュニケーションが苦手な人というイメージを与えてしまいます。内容を分かりやすく、かつ印象的に伝えるためのポイントを解説します。
基本ルールは結論から
志望動機に限らず、選考に関係する文章は結論から述べるのが基本です。「なぜこの企業を志望したのか」を最初に伝えた後、具体的な理由や根拠、エピソードなどを掘り下げていきます。全体の構成は、以下のような形が理想です。
- 結論:なぜその企業を選んだのか
- 根拠:結論に至った根拠は何か
- 必然性:その企業でなくてはならない理由は何か
結論が見えない状態で長々と話が続くと、聞き手はストレスを感じます。途中で話の軸がずれたり、着地点が分からなくなったりすれば、「論理的思考力が弱い」というマイナス評価につながる可能性があるでしょう。
具体性やエピソードが重要
採用担当者は1日に何通もの履歴書に目を通し、何人もの応募者と面接を行います。どの企業でも通用するような志望動機では、担当者にインパクトを与えられません。
他の応募者と差別化を図るためにも、具体的なエピソードを盛り込みましょう。自分の経験に基づいた具体例を交えることで、内容に説得力が加わります。実績を伝える際は、「売り上げ120%達成」「新規顧客を年間30件獲得」のように数字で示すのも有効です。
なお、オリジナリティは大事ですが、うそのエピソードや誇張表現は控えましょう。適性検査の結果や面接時の受け答えなどから、うそがばれる恐れがあります。
挑戦してみたい医療業界の職種
医療業界の職種として真っ先に思い浮かぶのは、医療現場の第一線で活躍する医師や看護師でしょう。しかし医療業界には多種多様な職種・ポジションがあり、患者の治療や補助をする職種だけが重要なわけではありません。代表的な職種を取り上げて解説します。
医師・患者をサポートする「看護師」
看護師は、医師の診療や治療の補助をする職種です。看護師の「看」という字には「見守る」という意味があるように、傷病者やじょく婦(出産後間もない女性)の療養を全面的にサポートします。
診療科や病棟にもよりますが、主な日常業務は以下の通りです。
- 採血・点滴・注射
- バイタルチェック
- 巡回
- 患者の移送
- 患者の身の回りの世話・ベッドメイキング
- カルテの記録
- ナースコール対応
看護師になるには、保健師助産師看護師法で定められたカリキュラムを修了する必要があります。国家試験を受けて合格した者には、厚生労働大臣から看護師免許が発行されます。免許には有効期限がないため、一生の財産となるでしょう。
参考:保健師助産師看護師法
新薬にも関われる「MR」
MRは「Medical Representatives」の頭文字で、日本語では「医薬情報担当者」と訳します。製薬会社や医薬品販売業務受託機関(CSO)などに所属し、病院や薬局に自社の医薬品を採用してもらうように働きかけます。
営業職として紹介されるケースもありますが、医薬の販売や納品を行う仕事ではありません。医療従事者に自社の医薬品についての情報を伝えると同時に、臨床上の情報を収集するのが主な役割です。
MRとして活躍するには、医学や薬学、疾病に関する知識が必要です。必須の資格はありませんが、製薬会社への入社後、導入教育で知識を学び、MR認定試験に合格してMR認定証を取得する流れが大半です。
理系・文系を問わない「医療事務」
医療事務は、異業種からキャリアチェンジしやすい職種の1つです。病院やクリニックの事務職全般を指し、日常的には以下のような業務を担当します。
- 患者の受付・案内・会計業務
- 電話対応
- レセプトの請求
- カルテやレントゲンの準備
診療報酬の請求業務では、正確さとスピーディさが求められます。理系・文系を問わず、几帳面で丁寧な仕事ができる人に向いているでしょう。
医療事務に資格や免許は不要ですが、「医療事務技能審査試験」や「医療事務管理士」などの民間の医療事務資格を取得しておくと、転職に有利です。
職種別で見る志望動機の例文「未経験」
医療業界への転職が初めての人は、企業が求める人材像をよく把握した上で、熱意を示すことが重要です。未経験でも貢献できることは必ずあるため、転職先にマッチしたスキルや経験を軸に、志望動機を考えましょう。
看護師の志望動機例文
「学びたい」という姿勢を示すことは大切ですが、「教えてもらう」という受け身の姿勢として捉えられないように注意が必要です。社会人経験があれば、前職で培った経験をどう生かせるかを考えましょう。看護師になろうと決意した理由やきっかけを盛り込むのも有用です。
老人介護施設の介護助手として、3年間勤務した経験があります。利用者に最も近い立場にありながら、医療行為ができないもどかしさを感じたのが、看護師を目指そうと思ったきっかけです。
アルバイトをしながら看護専門学校で学び、〇年〇月に看護師資格を取得いたしました。貴院は地域密着型のクリニックとして、高齢者のケアに力を入れていると伺っています。介護で培った経験を生かし、患者さんの心に寄り添える看護師を目指します。
MRの志望動機例文
MRは医薬品のエキスパートです。医学や薬学の知識がない業界未経験者の場合、熱意やポテンシャル、ビジョンへの共感などをアピールする必要があります。
前職は、福祉用具のルート営業です。介護や医療現場で働く方々と接する中でMRを知り、医薬品を通して患者さんの命を支えたいという気持ちが強くなりました。
貴社は小児科領域の希少疾病用医薬品を重点的に開発しておられます。貴社の一員として新薬を広め、1人でも多くの子どもたちを救う手助けがしたいです。
医療業界は初めてですが、前職で培ったコミュニケーション力や傾聴力を武器に、医療従事者との信頼関係を築いていきたいと思います。
医療事務の志望動機例文
医療事務では、事務職としての経験が評価されます。業界未経験者でも、これまでに培ってきた知識やスキルを生かせる場面が多いでしょう。
教育機関の事務職として6年間働きました。地道な作業が得意な自分にとって事務は適職ですが、もっと人と関わる仕事がしたいと思うようになりました。
貴社が募集するポジションであれば、事務スキルを生かしながら、よりホスピタリティを発揮できる働き方が可能だと感じたのが志望理由です。
子どものケガで貴院を訪れた際、受付の方が笑顔で対応してくださり、温かい気持ちになりました。入職したら、クリニックの顔として地域の皆さまを笑顔でお迎えしたいです。
職種別で見る志望動機の例文「経験者」
経験のある業界・職種に応募する際は、「なぜ転職を決めたのか」を明確にする必要があります。どんな事情があれ、ネガティブな退職理由や前職の不満を記載するのは避けましょう。
看護師の志望動機例文
看護師は資格を取得すると、生涯にわたり働ける職業です。転職の動機として一般的なのはキャリアアップでしょう。職場が変われば働き方も変わるため、「視野を広げたい」「〇〇に挑戦してみたい」といった志望理由も歓迎されます。
一般病院で7年間勤務した経験があります。看護師として働く中で小児医療に興味を持ち、小児看護のエキスパートになりたいという気持ちが芽生えました。
貴院は小児科に特化した総合病院として有名です。「チームワークで子どもの命を守る」という方針を掲げ、高水準の治療を提供されています。
これまで培ってきた知識や経験を生かしながら、専門的なスキルを追求できると考え、貴院を志望しました。
MRの志望動機例文
MR経験者には、即戦力としての活躍が期待されます。業務経験と保有スキルから、自分がどのように貢献できるのかを深掘りしましょう。企業のビジョンや経営方針への共感を示すと、採用担当者に好印象を与えられます。
CSOのMRとして4年間勤務し、MRとしてがん専門施設を担当しました。現場の医師と交流を深める中で、より幅広い経験を積む必要があることを実感し、製薬会社への転職を決意しました。
貴社は抗がん剤市場をけん引する製薬会社として、副作用が少ないがん治療薬の開発に力を入れておられます。前職での経験を生かしつつ、がん領域MRとしての専門性を磨けることから、オンコロジー事業部に応募いたしました。
常に最新の情報をアップデートし、医療現場の方々に有意義な情報を届けられるように努めます。
医療事務の志望動機例文
医療事務の経験者は、なぜその企業に応募したのかをしっかりと伝える必要があります。医療機関の理念や施設の特徴、働く環境などを掘り下げて、納得感のある志望動機に仕上げましょう。キャリアプランや目標、保有資格を積極的にアピールすると、前向きさが伝わります。
大学を卒業後、医療事務として5年間働きました。出産を機に退職しましたが、子育ての傍ら「診療報酬請求事務能力認定試験」の勉強をし、〇年〇月に試験に合格しました。
貴院に応募を決めたのは、院長をはじめとするスタッフの皆さまの丁寧な対応です。以前お世話になった際に、迅速な会計や温かい接遇に感銘を受け、いつかこのクリニックの医療事務として働きたいと思うようになりました。
数年間のブランクがありますが、1日でも早く即戦力になれるように精進する所存です。
医療業界で働くメリット
どの業界にも、そこで働くメリットがあります。「医療業界は大変」という声も聞かれますが、その分やりがいも大きく、努力次第でキャリアアップや昇給が目指せます。志望動機がなかなか思い浮かばない場合は、業界の将来性や魅力を深掘りしてみるとよいでしょう。
専門性が高くやりがいがある
医療業界で働く人の多くは、自分の仕事に誇りとやりがいを持っています。社会への貢献度合いが高く、誰かの役に立っている実感が得られるのがメリットです。
職種の多くは高い専門性が求められるため、常に知識や技術を磨き続ける必要があります。楽してもうかる仕事ではないものの、患者や周囲から感謝の言葉をかけられたり、よいフィードバックをもらえたりすると、大きな達成感を味わえます。
社会貢献したい人や、他者の役に立ちたい人にとって、医療関係の仕事は適職といえるでしょう。
比較的高年収が期待できる
人の命や健康に関わる医療業界は、景気の影響をほとんど受けません。少子高齢化によって医療のニーズが高まっているため、今後も医療業界の人手不足は続くでしょう。
医療業界で働けるスキルや資格を取得すると、働き口に困らないのがメリットです。雇用環境は安定しており、年齢を重ねても長く働けます。キャリアアップや昇給もしやすく、本人の努力次第で高収入も目指せます。
ただし、人の命に関わる職業は背負う責任が重く、心身的な負担もあります。楽な仕事ではない点を肝に銘じましょう。
まとめ:ポイントを守って企業に熱意を伝えよう
企業の採用面接では、必ずといってよいほど志望動機を問われます。医療業界における転職も例外ではなく、「なぜキャリアチェンジをしようと思ったのか」「なぜ他社ではなく自社なのか」といった、突っ込んだ質問がなされるケースも珍しくありません。
奇をてらう必要はありませんが、志望動機には実体験に基づいたオリジナリティが求められます。経験の振り返りやスキルの棚卸し、企業研究などをしっかりと行い、採用担当者の心に刺さる内容に仕上げましょう。
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